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■娘たちの1200(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-05-01
 
それで11時半頃に店主さんに御礼を言って、お店を出た。すると店の前に見知った顔があるのでびっくりする。
 
「浜路さん!?」
 
それは美鳳・佳穂など“出羽の八乙女”の1人、浜路さんであった。普段は福島県付近で活動している人である。このあたりまで何か用事があって北上してきていたのだろうか?
 
「大船渡で声を掛けたんだけど、あんた気付かずに行っちゃうし」
「ごめんなさい!全然気付かなかった」
 
「まあいいけど。ところであんた近い内に高野山の“★★院あたり”に行く予定無い?」
「“★★院まで”なら行っていいですよ」
「勘がいいな」
 
「真冬の氷雪を突破して瞬嶽さんの所まで行けといわれたら、お断りさせてもらいます」
「じゃ瞬醒にでいいから、これ渡してよ。実はさっき大船渡沖の海の底で光っているのに気付いて拾ってきた」
 
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と言って浜路さんは千里に古ぼけた水晶の数珠を渡した。まだ濡れている!
 
「これは誰か徳の高い女性が持っていたものですね。観音経が聞こえるから尼さんかな」
 
「うん。私にも観音経が聞こえる。たぶん津波で亡くなった尼さんが持っていたものだと思うけど、拾ってみて音を聞いている内に、どうも瞬嶽さんに渡さなければいけないみたいな気がしてきた。それであそこまで持っていってくれる人がいないかなあ、と思っていた所にあんたが通りかかったのよね」
 
「きっと瞬醒さんに渡しておけば、瞬嶽さんに届きますよ」
「だろうね。高野山まで行くの辛いし、あんたに頼んでいい?」
「いいですよ。もっとも私より青葉の方がお使いとして優秀だと思いますけど。あの子月に1度は大船渡に来ますよ」
 
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「多分、青葉より千里の方がこの場合は良いと思う」
「そうですか?私は霊的な能力とかも全然無いのに」
 
「どうかした神様のパワーを凌駕する力を持っている癖によく言うよ。だいたい霊的な能力が無い人に私が見える訳無い」
「そうですかね〜」
「じゃ頼むね」
「はい、お預かりします」
 
それで千里はその数珠をビニール袋に二重に入れてからバイクの収納ボックスの中に入れた。
 

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宮古を出ると、その先も難易度の高い道が続く。幸いにもきちんと除雪されているので走っていくが、積雪していたら、北海道に行く前にこのあたりでリタイアするハメになるところであった。
 
岩泉町には以前は傾斜10%というとんでもない坂があったのだが、2010年に立派なバイパス(中野バイパス:現在の三陸北縦貫道・岩泉道路)が完成しているので、千里もそちらを走っていく。
 
結局15時頃に何とか八戸のフェリーターミナルに到着した。
 
ここまでの走行。
 
横須賀(国道16/国道15/国道6)広野町 291km
広野IC(常磐道・磐越道・東北道・仙台南/東道・三陸道)石巻河南IC 更に胡桃の家まで 271km
仙台(国道45号)八戸 416km
合計 978km
 
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記念写真を《びゃくちゃん》に撮ってもらってから、バイクは《こうちゃん》に託し、身一つでフェリーに乗り込む。
 
17:30発の《べにりあ》に乗った。
 
船内では写真撮影は《びゃくちゃん》と《りくちゃん》に任せて!二等船室で女性がわりと集まっている付近で横になり、毛布をかぶってひたすら寝た。
 

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氷川真由子は年内に無事卒論も完成・提出したし、内定していた★★レコードから正式の採用通知も受け取り、友人から誘われた卒業前旅行にでも行ってこようかな?などと思っていた時に、加藤課長から電話を受けた。
 
「3月までバイト身分で仕事をお願いできないかと思って」
と言われて、何かイベントのお手伝いか何かかなと思って出かけていくと、ローズ+リリーを担当して欲しいと言われて仰天する。
 
「やる?」
「やらせてください!」
 
現在ローズ+リリーは、南頼高係長が担当しているものの、南係長は多数のアーティストを抱えていて、手が回っていないのが現状らしい。それでローズ+リリーと、その関連ユニットのローズクォーツ、ケイがプロデュースをしているスリファーズの3つのユニットを担当して欲しいと言われた。
 
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「仕事のやり方は、悪いけど教えている時間が無いので、南君や北川君がしていることを見て覚えて」
 
「分かりました!」
 
それで初日は(南係長が出張中だったので)北川さんに1日付いてまわり、A&Rの仕事の一端を見せてもらった。
 
5日も北川さんに付いて回らせてもらおうかと思っていたら、鬼柳次長が来てハードディスクを1台渡した。
 
「これ、ローズ+リリーが高校生時代、デビュー前に自主制作していた音源らしいんだよ」
「そういうものがあったんですか!」
「昨日の挨拶まわりの時にその話が出てね。それで町添取締役はぜひ発売しようとか張り切っているけど、実際問題としてこれを商品として売れるレベルまで調整するのにどのくらいの日数が掛かるか、君の感覚でいいから、見積もってくれない?」
 
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「分かりました。お預かりします」
 
実際にはデータは何かよく分からない形式になっている。それでたまたま通り掛かった富永純子主任を呼び止めて尋ねたらProtoolsというソフトのデータだと言われた。氷川は音楽制作の経験が無いのでProtoolsというものを知らなかったが、そこから頑張って調べて、その概要を知り、それならきっと社内にインストールされているマシンがあるのでは思った。またたまたま通りかかった八雲礼朗さんに尋ねると教えてくれた。
 
「君、昨日入ったばかりなのに、大変だね」
「いえ。知らないことはどんどん覚えていきます」
「うん。その姿勢で頑張ろう」
と言い、八雲さんは氷川が持っていたハードディスクのデータをそのマシンの適切な場所にコピーしてくれた。
 
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「これで聴けるし自由に調整できるから」
「ありがとうございました!」
 
と言ったが、八雲さんが香料の匂いを漂わせていることに気付いた。女性の多い職場だから、誰かから移り香したのかな?とその時は思った。
 

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1月10日。花見啓介は引越直前のUTPを訪れ、4年前の件に関して須藤美智子に謝罪した。
 
美智子は内心はかなり怒っていたのだが、あなたも病気のお父さんを抱えて大変だろうけど頑張りなさいと諭した。この謝罪の場に冬子は同席したのだが、政子はぷいと席を立ち、お茶を持って来たかと思うと、美智子・冬子の前に普通にお茶を出した後、残る1つのお茶(わざわざ沸騰させたお湯で入れた)を花見の頭に掛けた。
 
「あちち!」
と花見。これは実際に火傷したと思う。
 
「政子ちゃん!」
とさすがに美智子が叱る。しかし政子は平然とした表情で
 
「失礼します」
と言って出ていった。
 
「ごめんなさいね」
と美智子。
 
「いや、いいです。政子のああいうのには慣れてますから」
と花見。
 
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しかし結果的にこの事件で美智子は花見を許してやってもいいかという気分になったようであった。
 
花見の週刊誌記者へのチクりはローズ+リリーの活動を休止に追い込み、その損害額は数十億と町添さんなどは言っていたが、むろんそれを花見に請求する筋合いは無い。
 
活動停止に追い込まれた主たる原因は冬子・政子と須藤美智子の間で契約がきちんと取り交わされていなかったことである。花見には法的な責任は無い。
 
それに冬子は考えていた。あのまま活動を続けていたら政子はいづれ再起不能になっていたのではと。(少なくとも当時の)政子は芸能人として生きていくには無垢すぎたのである。
 
それにしても花見の賠償金まで冬子が肩代わりしてあげたのは
「人が良すぎる」
と美智子から呆れられていた。
 
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1月13日夜中の1:30、千里を乗せたフェリーは苫小牧西港に接岸した。
 
暗い中での走行は危険なので、天文薄明(5:22)を待つことにする。ターミナル内の待合コーナーで仮眠する。
 
朝5:00.
 
《げんちゃん》が千里を起こす。
 
「これが北海道仕様のバイクかぁ」
「まあ北海道の冬の道を走れるバイクはそうそう無いぜ」
 
《げんちゃん》は先に北海道に来てくれていて、特製バイクを千里に引き渡したのである。
 
これは実はホンダの郵便局向け特別仕様車・スーパーカブMD90の払い下げ品を改造したものである。北海道の冬の道を平気で配達してまわっている頼もしいバイクだ。このバイクは一般発売はされてないので払い下げ品を扱っている業者から買うしかない。
 
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スーパーカブMD90(Mail Delivery 90)は、普通のスーパーカブC90を主として安定性・雪の上での走行性や視認性などを強化したものであるが、払い下げ品を入手した所で、まずエンジンをスーパーカブC110のものに換装した!更にこれにターボを取り付けて実質200cc程度のパワーのバイクにしている。ついでに燃料タンクも4Lから6Lのものに交換している。
 
(本家でも実は2012年から110ccのスーパーカブMD110が稼働しはじめている。むろんこれの払い下げ品が出るのはかなり先であろう)
 
払い下げ時に車体は黒く塗装され直していた(赤い車体のまま払い下げるのは禁止らしい)が、それを更に蛍光イエロー!に塗り直している。霧の中や吹雪きの中の走行になった場合に後続の自動車から視認してもらうためである。
 
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むろん千里自身も北海道では電熱機能付きの蛍光ピンク!?のライダースーツを着てハイビジのヘルメット(これは蛍光グリーン)を付ける。
 
MD90自体にグリップヒーターが付いていたが、更にハンドルカバーも付けて手が凍えないにしている。冷たい風が身体を直撃しないように風防も取り付け、エンジンを保護するためのガードも付けている。他にもあちこちカバーが取り付けてあって、バイクの動力システムを守るようになっている。タイヤは幅の広いスパイクタイヤを装着している。このスパイクタイヤはロシアで軍事用に開発された特製の物らしい(どうやって入手したんだ!?)。
 
なおスパイクタイヤはとっくに禁止になったと思っている人が多いが、実は普通の車でも「雪道・凍結路」では使用してよいのである。アスファルトやコンクリートの道を走れないだけなので、除雪車などは結構使用している。また125cc以下の車は例外規定でアスファルトやコンクリートの上も走ることが可能である。実はそれで原付二種を使うことにしたのである。
 
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エンジンを換装する時にいっそ250ccのエンジンと換装することも検討したのだが、そのスパイクタイヤが125cc以下のバイクにしか許されないという問題があり、同じ系列のスーパーカブ110のエンジンを流用することにした。しかしそれではパワーに不安があるのでターボを取り付けた。むろんターボにしたことでノズルやブレーキなど様々な部品の交換が必要になった。
 
そんなに改造して検査大丈夫?と千里は聞いたのだが
『原付二種の改造は書類申請だけだから。それに保安基準には違反してないよ』
と《こうちゃん》は言っていた。
 
(ほんとかなぁと千里は疑問を感じた)
 

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そういう訳で、このバイクは《こうちゃん》《げんちゃん》《せいちゃん》3人の共同作品である。コンピュータのプログラムなどは《せいちゃん》が書き換えている。
 
実は雨宮先生から二輪免許を取れと言われた8月末の段階で、北海道の冬道を走らされる予感があり、《げんちゃん》に頼んでそういうことのできるバイクを探してもらったのだが、結局市販品では無理なので改造することにしたのであった。《げんちゃん》1人では手に負えず3人の共同開発になった。
 
ナンバープレートを取るのに旭川市役所で手続きをしようとしたら、念のため実物を見たいというので軽トラに載せて持ち込んだ。それで結果的には保安基準を満たしていることも確認されたのだが、係の人が「このバイク凄いね!」と感心していたらしい。
 
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なお非常用にチェーンも3セット用意している。
 

《びゃくちゃん》に記念写真を撮ってもらってから出発する。
 
「これ本当に110ccのバイクにターボ取り付けてるの?実際に250ccくらいのバイクの感覚なんだけど」
「まあ細かいことは気にするな」
 
ターボというのは、小さいエンジンでも「空間を半分に圧縮すれば結果的に倍の排気量のエンジンと同じパワーになる」という発想で生まれたものである。それで倍の空気を送り込むことで倍の燃焼をさせる。
 
バイクに単純にターボを取り付けるとブレーキ能力が落ちるはずなのだが、それはちゃんと利くのである。一応それはブレーキシステムを大きなバイクのものに交換したとは聞いた。また普通ターボは倍の燃焼が始まるまでに時間が掛かるので、どうしても立ち上がりが遅いのだが、このバイクはいきなりフルパワーになってくれる。
 
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怪しげなバイクだなぁ、実は110ccの空間の中に本当に250ccのエンジンを5次元か6次元くらい使って閉じ込めたりしてないか?などと思いながら走っていく。
 

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