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■娘たちの2012オールジャパン(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-04-22

 
千里は12月の中旬に***コスメティックという会社のアテンダントさんと面会した。
 
「***コスメティックをお選び頂きありがとうございます。タイでの性転換手術ということでよろしいですね」
「はい、それでお願いします」
 
「幾つか質問をさせて頂きますが、ご自身の性別に違和感を抱いたのはいつ頃からですか?」
「物心付いた頃からですね。自分は親がそうみなしている性別とは逆の性別だと思っていました」
 
「GIDに関して病院で診察を受けられたことはありますか?」
「はい。それで精神科医と婦人科医から、GIDであるという診断書を今年初め頃に2通いただきました」
「既に2通もらっているんですね。でもすぐに手術を受けなかったのはどうしてですか?」
「今年は仕事が忙しかったもので」
「なるほどですね」
 
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「来年も6月いっぱいまで忙しいので、その後の手術にしてもらうと助かります」
「分かりました。それで手術できる病院を確認します。費用は300万円ほど掛かると思うのですが、お支払いはどうなさいますか?一応ローンの斡旋などもしていますが」
「現金で事前に全額払いますよ」
「分かりました。お仕事は失礼ですか?」
「大学生ですが、バイトで音楽関係の仕事をしておりまして、それが6月まで忙しいんですよ」
 
「なるほど」
と言ってからアテンダントさんは少し考えるようにした。
 
「こうやって会話しておりますと、お声が女性の声ですよね。男性ホルモンは摂っておられないんですか?」
 
「そんなもの飲みません。女性ホルモンなら小学4年生の時から摂っていますが」
 
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摂っているというより勝手に分泌されているもんなあ、と千里は思う。
 
「・・・えっと、FTMさんですよね?」
「MTFですけど」
 
「うっそー!?」
とアテンダントの女性は思わず声をあげてしまった。
 

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「何するの!?危ないじゃない!」
と言って、母親は息子の持つ包丁を取り上げた。
 
「だって、だって、ちんちん付いてるの嫌なんだもん。私、女の子になりたい」
と息子は泣きながら母親に訴えた。
 
「その件は、再度ママが教育委員会と話してみるから」
と母は言う。
 
息子は物心付いた頃から女性的な性格でスカートを穿きたがった。それでまだ小さいしいいかなと思い、スカートを穿かせていた。幼稚園に入る時にけっこう悩んだのだが、幼稚園側が割とそういう問題に理解を示してくれて、女児的な格好のまま通園したし、名前も男性的な本名ではなく、お祖母ちゃん(母の母)が提唱してくれた愛菜という女の子名前を名乗ることにした。
 
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しかし愛菜は4月から小学校に入る。
 
女児としての通学、および通称使用を教育委員会側に要望したのだが、そのような要請には応じられないと言われた。
 
「おちんちんもタマタマも付いているんでしょう?そういう子を女の子として学校に入れたら、他の女の子の親から苦情が来ますよ」
 
と頭の硬そうな教育委員さんが言った。
 

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「ちんちんがあったら男の子みたいな服を着ないといけないんでしょ?だから私ちんちん切ろうと思ったの」」
と息子は言う。
 
騒ぎで目を覚ましたようで、父親も出てきた。父親が言った。
 
「タマタマだけでも取っちゃおうか?」
「どうやって?」
と母親が訊く。
「外国ではこのくらいの子供の去勢をしてくれる医者もいると思う」
「でもいいの?」
「この子がこの後、こんなものが付いていることで苦しむのが見えているから、そういう苦しみを味あわせたくない(*1)」
 

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(*1)「味わう(あじわう)」はワ行五段活用の動詞なので「せる」という未然形を要求する助動詞に付く場合は「味わわせる」となるのが本則ですが、この形は「わわ」と同音が連続することから、現代の会話的日本語では違和感を感じる人が多く「味あわせる」という誤った形の方を自然に感じる人が多くなっています。本稿ではこの形を「ら抜き言葉」と同様の会話的表現として採用しています。なお「味合わせる」という書き方は当て字だと思います。
参考URL https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/20160601_3.html
 

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母は考えた。
 
「だったら、外国まで行かなくても、ちょっと医者の心当たりがある」
「・・・もしかしてあの人?」
「詮索しないでもらえるなら、あそこに連れて行ってみる」
「分かった。それと名前は家庭裁判所に行って変更しようよ。この子幼稚園に入って以来、ずっと女の子名前を使っているから経年使用を主張できると思う」
「うん、そうしよう」
 
それで母は息子の前にしゃがみ込んで視線の高さを合わせて言った。
 
「タマタマだけ取るのでもいい?」
「ちんちんは?」
 
「小さい子供はちんちん切るの禁止なのよ。でもタマタマなら、どうにかなるし、タマタマが無かったらもう男の子ではなくなるのよ。ちんちん触ると大きくなるでしょ?」
 
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「うん。あれも嫌」
「タマタマ取ってしまえばもう大きくならないよ」
「あ、それいいな」
 
「でもタマタマ取っちゃうと将来女の子と結婚してパパになれなくなるよ」
「パパになりたくなーい。女の子と結婚するなんて嫌だよお」
 

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それで母は父に席を外してくれるように言ってから、親友の医師に電話した。
 
「事情は分かった。誰にも言わないなら手術してあげるよ。今夜ならできるけど」
と親友の医師は言ってくれた。
 
「だったら今から連れていく」
 
それで母は息子に目隠しをさせた。
 
深夜車で連れ出す。
 
その病院に入ると、目隠しをしたまま手術室に連れ込む。脈拍・血圧などを測定する機器を取り付ける。
 
「動いたらダメだからね」
と母親の声。
「うん。私動かない」
と息子は答える。
 
「足だけ広げて。そうそう。じゃ注射するけど痛いの我慢してね」
「注射するとタマタマ無くなるの?」
「注射すると手術の痛みが小さくなるんだよ」
「だったら我慢する」
 
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それで医師は部分麻酔をした。麻酔が効いているかどうか、母親が確認する。
 
医師はその男の子の陰嚢を切開すると1個睾丸を取り出す。
 
「ほんとに切っていいね?」
と母親が聞く。息子が頷く。
 
それで医師は取り出した睾丸を結索して切断した。
 

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「1個切っちゃったよ。もう1個も切っていい?」
「うん」
 
それで医師はもう1個の睾丸を取り出し、結索して切断した。
 
「これでタマタマは2個とも無くなったよ」
と母は言う。
 
「嬉しい」
 
「もうこれであんたは男の子ではなくなったよ」
「嬉しい。だったら私、女の子として小学校行ける?」
 
「行かせてあげるよ。絶対」
と言って、母は元息子を抱きしめた。
 
その時母は「え?」と声をあげた。
 
親友の医師が「ここから先はサービス」と書いた紙を見せる。
 
母は頷いた。医師が別の注射を打つと元息子は意識を失った。
 
「どこまでやるの?」
「ちんちんは切り落とさないよ。でも・・・・というのでどう?」
と親友は初めて声に出して言った。
 
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「分かった。夫に承認を取る」
 
それで手術室の中から電話をする。夫は驚いていたが、してもらえるなら歓迎。あの子も喜ぶだろうと言った。
 
それで医師は新たに患部にメスを入れて“加工”を始めた。
 

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千里と面談していたアテンダントさんは言った。
 
「あなた、ほんとに現在は男性なんですか?」
「ええ。それで女になりたいんです」
 
「ちんちん付いてるんですか?」
「付いてますよ。睾丸はこの夏に取りましたけど」
「おっぱいは?」
「まあ結構大きいかな」
 
「完璧すぎる。とても男性には見えない」
「私を見て、男だと思った人は今まで存在しません」
 
「でしょうね!どう見ても普通の女性だし、もし出生時に男性だったとしても既に10年以上前に性転換手術済みにしかみえません」
 
「その部分だけがまだ男で困っているので、何とかしたいんですよ」
「分かりました。MTFでしたら料金も150万円くらいで済みますので」
 
「男から女になる方が安いんですね」
「まあ原理的にあるものを無くすのと、無いものを作るのとでは手術の難易度が違うので」
「そうですよね〜」
 
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「触らせてとか言われたらどうしようかと思った」
と千里はアテンダントさんと別れてから言った。
 
「まあ次はその性転換手術を受ける直前に男の身体に戻るだけだから」
と《いんちゃん》が言う。
 
「まあ女の身体ではちんちん切れないよね?」
「それはどんな名医でも無理」
 
「ところであそこのアテンド会社を選んだのは誰なの?」
「さあ。でも千里はあそこの会社使って、プーケットで手術することになっていたから。そこの病院名の手術証明書は既に持ってたでしょ?」
 
「タイムパラドックスかな」
「あまり深く考えない方がいいよ」
「そうする!」
 

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