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■娘たちの2012オールジャパン(3)

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12月28日朝。東京駅そばのバス発着場で、花見啓介は2年ぶりに母と再会した。同席した谷繁が冬子にその旨メールすると、冬子からは昨日話した通りにお願いしますという返信があった。
 
取り敢えず、両親が暮らしている板橋区内の1Kのアパートに行く。
 
「引っ越したというのは昨日聞いてたけど、こんな狭いアパートなんだ!」
「お前が放置した賠償金を払うのに、できるだけ安い所に移ったんだよ」
「ごめん!」
 
積もる話はあるだろうけど、現実的な問題が差し迫っていることを谷繁は説明した。
 
「お父さんはすぐにも入院させて手術を受ける必要があるんだけど、医療費を支払えるメドが立たないので延ばし延ばしにしている。それから例の賠償金はこれまでお父さんが毎月払ってきていたのだけど、勤務先の倒産とご病気で支払いが滞ってしまった。先方は娘さんが結婚することになったこともあって、結婚前に決着を付けておきたいから、残りは一括で払って欲しいと言っている」
 
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「うっ・・・」
 
「賠償金が払えなくて、実はサラ金に借金をしていた。その支払いが滞っているから、督促の電話が頻繁に掛かってきている」
 
「ほんとに御免!」
 

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「あんた、埼玉で働いていたのなら、そこに復職させてもらう訳にはいかないの?」
と母が言う。
 
啓介は一瞬考えたものの、それしかないと決断。すぐ元の勤務先に電話を入れた。すると元上司の課長さんが出て
 
「どこに行ってたんだ?心配したぞ。やる気があるなら今から出て来い」
と言う。
 
それですぐに母同伴でそちらに赴き、“無断欠勤”を陳謝した。課長さんは有休を使えるところまで使い、残りを欠勤で処理してくれていたのである。
 
啓介は12月8日の午前中まで勤務していて、お昼休みに外に出たあと唐突に「辞めます」という電話だけで居なくなり、今日28日は取り敢えず顔を出した。それで9日から27日まで休んだことになるらしい。その間の出勤すべきだった日数は12日である。その内10日間を有休で処理して残り2日を欠勤扱いにする。8日は早退。今日は遅刻である。
 
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それでその日からの職場復帰が決まった。同僚たちに
「申し訳ありませんでした。戻ってきました。頑張りますので許して下さい」
と謝り、その日の午後からすぐに勤務に戻ることになった。
 
「あ、そうそう。お前、ボーナスもらう前に居なくなるからボーナス渡しそこねていたじゃんか。あと、今月分の給料も渡してないし」
 
「ボーナスがもらえるんですか・・・それにお給料も?」
「そりゃ給料もボーナスももらわなかったらタダ働きじゃん」
 
ボーナスと給料はお母さんに渡し、取り敢えず滞っている支払いを頼むと言った。それでまずは不動産会社に行き滞っていた家賃を支払う。また水道代、電気ガス、電話代、国民健康保険、国民年金の滞納分も払った。しかしこれでほぼ無くなってしまった!
 
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「でも賠償金どうしよう。あとサラ金の借金も」
とその日仕事を終えて帰宅してから啓介は言った。
 
「それについては唐本が自分が一時的に立て替えておいてもいいと言っている。お母さん、サラ金とかの借金は合計いくらあるんですか?」
と谷繁は言った。
 
借金の額に関してはお母さんも不確かだったので、谷繁および冬子の代理で来てくれた、法学部に通学している木原正望の2人で調べ上げて行った。
 
「お母さん、これ以外の所からは借金してませんか?お友達とか親戚から借りているものも全部出して下さい」
 
この時点で谷繁と木原は啓介を自己破産させる手も考えていたのである。
 
それで1時間ほどで借金の額がまとまる。
 
「サラ金はどうする?引き直す?」
と谷繁が木原の顔を見て言う。
 
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「サラ金の部分は150万。金額も少ないし、借りたのがここ2年ほどで年数が経ってないから引き直しても20-30万しか減らないと思います。それでも弁護士報酬は15万くらい払わないといけないです」
 
「意味が無い気がするな」
「だったら引き直しせずに清算しますか」
「その方が良いかも」
 
サラ金以外に友人や親戚から借りたお金が200万ほどあった。また啓介が高校・大学で借りていた奨学金が大きかった。彼は高校3年間の奨学金、大学の入学準備金、大学1年の間の奨学金で合計400万円ほど借りており、賠償金の支払いを優先したことから、そちらの返済が滞ってしまい期限の利益を喪失して残額の一括返済を求められていた。
 
「すると支払うべき金額は損害賠償の残額350万、サラ金150万、友人親戚200万、奨学金400万の合計1100万円か」
 
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「じゃこれを唐本にお願いできる?」
と谷繁が木原に訊く。
 
「OKOK」
 

それで木原が冬子に電話して冬子は明日の朝1番に1100万、啓介の口座に振り込んでくれることになった。それで明日は谷繁・木原・啓介の母で借入先を回り、借金の清算をすることにした。
 
実際には冬子の顧問弁護士さんが、付き添ってくれた。
 
サラ金のカード、クレジットカードも返却して解約。また解約したサラ金屋さんには、勧誘の電話を掛けないようにして欲しいと要望をしておいた。たとえ遅延があっても完済した客にはサラ金はしつこく新たに借りないかと勧誘の電話をしてきがちだ。
 
クレカが無いと通販などで困るので、別途スルガ銀行のVISAデビットを作ることにする。これなら残高のある分しか使えないので絶対に新たな借金を作ることはない。
 
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「変な勧誘防止で、年明けに電話番号変えましょうよ」
と木原は言った。
 
「むしろ固定電話は無くてもいいかも」
とお母さん。
 
「確かに最近家電(いえでん)に掛けること少ないもんなあ」
と谷繁。
「まあ携帯に掛けるよね」
 

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レイプ事件の被害者に関しては、29日夕方に本人も連れて謝罪に行った。都内のレストランで会ったが、被害者本人は来ずご両親だけであった。啓介は改めてご両親の前で土下座し、その場で賠償金の残額を現金で支払い、解決書を作成して双方署名捺印した。それで啓介の父と相手の父が握手して、この件は解決とした。
 
そこまで話が終わった所で、啓介の母は
 
「それとこれ、お嬢さんの結婚祝いに」
と言って祝儀袋を出した。名義は母の名義にしている。
 
向こうの両親は一瞬顔を見合わせたが
「ありがたく頂きます」
と言って、向こうのお父さんが受け取った。
 

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冬子は念のため1200万円振り込んでくれていたのだが、清算に使ったお金は結局973万円であった。お母さんが持っていた残額を示した書類が古くて、実際の残高は少し小さかった。また友人や親戚の中には「そのお金はあげたものと思っている」と言って受け取ってくれなかった人もあった。
 
お父さんは現在白内障が進行しており視力が著しく低下している。実際問題として誰かに手を引いてもらわないと出歩くこともできない。また鼠径ヘルニアを抱えていて筋力を使う仕事ができない。更に糖尿も抱えている(これが最大の要因のようだ。心労が重なったことから糖尿を発症したのではと、後から谷繁と木原は話した)。
 
それで白内障と鼠径ヘルニアの手術費用に25万円程度確保させてもらい、残り202万円を冬子に振り替え戻した。それで啓介は998万円の借用証書を書くことにするが(1000万円未満にしたのは手続き費用節約のため)、金額が大きいので公正証書で作ることにさせてもらった。年明けにその手続きを進める。返済は原則として月5万・ボーナス月10万で合計年間80万ずつ12年半にわたる返済となる。但しお父さんは目とヘルニアが治ったらまた仕事を見つけて頑張って返すと言っているので、もう少し早く完済になる可能性もある。
 
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「奨学金の返済で12年を予定していたから、それがこちらに切り替わったようなものかな」
 
とお母さんは言っていた。
 

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ウィンターカップは28日まで行われていたのだが、千里はずっとローキューツの練習の方に出ていたので、22日にN高校の宿舎に顔を出しただけで試合も見に行っていない。
 
28日朝から1月1日夕方までは高岡に滞在し、1月1日夕方に東京に戻った。
 
千里が高岡に行っている間は《こうちゃん》が千里の代理でローキューツの練習に出ていたのだが、《こうちゃん》は男子なので、彼を女子の試合に出す訳にはいかない。それで高岡の桃香の実家を出てからすぐに小杉ICで高速に乗る前に彼と入れ替わって1日夕方の試合に出場した。相手は四国代表のチームだったが岬や薫に国香などといった付近を中心に運用して快勝した。センターも誠美は第1ピリオドだけに出て、後は桃子が出た。
 
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