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枕草子はこう言っている:春は曙、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて(早朝)。
岡山新鮮産業はその事実上の子会社に、姫路新鮮産業、北陸新鮮産業など広い地域の会社があることから、2007年6月付けで“西日本新鮮産業”と新“岡山新鮮産業”に上下分離し、姫路新鮮産業・北陸新鮮産業・鹿児島新鮮産業などは、西日本新鮮産業の子会社とした。またこれまでは組織的なつながりのみで資本関係の無かった北陸新鮮産業にも出資して法的な子会社にした。
留萌の村山家。
その日、武矢がNHKを見ていたら30代のニューハーフタレントさんが出演していた。
「何かこの女、男みたいな声でしゃべるな」
と武矢が言った。
「この人はニューハーフさんだから」
と玲羅。
「なんだ?あいの子か?」(酷い差別用語だ)
「そうじゃなくて男と女のハーフという意味。実際は元は男だったけど手術受けて女になったんだよ。それで身体の形は女になったけど、声は男のままなんだよね」
「男が女になるのか?」
「そういう手術があるからね。女の子になりたい男の子って多いから日本だけでも毎年千人くらいは手術受けてると思う」
「なんだ?男のくせに女になるって気色(きしょく)悪いな。そんな奴はちんぽ切ってしまえ」
「もちろんちんちんは切ってるよ。女になったんだから」
「なんだ。こいつはちんぽ切った男か」
「ちんちんはもちろん切ってるし、ちゃんと割れ目ちゃんも膣も造ってるからお嫁さんにもなれるよ」
「嫁さんになる?男のくせに気色悪い」
「元は男でもちゃんと女の形になってるから問題無いと思うけど」
「そんな化け物はちんぽと一緒に首もチョン切ればいいんだ」
「性転換して女になった人は普通の女性よりずっと女らしいというので評価高いよ。男が思う女の理想をコピーしてるからね」
「そんな奴、俺がそこの床の間の日本刀で首をちょん切ってやる」
などと武矢は言っている。
武矢がトイレに行っている間に玲羅は母に訊いた。
「前から気になってたけど、その刀、本物じゃないよね?」
「父ちゃんが昔、函館のバッタ屋で5000円で買ってきたんだけどね」
「5000円〜!?おもちゃじゃないの?」
「お前どう思う?」
それで玲羅は刀を鞘から抜いてみた。
「凄く本物っぽい。これ違反なのでは?警察にちゃんと届けないと逮捕されるよ」
「どうしよう?」
それで玲羅はrに訊いてみた。rは父が町に雑誌を買いに出た間に村山家に来て実物を見た。そもそも刀置きからして安っぽい。100円ショップにでもありそうだ、千里はその“刀らしきもの”を鞘から抜いてみた。
「うん。これ家に置いとくだけで違反になる。警察に連絡して回収してもらうしかない。実家の土蔵から出て来たとか言って」
玲羅が言った。
「バッタ屋さんで5000円で買ったのならバッタ屋さんに5000円で売れない?」
「登録証の無い刀剣は売れないよ」
「警察に登録してもらえばいいの?」
「警察が登録してくれるのは美術的価値とかのある日本刀だけ。これは見た所美術的価値も骨頭的価値もゼロだよ。そもそも日本刀でさえない」
「日本刀じゃないの〜〜?」
「日本刀なら玉鋼(たまはがね)というもので作られている。これの素材はただの鉄。鍬(くわ)とか鋤(すき)の材料。だからこれは日本刀に似たただの兇器。せいぜいヤクザさんのドス」
「うーん・・・」
「取り敢えず刃は落とした方がいいと思う」
と玲羅。
「じゃ、私が知り合いの刀工さんに頼んで刃引きしてもらうよ」
と千里。
「そうかい?お願い」
と母も言った。
それで千里(r)は勾陳を呼ぶと
「この刀の刃引きしといて」
と頼んだのである。
「なんじゃ、このできそこないの刀もどきは」
「ひどいもんだよね」
「こんなんじゃ雑草も切れんぞ」
「雑草を切ろうとしても切れなくても何かの間違いで人は斬れるかも知れないから危険除去」
「危険除去ならこの刀自体を捨てるというのに1票。燃やせないゴミとかには出せんのか」
「刀なんて捨ててたら逮捕されるよ」
「面倒くさいな」
でもそれで勾陳は砥石(といし)で刃を潰してくれた。
千里はあとで玲羅に村正を見せてあげた。
「お母ちゃんには内緒だよ」
「うん」
玲羅は刀を10cmくらいだけ鞘から抜いてみる。
「美し〜い」
「これが本物の日本刀だよ」
「あれが日本刀ですらないって分かる気がする。ちなみにこれお値段は?」
「剣道の先輩から預かってるものだけど、まあ5000万円はするだろうね」
「なるほどー。5000円と5000万円の違いか」
「本物の日本刀は安いのでも10万円はするよ」
「ああ」
6月12日、日本マクドナルドホールディングスは「百円マック」を除く全製品について全国一律価格をやめて地域別価格を導入することを発表した。早ければ今月中にも実施の方向。
6月20日。
改正建築基準法が施行された。しかし、法施行の準備不足や手続きの運用についての行き過ぎなどで思うように建築できない事態が多発。結果的に建築業界は不況に陥ることとなり、後に建基法不況と呼ばれる。
6月21日、遠駒来光の高弟のひとりであった湯元雅成は宗教団体「富嶽光辞研究会」を立ち上げることを発表した。彼はここ20年ほど河洛邑の中核に居たが、恵雨派の最大の論客でもあったので、河洛邑の中で近年大きな勢力となってきた反恵雨派にとって目の上のたんこぶであった。それで些細な問題の責任を追求される形で河洛邑から追放され、郷里の仙台に帰っていた。
彼は元々親しい関係にある恵雨に光辞のコピーを一部もらえないかと要請した。しかし光辞の原本はコピーなどのために保管場所からあまり持ち出したくない。そこで恵雨から千里に、留萌分霊のコピーを1部、彼に渡してもらえないかと要請があった。
(恵雨から紀美に電話があり、紀美がrに頼み、rからRに連絡があった)
千里Rは姫路にある(A)写しから再度コリンとサハリンにコピーを取らせ、千里自身が湯元さんの所まで届けることにした。湯元さんは現在、仙台のC神社というところの宮司をしているらしい。
積み上げられた段ボールを見て千里Rは
「さてこれをどうやって仙台まで運ぶかな」
と悩んだ。宅配便だと(邪霊の働きで)高確率で紛失されるから直接運ぶしか無い。しかし車で運ぶと姫路から仙台まで片道1日掛かる。モノの性質上、コリンやサハリンに全部お任せという訳にはいかない。自分も付いていく必要がある。
千里Rは勾陳を召喚した。
「あれ?なんでお前が来るの?」
千里はいつも姫路に常駐している5番の“疾風”を呼んだつもりだったのに来たのは2番の“雨水”である。
「今立て込んでるから頼むと言われた」
実は女の子とデート中なのである。男性器を取り上げているのに頑張るものだ。ちなみに雨水はたまたま琵琶湖に居たらしい。
「まあお前でもいいや。私とここにある箱セットを仙台まで運んで」
と言って、正確な場所は地図で示す。
「へいへい」
それで勾陳は千里と光辞の入った箱セットを仙台のC神社まで運んでくれた。
こういう力仕事ではほんとに役に立つ奴である。しかも彼は見るからに強そうだから邪霊たちに邪魔されることもなく経路上安全だった。屈強なガードマンが付いているようなものだった。
ただ従順ではなく口(くち)が悪いのとスケベなのが玉に瑕だが。
「何じゃこの神社もどきは?」
などと勾陳が言っている。
「まあこういう所は多いよ」
と千里も答える。
箱は取り敢えず社務所の玄関のところに積み上げる。ピンポンを押すと湯元さん本人が出てくる。
「おお。村山さん。留萌からはるばるいらっしゃい。ちょっと待ってて。今御祈祷の客が2組待ってるからそちらを先に片付けるから」
と言って千里は応接室に運内された。
巫女さんがケーキと紅茶を出してくれた。
(どうもここは女性スタッフは巫女も事務員も全員緋袴っぽい)
ここは
隣の待合室に幼稚園くらいの女の子とそのお母さんとお祖母さんという感じの3人が居る。
「なんか凄い悪霊憑けてますね」
「取り敢えず祓ってあげよう」
と言って千里は左足の靴下を脱ぐと右手の中指と左手の薬指で左足の中指を両側から押さえる。そして**明神の第13秘伝を起動した。
光の玉が生まれ、それは襖を通過して待合室の一家を包み込んだ。
悪霊たちの断末魔が聞こえる。それとともに3人に、特に幼稚園児の少女にたくさん憑いていた悪霊や雑霊が消えて行った。
「すげー術を見た」
と勾陳が感心している(勾陳は「こんな凄い術を使うとは、やはり千里は敵に回せん」と思った)。
「でもあの女の子、どっちみち寿命があと1年ちょっとしか残ってないよ」
「それは分かるけど少しでも長生きさせてあげたいじゃん。せっかくこの世に生まれてきたんだから」
「まあ奇跡でも起きたらあるいはね」
と勾陳(雨水)は言った。
しかしこれがこのあと80年以上付き合うことになる雨水と龍虎(アクア)の初めての出会いだったのである。龍虎は1年ほどの後の手術(*1)前夜に、今度は青の千里と出会い、雨水と一緒に空中散歩して生命の水(アクア・ウィタエ)を飲むことになる。ちなみに4年ほど前に松戸市のマンションで生き霊に襲われそうになっていた龍虎を助けたのは黄色の千里である。
(*1) 腫瘍の除去手術。陰茎の除去手術ではない!(龍虎に陰茎なんてある訳ないから除去の必要も無いよね?)
「あれ〜この子ちんちん付いてる。男の子だったのか」
「普通スカート穿いてれば女の子だと思うよな」
「でも可愛いからスカートが似合うね」
「いっそちんことか取って立派な女の子にしてあげよう。お母さんも娘ができて喜ぶよ。スカート穿かせてるくらいだから本当は娘が欲しいんだよ」
「でも本人は男の子で居たいかもしれないよ」
「ちんこも悪霊の一種だよ。よこしまな欲望を持たせて悪いことをさせる。だから祓ってあげよう」
「そうかそうか」
「ちょっと〜。なんで俺のちんこが無くなるんだよ?」
「悪霊を祓ってあげたよ。お前完全にちんちんに憑依されてたよ。よこしまな欲望だらけだったし」
「ちんこ無いとセックスできないじゃん」
「そうかそうか」
「ちょっとぉ。何だよ?これ」
「女の器官付けてあげたから、男の龍とセックスできるよ。名前も勾陳を勾満とかに変えよう」」
「こんなの嫌だよぉ。お願いです。男に戻してください。ちゃんと言い付け守ります」
「仕方無いなぁ」
それで雨水の男性器は取り敢えず戻してあげた。ついでに待合室の幼稚園児は女の子に変えてあげた。
彼はトイレに行って困惑しているようであった。それで帰宅したら男の子に戻るようにトリガーを掛けておいた。
やがて湯元さんは御祈祷を終えて応接室に来た。光辞の箱をひとつ開けて中を見る。
「これは真理さんの字だ」
「真理さんが原本から書写したもののコピーです。一部絵だけで構成されているページは私が原本から書写しています」
「分かりました。ありがとうございます」
「でも久しぶりですね。お元気そうで何よりです」
「そちらも」
このセットはその後“仙台分霊”と呼ばれるようになる。
その日、龍虎は(叔母の)支香と一緒に仙台の祖母のところを訪れていたのだが、
「憑きもの落としで評判の神社があるから」
と言われて出かけて行った。その神社では待合室で御祈祷を待っている間に何か身体がすっきりしたような感覚があった。そして帰って来てからは随分体調が良くなったので、あそこの神社、うさんくさそうだったのに(きっと正解!)本当に効いたんだなあと思った。
千里がP神社やK神社で術などを使う時は事前に大神様の許可を取っている。今回千里がそういうのをしなかったのは、この神社?には、そもそも神様などおられなかったからである!
龍虎が待合室にいた時にスッキリした感覚があったので、それからトイレに行ってみるとお股に突起物が無くなりスッキリした形になっていた。スッキリした感じはこれのせい??とも思ったが、帰宅してからまたトイレに行くと元の形に戻っていたのて、何かの夢でも見たのかもと思った。
なおちんちんは戻って来ても体調は良くなったままだったので、次の入院まで結構間隔が空いた。
でも女の子になる夢を見るとか、ぼく女の子になりたいのかなあ。でもぼくのちんちんそもそも時々無くなってて、おまたが女の子の形になってることあるしなあ、とも思う。
銭湯とか行ってて、お母ちゃん(志水照絵のこと)とか(支香)おばちゃんとかに、抱き抱えられて他のおばちゃんとかにお股見られると
「やはり女の子だったね」
といつも言われてたし。
「こんな可愛い子にちんちん付いてたら大変だよ」
「りゅうちゃん、ちんちんとか付いてなくて良かったね」
などとも言われてたよなとも思う。
龍虎は自分の性別が良く分からない気がした。
一方、高木真理は(留萌分霊とは別に)もうひとつ“一次分霊”を作るべく、光辞原本の保管場所に入り、この春から書写作業を進めている。
絵だけのページについて千里に書写してもらえないかという要請があり、千里も同意している。来年くらいに黄色に!一度行ってもらうつもりである。原本の保管場所は恵雨さんのほかは、真理さんと、この作業の助手をしている絵理さんしか知らない。真理さんが書写したものは次々と絵理さんが現地に持ち込んだコピー機でコピーも取り、また写真撮影もしている。
これは後に大阪教団が管理したので“大阪分霊”と呼ばれることになる。留萌分霊と並ぶ重要分霊である。
(A)真理(一部千里)が書写したもの
(B)この時同時にカーボンコピーしたもの
(C)その時のカーボン紙
(D)(A)のPPC
(E)(A)の写真
(H)原本の写真
光辞の原本は湯元氏も言っているが写真撮影するだけでもかなり疲労するらしい。写しの写真はそれほどでもない。
なおカーボン紙は市販のカーボン紙ではなく、千里が使ったのと同様、薄い紙に鉛筆を塗ったものなので写したものは鉛筆で書いたものと同等であり耐久性が高い。普通のカーボン紙で写したものなら10年程度しかもたない。この特製カーボン紙は日々貞美が作成して母の所に送っている。1枚10円のバイト代をもらっている。(千里が書写した時は小春が作っていた)
手元に何百万もの自由になる現金を持っていても1枚10円のバイトに精出す貞美ちゃんは偉い!やはり労働しなくちゃね。なおバイト代は実際には姉が代理で払い、貞美はもらったお金を黒招き猫の貯金箱に入れている。
光辞の分霊にはこれ以外に来光の友人で淡路井戸会を創始した丘山秀行が昭和30年代に書写した“淡路分霊”も存在するが、正確性に疑問を持つ人が少なくない。
神秘研究家の御子川慎一氏は昭和50年代に両者のコピーを入手して見比べたところかなり違うという研究結果を発表している。例えば原本には太陽に似たマークが3種類あるが淡路版には6種類あり対応が不明確という。また欠落ページや余分なページ??(淡路版オリジナル???)もあるという。ただし門外不出のはずの光辞のコピーをどうやって入手したのかは不明。
(御子川氏が“余剰ページ”と思ったものは実際は御子川氏の入手した原本コピーに脱落があったことを湯元が指摘している)
この御子川版は現在オカルト雑誌の“零”が所有しており、御子川氏の弟子の女性が読んだらしい読み下し文付きである。同雑誌の光辞に関する記事のほとんどはこの版をもとにしている。なお太陽マーク問題について恵雨さんは「全部同じ意味」と記者の質問に答えて言ったことがある。千里は紀美の質問に「聞こえてくる言葉を発音しているだけだから知らん」と言った。
なお恵雨が進めている出版計画では5年ほど前に撮影した原本の写真から版下を作成している。写真の撮影をしたのは実は湯元さんである。
出版予定の本に収録する読み下し文については、千里が朗読したテープを専門家(但し神秘学の知識のある人)に頼んでテープ起こししてもらったものに藤子が(文字に起こした本人と共同で)同音異義語の誤りなどを校正したものに、更に恵雨自身が修正をしている最中である。この作業が未完のまま自分が死んだらその時点の文で出版してほしいと藤子には言っている。
(藤子は恵雨の息子の妻であり、恵雨の第1法定相続人)