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7月14日(土)早朝。
今年も宴会の後、そのまま神社に泊まっていた(ゴロ寝していた)桜組の手で神輿が船に乗せられる。和弥が同乗し船は沖に出る。今年は同乗したのは和弥だけで、常弥はお留守番である。そして日の出と同時に和弥は神降ろしの祝詞を奏上した。
神霊の乗った神輿を浜に持ち帰り、今年もP神社の夏祭りが始まる。
神輿は町内を一周して神殿に収められる。巡回コースはC町の浜寄りの部分(俗称:表C町/旧早川ラボや杉村家別邸などがある界隈は“奥C町”という)とA町である。養殖場や新鮮産業の工場(かいわれ大根などを作っている)の近くまでも行く。留萌市の最北端付近である。
高校生巫女による巫女舞のあと、町内会長や市会議員さん、漁協の三泊支部長、留萌新鮮産業の専務さん、などによる玉串奉奠、そして幼稚園児(+小学1年生)の巫女舞が奉納される。今年はこの巫女舞に男の子も2人参加していた。女の子だけでは人数が足りなかったからである。親たちも息子たちのお化粧もしてもらった“美しい姿”に歓声をあげていた。
「小さいうちしかこんな服着せられないし」
等と言っていた(中高生になっても着せられていたりして)。
巫女舞の後は稚児衣裳の男の子たちが今朝穫れた魚を
奉納する儀式が行われる。玲羅の笛が鳴る中、和弥が祝詞奏上をした後、祭りは小休止に入る。
今年も出店は6軒出ていた。千里は今年は峠の丼屋さんと銀馬車(パン屋)を出した。小学校の児童会が出す鈴カステラ屋さんも健在である。児童会は氷で冷やしたジュース類のペットボトルも売っていた。
峠の丼屋さんは、熊カツカレー、猪カレー、(冷凍牡蛎の)牡蛎丼、かしわ丼、うま飯、牛飯などを売ったのだが今年も牡蛎丼がよく売れた。夏に牡蛎は珍しいからかも。
常弥さんから「千里ちゃん、今年もあれやって」とリクエストされたので、藁を立てて、村正で試斬りをしたら、物凄い好評だった、その後、今年も公世を召喚!して模範試合をした。
今年は公世がその後実家に行ってしまったので千里が審判して小学生剣道大会をしたが、実質N小vsJ小になり、かなり盛り上がった。今年も優勝者には木刀を授与した。材料は千里が道内の所有林から切り出させた白樺である。神戸市の木刀製作所に頼んで作ってもらった特製で「平成十九年・留萌三泊P神社」という金墨の文字が常弥の達筆な字で入っている。
その銘を見て昨年の優勝者が「僕のにも銘を入れてください」と言っていたので常弥が「平成十八年・留萌三泊P神社」と入れてあげていた。
午後からは留萌オロロン太鼓(*3) の奉納の後、近隣で活動するバンドの演奏が4件あった。各バンドに田崎さんがクルーズ船で演奏してくれないかと勧誘していた。彼女は美人なのでバンドメンバーの反応も良かったようである。
N小のブラスバンド部の演奏の後、19時からはお神楽が奉納された。
(*3) 昨年までは“留萌黒潮太鼓”と言っていたが、黒潮なんてこの辺流れてないじゃんと言われて、今年からこの名前に改訂した。
留萌近辺を流れているのは黒潮(日本海流)ではなく対馬海流である。
オロロンは北海道に固有の鳥“オロロン鳥”にちなむ。
ペンギンに似た鳥である。以前は北海道のあちこちにいたが現在は天売島にだけ棲息している。“黒潮太鼓”と最初命名したのは創始者が仙台黒潮太鼓を参考にしたかららしい。
まゆりは地元の女性たちにつかまっていた。
「奥さん、どこの出身?」
「兵庫県の姫路というところなんです」
「ああ。姫路城のあるところね」
「あなご飯が名物だ」
「よくご存じですね」
「へー」
「でもはるばるこんな北の田舎までお嫁に来たね」
「和弥さんとは皇學館の神職課程の同じゼミの出身なんですよ」
「じゃ奧さんも神職の資格あるの?」
「ええ。それでこの神社では和弥さんがNo.2の禰宜(ねぎ)で私はNo.3の権禰宜(ごんねぎ)ですけど、姫路の神社では私がトップの宮司で和弥さんが次席の禰宜です」
「ああ、留萌と姫路で上下関係が入れ替わるんだ」
「そうなんですよ」
「その内、男の子を2人産んで、留萌と姫路の跡継ぎにする予定で」
「それはいいね」
「それまでは私と和弥さんがジェット機で往復して両方の神社を兼任です」
「凄いね」
「また10月には七五三で来ますよ」
「内地は11月が七五三だよね」
「うまい具合に1月ずれるから兼任できるんですよねー」
「なるほどー」
「先月末の大祓では、朝姫路で神事をしたあとジェット機で移動して夕方からはこちらで神事をしましたよ」
「すごーい。ジェット神主だ」
「アメリカにはジェット機で飛び回る牧師さんが居るらしいけど、日本もこれからはそういう時代ですね」
「そのうちジェット機で通勤するサラリーマンとか出るよね」
「新幹線で岡山から大阪に通勤してる人ならいますよ(*4)」
「凄いというか大変というか」
「満員電車で通勤するよりは快適みたい」
「そうだろうね」
(*4) 筆者の知人に博多に自宅があり広島の会社に新幹線通勤している人がいた。この会社は元々博多の会社の子会社であった。熱海から東京に新幹線通勤している人というのはわりと聞く。
「でも、まゆりさん男らしいね」
「私小さい頃から友だちがみんな男でした」
「ああ分かる分かる」
「中学の時とかも毎年バレンタイン10個くらいもらってたし」
「ああ、バレンタインあげたくなる」
「まゆりさんが夫で和弥さんが奧さんでもいい感じ」
「私はそれでもいいですよー。揃って性転換して和弥さんが私の奥さんになってくれない?とかも言ってるんですけどね」
「そういうのもいいんじゃない?」
「それで和弥さんに男の子を2人産んでもらうんです」
「ああ。旦那に子供産んでもらえば楽でいいね」
「でも和弥さん女装が似合いそう」
「試しにスカート穿かせてみたら凄く似合ってたんでびっくりしました」
「おお。着実に夫婦交替計画は進んでいるね」
「和弥君子供の頃よく巫女衣装着せられてたけど全然違和感無かったよ」
「中学に入るときに男と女の好きな方を選べるなんて社会だったら、和弥君きっと女を選んでる」
「そういう社会なら私は絶対男になってるなあ。和弥さんに私の卵巣と子宮あげるから、和弥君のちんちんちょうだいよと言ったら悩んでましたよ」
「あと一押しだね」
日曜日はまた午前中に神輿が町内を練り歩き、昼間は民謡大会、続いてカラオケ大会があった。児童会が主催したビンゴ大会も盛り上がった(景品は留萌新鮮産業さんが提供:大当たりは東京ディズニーリゾートのチケット)。
夕方、最後はやはりソーラン節が奉納される。民謡をやっている人が10人ほど拝殿に並び歌う。参拝者が歌いながら踊り、境内は熱狂となった。そのあと、神輿を船に乗せ和弥も一緒に沖合に出る。そして日没と同時に和弥が神上げの祝詞を奏上して祭りは終わった。
千里は神上げの神事が行われている間に洞門の鏡で姫路に帰還した。和弥や公世たちは月曜日に桜ジェットで神戸空港に飛び、花絵は京都に、まゆりや公世は姫路に戻った。
ところで筆者もすっかり忘れている義浜ハイジ・裕恵の夫婦だが、2人は2006年3月に最初の子供(小夜美)をハイジが産んだが、そのあと今度は裕恵のほうが妊娠して、2008年1月が予定日になっている。本当は2人で交替で産んでいるからもっと日程が接近してもいいのだが、法的にはハイジだけが女性で裕恵は男性なので“男の出産”という面倒な事態を避けるため裕恵は「義浜ハイジ」の名前で産婦人科にかかっている。それで敢えて間隔を空けた。今妊娠中の子供も、母がハイジで父は裕恵として出生届が出されるはずである。本当はどちらも2003年12月に死亡した佐藤小登愛(玲央美の姉)の遺児である。
一般的に霊的な力は隔世遺伝するので、きーちゃんは、千里が死んだ後はこの子たちの子供と遊ぼうと企んでいる、
7月16日(月).
和弥とまゆりは婚姻によってできた新しい戸籍を提示して、最初の人工授精を行なった。遠心分離機で分離した(ほぼ)Y精子のみの精液をまゆりの子宮に投入する。
和弥は女装でこれに立ち会った。これで順調にいけば来年の4月に最初の男の子が生まれるはずである。
和弥は女装のまま宮司宅に帰宅したが、光子(まゆりの母)は
「あら可愛い」
などと言っていた。
和弥はその日の夜、女装したままコリンの車で伊勢に戻った。
なお女装で移動する場合、和弥は途中のPA等でトイレに行く時は女子トイレを使用する。まゆりもコリンも
「大丈夫ですよ。女にしか見えませんから」
と言っている。ちなみに和弥は昨年の秋祭りの時以来男女どちらの声も出るようになっている。喉仏は無くなったままだが、気にしないことにしている。
どうもこの身体は基本が女体でそれに男性器が取り付けてあるようなボディのような気がする。胸も少し?膨らんでるし!撫で肩だし、肌も白いし、腰が大きいし(赤ちゃん産めたりして)。腰が大きくて男性用のズボンが入らないので実はレディスのパンツを穿いている(スカートも穿こうよ)。
実はおかげ横丁でナンパされたこともある。
「あのぉ、ぼく男ですけど」
「そうなの?でも女装くらいするんでしょ?僕、男の娘でも行けるよ」
「女装とかしません!」
「もったいない!ぜひ女装すべきだよ。絶対可愛くなるから。ちょっと松阪あたりまで付き合わない?かぁいいスカートとかお化粧品とか買ってあげるよ」
「要りません!」
また陰嚢の後ろ、肛門の手前に何か穴があるのも気にしないことにしている。まゆりには面白がられて指を入れられたが(やはり赤ちゃん産めるね)。
ちなみに最初に指を入れられた時は痛くて血も出たが2度目からは入れられると気持ちよくなった。(つまり、まゆり君にバージンを捧げたのね)
(和弥の子宮にまゆりのY精子を人工授精すると倍速で子供が作れる気がする。まゆり君は精子くらいありそうな気がするなあ。ちんちんくらい持ってそうだもん)