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■女子高校生・秋の嵐(1)

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その日、千里が姫路のみゆき通りを歩いていたら30代の男性に声を掛けられた。
「君可愛いね。そのロングヘアが魅力的。君モデルとかには興味無い?」
 
千里はこれは絶対AVモデルの勧誘だと思った。
「すみません。急ぎますので」
と言って、先に行こうとする。ところが相手はこんなことを言った。
「思い出した。君、北海道の朝日ハウジングさんのCMに出てたでしょう?モデルハウスでフルート吹いて。あれと同じようなCMに出てくれないかなぁ。クライアントは姫路ハウジングってやはり不動産会社なんだよ」
 
千里は言った。
「確かに出ていましたけど、だからこそ同業他社のCMに出ることはできません」
「だったら朝日ハウジングさん側の承諾が得られたら出てくれる?」
「そうですね。先方の承諾があるなら」
「多分取れると思う。北海道と兵庫だし。取れたらまた話してもいい?」
 
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随分熱心だなと思った。素人の私に声掛けなくてもフルート吹ける女の子なんてごろごろ居るだろうに。
 
「また連絡するから連絡先教えてよ」
「きーちゃん?」
「では連絡はこちらへ」
と言って、きーちゃんは名刺を渡した。“株式会社トライン・天野貴子”と書かれている。
 
それでエージェント?さんはモデルクラブか何かに所属している子なのだろうと思ったようであった。
 
「ちなみにこの子の芸名は?」
「イルモで」
「へー。じゃ連絡しますね」
 
イルモって何?イルモでポン!??私マラカス(*1)用意しなきゃ! (きっとルモイのアナグラム)
 
(*1) 妖精と楽器の対応
 
ミルモ マラカス
リルム タンバリン
ヤシチ トライアングル
ムルモ 小太鼓
 
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『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!』は2002-2005年に放送された。何のCMか覚えてないが、校長先生がマラカスを持って「ミル、ミル、ミルモでポン!」と踊るCMも受けていた。(マクドナルド??)
 

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H大姫路で千里と公世はスポーツ特待生の9組なのだが、一般科目の成績が良いため通常の授業は特進クラスの1年2組で受けている(双葉は4組・清香は6組)。特進ABは夏休みの間も補習があるのでその日、千里たちは補習に出ていた。今日の科目は0時間目英語(長文読解)の後、1時間目は古文である(この後、化学・グラマー・地理・現国・数学、と丸一日鍛えられる)。今夏の古文の補習では百人一首をとりあげていた。今日最初は22番目の歌である。
 
「吹くからに秋の草木のしをるれば。むべ山風をあらしといふらむ。誰か解釈して。工藤」
 
それで公世が立ち上がって、歌の解釈をする。
 
「“むすめふさほせ”の“ふ”ですね。“からに”というのは“何何するとすぐに”という意味の接続助詞で、山から風が吹くと、すぐに秋の草木がしおれてしまうから、だから山風を“あらし”というのだろう。“らむ”は推定の助動詞。ここで“あらし”は名詞の“嵐”と“荒々しい”という意味の形容詞の掛詞であり、また“嵐”という漢字が山の風と書くのにも掛けています」
「うん。素晴らしい」
 
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と言ったところで、先生は教室内で寝ている子が居るのに気がついた。
「里中」
「はい」
 
名前を呼ばれて、里中望美は夢の世界から帰還し、慌てて立ち上がる。
 

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「今“むすめふさほせ”というのが出て来たけど、意味は分かる?」
「はい。百人一首でその文字で始まる歌はそれぞれ一首しかありません」
「その通り。該当する歌を言える?」
「えーっと、ゆっくり考えれば出てくると思います」
「ゆっくり考えていいよ」
 
「村雨の、露もまだひぬ まきの葉に、霧立のぼる秋の夕暮」
「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ」
「巡りあひて 見しやそれとも分かぬ間に、雲隠れにし夜半の月かな(*2)」
「吹くからに秋の草木のしをるれば。むべ山風をあらしと言ふらむ」
「寂しさに 宿を立ち出でて眺むれば、いづこも同じ秋の夕暮れ」
「ほととぎす鳴きつる方を眺むれば、ただ有明の月ぞ残れる」
「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の、われても末に逢はむとぞ思ふ」
 
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(*2)“夜半の月影”とする版もある。
 

教室内から歓声が上がる。望美もVサインをしている。
 
「うん。よくできました」
「ちなみに最後の『瀬を速み』の歌が大好きです」
「うん。この歌はファンが多いね。作者は?」
「崇徳上皇です」
 
「ところで元の“吹くからに”の歌の作者は文屋康秀で、彼は六歌仙のひとりなんだけど、誰か六歌仙を言える人、村山」
 
それで千里は立ち上がって答える。
 
「僧正遍昭、在原業平、文屋康秀、喜撰法師、小野小町、大伴黒主」
「よしよし。文屋康秀の息子は知ってる?」
「文屋朝康です。白露に 風の吹きしく秋の野は、つらぬきとめぬ玉ぞ散りける」
「うん。素晴らしい。百人一首には親子で選ばれている人が6組いるが、他に誰か例をあげられる?」
 
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「天智天皇。秋の田の かりほの庵(いほ)の苫(とま)をあらみ、わが衣手(ころもで)は露(つゆ)にぬれつつ」。持統天皇。春過ぎて夏来にけらし白妙の、衣ほすてふ天の香具山」
「大物で来たな」
「大物でないのが良ければ、和泉式部。あらざらむ この世のほかの思ひ出に。今ひとたびの逢ふこともがな。小式部内侍。大江山、いく野の道の遠ければ、まだふみも見ず天の橋立」
「うん。素晴らしい。それでは、親子孫3代選ばれているのは?」
 
「源経信(みなもとのつねのぶ)。夕されば門田(かどた)の稲葉おとづれて。あしのまろ屋に秋風ぞふく。源俊頼(みなもとのとしより)。憂かりける人を初瀬の山おろしよ。激しかれとは祈らぬものを。俊恵。夜もすがら物思ふころは明けやらぬ。ねやのひまさへつれなかりけり」
「パーフェクト」
と先生は満足そうだった。
 
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8月15日。千里たちは甲子園で野球の応援をしていたのだが、5回まで行ったところで、クラスメイトの里中望美ちゃんが千里の首に抱き付いた。
 
「それでなくても暑いのにやめてよ」
「千里、フルート吹けるよね」
「フルーツなら好きだけど」
「いや、君がフルートができるというネタはあがっているんだ。ちょっと顔貸せ」
「何よ」
「うちのブラスバンドのフルート担当が3人とも倒れたのよ。代わりに吹いて」
「この暑さだもんね。でもフルート持って来てない」
「倒れた子のを借りればいい」
と言って彼女は本当に倒れている子から
「貸してね」
と言ってフルートを取ると、歌口をアルコールウェットで拭き、千里に渡した。
「でも曲を知らないよ」
「有名な曲ばかりだから何とかなると思う」
 
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それで千里は渡されたパール楽器のフルート(きっと学校の備品)を持ってブラスバンドに加わった。
 
(望美は一番安そうなフルートを持ってる子から借りた)
 
それで確かに有名な曲を吹く。コンバットマーチ、軍艦マーチ、ミッキーマウスマーチ、剣の舞。オーメンズ・オブ・ラブ、宝島、エルクンバンチェロ、サンバ・デ・ジャネイロ、闘牛士のマンボ、ウィリアムテル序曲、ラデツキー行進曲、ボギー大佐、旧友、リハブリック讃歌、サウスポー(でもうちのエースは右腕!)、ポパイ、鉄腕アトム、巨人の星、ドラえもん、狙い撃ち、恋のダンスサイト、ハッピー・サマー・ウェディング、オートマチック、オリーブの首飾り、チャンピオン、タイミング、スタミナ、などなど。あまり野球に関係無い曲も多かったがいいのだろう。
 
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しかし暑い中、フルートを吹き続けて千里自身が倒れそうだった。あまりきついので、途中でジェーンと交替した(Y2は「炎天下でフルート吹くなんて無理」と言って交替拒否した)。
 

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甲子園の応援は17日もあったが、この日は最初から自分のフルートを持って行った。こんな悪環境に精密なのは持っていけないので、YFL-714 である。でも
 
「凄い。これ総銀じゃん」
と指摘された。これが千里の最初のフルートである。しかしこんな暑い場所では、かえって白銅などより、まともな音が出る気がした、(実際は銀のほうが銅より膨張率が大きいはず。こういう場所ではたぶんプラスチックのフルートとかが正しい音が出るかも)
 
しかしまあ、こういう環境の応援演奏では少々ピッチが違ってても関係無い気がした。この日も千里は様々な行進曲や流行曲、アニメの曲などを吹いた。今日も倒れそうで後半はJに交替した。
 
「ねぇ、ねぇ、フルートの子が2人辞める予定なのよ。秋のコンクールと文化祭でも吹いてくれない?」
「じゃ剣道の大会とかとぶつかってなかったら」
「よろしくー。後で日程教えるね」
 
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まあ炎天下じゃなきゃ夜梨子がしてくれるかも、と千里Jは思った。
 
 

その日、九重と清川は作った家具をいつも買ってくれているホームセンター“めでた”に持ち込んだ。机を5000円、ベッドを1.5万円で買ってもらって
「ありがとうございます」
と言って帰ろうとしていたらホームセンターの社長さんから言われた。
「いつも2人で持ってくるね。徳部さんが社長?」
「ま、そんなものかな」
 
清川よりは九重のほうが年上に見えるのだろう。
 
(九重は千里から“播磨牧場”の社長には任命されている)
 
「実はさ、うちに家具を色々納品してくれてた家具屋さんのさ、社長が亡くなって若い社員さんだけ残されて途方にくれてるんだよ。そちらで合併してあげられない?借金は無いらしい」
「借金が無いのならええよ」
と九重は気軽にうけあった。
 
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この九重が勝手に経営を引き継いだ家具屋さんは山山家具というところで、千里があらためて、きーちゃんに調べさせたが、確かに借金は無かった(のでほっとした)。山口県で山本さんが始めたので山山という。
 
しかし残されていたのは会計とコンピューター操作はできるが、家具そのものについては机と椅子がかろうじて区別できる程度の社長の息子と、釘もまともに打てない若い職人4人だけだった。
 
(うち2人は暴力事件とタバコで高校を首になった17歳と18歳だったが腕力のある九重や清川に心酔して彼らの子分にしてもらい、九重たちの便利な手駒となった)
 
千里はこの息子を名目上の社長にして、九重は“製作部長”に任命した。ここには家具の設計図は多数残されていたので、それを元に関西組を動員して家具作りをさせた。かくしてここは彼らの“積み木遊び”の場と化したのである。社長にした息子には請求業務や給与計算などをさせた。若い職人4人はニス塗りや納品などの仕事をさせた。他に女性販売員を3人雇った。しかしここの家具は「丈夫にできてる」と言われてよく売れた。売上の7割が“めでた”などのホームセンター、3割が姫路市郊外の直営店である。
 
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この直営店は家具の製作工房に隣接していて工房では九重たちの“真空飛び釘打ち?”などのワザ(曲芸?)を見ることができる。本館の1-4階が家具の展示場。5階には先代社長が手作りしたケヤキ家具の応接セットがあり、宇治茶と京菓子でもてなして商談をする。
 
家具の材料でケヤキはマホガニーにも負けない美しさがあるが、広葉樹の泣き所で使っている内に変形したり割れたりする可能性がある。↓で前橋が嫁入り道具に檜の家具を勧めたのは丈夫で抗菌作用もあり、子育てする家庭には檜が良いとされるからである。普通は値段が高くなる欠点があるが、千里の持っている林から切り出してくるので杉とあまり変わらない値段で提供できる。子供があまり入り込まない部屋に置く奧さん用、特に和服やドレス入れには通気性の良い桐箪笥を推奨した。
 
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ある時は嫁入り道具を求めて若い娘さんと両親が来たので前橋に応対させた。桐のタンス一式、檜のキッチンテーブルや水引、テレビ台やサイドボードなどを作って渡したが長く使えたようである。ずっと後にはその人の娘さんも嫁入り道具を買いに来た。最初来た親子は結婚式を挙げる場所も探していたので立花k神社を紹介し、この機会に神社には50人入る結婚式場と最大200人入る宴会場(区切れば50人単位でも使える)を万奈たちに建てさせた(料理は清香の父に頼んで母里食堂(後の母里酒家)に依頼した/司会は越智さんのコネで大阪の芸能プロの人がしてくれた)。
 
この家具屋さんの株式は前社長が全部持ってて、奧さんと息子が相続したのだが、自宅などを含めた相続遺産の相続税支払いのため、この会社の株をかなり千里に売却したので千里が70%以上を保有することになった。千里はここをミンタラHLDの子会社にした。
 
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8月19日(金).
 
慎(さくら)は数日前から下腹部に軽い痛みを感じていた。夕飯の時。姉から
「お腹おさえてるけど、どうかしたの?」
と訊かれる。
「何か2−3日前から軽い痛みがあるんだよね」
「どの辺?」
「こり辺」
「ああ。それは生理だよ」
「生理〜」
「あんた女の子になったんだから、生理ともつきあわなくちゃ。ちゃんとナプキンつけときなさいよ」
と言って姉は自分が使っている“多い日用”のナブキン(センターイン)を3枚くれた。さくらは半信半疑でそれをショーツに取り付けておいたのだが(羽根付きは面白い気がした)、果たして翌朝ナプキンは経血で真っ赤になっていた。
 
初潮おめでとう!
 
ぼくずっと女の子だったらこれ毎月くるのかなぁ。でもこれ結構辛いよーとさくらは思った。さくらは宮古先生に連絡して、この土日は剣道の練習を休んだ。さすがに男子顧問の北島先生には「生理なので」とか言うのははばかられた。なお姉が母に言って。母がボディフィットの多い日用のナプキンも買ってくれた。それでさくらは土日の2日間はそれを着けておいた。月曜からは軽い日用で済んだ。ナプキンは水曜日まで着けていた。さくらは月曜日からは剣道の練習に復帰したが、運動する時は、羽根付きを使わないとずれる!というのを認識した。女子って色々大変だ!
 
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一方、宮古先生は思った。生理があるって、さくらちゃん、性転換手術で女の子になったのではなく、元々女の子なのでは?と。
 

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万桜ホールディング配下のパン屋・銀馬車は姫路市内の駅に多数出店しているのだが、その中の8つの駅で姫路弁当というお弁当屋さんと隣り合っていた。それらの店舗で8月中旬頃、各店長が弁当屋さんの店長から打診された。
「スタッフが手薄で誰もいない時にもしお客さん来たら代わりに売ってもらえませんか」
「代わりにといっても、調理とかできないよ」
「調理しない商品だけでいいですから」
 
それで銀馬車のスタッフが、幕の内・おにぎり・お稲荷さんなど調理の必要が無いものだけを売るようにしたのである。(他にレンジでチンして詰めるだけの唐揚げ弁当も)
 
ところが8月下旬、姫路弁当の安井社長は万桜ホールディング(桜製菓)の本社を訪れると言った。
 
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「実は資金不足で、お弁当の材料を買うだけで精一杯でパートさんたちの給料を払えないんです。申し訳無いのですが、うちの店舗を銀馬車さんのスタッフさんで運用してもらえないでしょうか?」
「はあ!?」
 

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女子高校生・秋の嵐(1)

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