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■女の子たちの友情と努力(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-05-02
 
2006年春、千里は故郷の留萌市から出て、旭川市の美輪子叔母の所に下宿し、同市内の私立N高校に通い始めた。
 
元々千里の家はかなり貧乏であった。そこに漁師をしていた父が、船が廃船になって3月で失業することになり、公立高校にも行かせてやれないなんて話になっていた所で、千里のバスケットボール・プレイヤーとしての才能に注目したN高校のバスケ部の監督が、スポーツ特待生(授業料無料)にするからうちに来ないかと勧誘してくれたのである。
 
しかし高校進学に伴って千里には憂鬱な問題があった。
 
これまでの中学3年間では男子は髪を短くしなければならない所を偶然や誤解などもあった上で、神社のバイトで必要なのでという理由で、半ば誤魔化し的に、腰ほどまである長い髪を維持していた。
 
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しかし高校に進学すると、そういう誤魔化しは効かない。しかも特待生ともなれば、他の生徒の模範になることを求められる。それで千里は特待生推薦入学に関する打ち合わせの場、N高校の教頭先生と自分の父の前で、高校入学後は髪を五分刈りにしますと約束したのである。
 
ともかくも千里としてはN高校のスポーツ枠特待生の話に乗る以外、高校に進学する道は無かったので、それが確保できるなら何でも我慢しようと心に誓ったのである。
 
それでもこれから3年間の「男子高校生」としての生活は考えただけで憂鬱な気分になった。
 

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ところが千里の覚悟は、あっけなくひっくり返されることになる。
 
千里が五分刈りの頭で男子制服を着て登校すると、クラスメイトも担任の先生も
 
「なんで丸刈りなの?」
「なんで男子制服なんか着てるの?」
 
と言う。更に担任は
「君は学籍簿上は女子として登録されてるけど」
などと言った。
 
千里は、そんな頭なのに、男子トイレや男子更衣室からは「お前なんだよ?」
などと言って追い出され、結局女子更衣室や女子トイレを使うことになってしまう。体育の男女分けも女子の方に入れられていたし、身体測定や性教育も女子と一緒に受けることになるし、まだ声変わりの来ていない千里は、音楽の時間もソプラノに入ることになるし、バスケ部に入りに行ったら、副部長さんに「女子なのに男子バスケ部に入りたいの?」などと言われる始末であった。 
 
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古くからの友人の蓮菜は言った。
「だいたい、千里が中学まで男子トイレの使用を容認されていたのは、みんなが千里のことを小さい頃から知っていたからだよ。知らない人たちから見ると千里は女の子にしか見えないから、男子トイレや男子更衣室から追い出されるのは当然」
 
「だって私、丸刈りで男子制服なのに」
「千里、私がもし丸刈りにして男子制服を着て、学校に出て来たら、男子に見えると思う?」
「見えないと思う」
「それと同じことだよ」
 

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そういう訳で、千里は「男として」扱われる状況を3年間我慢するつもりで登校して行ったのに、実際は「女として」しか扱ってもらえなかったのである。千里のクラスメイトの中には、千里は『男の子になりたい女の子』と思い込んでいる子もいる雰囲気であった。
 
また、千里の生徒手帳の写真は、まだ髪を切る前の長髪で、女子制服を着て写っていたし、生徒手帳の性別欄には、女という文字がプリントされていた。写真はまだいいとして性別はまずいのではと思って担任に申告したものの
 
「特に問題無いんじゃない?」
 
などと言われて修正してもらえなかった!
 
そして、入学式の直前に千里の髪を切ってくれた、新米美容師の敏美さん(親友の留実子の兄(姉?))は切った千里の髪でウィッグを作って、持って来てくれたのであった。
 
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千里は男子バスケ部で、シューターとしての才能を高く買われ、4月下旬の地区大会に即ベンチ入りさせると言われた。千里は特に3ポイントシュートに天才的な才能を見せていたが、大きな欠点が《体力》であった。
 
「村山、40分間走り回る体力が無いな」
「最後の方は全然足が動いてない」
 
女子バスケ部でやはりベンチ入り確定と言われた留実子が
 
「千里は、中学の時も後半は走らずに相手コート側にずっと居てパスを受けてました」
などと言う。
 
それで体力を付けるのは課題として、取り敢えず今回の大会では第2ピリオドと第4ピリオドに出すと言われた。
 
「村山、課題にしてたジョギングやってる?」
と部長の黒岩さんから訊かれる。
 
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「やってます。早朝自転車で公園まで行って、そこのジョギングコースを入学式まで毎日2km。今は毎日5km走っています」
「よしよし」
 
「それやってたら1年後くらいには試合中フル稼働できるくらいの体力が付くかな」
と2年生のポイントガード真駒君に言われた。正PGは3年生の渋谷君だが、真駒君は、そのバックアップメンバーとしてベンチ入りする。
 

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この高校は進学校なので、部活の時間帯も制限されている。月曜から金曜までの授業終了後から18時まで(バスケ部・ソフトテニス部・野球部・スキー部のみ特例で19時まで)が練習時間帯で、それ以外の時間や休日の活動は(大会参加などの場合を除き)原則として禁止である。
 
それで部活に入っていて、大会も目前とはいうのに、千里は4月15-16日の週末をのんびりと過ごすことができた。
 
新しいクラスで仲良くなった鮎奈(上川町出身)、千里の小学校の時以来の友人である蓮菜、それに鮎奈と仲良くなった京子(稚内市出身)と4人で参考書の物色を兼ねて町に出た。
 
留実子も誘ったのだが用事があると言っていた。恐らくは同じ市内の旭川B高校に入学した、彼氏の鞠古君と会うのではと千里は想像した。
 
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千里は学校外で友だちと会うのなら、こちらでいいかなと考え、N高校の女子制服を身につけ、敏美さんに作ってもらったロングヘアのウィッグを装着して出かける。出かけ際に美輪子叔母さんが
 
「おぉ、その格好が本来の千里ちゃんだ」
などと言われた。
 

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待合せ場所の商業ビル入口の所に行くと、自分と同様にN高校女子制服を着た鮎奈が居たので手を振って近づく。
 
ところが向こうはこちらを認識できない感じ。
 
「おはよー」
と声を掛けたが、鮎奈は額に手をやり、目を細めてこちらを見る。
 
「えっと・・・誰だったっけ?」
「え?私、千里だけど」
 
「何〜〜〜〜〜!?」
 
鮎奈はミッフィーのトートバッグからメガネケースを取り出すとそれを掛けてマジマジと千里の顔を見る。
 
「ほんとに千里だ!」
「ほんとじゃなかったら、私偽物?」
 
「いや、この格好だともしかして、千里、生徒手帳の写真とそっくりじゃない?」
「ああ、そうかも」
と言って、千里は生徒手帳を取り出し最後のページを開く。
 
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「おお、写真と実物が同じだ」
「本人確認に問題が無いよね」
 
「この髪は?」
「入学前に切った髪で作ってもらったウィッグ」
「じゃ、自分の毛なんだ?」
「うん。ずっとこの髪でやってきたから、自分としてもこのくらい髪がある方が落ち着く」
 
「千里は丸刈りでも女の子にしか見えないけど、まあこういう髪の方が余計な摩擦は生じないかもね」
 

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そこに蓮菜がやってくる。
 
「おお!ロングヘア美少女の千里が復活してる!」
と嬉しそうな声をあげる。
 
「どうしたの?毛生え薬でも掛けた?」
「毛生え薬で1日でこんなに伸びたら、それ怖いよ。これは入学前に切った髪で作ってもらったウィッグ」
 
「なるほどー。千里、この髪で学校に出ておいでよ」
「いや、丸刈りで登校するという教頭先生との約束だから」
「そんな約束、教頭ももう忘れているか後悔しているかのどちらかだよ」
 
更に京子がやって来て
「誰だっけ?」
と訊く。
 
「千里だよ」
と言って、千里の生徒手帳の写真を京子に再度見せる。
 
「写真の人物だ!」
と言って京子も嬉しそうな声をあげた。
 
「でもその制服は?」
「実は持ってた」
「ほほぉ」
 
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「じゃ、この髪でこの制服で登校してくれば良いよね」
と3人の意見が一致した。
 

取り敢えず、そのビルの中にあるロッテリアに入る。書店で参考書を探すのが目的だったはずであるが、まずはドリンクとみんなでシェアするポテトを頼んで、ひたすらおしゃべりである。やはりこの時期はクラスメイトの噂話が出る。
 
「千里と蓮菜と留実子が学年男女全員の前で赤裸々な体験を告白しちゃったけど、他にもけっこう恋愛している子いるみたいね」
 
「**ちゃんも**高校に彼氏がいるらしい」
「**ちゃんは札幌の公立高校に進学した子と付き合ってるんだって」
「**ちゃんの彼氏は、うちの高校の3年生らしいよ」
 
どれもみんな本人が「内緒でね」などと言って打ち明けた情報っぽいが、女の子たちの情報網では「内緒にしといて」と言うことで拡散速度が上がる仕組みになっている。
 
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「でもうちの高校、私立にしては学費が安いから、どうかした私立と違って、お嬢様って感じの子がいないよね」
 
「ああ、私もそれちょっとビビってたんだけど、入ってみて安心した」
「みんな庶民っぽい」
「ブランド物のサブバッグ持ってくるような子居ないし」
「私のこのトートなんて、フジパンの点数集めてもらったやつだし」
 

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結局ロッテリアで2時間おしゃべりしてから
 
「お腹空いたね」(!?)
 
などと言って、ミスドに移動し、飲茶のセットを頼んで、それを食べながらまたおしゃべりである。そろそろ参考書を買いに来たことは忘れられつつあった。
 
夢中になっておしゃべりしていた時
「コーヒーのお代わりはいかがですか?」
 
と言ってスタッフの女の子が回ってきた。
 
「あ、お願いしまーす」
と言って、お代わりをもらう。
 
千里はそのスタッフの女の子が凄く若いことに気付いた。
 
「高校生さんですか?」
と訊いてみる。
 
「ええ。E女子高ですよ」
「へー」
「進学校なのにバイトOKなんですね?」
「全体で50位以内に入っていれば2年生まではバイトOKなんですよ」
 
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「あれ?うちはどうなんだっけ?」
「進学コース・特進コース・音楽コース以外は、特に変なバイトでない限りは認められるみたいだよ」
「私たちは駄目か〜?」
 
千里たちの5組と両隣の4組・6組はその進学コース・特進コースの生徒が集められたクラスである。音楽コースの子は3組にいるが、特進より忙しいようである。放送委員で一緒になった麻里愛が宿題が凄まじいなどと悲鳴を上げていた。
 
スタッフの女の子は一礼して他のテーブルに行く。
 
「ただ、経済的な困難とか、親の事業の継承者になっているとか、その子の作業が他で代替できないような場合だけは許可されるらしい」
 
「ほほぉ」
「以前、小さい頃から凄腕の占い師として活動していた子はその活動を許可されたらしい。でもアイドルグループのオーディションに合格した子は学校辞めるか、アイドル辞めるかどちらかと言われて、結局退学したらしい」
 
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「占い師は良くて、アイドルは駄目なんだ?」
 
「アイドルの代わりなんて、いくらでもいるからね」
「占い師と言っても、多分、そこら辺の占いハウスに居る程度の人なら駄目なんじゃないかな。その人は凄い霊感の人だったらしいから。今は東京の方で活動しているけど、1件10万円くらい取るらしい」
 
「ひゃー」
「いや、そのくらいの料金にしておかないと、依頼者が殺到してさばききれないんだよ。その人、1日に1件しか占わないと言うし」
 
「ああ、10分単位で次から次へと客をこなす人は実際問題として、そのペースでは絶対にまともには占える訳無いもん。ただのお話し相手」
 
と京子が言う。千里は、京子の知り合いに割と本式の占い師さんか霊媒師さんでも居るのかなと思った。占いや降霊というのは作曲や絵を描いたりという作業に近いものなので、10分単位で次々と絵が描けるか?作曲ができるか?と考えると、占い品質と占える量の関係は分かる。もっとも千里はその10分単位の占いを留萌の神社でやっていたのであるが、それができたのは、実は普通の占い師には無い、ある秘密兵器があったお陰である。
 
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誰が相談しても似たようなことしか言わない占い師さんと、どの曲を聴いても同じに聞こえる作曲家もまた似たようなものである。千里は若い内にできるだけ色々な経験を積み、色々な本を読んで「自分の引出しを増やせ」と、占いの先生である細川さんに言われていた。
 
「そういえば、千里も占い師だよね?」
と蓮菜。
 
「うん。でも田舎でやってたから、1日にせいぜい3〜4件だったよ。私も10分や15分単位で占えと言われたら自信無い。絶対前の依頼と混線する」
 
「あれ?もっとお客さんいなかった?」
「日によってはね」
 
と千里は言っておいた。蓮菜も深くは追求しなかった。
 

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