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■女の子たちの友情と努力(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-05-03
 
X線撮影の後は、レントゲン車内でいったん服を着てから保健室に入る。ここで1人ずつ、また脱いではお医者さんの診察を受ける。
 
こちらではみんなの前で脱ぐのはキャミまでで、ブラはスクリーンの向こうに行き、お医者さんに診てもらう直前で良い。
 
名前を呼ばれて千里がスクリーンの向こうに行くと、鮎奈が診察が終わって、ブラを着けようとしている所だった。軽くお互いに手を振る。千里がブラを外す。お医者さんの前の椅子に座る。
 
「君、バストの発達が遅いとか言われたことない?」
「あ、はい。それでエストロゲンとプロゲステロンを処方されたこともあります」
と千里が答えると、もうスクリーンの向こうの方に行こうとしていた鮎奈がそれを聞いて「なるほどー」という感じの顔をした。
 
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「ふーん、婦人科とか受診してみなくていいかな?」
「あ、大丈夫ですよ。私の姉も高校に入る頃までは、ほんとに真っ平らな胸だったのが、高校になってから発達し始めて、今はCカップですから、発達が遅い家系なんだと思います」
などと千里は言う。
 
「ああ、だったら大丈夫かな」
と医者は言い、それから胸や背中に聴診器を当て
 
「はい、OKです」
と言った。
 

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後で鮎奈から訊かれる。
 
「千里、お姉さん居たんだっけ?」
「いないよ」
「でもさっき、お姉さんがどうのって」
「てきとー」
「うーん。。。。千里って平然と嘘がつけるんだ?」
「まあ、女の子って割とそうじゃない? 特に男の子の前では」
「確かにお医者さんも男だったね」
 

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「でも、千里がなぜ女の子に見えちゃうか、そしてみんな女の子として付き合えるかが今日は分かった気がする」
 
と教室に戻ってから梨乃が言った。
 
「何の話?」
と数人の女子がそちらを見る。
 
「いや、みんな千里を健診に連れていく時は、裸になった時点で咎められて、千里がどんな言い訳をするか見てみたいって少し期待してた面もちょっとあったじゃん」
「うん、まあ少し不純な動機はあったよね」
 
「だけどX線技師さんも、お医者さんも、千里を見て男の子である可能性を全く考えもしなかった雰囲気だった」
「そうそう、女の子と信じ切ってた」
 
「それはさ。千里って、自分自身が女であると信じている。そして自分が女であることに自信を持っている。だから、こんな頭で男子制服着てても、女にしか見えないんだよ」
「ほほぉ」
 
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「だから千里って、たぶんオールヌードにして、おちんちん確認したりしない限り、男の子には見えないだろうね」
と梨乃は言った。
 
それでみんな頷いていたのだが、留実子はこんなことを言う。
 
「それが千里のおちんちんを見たことのある男子も女子も存在しないんだよ。それどころか、千里は女湯に何度も入っている疑惑がある。更に、彼氏とHした時も、彼氏にそれを見られてないらしい」
 
「・・・・・」
 
「ね、千里、実は本当に女の子だってことは?」
「うふふ」
 

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その週の土曜日、特進クラスのみに行われている午前中の授業が終わった後、数人の女子で市の図書館に行って、ついでにお花見でもしようという話になる。
 
「千里も来るよね?」
「行くよー。あ、でもちょっと待って。街に出るなら着替えてくる」
「ん?」
「着替え??」
 
ということで5分ほどの後、千里が
 
「お待たせー」
と言って教室に戻ってきたのを見て、みんなが沈黙する。
 
「誰?」
という声があがる。
 
「いや、千里だよ」
と京子。
 
「千里なの〜〜〜!?」
「何か変?」
「いや、変じゃない」
「というか可愛い」
「というかむしろ普段の千里の方が変」
「あ、言えてる、言えてる」
 
千里はロングヘアのウィッグを付けて、女子制服を着ていた。
 
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「あのさ、千里真剣に訊きたい」
と鮎奈が言う。
 
「こないだ蓮菜たちと一緒に街に行った時も千里、その服を着てたけどさ、もしかして千里、いつもその制服を持ってるの?」
 
「うん。いつもスポーツバッグに入れてるよ。今代わりに男子制服の方をスポーツバッグに入れた」
 
「ウィッグも?」
「うん。いつも持ってる」
 
「持って来てるなら、着ればいい!」
と数人の女子から声が上がった。
 

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「千里、肩より下まである髪は、結んでないと校則違反だよ」
「あっそうか。じゃ、結ぶね」
 
「あ、どうせならツインテールにしない?」
「あ、それも面白そう。千里やってあげるよ」
 
と言って、孝子が千里の髪をふたつに振り分け、セーラームーンのようなツインテールにまとめてくれた」
 
「可愛い!!」
という声が上がる。
 
「やはり髪が長いと、どうまとめても可愛くなるのかも」
「千里、この長さまで伸ばすのにどのくらい掛かったの?」
 
「多分5年は掛かってるよね?」
と蓮菜が言う。
「そうかな?」
 
「千里は小学4年生の頃はまだ肩くらいの長さだったんだよ。それが小学校を卒業する頃は胸くらいまでにして、中学の卒業式の頃は腰くらいの長さだった」
 
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「蓮菜、よく覚えてるね」
 
「伸びるのにそんなに掛かるんだ?」
「毛先の方はどうしても痛むから、けっこう切ってるんだよね。だからあまり痛んでない髪で伸ばすのには時間が掛かる」
 
「なるほどー」
「それにこのウィッグを作る時に根元側は改めて揃えてるだろうし、毛先もまた切ったろうから、この程度の長さなんだよね」
 
「むしろ腰まであった時は自分で邪魔じゃなかった?」
「うん。トイレも大変だった」
「あ、確かに和式とかは辛いよね」
「昔の平安時代の女の人とか、トイレの時はどうしたんだろ?」
「お付きの人が持ってあげるとか?」
「それも恥ずかしいなあ」
「誰か研究してみて」
 

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それでみんなで下校していたら、1年1組の伊勢先生(数学担当)と出会う。
 
「先生さようなら」
と言って、通り過ぎようとした時
 
「あれ?」
と先生が言う。
 
「そのツインテールの子、誰だったっけ?」
 
少し顔を見合わせる。
 
「これ校則違反になりますか?」
「いや、結んでるから問題無いけど。私、1年生の女子生徒の顔はだいたい覚えていたつもりだったんだけど・・・・」
 
「村山千里ですよー」
「えーーーー!?」
 
「あ、済みません。みんなと市立図書館に行くので着替えました」
と千里。
 
「先生、校内では制服か体操服を着ておく規則だけど、千里ちゃんと制服を着てるから違反じゃないですよね」
と孝子が尋ねる。
 
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「うん、違反じゃない! ってか、千里ちゃん、女子制服持ってるんだ?」
 
「はい。時々着てます」
「でもその頭は?」
「ウィッグです。私、入学前はこのくらい長い髪だったんですよ。だから、生徒手帳の写真もこんな感じで写ってるんですよね」
 
と言って千里は生徒手帳を見せる。
 
「ほんとだ! あれ、でもこの写真、女子制服で写ってる」
 
「あ、それ、千里の長い髪を見て、先生が女子だと思って、女子の写真撮影場所に誘導しちゃったらしいですよ」
 
「まあ、これ見て、男子とは思わないよね!」
と先生は言ってから、少し考えるようにして
 
「千里ちゃん、普段の授業も女子制服で受けたら?」
などと言う。
 
「賛成!」
という声が多数あがった。
 
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市立図書館では各自好きな本を探す。何人か貸出カードを作って借りている子もいた。千里もあちこち見ていて、天文学の本に関心を持ち、借りようと思う。それでカウンターに持って行って
 
「初めてなんですが、これ借りたいんですが」
と言った。
「高校生かな?生徒手帳持ってる?」
「はい」
と言うので見せる。写真と見比べている。それで貸出カードを作ってくれた。
 
《村山千里・15歳・女》
とプリントされていた。
 
「貸出カードの有効期限は1年なので、毎年更新してください。更新時にまた生徒手帳が必要です」
「分かりました。ありがとうございます」
 
それでその貸出カードと本に貼られているタグをスキャンして貸し出してくれた。
 
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「千里、今日はその格好で良かったね」
と孝子から言われる。
 
「ああ、坊主頭だったら、この生徒手帳違うと言われてたね」
と梨乃。
 
「千里は、それ学校の図書館で言われたんだよ」
と鮎奈が言う。
 
「へー。それで借りられなかったの?」
「ううん。これ写真が極端に違うけど確かに本人です、と私が証言したから借りられたよ」
 
「ああ」
「ついでに『性転換したんです』と言ったら図書委員の子、納得してた」
「納得するのか!?」
 
「でも性転換って、男から女になったのか?女から男になったのか」
「難しい問題だなあ」
 
「だけどそれなら誰か付いてないと、借りられないね」
「丸刈り頭の子と、このロングヘアの子が同一人物とは思わないだろうからなあ」
 
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公園は桜が満開だった。
 
お団子が売ってたのでみんな1本ずつ買って食べながら桜を見る。
 
「私、北海道の春、結構好きだなあ」
と花野子が言う。
 
「花野子、どこの出身だっけ?」
「生まれたのは九州の熊本なんだけど、まだ2歳くらいの頃に東京に引っ越して。それから小6の時に札幌に引っ越してきたんだよ。子供だからたくさん雪があるのが嬉しくて」
 
「ああ、大人は大変だけど、子供は嬉しいよね」
 
「東京の春は3月から5月上旬までゆっくりと過ぎていくけど、北海道の春は5月になってから慌ただしく過ぎていく。時間が凝縮されている感じで、凄い速度で季節が動いて行くのが心地良い」
 
「で6月に猛吹雪になったりする」
「そそ。夏と冬が入り乱れてる感じであれも面白い」
 
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「私は北海道から出たことないから分からないや」
 
「あれ?花野子、札幌の中学出たんだっけ?」
「うん」
「なんで旭川の高校に?」
「親元から離れたかったから」
「うむむ!?」
 

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「でもまあ、親元から離れたかったのがここに来た理由って子は結構いるんじゃない?」
 
「ああ。私も。私、お母ちゃんと元々折り合いが悪いんだよ。いつも衝突してた。全てにおいて考え方が違うんだ。もう我慢できなくて」
 
「まあ親子で相性がいいとは限らないからね」
 
「私は父ちゃんが飲んだくれでさ。毎晩酒飲んで暴れるんだよ。母ちゃん残して家を出るのは気が咎めたけど、もう私がもたなかった」
 
「私は親というより兄と離れたかったから。親が何かと兄貴優先で。何か買うものがある時も兄貴は買ってもらえるのに、私はお金がないから我慢しろと言われてた。自分はここにいたら、ずっと2番目の子供でしかないと思ったから、家を出たかった」
 
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「なんか家庭的な問題かかえてる子多いなあ」
 
「特進に来る子ってそうかもよ。何かコンプレックスやストレス抱えてるから、それを勉強にぶつけるんだよ」
 
「まあ健全なぶつけ方だね」
「不良になるのと紙一重だろうけどね」
 
「いや、みんな凄いな」
と鮎奈。
「私なんてただ単に都会に出て来たかっただけ」
 
「まあ、そういう子も結構いるよ」
と蓮菜が優しく言う。
 
「千里も親から離れたかったタイプだよね」
「うん」
「千里の場合は、女の子になるためでしょ?」
「うん。でもそのために髪を切らないといけなかったのは大きな矛盾点だけどね」
 
「いっそ高校在学中に性転換しちゃいなよ」
「したいけど、手術代を確保できない」
「あれ、高いんでしょ?」
「純粋な手術代で100万円かな」
「高校生のバイトでは稼げそうにないなあ」
「学割無いのかなあ」
「それは聞いたことない」
 
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「やはり援交とかでもしない限り無理だよね」
「そんなのバレたら即退学だよ」
「リスクあるなあ」
「私、病気とかのリスクの方が怖い」
「うんうん。遊んでる男の人は病気に感染している確率高そうだしね」
 

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