広告:わたし、男子校出身です。(椿姫彩菜)
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■女の子たちの友情と努力(2)

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ミスドでのおしゃべりも長時間化し、
「ね?お腹空かない?」
などという声が出始めていた頃、千里は目の端を見知った顔が横切ったのに気付き、ドキっとした。
 
向こうは男子3人のグループである。千里はできるだけそちらに視線をやらないように気をつけていたのだが。。。。
 
その男の子はハッとしたような顔をして、席を立ち、こちらに寄ってきた。
 
「済みません」
と声を掛けてくる。
 
「あ、青沼君!」
と先に蓮菜が反応した。
 
千里は大きく溜息を付いた。
 

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「何? 何? 蓮菜の彼氏?」
と鮎奈が訊いたが
 
「千里の彼氏だよ」
と蓮菜は言う。
 
「おぉ!」
という声が上がる。
 
「やっぱり千里だ!」
と晋治が言う。
 
「ご無沙汰ー」
と言って、千里も笑顔で晋治を見た。
 

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「千里、髪切ったんじゃなかったの?」
と晋治が訊く。
 
高校入学に伴い、とうとう長い髪を切ることにしたことはお正月頃に晋治と電話で話した時に言ってある。
 
「切ったよぉ。でもこれはウィッグ」
「へー。でもそれ女子制服だよね?」
 
「ああ、男子制服がスカートってことはないよね」
と蓮菜が言う。
 
「じゃ、千里、女子制服で通学してるんだ?」
「ううん。男子制服だよ。でも女子制服も持っているんだよ」
 
その女子制服をくれたのは他ならぬ晋治の姉・静子なのだが、静子はその話を晋治にはしていないようである。
 
「青沼君、千里は確かに丸刈り頭にして、男子制服を着て通学しているけどさ。誰も千里を男子生徒とは思っていない」
と蓮菜が言う。
 
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「ああ、男子生徒を主張しているのは千里本人だけだよね」
と京子。
 
「トイレも男子トイレから拒否されて女子トイレ使っているし、更衣室も男子更衣室から追い出されて女子更衣室使っているし、体育はそもそも女子と一緒だし、だいたい生徒手帳で性別は女と印刷されてるし」
と鮎奈。
 
「えーー!? その生徒手帳、見たい」
 
それで千里は制服の内ポケットからそれを出して晋治に見せる。
 
「おぉ!」
と晋治か何だか喜んでいる。
 
「千里、生徒手帳の写真が、長髪・女子制服なんだから、短髪・男子制服で人前に出たら、この手帳違いますって言われるよ」
と晋治。
 
「ああ、それは絶対そういう話が出てくる」
と京子。
 
「既に学校の図書館で言われてた」
と鮎奈。
 
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「なるほどねぇ」
と晋治。
 
「やはりそういう問題を起こさないためには、この髪で女子制服で学校に出てくるしか」
と蓮菜。
 
「うん。琴尾の意見に賛成」
と晋治は言った。
 

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千里が携帯を持っていることに気付いた晋治が電話番号とメールアドレスを交換しようというので、千里はあまり気は進まなかったのだが交換しておいた。
 
「じゃ、また」
と言って晋治は友人たちの所に戻る。
 
「ね、ね。今のが千里がHした相手?」
と京子が小声で訊く。
 
「ううん。今の子とは3年前に別れたんだよ。今はただのお友だち」
「じゃ、別の彼なんだ?」
「でもそのHした子とも、この春に別れたんだよ。別れの記念に1回だけHした」
 
「あのさ、あの視聴覚教室ではさすがに訊けなかったけど、千里、彼氏とHする時って、どこ使うの?」
と鮎奈が訊く。
 
「内緒」
と言って千里は微笑む。
 
「もしかして、うしろの方?」
「ううん。私、そこ使うのは抵抗ある」
 
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「もしかして、やおい穴とか?」
「そんなのあったらいいね」
 
「千里、もしかしてヴァギナがあったりしないよね?」
「内緒」
 

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「ね、ね、相手の子は千里のPをいじってくれたりするの?」
「そんなもの絶対に彼氏には見せない」
 
「・・・・・」
「見せずにHできるの?」
 
「だって、私が恋愛する相手って、普通の男の子で、恋愛的にはストレートだから、普通の女の子が好きなんだよ。私にそんなもの付いてるのを見たり偶然にも触ったりしたら、萎えちゃう。私のことをひょっとしたら普通の女の子なのかも、と夢見てくれているから、私を恋人にしている。その夢を壊しちゃいけないもん」
と千里は言う。
 
「要するに、詐欺か」
と蓮菜。
 
「そうかも」
「女の子かも?詐欺だね」
「うんうん」
「あるいは、おちんちん無いかも詐欺」
「そうそう」
 
「だけど、Hする時は千里パンツ脱がないの?」
と京子が疑問を呈する。
 
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「お互い真っ裸だよ」
 
「・・・・・」
「ね、もしかして千里、詐欺じゃなくて、マジおちんちん無いとか?」
「内緒」
 

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月曜日、学校に出て行くと、留実子が私と蓮菜だけに話したいことがあると言うので、図書館棟の向こうの芝生に行った。昼休みなどにおしゃべりする時は、中庭の噴水のまわりが人気なのだが、この図書館の向こう側は道路に面しているので、噴水の所以上に会話が漏れにくいのである。
 
「土曜日にね。私、しちゃった」
と留実子は、珍しく頬を赤めながら、蓮菜と千里に言った。
 
「鞠古君と?」
と蓮菜が訊くと、留実子は恥ずかしそうに頷く。こんな可愛い留実子はめったに見られない。いつも留実子は漢らしくて、堂々としている。
 
「立ったんだ?」
「うん。立ったんだよ。本人も自信無いって言ってたんだけど、フェラしてあげたら、結構堅くなるからさ、これ、もしかして入れられない?とボクが言って。それで試してみたら、何とか入ったんだよ」
 
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「ほほぉ」
「コンちゃんは付けてるよね?」
「うん。付けてあげたよ」
「ほほぉ」
「射精はできたの?」
「そこまではまだ無理みたい。そんなに堅くないから途中3回も外れてまた入れ直したけど、最後は逝く感覚はあったみたい」
「かなり回復してるよ、それ」
 
鞠古君は中1の時に、おちんちんに腫瘍ができる病気で、そこを切って前後をつなぎ合わせる大手術を受けている。その後、再発防止にずっと女性ホルモンの投与を受けていたのを、昨年の春に投与終了した。そして再発する気配が無いので、ホルモンバランスの回復のため秋口から男性ホルモンの投与を開始した。それで2月頃の時点で、けっこう大きく熱くなるとは言っていたのだが、その時点ではまだ堅くはなっていなかったらしい。それが、とうとう入れられるくらいまで堅くなるようになったのだろう。
 
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「彼、どうだった?」
「ボクとしたの3年ぶりだからさ。そのことを感動して欲しかったけど、むしろおちんちんの回復に感動していた」
「まあ、いいんじゃない」
「Hより、おちんちんの方がきっと大事」
「男の子って、おちんちんで生きてるみたいなもんだもん」
「男の子は実はおちんちんの付属品ではないかという説もある」
 
「彼、おっぱいはまだあるの?」
「あるよ。でも1年前からすると、縮んでるね。去年の春の時点ではBカップサイズあったんだけど」
と留実子が言うと
「羨ましい!」
と千里が言う。
 
「今はもうAカップサイズより少し小さいくらい」
と留実子。
「ああ、すると千里よりは少し大きいくらいかな」
と蓮菜。
 
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「その胸、分けて欲しいなあ」
と千里が率直な感想を言うと
 
「分けてあげようか?」
と留実子が言う。
 
「へ?」
「これあげる」
と言って、留実子が何か小さなバッグを渡す。
 
「このバッグごとあげるよ。これうちのお母ちゃんがパチンコで当てたバッグだし」
「パチンコでバッグも当たるんだ?」
「いろいろあるみたいだよ。よくお菓子取ってきてたけどね」
「ほほぉ」
 
「で、この中身は?」
「その箱に名前が書いてあるでしょ?」
 
千里はバッグの中に入っている箱を出してみた。大きな箱には EQUIN, 小さな箱には DB-10 と書かれている。
 
「これ、もしかして・・・・・」
 
「トモがさあ、中2の頃に、本当は飲まないといけなかったお薬を結構サボってたんだよ。あまり女性化したくないってんで。本来飲めと言われていた分の半分も飲んでなかった」
 
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「ああ」
 
「自分のうちに置いてたらサボってるのバレるから、ボクが代わりに隠しておいたんだよ。でもボクにも用事が無い薬だから。これ多分いちばん欲しいのは千里だよなと思って」
と留実子。
 
「でも千里、自分で女性ホルモン調達してるよね?」
と蓮菜が訊く。
 
「してない、してない。そんなルート無いよ」
「でも女性ホルモン飲んでるんでしょ?」
と蓮菜は言う。
 
「だって、千里の胸、多分AAカップくらいあると思う。ちょっと触らせて」
と言ってあらためて蓮菜は千里の服の下に手を入れてバストを触った。
「いや、これAカップ以上あるかな?」
 
「まわりのお肉を集めてブラで支えてるから。ブラはBカップ着けてる。でもホルモンは偶然入手したのを少しずつ飲んでたんだよ。実は元旦に飲んだのが最後でその後は飲んでない」
 
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「それだったら、なおさら、あげるよ」
「もらっておこうかな」
「それ飲み方は知ってる?」
「うん、分かるよ。ありがとう」
 

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その週はやはり、4月29日の大会に向けて、バスケットの練習に熱が入った。特進組は7時間目まで授業があるので、部活は16時すぎからになってしまうのだが、その限られた時間で頑張って練習したし、帰宅してからも晩御飯の後で近くの公園に行ってドリブルの練習などを自主的にしていた。
 
(女の子がひとりで夜の公園に居たら危ないと言われて、美輪子おばさんも付き合ってくれた。ついでにパスの練習相手にもなってくれた)
 
そして大会はやってきた。まずは地区大会である。
 
試合前の練習では、ひとつのコートで、男子先発組vs控組、女子先発組vs控組で入り乱れて試合形式で練習する。千里は男子控組、留実子は女子控組でこの練習に参加していたが、チーム識別のため、控組は鉢巻きをしていた。
 
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ところがしばしば、女子の控組から千里にパスが来てしまうことがあり、パスした側も、パスした後で「あっ」などと言っていた(取り敢えず誰か別の女子控組にパスを返した)。
 
「次からは男子と女子は鉢巻きの色を変えた方がいいね」
などと女子部長の蒔枝さんが言ったが
「村山はむしろ女子組でもいいかも」
などと男子副部長渋谷さんは言う。
 
「でもこれ、うちの練習を見ていた他の学校の人は《女子控組に凄いシュートの巧い子がいる》と思ったかもね」
「超ショートヘアの女子は目立つよね」
 
「やはりボク女子に見える?」
「何を今更」
 

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それで練習が終わってから、留実子や同じ1年女子の暢子から
「千里、トイレ行くよ〜」
などと言われて結局女子5人で一緒にトイレに行く。この暢子が千里と一緒にバスケ部の女子特待生枠で入った子である。長身で留実子と並ぶとほとんど身長の差が無い上に、ひじょうに器用なプレイをする子だと千里は思った。
 
「でも私ともうひとりの特待生はどんな子かなと思ってたら、実は男の子だというのでびっくりしたよ」
などと暢子は言う。
 
「ごめんねー」
「でもさ、千里、1年生の内は男子の方で揉まれて力を付けてさ。2年生になる前にちょっと手術して本当の女の子になって、今度は女子の試合に出てくれたりしたら、うちのバスケ部全国優勝できるかも」
と同じ1年の寿絵が言う。
 
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「うむむ」
 
「おお、それは新しい意見だ。千里、ちょっと検討してみてよ」
と暢子。
 
「心情的には手術したいなあ」
と千里も言う。
 
例によって女子トイレの中は列ができているので並ぶ。並びながらおしゃべりは続く。
 
「だけど特待生って大変だね。勉強も気を抜けないでしょ?」
 
と寿絵は言う。彼女は特待生ではないのだが、成績が優良であることを条件に奨学金を受けている。いわば準特待生のようなものである。留実子も奨学金を受けているが、彼女の場合は経済的な問題で奨学金が支給されている。ただし留実子にしても一定以上の成績キープが求められている。
 
「うん。先輩に聞いたけど、入学時に特待生だった子で、3年間特待生で居続けられるのは2割らしい」
と暢子。
 
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「スポーツや芸術の特待生の場合、授業料全免のためには毎学期毎の振り分け試験で20位以内、半免には50位以内に入ってないといけないからね」
 
振り分け試験は本来は特進・進学コースとその他のコースを振り分けるもので特進は50位以内、進学は100位以内に居ることが必要である(外国語コース・音楽コースも100位以内が必要)。つまり特待生はスポーツや芸術で活躍しつつ特進に居られる程度の成績維持が求められる。
 
「2度続けて50位より下だと、特待生の資格自体を失う」
「あと遅刻欠席が多いと、やはり特待生の資格を失う」
「むろんバスケ部なり野球部なりで、それなりの実績を出してないと失格」
「いや、ほんとに厳しいよ」
 
「特にスポーツ特待生で最後まで特待生で居られる子は、むしろ稀らしいね」
「ああ、そもそもスポーツで取った子は、勉強は苦手という子が多い」
「それは私だ!」と暢子。
 
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千里の場合、特待生の資格を失うと、退学しか道は無いので、気合い入れて勉強しないといけないよなと改めて思った。
 

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