広告:ここはグリーン・ウッド (第4巻) (白泉社文庫)
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■女の子たちの制服事情(8)

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鞠古君と留実子はJRで出て来ていたのだが、まだ帰りの切符は買っていないということだったので、何ならうちの車に乗らない?と千里の母が誘い、5人で留萌に戻った(鞠古君のお姉さんは旭川市内の親戚の家に下宿しているので、そちらに戻った)。
 
玲羅を助手席に乗せ、後部座席に、鞠古君・留実子・千里の順に座る。(留実子が《平和的な並び》と言った)
 
「しかしチンコ切るのってどんな気分なのかなあ」
と唐突に帰りの車内で鞠古君が発言する。
 
「るーは、どう思う?」
「まあボクは別にチンコ切っても構わないよ。無ければ無いで何とかなると思う」
と留実子。
 
「るーに訊いたのが間違いだったかな。村山はどうよ?」
「おちんちんが付いてたら邪魔だろうから、即切って欲しいかな」
と千里。
「村山に訊いたのも間違いだった気がする」
 
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「いや、トモ、チンコ切りたくなった訳?」
と留実子。
 
「切りたくはないけどさ・・・・」
 
と言ったまま、鞠古君は考え込んでしまった。留実子と千里は顔を見合わせて首をひねった。
 
「るみちゃん、もしどこかで着替えるなら適当な場所で休憩するよ」
と千里の母が言うので、留実子は途中寄ったコンビニでセーターにジーンズという格好に着替えた。
 
でも千里はスカートのまま帰宅することになる。父には自分のスカート姿を見慣れさせることが大事だ。
 

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留萌に辿り着く頃になって留実子が言った。
「千里、あのさ。ボクの兄貴が着ていた学生服で、ボクにも小さくで入らなかったのもあるんだけど、よかったら千里にあげようか? ウェストが57なんだよね」
「お兄さん、そんな細いの着てたの!?」
 
「そんなの売ってないから自分でウェストを詰めてたみたい。兄貴、裁縫が得意なんだよ」
「へー!」
 
「中1〜2の頃着ていたやつらしい。今日ボクが着ていたのは中3から高1の頃着ていたもの」
と留実子。
 
「お兄さん、今高3くらいでした?」
と運転席の母が訊く。
 
「ええ。そうです」
「じゃ来年は受験で大変ですね」
「ああ、兄貴は大学には行かずに、美容師になるらしいですよ。札幌の美容専門学校に行くらしい」
 
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「わ、男の美容師というのも、いいですねー」
と母は言ったが、留実子はなぜか忍び笑いをした。
 
「千里の学生服、こないだ見せてもらったけど、かなり生地が薄い。あれ多分半年も着ないうちに破れるよ」
と留実子。
 
「あ、じゃもらっちゃおうかな」
「うん。今度持ってくるね」
「ありがとう」
 
確かにあれは生地が薄いよな、と千里も思っていたのであった。
 

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4月6日(日)。明日はとうとう中学の入学式である。
 
入学式は午後からである。むろんセーラー服で出て行くつもりだが、色々不安はあった(排卵日だったのもあると思う)。
 
いろいろなことを考えていたら急になぜか心が不安定になった。晋治を失ったこともボディブローのように効いてきている。何も素直に身を引かなくたって良かったんじゃないかという気もしてくる。特に晋治のお姉さんから自分の方が本命だったことを聞いてしまったことで悔いが増大する。それにあの時、もしセックスしちゃってたら、晋治との仲はいっそう強固になっていたかも知れなかったなどという気までしてくる。私、もっと積極的に彼を誘惑すればよかったのに。
 
晋治とのことは終わったこと、と自分を納得させようとするが、何なんだろう?この割り切れ無さは!?
 
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千里は時計を見た。
 
もう12時じゃん! 寝なきゃ。
 
部屋の明かりは落ちていて、妹は部屋の奥の方で寝ている。両親たちの部屋も明かりは落ちている。両親ともたぶん寝ている。特に父は月曜日早朝から船を出すから、今熟睡しているはずだ。
 
私もトイレ行って寝よう。そう思って千里は机の蛍光灯を消すと暗闇に紛れて下着を交換し(当然女の子下着を着る)、パジャマを着てトイレに行こうとした。そして両親が寝ている部屋を通り抜けて、トイレの方に行こうとして・・・・
 
倒れてしまった。
 
千里はその後の記憶が少し飛んでいる。
 
ただ母が寄ってきて「千里!千里!」と呼ぶ声が聞こえたような気がする。
 

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ふと気付いたら、見慣れない場所で寝ていた。
 
母の顔が見える。
 
「お母さん!?」
「あ、千里、気がついた?」
「私・・・倒れたの?」
 
どうもここは病院のようだと認識し、そう母に訊いた。
 
「びっくりして私が車で運んで来たんだよ。お父ちゃんは船の出る時刻があるから、それまで寝てないといけないから」
 
機関長が寝不足で船に乗ったりしたら、重大事故につながりかねない。父の場合、睡眠も仕事の内である。
 
「ありがとう。ここ、$$病院?」
「ううん。&&病院。ここの病院は掛かったこと無いけど、掛かり付けの@@病院に訊いたら、ここが夜間の当番医ということだったから」
「へー」
 
「熱がさっき計った時39度6分あった。先生は風邪じゃないかって。インフルエンザの菌は出てないらしいから」
 
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インフルエンザは菌じゃなくてウィルスだけどな、と千里は思ったが細かいことは気にしないことにした。
 
「とにかく寝てなさい。今日の入学式は欠席かなあ」
「うん。入学式に出なかったら入れてもらえない訳じゃないし」
「そうそう」
 

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ところが千里の熱は翌日も、その翌日も下がらなかった。
 
先生も首をひねる。それで血液検査をしてみることになった。
 
「君、小学6年生だっけ?」
「いえ、中学の新1年生です」
 
「ちょっと血液の数値を見ていたんだけど、特に異常は無いんだけどね。鉄分とか、この世代の一般的な女子の数値よりかなり高いし」
 
あれれ・・・女子〜!?
 
「少し気になったのが、エストロゲンとプロゲステロンの数値でね。これが異様に低いんだけど、君、生理はもう来てるよね?」
と医師は訊く。
 
まあ、低いだろうね。だって卵巣が無いんだから。(この付近から千里は記憶が混乱している。そして記憶が回復するのに数ヶ月を要する)
 
「生理、来てはいますけど、凄く不安定です」
などと千里は言っちゃう。
 
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「だろうね。君、まだバストも膨らんでないし。ちょっとエストロゲンの注射、打ってみようか」
「あ、はい。お願いします。あ、でもエストロゲンの注射って高いのでは?」
「ああ。自由診療なら高いけど、保険診療だから1本500円」
「あ、それなら私のお小遣いでもできる」
「あはは。心配しなくても、きっとお母さんが払ってくれるよ」
 
それでエストロゲンの注射を打ってもらった。
 
きゃー、きゃー。自分の身体の中に女性ホルモン入れちゃったよぉ! 私これからどうなるんだろ? 千里は期待と不安が入り混じるような気持ちで先生の打つ注射針を見詰めていた。
 
そして打ってもらってしばらく安静にしていた時のことである。
 
なんだろう、これ。
 
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何だか突然気持ちが安定してしまった。
 
今まで晋治のこと、そして学校のことで悩んでいたのが、どうでもいい気持ちになってしまう。晋治はいい子だったけど、旭川と留萌で離れて暮らしていたんだから仕方無い。向こうで彼女できてもいいじゃん。私もこっちで彼氏を作ればいいんだし、と完璧に開き直ることができた。
 
髪の毛だって悩むことないじゃん。切れというんだから切っちゃおう。女の子の服を着る時は、ウィッグ付けたっていいじゃん!
 
そんなことを考えると、何だか凄く気持ちが楽になった。そしてそれとともに身体の奥底からパワーが沸き上がってくるのを感じた。よーし、また頑張るぞ!千里はここ1ヶ月半くらいのうやむやとした気分が消えて、本当に頑張ろうという気持ちになった。
 
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そして翌朝、千里の熱はきれいに下がってしまっていた。
 
身体にエストロゲン入れただけで、こんなに気持ちが変わるなんて・・・。そして体調まで変わるなんて。いいなあ。これ、また打ってもらいたいなあ。千里はそんなことを思った。
 
翌日、色々検査をされるが、脈拍も正常だし、血圧・血糖値なども正常だし、熱は平熱だし、本人も元気だし、ということでお医者さんもあまりの急激な回復に首をひねったものの、病院に留め置く理由もないので、あっさり退院の許可が出た。
 
「お薬出しておきますね」
と言われて出されたお薬の明細を見ると、エストロゲン・プロゲステロンと書かれている。きゃはは。飲んじゃおう! 何と3ヶ月分も処方されている。つまり3ヶ月だけ自分はホルモン的に女になれるんだ。
 
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でもお母ちゃんには言えないなあ。そう思って千里は薬の明細書きを病院のゴミ箱に捨ててしまった。
 
作ってもらった病院の診察券には、CHISATO MURAYAMA SEX:F という刻印が打たれていた。Fが女でMが男というくらいは、新中1の千里にも分かる。千里は思わずその診察券にキスをした。
 
母が車で迎えに来てくれたので、そのまま自宅に戻る。
「今週いっぱいは休んでようか」
「うん」
 
「病み上がりだし、髪の毛ももう少し体調回復してから切らせてもらうことにしようよ。お母ちゃん、学校に電話しとくよ」
と母は言った。
 
お!それは今まで気付かなかったけど、良い言い訳だ。実は髪を切っちゃってもいい気分にはなっていたのだが、切るのを先延ばしできるなら、できるだけ先に延ばしたい気分だ。
 
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「うん、お願い」
と言って千里は自分の布団に入った。
 

そういう訳で、千里はみんなより1週間遅れ、4月14日の月曜日から中学校に出て行った。学生服が入らなかったので母が首をかしげている。結局体操服を着て出て行った、千里もどうして入らないのだろうと疑問を感じた。
 
母から話が通っていたようで、千里が病み上がりなので髪は少し体力回復してか切りますと言ったら、担任の先生は「うん、聞いてる。お大事にね」と言ってくれた。
 
(先生は“女子の規則”でも長すぎる髪を切るのを待つという意味で了承している)
 
こうして千里の中学生生活は始まったのであった。
 
なお病院からもらったエストロゲンとプロゲステロンの製剤だが、本来は毎日3回2錠ずつ飲むように指定されていたのを千里は1日1錠ずつ飲んだ。また自主的に設定した《排卵期》には飲まないようにしたし、更に時々飲み忘れたりもしたし体調が悪い時は飲むのを控えていた。
 
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それで、この薬を全部飲み終わるには2年近く掛かった。また、ある事情で、実際に千里がこのお薬を飲み始めたのは8月からであった。その間、千里の男性化はほとんど停止し、中学3年生になっても、まだ千里には声変わりは来なかった。でも飲み方が少なすぎて、おっぱいが膨らんだりするまでは至らなかった。但し、乳首は普通の男子よりは少し大きくなった気もしていた。また、乳首がいつも立っていたのでブラを着けてないと服で擦れて痛かった。
 
 
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