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■女の子たちのお勉強タイム(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-07-10

 
昭ちゃんは問題集を買いに町に出ていて、30歳くらいの女性に呼び止められた。
 
「君、高校生?」
「あ。はい」
「ね。少し時間あったら***バスケットやってみない?」
「え?バスケットですか?」
 
昭ちゃんは女性のことばの前半がよく聞き取れなかったので聞き返した。すると女性は「そうなの。今盛岡からキャンペーンで来てるのよ。良かったらこっち来て」などと言われて、その女性に連れられて商店街のイベントスペースに入ってしまった。
 
小学生の頃、ここで卓球大会に出たことあったな、などとふと思い出したが、ここにバスケットのゴールを持ち込んでゲームをするんだろうか?などと考えていたら、何だかイベントスペースには多数のテーブルが並べられ、10-20代の女の子が多数座っている。
 
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あれ〜?机が並べられているけど、実技じゃなくてルールの説明とか有名選手の紹介とかでもするのかしら、などと思う。
 
「ここ座って、座って」
と言われて座る。昭ちゃんがキョロキョロしていたら、やがて前のほうに立つ講師風の女性が
 
「それでは『誰でもすぐ覚えられるハンギング・バスケット』の講習会を始めます」
 
と言った。
 

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1時間半後、昭ちゃんの目の前にはきれいに籠(かご)に盛られた切り花の山ができていた。
 
「あなたセンスいいわねぇ、これ凄くきれいに出来ている」
などと言われる。
 
「この子、今日の準優勝でいいんじゃない?」
「うんうん。1位は7番の子で」
 
それで花を盛った籠を持って前の方に並ぶ。確かに1位に選ばれた人のは凄くきれいにまとめられていた。
 
「それでは1−3位に選ばれた人、自己紹介をどうぞ」
「7番、深川市から来ました****、19歳です」
「えっと、24番、旭川市内の湧見昭子、17歳です」
「18番、上川から来ました****、16歳です」
 
なんだか大型のカメラを持ってフラッシュを焚いて撮している人が何人も居る。何だ?何だ?
 
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「それでは3人に入賞賞品として、ハンギングバスケットをデザインしたワンピースをプレゼントします」
 
などと言われて、渡される。笑顔で受け取るが、そこをまた写真に撮られる。
 
「そのワンピースに着替えた所を写真撮りたいのですが」
などと言われるので、3人で別室に入ってその服に着替えた。女の子と一緒に着替えるのは、いつもバスケ部でやっているので昭ちゃんとしては全く平気である。最近はむしろ男子と一緒に着替える方が緊張する。
 
そしてハンギングバスケットが描かれた白いワンピースを着て3人が各々の作品を抱えて笑顔でいる所を記念写真に撮られた。
 
「3人は来年6月に盛岡市で開かれますハンギングバスケットフェア2009に招待されます」
 
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などと言ってカタログをもらった。
 
あはは、6月ってインターハイの予選やってるんじゃないかなあ。行けるかな?とちょっと疑問を感じた。
 

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翌日、新聞の地方面に「旭川でハンギングバスケット・フェア開かれる」という記事が載り、そこに花柄のワンピースを着た昭ちゃんの写真が載っているのを見た昭ちゃんの父親は「うっ」と声をあげてしまった。
 

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「そういう訳で、約1ヶ月間、こちらの学校で一緒に勉強することになった湧見絵津子君です。仲良くしてやってください」
 
先生に紹介された絵津子は
「北海道旭川から来ました湧見絵津子です。短い間ですが、よろしくお願いします」
と言ってペコリとお辞儀をした。予め用意してあった机の所に座るが、教室内でざわめくような声が起きていた。
 
休み時間になってから早速クラスメイトに取り囲まれる。
 
「ね、ね、湧見さんって、女の子になりたい男の子なの?」
「え?私、一応普通の女のつもりですけど」
「あ、そうだよね、そうだよね、分かる分かる」
 
「おっぱいは大きくしてるの?」
「取り敢えずBカップあるけど」
「すごーい。シリコンか何か入れたの?」
「え?豊胸手術とかしてないですよー」
「じゃ、ホルモンだけで?凄いなあ」
 
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「髪の毛長いね」
「あ、これ実はウィッグなんですよ」
「あ、そうなんだ?」
「外してみようか?」
「お、外してみて外してみて。ここだけってことで」
 
それで絵津子がウィッグを外して丸刈り頭を見せると
 
「すごーい!」
「格好良い」
「女の子にしちゃうのもったいない」
「男の子のままで良かったのに」
「ほんと、ほんと。湧見さんが男の子のままだったら、私結婚したかったくらい」
 
などといった声が上がっている。
 
「でも女の子っぽい声出すのうまいね」
「えっと・・・」
「もしかして睾丸は取っちゃった?」
「えー?さすがに睾丸は無いです」
「すごーい!もう取っちゃったんだ?」
「おちんちんはまだ付いてるんでしょ?」
「おちんちんなんて無いですよー」
「うっそー!」
「すごーい! もう性転換手術しちゃったんだ?」
「高校生で性転換するって凄いね!」
 
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「えっと、私、最初から女だけど」
「うん、分かる分かる」
「物心ついた頃からずっと自分は女だという意識だったんだよね」
 
絵津子はどうも自分の性別が誤解されているようだということを認識して、どう説明すればいいのか、悩んでいた。
 

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「そういうわけで12月12日まで神野君と交換留学でこちらに合流することになった湧見絵津子君だ。みんな仲良くしてやって下さい」
と八幡監督がF女子高のバスケ部メンバーに絵津子を紹介した。
 
絵津子は授業中はウィッグを付けていたのだが、ここでは汗を掻くしということで丸刈り頭をさらしている。
 
「お世話になります。旭川N高校から来ました湧見絵津子です。1年生ですし、洗濯でも雑用でも何でもやりますので遠慮無く言って下さい。インターハイで恨みがあるという人もどんどん掛かってきて下さい。たくさん鍛えられたいです」
と絵津子も挨拶する。
 
すると
「いや、洗濯は免除でいいよね」
という声が一部から出る。
 
「いえ、遠慮せずにこきつかってもらっていいですよ」
と絵津子が言うのだが
「でも女の子の服を男の子に洗わせるのは問題があるから」
という声。
 
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それを聞いて彰恵が言う。
「いや、この子、男の子に見えるけど、女の子なんだよ」
 
「え〜〜!?」
という声があちこちからあがった。
 
「性転換したんですか?」
「してないです。生まれた時から女です」
「ほんとうに?」
「戸籍上も身体上も最初から女なので」
「うっそー!?」
「いや、教室でも性転換した元男だと思われて、その誤解解くのに苦労した」
などと絵津子は言っている。
 
「この子、インターハイに女子として出ていたから女であることは間違い無いよ」
とインターハイで絵津子にさんざんやられた2年生の椙山さんが言う。
 
「ほんとに最初から女なの?」
「はい」
「その頭は?」
「ウィンターカップの予選でP高校の1年生に負けたのが悔しくて衝動刈りしちゃいました」
「ひゃー!」
 
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「P高校に負けたのならウィンターカップには出られないの?」
「いや、今年は北海道は2校出られるんですよ。それでうちもウィンターカップ出ますので、もし本戦で当たったら私の欠点を突いてギタギタにしてください」
と絵津子。
 
「うん。もし旭川N高校とまた当たった場合、絵津子ちゃんを抑え切れたら、うちが勝てると思う」
と百合絵が言う。
 
「よし。じゃ丸裸にして解剖するつもりで徹底研究しよう」
と3年生の左石さん。
 
「ついでに寮に行ったら、裸にして解剖して性別を確認してみたいね」
などと1年生の中尾美稔子が言った。
 

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一方、F女子高からN高校に交換留学で来た神野晴鹿は、ごく普通に教室でも受け入れられ、ごく普通に女子バスケ部にも合流した。
 
普段通りのウォーミングアップ、基礎練習を経た後、千里のシューター講座を始める。参加者は、2年生の結里・昭子、1年生のソフィア・智加、そして晴鹿に講師の千里を入れて6名である。
 
「世の中には2種類のバスケット選手がいる」
と千里は最初に言った。
 
「ひとつは近くからシュートするほどゴールの確率が高まるタイプ。もうひとつは近くても遠くてもゴールの確率が大して変わらないタイプ」
 
そして言う。
「後者がシューターと呼ばれる選手なんだ」
 
「そもそもシューターが撃ったボールというのは『入る確率』といった言葉に馴染まない動きをする。それは『入る』か『入らない』というオンかオフのデジタルなんだよね。『入るかも知れない』というファジーなボールを撃つのはシューターじゃない。それはふつうのフォワードだと思う」
 
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「まあ、そういう訳で各自10本ずつ撃ってみようか?」
 
それで1人ずつ順番に10本ずつスリーを撃つ。
 
結里が6本、昭子が7本、ソフィアが6本、智加が5本、晴鹿が7本入れた。ちなみに千里は貫禄で10本全部入れる。
 
「まあ入る本数は練習していれば上がるんだけど、入らなかった時って、みんな撃った瞬間に『しまった』みたいな顔をしていたね」
 
と千里は言う。
 
「それは撃った時の感触で入ったかどうかが分かるから。やはりここに来ている人たちって、シューターのタイプなんだよね。だからシューターの練習というのは、もちろん毎日たくさんシュートを撃つことも大事だけど、どうやったら、自分が思い浮かぶイメージ通りに身体が、腕が動くかということ。そのためには、やはり発射台となる下半身をしっかり鍛えておかないといけないんだよね」
 
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「ということで、何の練習をするか分かるかなあ?」
 
「ジョギングですか?」
とソフィアが言う。
 
「正解。じゃ10kmほどロード行って来ようか」
「キャー」
 
「寒いからみんなちゃんとウィンドブレーカー着てね」
 

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千里はオーストラリア合宿から帰国した9月上旬、突然学校側から3年生を3人特例でウィンターカップに出してもいいが、その代わり各々指定の学校を受けて合格して欲しいと言われ、偏差値74という超難関の□□大学医学部(東京都)を指定された。
 
他に暢子は道内のH教育大旭川校、留実子は札幌のH大学、薫は札幌のL女子大を指定されたものの、同レベルの東京のKS大学に変更してもらった。そして10月末、4人は共同で教頭先生に申し入れ、薫が更にレベルの高い東京のA大学を受ける代わりに留実子は元々志望していたH教育大旭川校を受けることを認めてもらった。結果的にふたりとも合格すると暢子と留実子は大学でもチームメイトになることになる。
 
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さて、千里はこの春からバスケ部の練習をたくさんしていた上にU18日本代表にもなって合宿に次ぐ合宿をしていて、実際問題として8月までは学校の勉強なんて、ほとんどしていなかった。しかし唐突に超難関大学を指定されたので、バスケの練習の合間に必死になって勉強し始めたし、担任や他の先生たちも協力してたくさんプリントを渡してくれた。
 
それで千里は学校の出席日数は減っていたものの、成績はむしろ上がっていっていた。
 
なお、千里が高体連主催の大会に出たり、日本代表として合宿や大会に行っているのは全て公欠扱いになっている。N高校の場合、年間登校日数の3分の2以上の出席が進級・卒業には必要で、年間の登校日数は3年生の場合190日あるのだが、バスケ部の活動(国体を含む)で10日は公欠になっていて、更に千里は日本代表の活動で+21日の公欠があり、千里の登校すべき日数は159日である。その3分の2以上で106日以上出席すれば卒業できる。実際にこの年千里が休んだのはオーストラリア遠征後に新島さんの仕事の代行のため休んだ5日間くらいである。
 
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とはいっても他の子より合計31日も出席している日数が少ないので、その分をカバーして勉強するのは本当に大変であった。
 

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