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■女の子たちのお勉強タイム(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-07-12
 
ところで昭ちゃんはウィンターカップ道予選の時に男子制服を従妹の絵津子に取られてしまい、やむを得ず?その後女子制服を着て通学していた。本人は最初かなりドキドキだったようであるが、そのことについて親も何も言わないし、学校の先生やクラスメイトも何も言わないので、昭ちゃんとしては拍子抜けの気分であった。
 
もっとも最初の頃、昭子がうっかり女子制服のまま男子トイレに入っていこうとしたら「こっちは男便所!」と言われて追い出されてしまい、え〜?どうしようと思っている内に夜梨子が来て
 
「昭ちゃん、何してるの?」
と訊く。
 
「トイレに入ろうとしたら追い出されちゃって」
「嘘。どっちに入ろうとしたの?」
 
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それで昭子が男子トイレを指さすと
 
「昭ちゃん、女子は女子トイレに入らなくちゃ。さ、行こう」
と言って昭子の腕を取り、女子トイレに連れ込んだ。
 
同様にして、昭子は体育の時間の着替えも女子更衣室ですることになった。(昭ちゃんは部活の時はふつうに女子部員たちと一緒に着替えている)
 

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千里の所に新島さんから「醍醐春海」名義で曲を書いて欲しいという依頼があった。今回は歌詞は既に出来ていて、それに曲を付けるだけだと言う。この時期、こちらの歌詞担当の蓮菜は受験勉強で少し殺気立っている感じであったので、正直助かったと思った。
 
新島さんからは「歌詞は素人の作品なんで日本語のおかしい所とかもあるから、多少は改変してもいいから」などと言われた。それで送られて来た詩を見ていたのだがほんっとに素人の詩という感じだ。ホントにこんなのに曲を付けていいのかなと疑問を感じ、新島さんに電話するもなかなかつながらない。それで歌うのはKARIONだというので美空が事情を知らないかなと思い、電話してみた。
 
「全国ツアーお疲れさん。あと少しだね」
 
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「ありがとう。お客さん来てくれるかなと思って心配してたけど、今の所結構たくさん来てくれていて嬉しい。どこもだいたい7割くらい埋まってるよ」
「それは良かった。だけど蓮菜から聞いたけど、札幌のライブでは蘭子ちゃん、前には立たなかったんだって?」
 
「そうそう。今回は全部そうなのよ。ローズ+リリーの方との権利関係の調整をプロダクション間で交渉中らしくて。だからほとんどの公演に参加はしてるんだけど、楽器演奏だけで歌は歌ってない。今回のツアーが好評なんで、2月に再度ツアーするらしいけど、それまでには調整を終えて、2月には全部歌えるんじゃないかなと社長は言っていたけど」
 
「へー。あ、それでね」
 
と言って千里はこちらに回ってきた歌詞が妙に素人っぽいんだけどというのを訊いてみた。
 
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「うん。KARIONに歌わせたい歌詞コンテストというのをやったんだよ。その1位の作品『秋風のサイクリング』は10月のシングルでリリースしたんだけど、その他の上位の作品をアルバムにしようということで、何人かの作曲家さんで手分けして書いてもらおうということになったんだよ」
 
と美空は説明した。
 
「なるほど、それで」
「醍醐春海さんにも1曲頼むと言っていたから、そちらに話が行ったのね」
「じゃ、依頼元からは多少改変してもいいからとは言われたけど、そういう事情なら明かなミス以外は変えずに何とか曲を付けてみるよ」
 
「ありがとう。よろしくー」
 

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11月25日。連休明けの昼休み。千里が職員室に呼び出されていくと、ドーピング検査機関の身分証明書を持った女性がいて、千里のドーピング検査をさせてくれということであった。同意すると、まずは尿を取りたいということなので、その人と一緒に玄関近くにある多目的トイレに入る。
 
ドーピング検査の尿検査では係員の目の前でほとんど裸でおしっこをして、尿の採取をするのである。
 
「ユニフォームとかなら、上はめくって下は足まで下げてもらえばいいのですが、制服だからどうしましょうかね・・・」
「全部脱いじゃえばいいですよね?」
「はい、それでも結構です」
 
それで千里は制服の上着とスカートを脱ぎ、ブラウスとキャミソールも脱ぎ、パンティも脱ぎ、その必要は無いのだが、物のついででブラジャーも外して全裸になった。
 
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「ブラジャーは着けていても良かったのですが」
「全裸でブラだけ着けているのも変だし」
「確かに」
 
それでおしっこをして、係の人が持つコップに入れる。この検査官はこれにかなり慣れているようで、最初ちょっと外しただけですぐに落下点にコップを持って行った。男子だとこのあたりのコントロールがもっと何とかなるのかも知れないけど女子は難しいよなあと、検査を受けながら千里は思った。
 
千里はこの検査を一昨年の6月にも受けている。その時も女性係官に検査してもらったのだが、その時は実はまだ千里は男の身体であった。タックしていたのだが、検査官はそのことに気づかず千里を女性と思って検査した。しかし今回は正真正銘、女の身体である。2年半の間に自分も変わったんだなというのを再認識した。
 
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おしっこをした後は、そのコップにふたをして、千里が服を着る間は検査官もそのコップとは距離を置いた場所に立っている。
 
その後は千里と検査官の2人とも目を離さない状態で、一緒に職員室に戻り、そのコップを検体用のケースに収める。ここで血液も採りたいということだったので注射器で静脈から採取した。それも一緒に検体用ケースに収める。そして閉じて鍵を掛けケースに封をした。
 
検査官、千里、そして宇田先生の3人が封印にサインをして、これでこのケースは検査機関に持ち込まれるまで、誰も開けられないことになる。
 
ドーピング検査では、検査を受ける側の不正も、検査官の不正も不可能なような体制が取られているのである。
 
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検査官はそれで
「どうもご協力ありがとうございました」
と言って帰って行った。
 
千里は日本代表にラインナップされるレベルの選手としてどうも定期的に検査を受けなければならないようである。
 

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この日の夕方、ウィンターカップの組合せが発表された。その件で彰恵から千里に電話が掛かってきた。
 
「バスケ協会の発表見た?」
「うん。見た。私は生理が重いのでとか言って休まずに済むみたい」
「千里が生理が重いって理由が通るの〜?」
「うーん。言ってみないと分からない」
 
千里は絵津子と晴鹿の交換留学を持ちかけた時、万一N高校とF女子高が準々決勝以下で当たったら、体調が悪いなどと言って休むと彰恵に言っていたのである。
 
「でも私たちが当たるのは千里の予想通り決勝戦だね」
「うん。お互い決勝まで勝ち残れるように頑張ろう」
 
「こちらは多分札幌P高校に勝たないといけない」
と彰恵。
「こちらは多分愛知J学園に勝たないといけないし、その前にインターハイで負けた静岡L学園と当たる。組合せ表を見て、みんな『リベンジするぞ』と盛り上がっているよ」
と千里。
 
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「そうか。去年のインターハイでそちらはJ学園に準決勝で負けたんだったね」
「うん。だから2年分のリベンジ」
 
「今年のインターハイのL学園戦は実質互角の戦いだったと思う。充分勝てると思う」
「ありがとう。でも向こうも進歩しているだろうからね。心して掛からないと」
「晴鹿はどんな感じ?」
「筋はいいと思う。ディフェンダーに囲まれた時にしばしばリリースが遅くなる癖があるのは改善した。それだけでも物凄く手強くなった。そして教える以上に私から色々なものを吸収している。敵に回したくない感じ」
 
「こちらも絵津子ちゃん、凄い。私や百合絵でも本気100%でマッチングしてる。フェイントの入れ方がどんどん巧くなる。この子をこんなに鍛えてるのって自分の首を絞めているのではと思ってしまう」
「まあそれはお互い様だけどね」
 
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「だけど絵津子ちゃんがどんどん上手くなるのを見てこちらの1年の鈴木や中尾がかなり刺激されているのよ」
 
わざわざ向こうの要注意人物を教えてくれた感じだが、そのくらいはどうせ絵津子が戻ってきたら分かることだからということだろうか。
 
「こちらも晴鹿ちゃんに刺激されて、シュータークラスの面々はもちろん町田・杉山あたりがかなり闘志を燃やしてるよ」
 
「杉山さんって杉山蘭ちゃん?」
「杉山海音」
「姉妹?」
「無関係」
「へー」
 
しかしさすが蘭のことは少し調査していたような雰囲気だ。さすがである。多分志緒・来未あたりも分析されている。でも海音までは調査していないんだ?
 

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その週の週末。29日(土)にH教育大旭川校の推薦入試が行われ、暢子と留実子が受験した。合格発表は12日である。もし推薦で落ちた場合は一般入試でリトライすることにしている。30日(日)には、東京のA大学で推薦入試が行われ、薫が受験した。合格発表は12月4日である。
 
この週末、バスケ部の練習もあっていたのだが、土曜日に千里は市民オーケストラの練習に顔を出した。団員さんたちからは本番だけ出てきてくれればいいとは言われていたのだが、今回の演奏曲目では千里のフルートをメインにフィーチャーした「メルカダンテのフルート協奏曲・第三楽章」を演奏するので、さすがにぶっつけ本番はまずかろうということで顔を出したのである。特にこの日は事前にホールで演奏してみる日であった。今回の公演ではL女子高の大波布留子にも、フルートのエキストラ奏者として参加をお願いしたのだが、彼女も来てくれた。
 
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「曲自体はちゃんと吹けてるね」
と言ってもらえる。
 
何ヶ所か解釈上の問題で指導してもらった。
 
「バスケの練習の合間にだいぶ吹きました。屋外での練習では金属フルートは冷たいので木製フルートで練習してたんですよ」
 
「へー、どんなの?」
と言われるので、出羽の修行仲間の人からもらった木製フルートを見せる。
 
「おお、フラウト・トラヴェルソじゃん」
「面白いものを持ってるね」
「知り合いの人から頂いたんです」
 
「ああ、千里はそういうものが多い」
と美輪子が言う。
 
「本番でもそれを使う?」
「え〜? どうしよう。でも木製フルートは響きが足りなくないですかね?」
「そんなことはないと思うよ」
「試してみればいい」
 
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それで千里がふだん使っているヤマハの白銅製普及品のフルートと、木製のフルートとで吹いたのを楽団員の人にホールのあちこちに立って実際に聞いてもらった。
 
「木製の方がよく響く」
というのが全員の意見であった。
 
「木製の方が色っぽく聞こえる」
などと言った人もある。
 
「人にあげておいて言うのも何だけど、そのヤマハのフルートは4万円だから」
と千里にフルートをくれた布浦さんが言う。
 
「どうしても安い楽器の音しか出ないよね」
と言う人もある。
 
「この木製フルートは高いんでしょうか?」
「それ材質がグラナディラだよね。多分20万円くらいだと思う」
「きゃー。そんなのもらっちゃって良かったんでしょうか」
 
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グラナディラ(Grenadilla 別名African Blackwood, 現地名Mpingo)は黒檀の代用品とされた時期もあり、かつては「アフリカ黒檀」とも呼ばれたが、現在は黒檀とは別の樹木とされている。しかし黒檀より丈夫で吸水性も低く管楽器として使用するにはむしろ黒檀より良質の素材である。クラリネットもグラナディラ製のものは人気が高い。但しグラナディラは黒檀同様に成長が非常に遅い樹木なので、最近では保護団体による管理のもとでの育成が行われている。
 
「まあくれるというのならもらっておけば?」
「木製フルート好きな人には、たくさんコレクションする傾向のある人よくいるから、自分のコレクションの中の1本をくれたのかもね」
「へー」
 
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その日の夜、千里は貴司に電話した。
 
「お疲れ様、惜しかったね」
「あ、試合の結果聞いた?」
「うん。大阪実業団リーグのファンの人が発信しているブログで見た」
「そうか」
 
この日、貴司のチームは今年のリーグ最終戦を戦い、惜しくも敗れて2位に終わったのである。
 
「でも2位でも入れ替え戦に出られるんでしょ?」
「そうそう。1位だと無条件に昇格なんだけど、2位は1部7位のチームと入れ替え戦をして、勝てば昇格できる」
「入れ替え戦はいつ?」
「1月11日・日曜日」
「それってオールジャパンやってる最中じゃないの?」
「オールジャパンに出るようなチームは入れ替え戦には出ないし」
「なるほどー」
 

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