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■女の子たちの開幕前夜(8)

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それで1時間半近く走っていた時、突然RX-7が追い越し車線に移動する。前後には車は居ない。あれ?何だろう?と思っていたらすぐに車は元の走行車線に戻る。
 
「今のは障害物でも避けたんですか?」
と千里が訊くと
「ごめん、ごめん。瞬眠」
と瀬高さん。
「もしかして寝てたとか?」
「うん」
「休みましょうよぉ!」
 
しかし瀬高さんは朝までには鶴岡に戻らないと仕事があるなどと言う。
 
「でも事故起こしたらやばいですよ」
「そうだなあ」
と瀬高さんは運転しながら考えていたが、ふと気付いたように言う。
 
「分かった!村山さんが運転すればいいんだよ」
「えーー?でも私、免許持ってません」
「だけど運転できるんでしょ?村山さんって、前回の時も思ったけど、車が次にどういう動きをするかをちゃんと把握して助手席で身体の重心移動とかもしてるんだよね。それって運転の経験のない人には出来ないと思う。マニュアル車は運転したことある?」
「あ、えっとRX-8を一度」
「なんだ! このシリーズ運転したことあるなら全然問題無いじゃん。運転してよ」
 
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そう言って瀬高さんはちょうど見えてきた花巻PAに入れて駐めるとトイレに行ってくる。千里も一緒にトイレに行くが出てくると瀬高さんは助手席に座って「よろしくー」と言う。
 
それで千里もやれやれと思い、RX-7の運転席に座る。エンジンを掛けローに入れ半クラで発進する。その後ギアをセカンド、サードに切り替えていく。昨年宮崎でたくさん練習したので、しばらくやっていなかったものの身体が覚えていてスムーズに操作できた。PAを出て加速車線に入る。ウィンカーを出してから後方を目視確認し、加速して本線に合流する。
 
「うまいじゃん。やはりかなり乗ってるね」
「えー?そんなに乗ってませんよー」
 
それで千里が100km/hで走っていると、
「なんでこんなにゆっくり走ってるの?150くらいまで速度上げよう」
などと瀬高さんが言う。
 
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「ここは100km/hの道だと思いますけど」
「それは最低速度だよ。100と書いてあったら150か160出すんだよ」
「それ、どこか外国のルールでは?」
「こんな夜中に警官なんか居ないって」
 
瀬高さんは煽るのだが、千里は冷静にちゃんと制限速度で走って行く。瀬高さんも、まあいいかという感じであとはおしゃべりに付き合ってくれる。
 
やがて北上JCTで横手方面に分岐する。
 
「あれ?この道知ってた?」
「いえ。通るのは初めてですけど」
 
前回は庄内空港から出羽に連れて行ってもらったので、この付近は通っていない。
 
「よく分岐できたね。私、連絡道路部分に入ってから、あ、分岐してと言うの忘れてたと思った」
「こちらに分岐するんだと思ったから進行しましたけど」
「あんた、めったに道に迷わないでしょ?」
「あ、それは言われたことあります。私が道に迷う時は、迷うこと自体に意味があるんだって、中学の時に巫女してた神社の神職さんが言ってました」
 
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「ああ、分かる分かる」
 
その内瀬高さんが寝てしまったので千里も30分くらい運転した後《こうちゃん》に頼んで意識を眠らせる。それで『そろそろ起きて』と言われたので覚醒して表示を見るとちょうど須川ICを通り過ぎるところであった。ほんの2−3分で自動車道の終点だ。ICを降りてすぐのところのコンビニに入れていったん休憩する。
 
「ありがとう。結構眠れたよ。この先は私が運転するよ」
と瀬高さんが言う。それでお任せして千里は助手席に乗る。車が発進する。
 
「あとどのくらい掛かりますかね?」
「あと90kmくらいだから1時間かな」
「一般道ですよ!」
「平気平気」
 
などと言っていた時、後ろからかなりの速度を出した軽が来て千里たちのRX-7に異様に接近して走る。
 
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「こんなに車間距離取らずに運転したら危ないのに」
「煽ってるんだけどね」
「ああ、これが煽るという奴ですか」
 
スピードを出すのが好きな瀬高さんだが、煽るような車を後ろには置いておきたくないと言って、脇に寄せて停め、先にその軽を行かせる。
 
「遠くまで行く車とも思えないし」
「ですね」
「でもまあ、町中は控えめに行くか」
などと言って制限速度+10くらいの速度で走って行っていたら、今自分たちを抜いていった軽が停まっている。何気なく追い抜きながら千里がそちらを見たら、警官が運転席の窓の所に立っていて何かやりとりしているようだった。パトカーも1台脇道に停まっていた。
 
「なんでしょう?道でも聞いていたんでしょうか?」
「いや、ネズミ取りで捕まったんだと思う」
「あらら」
「私たちはスピード出してなくて良かったかもねー。私ももう一度スピード違反でつかまるとまた免停くらう所だった」
「交通法規守りましょうよぉ」
 
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瀬高さんはやはり取り締まりを見たせいか、その後はあまり無理な速度は出さずに走る。しかしまだ眠そうな感じだったので、千里が「代わりますから少し寝てて下さい」と言って、新庄から先は千里が運転。出羽山には7:10ころ到着した。瀬高さんは千里に「じゃねー。また運転させてあげるよ」などと言って帰って行った。
 
もうすっかり明るくなっているので、まずは三神合祭殿でお参りをする。ここに来たのは昨年8月14日以来である。千里は確信を持って遊歩道方面に行く。蜂子神社と厳島神社が並んでいる。
 
今日の美鳳さんは、その厳島神社の中で女性神職の衣装を着ていた。
 
「あんた脇が甘すぎるんだよ。そんなに簡単に人に物を貸したらダメじゃん」
といきなり叱られる。
 
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「すみません。私、何か悪いことしましたでしょうか?」
 
「羽衣さんのお弟子さんにパワーを貸したでしょ?」
「羽衣??」
 
「まあ、いいや。そのチャンネル、こちらで閉じようかと思ったんだけどさ、その子があんたの力を又貸しした相手が、思わぬ人物で、私もびっくりしちゃってね」
「はい?」
 
千里はさっぱり話が見えない。
 
「結果的にあんたは自分にパワーを貸すようなものだから、このままにしておこうかと。ただ、あんた昨夜は唐突にパワーを取られたでしょ?」
「なんか突然力が入らなくなりました」
 
「試合中とかにそれ起きると困るよね?」
「困ります!」
 
「だから対処法を教えてあげようと思ってね。この字を覚えて」
 
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と言って美鳳さんは何だか難しい字を墨で書いてみせた。
 
「梵字ですか?」
「そうそう。ちょっと筆と紙を貸すからここで練習しなさい」
 
それで練習するのだが、なかなか難しい。複雑な形をしているのでバランス良くその文字を書くのにかなり苦労した。結局1時間ほど掛けて200回くらい書いて、やっと合格をもらった。
 
「この文字を左手に書いたら、消えるまで2−3日の間はパワー取られないから」
「インハイの間はこれ書いておきます。でもこれ、もしかして墨で書かないといけないんですか?」
「筆ペンでいいよ。あ、これあげる」
 
と言って美鳳さんは千里に筆ペンを1本くれた。
千里はそれで試しに左手掌に封印の梵字を書いてみる。
 
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「これ凄く書きやすい!」
「普段使いにしてもいいよ。むしろその方が無くしたりしないでしょ。インクが切れたら呉竹の補充インク入れればいいから」
「呉竹製なんですか!?」
「佳穂が内職で作ったんだけどね。筆先は呉竹の筆ペンをバラして使ったから結果的に呉竹のインクが使える」
「それは便利ですね」
 
千里が筆ペンを筆箱にしまうと、美鳳は更に言った。
 
「その筆ペンはたぶん3年ほど千里の所に留まると思うから」
「私、落とすか忘れるかするんでしょうか?」
「誰かがちょうだいと言うんだよね。そしたらあげるといい」
 
「これあげちゃったら封印はどうしましょうか?」
「その頃は、千里はこんな梵字とか使わなくても、ちゃんと封印できるようになっているよ」
 
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と美鳳さんは笑顔で言った。
 

「あ、そうそう。大会で疲れてるでしょ。湯殿山の温泉に入って行きなよ」
と美鳳さんが言う。
 
「でも私、練習に戻らなきゃ」
「その辺はどうにでもするから」
 
と言われてふと気がつくと、千里は湯殿山奥の院のご神体前に居る。それでご神体に登拝したあと温泉に浸かる。山駆けした後はいつもこの温泉に入って疲れを癒やしているので、何だか「いつものパターン」という気がしてきた。それで目をつぶって湯の暖かさをむさぼり、腕や足の筋肉をもみほぐしていく。
 
のんびりと20分浸かっていたであろうか。いつもはここに浸かっているうちにいつの間にか自宅に戻っているんだよなと思ったら、なんだか自分が自宅に居る気がしてきた。
 
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え?
 
と思って目を開けると本当に自宅に居る。
 
うっそー。なんで?
 
と自問したら《きーちゃん》が
『ご主人様のサービスだよ』
と言う。それで千里は出羽の方を向いて深くお辞儀をした。
 

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時刻も戻されているようでまだ7時くらいである。後で適当に調整するのであろう。取り敢えず荷物を確認する。
 
室蘭遠征で持って行っていたスポーツバッグと旅行バッグはある。中の着替えを出す。洗濯しなくちゃ。旅行バッグの中のパソコンを取り出して充電するのにコンセントにつなぐ。五線紙の枚数が少なくなっているので補充する。
 
あ、でも服着なくちゃ!
 
ちょっと鏡に自分の身体を映してみる。鍛え上げているので、腕や足は割と太いけど、ウェストはくびれている。胸には豊かな膨らみがあり、お股の所には茂みがあって、その茂みの中には左右の肉が合わさって作るゲートがある。千里はそのゲートの中に指を入れて、中に隠れているものを確認して行った。
 
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えへへ。私、やはり女の子だよね?
 
ここに1年くらい前まではおちんちんが付いてたんだよなあ、というのを考えると何だか不思議な気分になった。
 
あんなの無くなって良かった!
 
付いてることが物凄いコンプレックスだったもんなあと思う。薫はまだおちんちんあるんだろうか。まだ付けてるなら、さっさと取っちゃえばいいのに。でも昭ちゃんは高校出てから再度自分の性別についてよく考えた方がいいと思うなあ。あれ川南や蘭たちに煽られている部分も大きいもん。
 
でも性別なんて自分で好きに選べたらいいのになというのも考える。小学4年生くらいになる時、男でも女でも好きな方になれることにして、おちんちん要らない子は取ってもらって、欲しい子には付けてあげれば世の中随分うまく行かないだろうか。
 
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でもそもそもなんで世の中には女の子になりたい男の子と、男の子になりたい女の子がいるんだろうね・・・・
 
などと考えていた時、突然ふすまが開いた。
 

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「あれ? 千里戻ってたの?」
「うん」
と言って千里は裸のまま、叔母の方を向いた。
 
「何裸で立ってるの?」
「うん。私、いい女だなあと思って鏡見てた」
「ああ、あんた少しナルシシストな面あるよね」
「女の子になりたい男の子には割とナルシシストは多いよね」
と言って千里は微笑む。
 
「だけどあんたはもう女の子になっちゃったんだね」
「うん。おちんちんはもう無いし」
 
「あんたさ、貴司君には自分のおちんちん見せたことあるの?」
「一度も見せてないよ」
「でも多分、女の子の身体になる前からセックスしてるよね?」
「うん。最初の頃はスマタでやってたんだよ」
「その時、おちんちん見られない訳?」
「うん。テクニックがあるんだよね」
「今はヴァギナでしてるんでしょ?」
「もちろん。でも彼、違いがよく分からないみたい」
「ああ。男の人は逝けたらいいんだよ。基本的には」
「そんな気がする」
 
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「いつまでも裸じゃ風邪引くよ」
と言われて服を着、美輪子が作ってくれた朝ご飯を頂く。
 
「あれ?鮭が2切れある」
「つい、千里の分まで焼いちゃったんだよ」
 
「御飯も3合炊いてある」
「千里の分まで以下同文」
 
「おばちゃん、私が高校卒業したら御飯が余って困るね」
「あんたが大会とかで出てる時も、しばしばやっちゃうんだよねー」
 
「私が出て行ったら、すぐ結婚しちゃいなよ」
「そうだなあ」
 
「さっさと結婚しないと、うちのお母ちゃんが、旭川で就職する玲羅をよろしくなんて言い出しかねないし」
「私はそれでも構わないけど」
 
「おばちゃん、ゆっくりしすぎだもん」
「うん」
 
と言って美輪子は少し考えるようにしていた。
 
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千里がその日練習に出ていくと
「大丈夫?」
と訊かれるが
「もう治りました」
と言って、元気にプレイする。
 
「千里、昨日よりまた進化した気がする」
と暢子から言われる。
 
ああ。出羽の気に触れたからかもと千里は思った。あそこはやはり凄いエネルギー・スポットだ。
 
「ちょっと出羽まで行ってきたからかも」
「でわ?どこ?」
「山形県かな」
「いつ行ったの?」
「昨夜。昨日あのあと帰ろうとしてたら緊急に呼び出されちゃってさ」
「ああ、千里ってよくあちこち呼び出されてるみたいね」
「深夜の青函フェリーで津軽海峡越えて、行ってきたよ」
「よく体力あるなあ」
「そのショックで体調も良くなったみたい」
「私も風邪の引きかけに10km走ったら治ったことあるな」
と暢子。
「なんか凄いですね」
とソフィアが感心したように言うが
 
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「この子たちは異常だから真似しないように」
と南野コーチが釘を刺しておいた。
 
 
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女の子たちの開幕前夜(8)

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