広告:メイプル戦記 (第2巻) (白泉社文庫)
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■女の子たちの開幕前夜(3)

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また宇田先生は「2年生以下から成るBチーム」を編成すると言い、メンバーを読み上げた。
 
PG.永子(23) 愛実(28) SG.結里(20) 昭子(24) ソフィア(27) SF.聖夜(30) 安奈(31) 海音(32) PF.志緒(22) 瞳美(29) 不二子(26) C.蘭(19:主将) 来未(21) 耶麻都(25) 紅鹿(33)
 
2年生9人 1年生6人である。紅鹿(べにか)は中学ではバレーをしていたというだけあり身長もジャンプ力もある。垂直跳びをさせたら70cmも飛んだ。春からずっとリバウンド中心に練習させている。海音(みおん)はミニバス出身で、中学時代はバスケ部が無かったので夏は水泳部・冬はスキー部で更に陸上部にも徴用されて駅伝なども走っていたらしいが、そういうスポーツをしていたことで基礎的な身体能力が鍛えられており脚力も腕力もあって今後の成長が期待される1人である。
 
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この15人と今回ベンチに入った1-2年生4人が秋以降のベンチ枠候補ということになるのだろう。
 
「先生、どうして背番号が19からなんですか?」
という質問が出るが
「16-18番は佐々木(川南)君・伊藤(葉月)君・歌子(薫)君にリザーブ」
と宇田先生は答えた。
 
「現地で他の高校の1−2年生チームと練習試合をしようということで、既に幾つかの高校と話しているから」
と先生は言う。
 
「U18でつながりができたので、私がその交渉仲介したんですけど、札幌P高校、福岡C学園、東京T高校、愛知J学園、秋田N高校、山形Y実業とは既に話が付いてますから」
と千里が補足する。
 
「そんな強い所のBチームって無茶苦茶強いのでは?」
と蘭が言う。
 
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「そこら辺のトップチームよりはずっと強いだろうね」
と千里は言う。
 
「ひゃー」
と蘭は言うが
 
「頑張れ、Bチームキャプテン」
と暢子が言うと
 
「頑張ります! よし、Bチームの子は毎日10kmジョギング、シュート300本やろう」
と蘭が言う。
 
「どうも鬼軍曹のようだ」
と来未が言った。
 

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7月5-6日の土日、DRKの5枚目のCDの録音を行った。
 
今回は田代君がインターハイ前の練習で忙しくて出席できないということで、蓮菜が指揮を執ることになった。加えて、千里と留実子も同様にインターハイの練習で出てこられず、大波さんも国体選抜チームの練習で出てこられないし、むろん美空もプロデビューしてしまったので参加できないということで、このようなパート割りになった。
 
Gt1 梨乃 Gt2 鳴美 B 智代 Dr 京子 Pf 花野子 Fl 恵香 Tp 鮎奈・美梨耶 Gl 蓮菜 Vn 孝子・麻里愛
 
11人編成で、ライア(竪琴)と龍笛が抜けてしまう。
 
そこで今回は編曲を担当した花野子が、純洋楽っぽいアレンジにした。また、美空が出られないし千里も出られないので、ボーカルは S.麻里愛 MS1.花野子 MS2.蓮菜 A.梨乃 というラインナップにした。梨乃は自分よりうちの猫の方が上手いとなど言っていたのだが、他にアルト音域を歌える子が居ないから、多少の音程のずれは目をつぶると言われて初めてのボーカル参加である。
 
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「猫は歌詞を歌えないし」
「猫はアルトの音域が出ないのでは」
「そうだなあ、あの子は男の子だし」
「だったらテノール?」
「うーん。猫の音域ってどうやって確認するんだろう?」
 
楽曲は4曲で内1曲は麻里愛が書いて自分でバンドスコアまで書いたものであるが(麻里愛はまだWindows XPでXG Worksを使っている)、残り3曲は千里がメロディだけ書いた曲を花野子が覚えたてのCubase LEを使って1ヶ月がかりで編曲したものである。この編曲の際に花野子はアヴリル・ラヴィーンが好きということでライト・ポップっぽいアレンジにまとめた。
 
しかし今回はいつもみんなをまとめてくれている田代君がいないことから制作は迷走に迷走を続ける。スコアも何度も変更され、とうとう7日は途中で一度「ブレイクを入れよう」ということでみんなで甘味処に行って善哉やお団子を食べ、それからまたスタジオに戻って、夜9時まで掛けて何とかまとめた。
 
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しかし演奏の録音をするまでが精一杯で、ボーカルは翌日放課後にボーカルの4人だけ再度集まって別途録音し、ミックスダウン・マスタリングは次の土曜に花野子と蓮菜・麻里愛の3人で再度スタジオを1日借りて技術者さんと一緒に行った。なかなか難産の制作であった。
 

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「次の制作はいつにするんだっけ?」
と花野子が訊くと
 
「教頭先生からこの活動は10月31日までと言われているんだよね」
と蓮菜が言う。
 
「だったら10月25-26日にやる? それなら田代君も多分出られるよね?」
と麻里愛。
 
それで蓮菜が田代君に電話したら自分は大丈夫だけど、その日程は千里がU18の大会直前で出られないのではと言った。今回実は龍笛の音を入れられなかったので麻里愛が書いた叙情豊かな『白い記憶』という曲が使えず、急遽書いた別の曲を使用した。あれはぜひ次回には入れたい。
 
それで蓮菜は千里に電話してみる。
 
「ごめーん。10月25-26日はU18の合宿中の可能性がある」
と千里は言う。
「でも3年生は部活は9月で終わりじゃなかったの?」
と蓮菜は訊く。
 
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「それがU18代表に選ばれる可能性があるんだよ。落とされた場合は9月で終了だけど、代表に選ばれた場合は、10月4-6日(*1)と25-29日に合宿やって、その後、30日から11月10日までインドネシアに行ってくることになる」
 
(*1)実際のU18合宿は10月11-13日に行われていますが、物語の都合で変更しています。
 
「インドネシア〜?」
「そこのメダンってところでアジア大会があるんだよ」
 
「大変だね。その前の週は行ける?」
と蓮菜。
「うん。18-19日は今の所予定入ってない」
と千里。
 
「じゃ、その日程で最後のDRKの録音をしよう」
と麻里愛も言って、DRKのラストCDは10月18-19日に制作をすることになった。
 

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7月上旬、インターハイ出場メンバーが川南も含めて保健室に呼ばれる。南野コーチと保健室の山本先生から、健康管理に関する注意があらためてなされた。
 
「全部員にも言っているけど、風邪を引いたかもと思ったら無理せず休むこと。他の子に移したら被害が拡大するから、これは守って欲しい」
 
「他の子たちにはまた直前に言うけど、風邪薬や頭痛・生理痛などの薬の大半がドーピング検査に引っかかるから」
と言われ、実際に山本先生が、問題のある薬とOKな薬のパッケージを目の前に並べてくれた。
 
「ほんとに飲める薬が少ないですね」
 
「この手の薬の影響は数日で消えるから、今の時期に風邪を引いた場合は、強い薬を使ってもいいし、それでさっさと風邪を治した方がいい。でもインハイ直前になったら飲まないように気をつけて欲しい」
と南野コーチは補足する。
 
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「葛根湯がダメってのは、葉月が注意されてたので覚えました」
という声もあがる。
 
「それから生理周期確認のために基礎体温をみな測って欲しいんだけどデジタル式の婦人体温計持ってない子居る?」
 
「普通の体温計じゃダメですか?」
「小数点以下2桁までチェックしたいのよね」
 
ということで持っていない子は学校のを借りることにする。
 
「これまでの周期で考えた場合にインハイ中に来そうな子居る?」
 
「私は6月25日に来たから次は7月23日くらいだと思う」
と暢子が言う。
「直前に来てくれるというのはいちばん理想だね」
と南野コーチ。
 
「僕のは周期全然当てにならないからピル使ってコントロールしますから」
と留実子が言う。
 
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留実子の生理周期は聞いていると本当にメチャクチャのようである。ブロックエンデバーの時に早生さんが持って来ていた「性別チェッカー」でも針が大きく触れて、卵巣の調子が良くないことを示唆していた。
 
「千里も私と同じ頃来てたよな?」
と暢子が訊く。
「うん。私は6月26日に来たから次は多分7月24日」
と千里も答える。
 
寿絵が
「私は7月1日に来たから7月29日に次は来ると思います」
と答える。
「ぎりきり直前という感じか」
「ええ。だから大きな問題は無いと思います」
 
夏恋は
「私は今来てるんです。だからインハイが終わった直後くらいに来そうです」
と答える。
 
睦子・メグミもやはりインハイ直後に来そうということだったが、敦子はインハイ中にぶつかりそうということだった。
 
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「でもこれまでも生理が大会にぶつかったことは何度もありますけど、何とかなってますから大丈夫だと思います」
「うん。じゃ生理痛とかになった場合は、山本先生に相談してね」
「はい、分かりました」
 
「雪子ちゃんは?」
「私は6月27日に来たんです。次は7月25日だと思います」
「じゃ大丈夫だね」
 
「暢子さん・千里さん・雪子がちょうど1日ずつずれているのか」
と揚羽が言ったところで、一部の子から質問が入る。
 
「千里さん、生理あるんでしたっけ?」
 
「千里に生理があることはこれまでの数々の経緯から確実」
と暢子が言い
 
「へー!」
と感心するような声は上がるものの、そのままスルーされて、他の子の生理周期の確認が進んでいった。
 
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2008年7月12日(土)。旭川N高校の《新生男子バスケ部》のメンバーは札幌市に向かった。この土日で行われる札幌ポテチ・カップというカップ戦に出場するためである。参加はスポーツ保険に入っている道内の男子高校生バスケ・チームなら、学校の部活でも任意編成のチームでも参加できるが、インターハイ出場校は出ない習慣である。(ちなみにこれは男子のカップ戦で、女子は8月に札幌札幌スイートポテトカップというのをやる。こちらもインハイ出場校は出ない。男女の日程を分けるのは例によって会場確保の都合である)
 
N高校男子はインターハイ出場を逃して、北岡君たち3年生は引退し、2年生以下のチームになっている。
 
2年生
PG.二本柳(11) SG.湧見(6) SF.大岸(5) 浦島(7) PF.水巻(4) 道原(晃8) 道原(宏9)C.服部(10)
1年生
PG.武蔵(14) SG.秋尾(15) SF.浮和(13) PF.小村(16) 引田(18) C.国松(12) 沢井(17)
 
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水巻君が新しいキャプテンであり、10月から正式に男子バスケ部の部長に就任予定である。昭ちゃんは、部長・副部長に次ぐ6番の背番号をもらった。地区大会のスリーポイント王も取っているのだから当然の扱いだが、
 
「ボク、こんな凄い番号もらっていいんでしょうか?」
などと言って焦っていた。
 
そしてここ1年でいちばん成長した浦島君が7番である。
 
マネージャーは例によって最近男子バスケ部のマネージャー役として定着している志緒が帯同している。しかし志緒はこの男子バスケ部のメンバーの大半より強い。マッチアップで勝てるのは水巻君くらいである。
 
「マネージャーというよりコーチだな」
などと川守先生が練習の様子を見て言っていた。
 
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「ボクも志緒ちゃんには勝てません」
などと水分補給のためにコートから下がって川守先生や北田コーチのそばにいた昭ちゃんが言う。
 
「1年前は男子は女子の練習相手になれたんだけど、かなり水をあけられたな」
と北田コーチは言っていた。
 
「私は素人の目ですけど、男子の方が体格やスピードは上回っているのにシュート自体の入る確率が違うし、マッチアップに勝てないからボール取られるし」
と川守先生も言う。
 
「湧見先輩はどうしてあんなにシュートが入るんですか?」
と1年生でシューティングガードに配置された秋尾君が訊く。
 
「ボクは入れ〜と念じながらシュートするんですけどねー」
と昭ちゃん。
 

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女の子たちの開幕前夜(3)

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