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■女の子たちの開幕前夜(4)

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その時、運営の腕章を付けた女性が寄ってきて、昭ちゃんを見て
 
「旭川N高校さんですよね、ちょっと来てください」
と言う。
 
「あ、はい」
と言って、昭ちゃんは何となくその女性に付いていった。
 
連れて行かれた小部屋には女子高生が30人ほど集まっている。昭ちゃんが入っていくと、ホワイトボードの前に立っていた女性が書類の束を渡した。
 
「あと来てないのはどこかな?」
「札幌D学園さんも今呼びに行ってますから、もうすぐ来ると思います」
 
それで1分もしないうちにD学園のユニフォームを着た女子が入ってくる。
 
「これで揃ったかな。では説明を始めます。コートの割り当ては試合進行の状況に合わせて都度決めていきますので、時々大会本部そばの掲示を見に来て各チームの選手が遅れないように気をつけてください。この大会は負けオフィシャル制で、負けたチームの内、登録番号の若い方が次の試合の審判、他方がテーブル・オフィシャルズをしてもらいます。ゴミは基本的に持ち帰るようにしてください」
 
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などと前に居る人が説明をしている。昭ちゃんは、あれ〜、なんでボクはここに呼ばれたんだろう、などと思い始めていた。
 
その時、最後に入って来たD学園のユニフォームを着た女子が昭ちゃんを見て言った。
 
「あれ、そこに居るの湧見さんですよね? なんでここに居るの?」
 
「ボクもよく分かりません」
と昭ちゃんは答える。
 
「ん? 君、旭川N高校のマネージャーさんじゃないの?」
と前で説明していた人。
 
「この人、選手ですよ」
とD学園の子。
 
「え?女子なのに男子の試合に出るの?」
「この人、男子です」
 
「えーー!?」
という声があちこちからあがる。
 
「こないだのインハイ道予選でも、スリーポイント王をうちの熊谷と最後まで争ったんですよ」
とD学園の子。
 
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「ごめーん。私、女子がいるから、てっきりマネージャーさんだと思い込んで連れて来ちゃった」
と昭ちゃんをここに連れてきた女性。
 
「いや、いいですよ。話聞いておいて、うちのマネージャーに伝達しておきますから」
と昭ちゃんが言うので、マネージャー向けの説明はそのまま続けられることになった。
 
なお、この大会では昭ちゃんの活躍で旭川N高校はBEST4まで行って賞状と副賞のポテチ30袋をもらって帰って来た(ポテチは旭川に戻るまでに全てメンバーの胃袋の中に消えた)。
 
また例によって、大会の様々な雑用は、二本柳君や浦島君、1年生の秋尾君たちがやってくれたので、志緒はスコアをつける以外の仕事は一切する必要もなく「天国天国」と言っていた。
 
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その週、千里は貴司の両親や妹さんたちと一緒に礼文島に行っていた。
 
貴司の祖父の法要が行われたのである。
 
貴司の祖父は6月9日に亡くなったので四十九日は7月27日(日)になるのだが、もうお盆に近くなってしまい、初盆の行事まで慌ただしくなってしまうので、三十五日に当たる7月13日(日)で繰り上げ法要をして忌明けにしようということになった。
 
12日土曜日の早朝から貴司のお父さんの運転する日産セフィーロで拾ってもらい、稚内に向かう。運転席がお父さん、助手席がお母さんで、後部座席に千里・理歌・美姫と並ぶ。
 
「千里ちゃん、ごめんねー。貴司が来られないというのに」
「いえ。私は貴司さんの名代ということで」
 
貴司は最初来る予定だったのだが、会社の本業の方で急用ができて来られなくなってしまったのである。千里は来年の春まで貴司には会えないという話だったもんなあと思っていた。
 
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運転は実際にはお父さんとお母さんが交代で運転し、朝6時に出て稚内に10時頃到着した。10:50のフェリーに乗って12:45に礼文島の香深(かふか)港に到着する。
 
「かふか」って『変身』みたいと千里は思った。《変身》することに憧れていた小学生時代、カフカ作『変身』という小説があることを知り、小学校の図書館にあったのを読んでみたものの、思っていたのと全く違うので千里はがっかりしたものである。しかもそのまま疎んじられて死んでしまう結末にどうにも割り切れないものを感じた。大人になってから思えば、安部公房の『赤い繭』の原点のような作品にも思えるのだが、さすがに小学生には理解できない小説であった。
 

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法事は明日なのだが、その日はたくさん親戚が集まっているので、もう宴会の様相である。こちらがまだお昼を食べていないというと、まずはうちで獲ったものだけどということで、お刺身が出てくる。
 
「美味しい! これホッケですよね?」
「そうそう。新鮮なのでないと刺身にならないんだよね」
「あ、イカもあるよ」
 
ということでお魚も色々出てくる。更にはコップに何か注がれて
「どうぞどうぞ」
などと言われる。千里はサイダーか何かと思い飲んでみたら、喉がパニックである。
 
「これお酒ですか?」
「そそ。焼酎だよ」
「私、未成年ですー」
「貴司の嫁さんなんだろ? 結婚したらもう大人だよ。成年擬制といって法律にもちゃんと定められているんだから」
 
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※成年擬制の適用範囲はあくまで民法上の行為などに限られ、公法には及ばない。従って結婚していても未成年者飲酒禁止法の適用外にはならないし、選挙権も無い。
 
なんだかうまく丸め込まれて結局千里は焼酎を3杯も飲まされた。
(そこで貴司のお母さんが気付いて停めてくれた)
 
千里が漁師の娘でお魚もさばけるという話を聞くと、手伝ってと言われて実際にお魚をさばくことになる。
 
「あんた上手だね」
「母からだいぶ仕込まれました」
 
「ホッケは時々寄生虫がいるから気をつけてね」
と伯母さんから言われる。
 
「アニサキスですか?」
「そうそう。アニサキスのでかいの(シュードテラノーバ)がいる」
「アニサキスより大きいなら見付けきれると思います。サバとかさばく時にも母から注意されました」
「だったら大丈夫かな」
「疑問を感じたら訊きますね」
「うん。よろしくー」
 
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しかし調理のほうを担当していると、お酒を勧められる心配も無いので助かった。お母さんが目を離していたら中学生の理歌までお酒を飲まされていた。
 

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翌日。法事はおとなの人は喪服だが、千里や理歌・美姫は学生なので学校の制服(むろん女子制服)で参列する。お寺のお坊さんがたくさんお経を上げて(ほんとに長かった!)それから焼香し、お坊さんの話を聞く。この話がまた長い!結局ここまでで1時間以上かかった。
 
その後、みんなで納骨に行き、お墓でまた長いお経をあげて、納骨を済ませた。そこまで終わると精進落としとなるが、要するに宴会である。貴司のお父さんは「帰りに運転しないといけないから」と言っていたのに、それでも強引に飲まされる。お母さんも断っているのに、やはり飲まされる。千里は配膳の手伝いや、既に柵の状態になっているお魚を刺身に切ったり、おひたしなどを作ったり盛ったり、おにぎりを作ったりなどに徴用してもらったおかげで、この日はアルコールは飲まされずに済んだ。
 
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結局お昼近くまで宴会をした後で、伯母さんが千里・理歌・美姫の3人を
「あんたたち、ここにいたら、またお酒飲まされるから」
と言って外に連れ出してくれた。伯母さんの高校生と中学生の息子たち(貴司や理歌たちの従兄弟)は、むしろ好きこのんでお酒を飲んでいる。
 
車は島の南西の方に向かった。
 
「高い山が見える」
「あれは利尻岳だよ」
「じゃ、あそこはもう利尻島ですか」
「そうそう」
 
利尻岳は1719m, 礼文島にも礼文岳があるが490mという小さな山である。
 
伯母さんは猫岩というところに連れて行ってくれた。遠景になったので双眼鏡で見る。
 
「ほんとに猫に見える!」
と美姫が喜んでいる。
 
「こちらの岩は桃岩というんだよ」
「確かに桃にも見えるけど・・・」
と千里が言ったら
「私にはおっぱいに見える」
と理歌が言った。
 
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他の3人もそれに同意していた。
 
「おちんちんも付いてますね」
 
桃岩の途中に柱状の岩があるのである。
 
「おっぱいもあっておちんちんもあるならニューハーフさんですね」
などと理歌は言っていた。
 

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祖父宅を15時すぎに引き上げ、香深港を16:30のフェリーに乗って18:25に稚内に戻って来た。貴司のお父さんは船中でも他の親戚と日本酒を飲んでいた。
 
稚内でみんなでラーメン屋さんに入ってから解散する。千里たち一行はおやつを買うのにコンビニに入った。
 
そして、車で旭川まで戻らなければならないのだが、お父さんはかなり酔っている。「あなた運転しないといけないこと忘れてたでしょ?」とお母さんから叱られている。
 
「すまん」
 
「お母さん運転できる?」
と理歌が訊く。
 
「無理な気がする」
と言ってお母さんはアルコール・チェッカーで確認していたが、まだかなり濃度は高いようだ。
 
「お母さん、今日はどのくらい飲んだんですか?」
と千里が訊く。
 
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「お昼頃、焼酎を2杯飲んだのよ」
 
千里は携帯のアプリでアルコールが抜ける時間を計算してみた。
「それ抜けるのに10時間かかりますね」
「あ、そんな気がした」
「お父さんの抜ける時間計算できる?」
「お父さんどのくらい飲みましたっけ?」
「お昼頃、焼酎を7杯、フェリーの中で日本酒を3杯」
「計算では抜けるのに27時間かかります」
「ああ、そのくらいだと思うよ」
とお母さんが言う。お父さんは済まなそうにしている。
 
「どうする?夜中まで待つ?」
「私お酒に弱いからたぶん計算で出る時間より長く、2時頃まで待った方がいいと思うのよね。でも1人で運転すると休憩が必要だから」
 
千里はこの状況は仕方ないなと思った。
 
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「私が運転しますよ」
「千里さん、運転できるんだっけ?」
「免許は持ってませんけどね」
 
それで、助手席にお母さんが乗って、一緒に警戒してくれることになり、千里が運転席に座り、お父さんは後部座席に乗ったものの、2人の娘から
「お父さん、酒臭い」
と言われて、少し落ち込んでいた。
 
セフィーロを発進させる。
 
「他の親戚はどうしたんでしょう? 網走の伯父さんとか札幌の伯母さんとか」
「たぶん飲酒運転」
「ああ」
 
千里が丁寧に車を出してゆっくりと加速すると、後部座席のお父さんが
「千里ちゃん、巧いね!」
と褒めてくれた。
 
お母さんは早くアルコールが抜けるようにたくさん水を飲んでいた。
 
「千里ちゃん、随分運転するの?」
「それは内緒で」
 
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私ってどれだけ運転したんだろう?と考えてみる。最初は去年の5月に紀伊半島で夜中にマジェスタを運転した。その後、東京でヴィッツを運転、8月に深川から札幌までボルボを運転して・・・と考えた時、北原さんのことを思い出して胸が痛む。その後、10月には熊本から宮崎までRX-8を運転。このRX-8を運転したので千里自身かなり運転に自信を持つことができた。その後、11月に北見から層雲峡までミラージュを運転。年明けてから1月にエンツォフェラーリとゴルフ・カブリオレ、その後ランエボ、エルグランド・・・・
 
などと考えていたら、私なんでこんなにたくさん運転してるのよ!?と自分で疑問を感じた。後ろできーちゃんが何だか笑っていた。
 
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お母さんはなかなかアルコールが抜けなかったので、結局、千里が旭川まで運転して、そのあとファミレスで一緒に夜食を食べてからやっとお母さんの運転で留萌に戻っていった。千里たちが旭川に着いたのが夜1時頃であった。
 

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「ポリープができちゃった!?」
 
黒羽の報告に、プロデューサーの麻生さんも、逢鈴と光帆も半ば驚き、半ば困惑した。
 
「お医者さんからは私の声の出し方が喉に負担を掛けているので、それでこういう事態になったのではないかと指摘されました」
 
「で、どうするの?」
「お医者さんからは手術すべきだと言われています」
「確かにここで治療せずに無理してて声が出なくなっちゃったりしたらまずいよね」
と麻生さんも困った顔をしながら言う。
 
「録音の方はどうしましょうか?」
と逢鈴が訊く。
 
碧空が離脱してしまったので、XANFASは結局アレンジを変更してもらって3声にして、再度録音作業をしようとしていた矢先の黒羽のトラブルである。
 
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「キーボードとかなら弾けるんですけど、声があまり出せないかも」
と言っている黒羽の声は少しかすれている。
 
麻生さんはしばらく考えていた。
 
「入院はどのくらいかかる?」
「順調であれば3日でいいそうです。ただし手術後1週間はしゃべるのも禁止だそうです」
 
「黒羽ちゃんさ、XANFASへの参加自体は継続したいんだよね?」
「ええ、できれば」
 
「だったら、こうしようか。今回はボーカルは逢鈴ちゃんと光帆ちゃんの2人でいき、黒羽ちゃんにはキーボードを弾いてもらう」
 
「いいんですか? それ嬉しいです」
と黒羽は言う。
 
「じゃ、またアレンジ変更してもらうから」
「その間に私は手術を受ければいいですね」
 
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「そういうことになるね」
 
光帆はその話を聞きながら、このプロジェクト、まだ何か起きそうだなという予感がしていた。
 
 
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女の子たちの開幕前夜(4)

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