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■女の子たちの開幕前夜(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-02-21
 
 
2008年7月19日(土)、旭川N高校女子バスケット部のインハイ登録メンバー+αが登別市にやってきた。この連休(19-21)に登別市および隣接する室蘭市で道民バスケット大会が行われるのである。
 
本来は社会人の大会で高校生は参加できないのだが、今回は5月のシニア大会同様、ゲスト参加ということで参加させてもらった。ゲストではあっても今回はしっかりトーナメントに組み込まれている。旭川N高校だけ特に許可をもらって参加したのだが、そのあと釧路Z高校が参加したいと言い、更にそれを聞いた札幌P高校と旭川L女子高も参加を表明。あわせて許可をもらって、高校生チームが4つ出場することになった。
 
レベルの高い社会人チームの大会で、高校生チームが参加してもどうせトーナメントの下の方で負けるだろうと思われたこと、そして女子は元々参加チームが少ないことから許可してもらったようである。
 
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この大会、男子はABC3クラスに分けられるほど参加チームが多いのだが、女子は全道で23チーム。ゲスト参加の高校生チームを入れても27チームしかない。なお男子のACクラスは先週江別市で実施されており、今週室蘭・登別で行われるのは、男子Bと女子である。
 
なお、N高校・L女子高・P高校は学校のバスに乗り、交通費宿泊費も部費からの支出で来ているが、Z高校は予算が取れず、メンバー15名・マネージャー1名・TOチーム4名と監督が全員交通費自費で来ている。学校のバスを参加者共同でチャーターする方式だったらしい(バス会社に頼むよりは安い。運転は保護者2名で交代で運転)。特に3年生はこの時期修学旅行で東京に行くはずだったのが、その費用を振り替えてもらっての参加で、本当にご苦労様である。ゲスト参加するのに協賛金を求められたのだが、それはN高校がZ高校の分まで払ってあげた。
 
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「それで、どうせ高校生チームはみんな最後までは残れないだろうしということで、20-21日には、空いている会場を借りて4校でリーグ戦をしようということにしたから」
と宇田先生が言う。
 
この4校は先日インターハイ道予選の決勝リーグを戦ったので、その再現になるのだが、今回は《非公開》+《撮影禁止》でやろうという話になった。P高校・N高校としてはインハイ前に強い相手とのシミュレーションをしたいし、L女子高・Z高校もウィンターカップをにらんで、本気の強豪校との試合を体験してその刺激によるレベルアップを図りたいということで、4校の利害が一致したのである。
 

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北海道の形はよく菱形に見立てられるが、その大きな菱形の底に当たる襟裳岬と、西南に細く延びる渡島半島(南端付近に函館がある)との間に、実は小さな菱形が飛び出していて、その底の所に室蘭(むろらん)市はある。
 
この小さな菱形の右側の付け根が苫小牧(とまこまい)で、左側の付け根付近には長万部(おしゃまんべ)や洞爺湖(とうやこ)町がある。洞爺湖町の近くに洞爺湖や昭和新山、苫小牧の近くには支笏(しこつ)湖がある。
 
室蘭市の南側は絵鞆(えとも)半島という半島になっており、この絵鞆半島の南端が有名な《地球岬》である(南端だが先端では無い。絵鞆半島の先端は北西に伸びている)。室蘭市の東側に隣接する登別(のぼりべつ)市は言わずと知れた温泉の町であり、その近くには倶多楽(くったら)湖がある。
 
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今回の道民大会のメイン会場は室蘭市体育館なのだが、1回戦の一部の試合を登別総合体育館でも行う。登別の方は20-21日は大会の主催者が予備で押さえていて実質空いていたので、それを又借りして4校リーグ戦をすることにした。
 

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N高校の今回のメンツはこうなった。
 
PG 雪子(7) メグミ(12) SG 千里(5) 夏恋(10) ソフィア(17) SF 寿絵(9) 敦子(13) 絵津子(15) 薫(18) PF 暢子(4) 睦子(11) C 留実子(6) 揚羽(8) リリカ(14) 蘭(16)
マネージャー 瞳美 TO 志緒・来未・結里・昭子
 
志緒は二週連続の遠征だが、そもそもあちこち行くのは好きなようで楽しそうにしていた。
 
なお、残った女子部員たちは同じ日程で校内の施設で白石コーチと川南・葉月が指導者役になってミニ合宿をしている。また男子は旭川近郊の少年自然の家で合宿をしている。昭子は男子の合宿に参加させるのは問題ありだが南野コーチの目の届かない所で川南・葉月にセクハラまがいのことをされてはと考えて今回の遠征に参加させた(本人はセクハラされて喜んでいるのだが)。結局昭子も2週連続の遠征である。
 
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「昭ちゃん、先週は男子の試合で今週は女子の試合なんだね」
「本当はこちらも選手として出たいんですけど」
「早く性転換しちゃいなよ」
「だんだんしたい気持ちが強まってます」
 
「でも昭ちゃんはもうほとんど女子だし、今回の遠征では男性は宇田先生だけなんですね」
と志緒が言った。
 
「先生は性転換して女性になる気は?」
「残念ながらそれは無い」
「先生が女になっちゃったら奥さんが困るよ」
「それより娘さんがショック受けそう」
「お嬢さんいらしたんでしたっけ?」
「今中学生なんだよ」
「バスケは?」
「興味無いようだ」
「あらら」
 
「でも戸籍上男性というのが宇田先生以外に3人いるけどね」
と南野コーチ。
 
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「え?3人ですか? 薫さんと昭子は分かるけど、あと他にもいましたっけ?」
と志緒。
 
「あ、私男だよ」
と留実子が言うので
 
「えーー!?性転換しちゃったんですか?」
と志緒。
 
「したいけど、性転換すると女子の試合に出られなくなるから」
と留実子。
 
「千里が戸籍上は男子なんだけどね」
と横から寿絵が言うと
 
「忘れてた!!!」
と志緒は言った。
 

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「でも、志緒、こないだから何度も男子チームのマネージャーやって、性転換して男になったらレギュラーにするぞとか言われてたでしょ?」
「ちょっと心が揺らぎましたよ」
「実際志緒のレベルなら男子チームなら1桁の背番号もらえるはず」
 
「いや、レギュラー枠は欲しいけど、私が性転換したらお母ちゃんがショック死するかも知れないし。ちんちんはあってもいい気がするけど」
 
「まあ、千里や薫や昭子や留実子の親はそのショックを受けているんだけどね」
「わあ、可哀想」
 
なお、今回は宿泊は宇田先生が個室、昭子・留実子は南野コーチと一緒、薫は敦子・睦子・夏恋と同室である。ちなみに千里は暢子・寿絵・メグミと同室になっている。(寿絵は薫と別室にしないと、寿絵が薫の肉体疑惑探求に燃えているので薫の貞操?が危険である)
 
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初日1回戦。登別のコートで対する相手は釧路のクラブチームである。
 
ここにわざわざ遠征までしてくるチームは、充分強いのは分かっているので、雪子/千里/薫/暢子/留実子というメンバーで出て行く。薫にとっては初めて出場できる女子の道大会である。
 
序盤から激しい戦いになった。千里たちは11月にも総合でクラブチームと対戦しているが、あの時当たったチームともそう変わらないのではないかというくらい強かった。最初の内、暢子が相手に停められたりするし、ゴール下の戦いで留実子が競り負けたりするし、序盤は相手がリードする展開になる。
 
しかし強い相手に奮起したメンバーは気合いを入れ直して反撃。薫もJ学園戦以来の本格的な相手に100%戦闘モードになって、相手の強烈なボディアタックにも全くひるまない。それで第1ピリオドが終わってみると18対24とこちらがリードしていた。
 
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第2ピリオドは、メグミ/夏恋/寿絵/リリカ/揚羽とメンバーを一新して出て行く。すると5人とも第1ピリオドを見ていて各自脳内シミュレーションしていたようで、そう簡単には相手に負けない。それでこのピリオドを20対20の同点で持ちこたえる。
 
第3ピリオド最初は雪子/ソフィア/薫/暢子/留実子で始め、その後順次メンバーを入れ替えて、全員を出す。このピリオドは全員に強い相手を体験させることを主眼にしたので24対20とリードされる。ここまで62対64である。
 
第4ピリオドはメグミ/千里/薫/暢子/揚羽で始める。これで前半相手と6点差まで引き離した所で、雪子・寿絵・留実子を投入する。相手がそろそろ疲れてきたこともあり、更に点差を広げて、最終的には80対92で勝利した。
 
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挨拶して握手した後、相手チームの人たちが
「あんたたち強いね〜。さすが総合で優勝しただけのことあるよ」
と褒めてくれた。
 
他の高校生チームであるが、P高校は苫小牧のクラブチームに勝利、L女子高は専門学校生チームに競り勝ち、Z高校は室蘭の地元クラブチームに前半大量リードされたものの、後半に物凄く頑張って逆転勝ちした。
 
それで4チームとも午後の2回戦に進出した。
 

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2回戦は全て室蘭市体育館で行われるので、そちらにバスで移動した。
 
N高校の相手は11月の総合にも出ていたチーム、クロックタワーであるが、あの時は直接当たっていない。またここのOGの人たちと先日のシニア大会で練習試合をしている
 
ここも充分強いのは分かっているので、今度は雪子/千里/絵津子/寿絵/揚羽といったメンツで出て行く。
 
正直今年のインターハイで鍵を握るのは絵津子ではないかと千里は思っていた。絵津子は元々凄く上手かったが、昨年夏に出会ってから、練習メニューを渡していたらそれをしっかりこなして技術を上げている。また彼女が属していた中学のバスケット同好会はほとんど試合を経験していないということだったので、コネのある中学のバスケ部Bチームとの試合をどんどんセッティングして試合経験を積ませた。
 
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そしてN高校入学以来、強い選手に揉まれ、またインハイの地区予選・道予選、嵐山カップ、シニア大会、P高校との練習試合、と試合に出て本当に強い相手との対戦も経験した。
 
それで彼女は物凄く強くなってきている。また新入生の中で、彼女とソフィア・不二子の3人が似たような位置づけなので、その3人の間のライバル心も良い方向に働いているようだ。特に3人の中で今の所は最も下手なソフィアが物凄い勢いで絵津子と不二子を追い上げてきているので、ふたりとも追い抜かれまいと練習に熱が入っているのである。
 

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それでこの試合も絵津子がひじょうに大きな活躍を見せた。パワーもスキルもある社会人選手たちを、ほとんどそのセンスと勘だけで交わしてボールを運んでいきシュートを撃つ。彼女は今の段階では経験が無いゆえによけいな固定観念無しで、素直に相手の意識が集中している側を見分けているのである。
 
試合中、ふと視線を感じて客席を見ると、P高校の猪瀬さんが凄い怖い顔で絵津子を見つめているのに気付いた。来年の新人戦道大会では、恐らく猪瀬さんと絵津子が対決することになる。
 
絵津子はこの試合前半で16得点もしてその成長をアピールしてくれた。彼女の活躍で前半を34対44で折り返す。
 
後半は絵津子・寿絵に替えて薫・暢子を出す。すると相手の疲れが出始めた所にふたりが競り合うように得点を重ねていく。最終的に62対96の大差で勝利した。
 
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試合が終わり挨拶握手を交わした後で
 
「総合で見た時より更に強くなってる。インハイ頑張ってね」
と声を掛けてもらった。
 
「はい。頑張ります。また機会があったら手合わせしてください」
と暢子も笑顔で返事した。
 
N高校の次の時間帯で行われたP高校の試合。こちらの試合を見ていた佐藤さんや宮野さん、そして絵津子の活躍に刺激された猪瀬さんたちが物凄く頑張り、相手は強豪の教員チームではあったものの15点以上の点差で圧勝した。
 
残りの2校であるが、L女子高は札幌の大学生チームに10点差で敗れ、Z高校も室蘭の企業チームに当たって20点差で負けた。しかし松前さんは「今日負けたチームに次は勝てるくらい頑張るぞ!」と気勢を挙げていた。
 
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「いや、ノノちゃんのあの超ポジティブ思考って、見習わないといけないかもと思うよ、私は」
と暢子が言う。
 
「彼女にちゃんと付いてきている部員たちも偉いと思う」
と千里はコメントしておいた。
 

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さて2日目であるが、予定では高校生4チームは初日で敗退して2日目以降は登別で練習試合をするつもりだったのだが、N高校とP高校が勝ち残ってしまった。それで初日で負けたL女子高とZ高校は午前中に練習試合をすることにしたのだが、コートが余ってしまう。
 
するとその話を会場ロビーでたまたま聞いた、クロックタワー(N高校2回戦の対戦相手)および、そことつながりのある宗谷郡から参加したリングクロスというクラブチームが「空いてたら使わせて」ということで、空いているコートで練習試合をし、その後、組合せを替えてL女子高−クロックタワー、Z高校−リングクロス、L女子高−リングクロス、Z高校−クロックタワーという試合もすることになった。
 
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結果的にはこの4チームでリーグ戦をする形になる。
 
一方室蘭ではこの日、男子の2回戦・準々決勝と女子の準々決勝が行われる。男子の2回戦が午前中に行われ、男女の準々決勝は午後からである。そこでN高校のメンバーは朝から軽い練習をした上で会場に入り、男子の試合を見学したり、休憩したりと、時間の過ごし方は各自に任せた。
 
ところが絵津子とソフィアは蘭・結里と誘い合って、トレーニングルームでたくさんシュート練習をやっていた。それを見た寿絵が
 
「あんたたち、試合前に疲れるほど練習してどうする?」
と言ったものの
 
「試合はまた頑張ります」
などとソフィアは言っていた。千里はその様子を見て微笑ましく思った。
 
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女の子たちの開幕前夜(5)

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