広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■女の子たちの新生活(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-01-16
 
2008年4月。千里は高校3年生になった。
 
始業式にふつうに女子制服を着て出席する。思えば1年生に入った時は丸刈りで男子制服を着ていた。でも1年生も後半になるとしばしば女子制服で学校に出て行くようになり、昨年は始業式でこそ男子制服を着たものの、その後なしくずし的に女子制服を着ていくことが多くなり、夏以降はもう女子制服しか着なくなってしまった。
 
たぶん今年はもう男子制服を着ることはないだろう、と千里は思う。
 

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千里たちのクラスであるが、千里は3年6組になっている。2年6組と同様に国立理系狙いのクラスなので、クラスの顔ぶれはほとんど2年の時と変わらない。法学部狙いの孝子など文転した数人が5組に移動になった程度で、逆に他の組から6組に来た子は居なかった。
 
5組が国立文系狙い、4組がその他の大学進学組、3組が短大コースと音楽コースで1−2組が情報・ビジネス・福祉コースである。短大コースに女子が多数入ったことで、1組は2年生では女子クラスだったのがバランスが崩れて、どちらも共学クラスになっている。その代わり3組はほぼ女子クラスになり、男子はわずか5名という状況になった。
 
「あんたたちもいっそ女子にならない?」
「いや、歌子みたいにチンコを放棄する気にはならん」
 
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などと会話が交わされていた。薫も短大コースを選択して3組になっている。
 
しかし3組ではしばしば女子生徒が平気で教室で着替えたりするので
 
「お前ら、恥じらいを持て〜〜〜〜!」
と数少ない男子から言われたりしていた。
 
他のクラスの男子からは
「女子の下着姿見られるなんて羨ましい」
などとは言われたものの、彼らは女子が着替え始めたりすると自粛して目をつぶったり後ろを向いたりしていたようである。
 

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今年は4月7日が始業式で新学期早々、4月10日に身体測定と内科検診、X線検査があった。1年の時はクラスメイトの好奇の目にさらされながらも女子と一緒に検診を受けた千里も3年生になると、何の戸惑いもなく他の女子たちと検診に出かける。他の子も特に千里に特別な目は向けない。ふつうにおしゃべりしながら千里はX線検査を受け、内科の検診を受けた。
 
お医者さんは千里の胸・お腹・背中に聴診器を当て、問診票も見ながら幾つか質問をする。
 
「貧血とかで立ちくらみを起こしたことはないですか?」
「ええ、無いです」
「生理は定期的に来てますか?」
「はい。28日周期でピタリと来ます(多分)」
 
多分と内心付け加えたのは、時間がしばしば飛ぶので自分では周期もよく分からないからである。
 
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「前回の生理はいつありました?」
「3月30日です。ちょうどバスケの大会だったので苦労しました」
「ナプキン使ってるの?」
「はい。ナプキンをガムテープで固定してガードル穿いて出ました」
「それは大変だったね」
 
と女医さんは笑いながら答えている。
 
「タンポンとかは怖い?」
「怖いです!」
「まあナプキンで何とかなるならいいか」
と先生は言って開放してくれた。
 
服を着ていたら次の番の梨乃から突っ込まれる。
 
「千里って生理あるの?」
「あるけど」
「なんであるの?」
「だって私女の子だもん」
 
梨乃は何だか悩んでいる。鮎奈が笑いながら言う。
 
「千里は去年の検診までは、後から自分は生理そのものが無いから生理の乱れも無いなんて言ってたね」
 
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「うん。でも今は規則的に来てるんだよね〜」
「千里、生理っていつから始まったの?」
「うーんとね。去年の5月24日に最初の生理があったよ」
と千里は手帳のカレンダーを見て言う。
 
「高校2年で初潮というのは随分遅いね」
「うん、私、奥手だから」
と千里が言うと、鮎奈は吹き出した。
 

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バスケ部は春休みもずっと練習をしていたのだが、4月14日(月)は新入生向けの部活説明会をして、1年生の新入部員を受け入れた。
 
今年は壇上で、千里・結里・夏恋(以上女子制服着用)に昭ちゃん(自粛して男子制服着用)が4人連続で6mの距離(スリーポイントラインは6.75mでそれより少し近い)からシュートを決めるというパフォーマンスをして、新入生がどよめいた。
 
「男子バスケ部は一昨年は道BEST4, 昨年は道BEST8だった。君の力でインターハイに行こう。女子バスケ部はインターハイ3位だった。君の力で全国優勝しよう」
と暢子が《アジ演説》をした。
 
新入部員の希望者は今年は男子で15人、女子で25人に及んだ。この内、男子の国松・浮和、女子の絵津子・不二子・耶麻都・愛実は確定済みなので、残りの男子13名、女子21名に入部テストを行った。テストの内容は、28m走、ドリブル、パス、レイアップシュート、フリースローだが、本人の申し出がある場合、スリーポイントシュートも追加した。今年は途中で「残念ですが」といって帰すというのは行わずに、全部のテストが終わった後で、各自1分程度のメッセージを言わせた。
 
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その結果、能力テストの点数が低くても意欲のある子は取るという方針で男子は10名、女子は21名全員の入部が決まった。
 
男子の10名の内4人は中学のバスケ部に居た子で残り6人は中学時代はバレー部やサッカー部、野球部だったという子たちであった。元野球部の子は外野手だったということでシューターの才能が無いかとスリーを撃たせたものの、どうもコントロールが悪いようで、これでは無理かということでフォワードを目指すことになった。
 
女子の21名も半数は中学時代にバスケ部だったとか、中学の時はしていなかったものの小学校でミニバスをしていたという子たちだが、残り半分は未経験なのでゼロから教えていくことにして、永子たち「銀河五人組」(旧・補欠五人組)を彼女たちの基礎教育係に任命した。銀河五人組は未経験だったのをゼロからきちんと教育されているので、筋が良く、他人に教えるのにも良いのである。
 
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ところが永子たちが教え始めた《未経験》の子の中にいやに上手い子がいる。水嶋ソフィアちゃんと言って身長も174cmと長身である。
 
「ほんとに未経験なの?」
「ええ。バスケは授業とか球技大会とかでしかやったことないです」
「だってドリブル上手いし、シュートもうまいし」
「ミニバスも未経験?」
「うちの小学校、ミニバス部無かったので」
「へー」
「それでポートボール部に入ってたんですが」
「経験者じゃん!」
 
ということで彼女も秋以降のベンチ枠争いに加わりそうな感じであった。
 
「だけどソフィアってなんかハーフさんみたいな名前ね」
「実はニューハーフなんです」
「嘘!?」
「男の娘なの?」
「冗談です」
 
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お父さんがソフィア・ローレンのファンだったらしく、お母さんの反対を押し切って付けてしまったらしい。背も高いのでけっこうハーフと間違えられるとは言っていた。
 
「私、志望校はソフィア大学英文科です」
「おぉ、頑張ってね。英語得意なの?」
「英語は60点以上取ったことないです」
「それは前途多難すぎる」
 
どうもこの子はダジャレの類いが好きなようである。
 

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これで男子バスケ部は3年生6人、2年生8人、1年生12人の合計26人。女子バスケ部は3年生11人、2年生16人、1年生25人の合計52人という大所帯になる。但しここで昭ちゃんは「湧見昭一」の名前で男子バスケ部に、「湧見昭子」の名前で女子バスケ部に登録されている。
 
「昭ちゃん、登録証はどうなってんの?」
と従妹で新入生の湧見絵津子に訊かれるので、昭ちゃんは自分のバスケ協会の登録証を見せる。
 
「2枚あるのか!」
「うん。湧見昭一のは所属がN高バスケ部男子、湧見昭子のはN高バスケ部女子になってる」
 
「昭ちゃん、女子バスケ部員を主張するなら、女子制服を着てきなよ」
「えーー!? そんなの持ってないし」
 
「じゃじゃーん」
と言って、川南が女子制服を取り出す。
 
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「これ君にプレゼント」
「どうしたんですか?これ?」
「久井奈先輩からもらった」
「昭ちゃんにあげるなら良いよって。可愛い女の子になってね、と久井奈先輩から言われたよ」
「わあ、どうしよう・・・」
「女子制服着たいだろ?」
「着たいです」
「よし、着ちゃおう」
 
ということで、早速昭ちゃんは女子制服を着せられていた。
 
「歌子を女子の方に取られたのに、湧見まで取らないでくれよ〜」
と北岡君が言っていた。
 

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なお、この日の部活は新入生テストが終わった後、入部試験に落ちた3人も誘って、校内の研修施設の食堂を使って「新入部員歓迎すきやき大会」をした。実は先日の阿寒カップの賞品の牛肉を使ったものである。野菜や調味料などは部費から支出している。
 
入部していきなりのすきやきに、新入部員は
「この部、居心地がよさそう」
などと嬉しそうに言っていた。
 
「但し練習は地獄だから」
「インターハイ目指して頑張ります」
「うん、頑張れ頑張れ」
 
入部試験に落ちた男子3人は
「落ちたのにごちそうになっていいんですかね?」
などと遠慮がちに言いながらも
「この牛肉美味しいですね!」
と喜んでいた。
 

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4月15日(火)。千里は昼休みに職員室に呼ばれた。
 
「村山君、君がU18代表候補に選ばれたから」
と宇田先生から告げられる。
 
「ああ、選ばれましたか」
 
代表の件に関しては、橋田さんや大秋さんから「村山さんを代表に入れないなんてあり得ない」と先日のエンデバーで散々言われていたので覚悟はしていたが、やはり来たかという感じであった。
 
「正式発表は来週なんだけどね。色々準備とかもあるだろうから」
「準備ですか?何をするんでしょうか?」
 
「取り敢えずこれ、代表候補、および9月に代表確定した後、代表に選ばれた場合も含めてのスケジュール」
と言って表を渡される。第一次合宿から第四次合宿までの日程が書かれていて、9月に代表決定した後、第五次合宿、そしてU18アジア選手権という所まで日程が書かれている。あれ〜?これって佐藤さんが持ってた表じゃん?と思う。ということは、たぶん佐藤さんは先月の時点で既に代表候補に内定して通達がされていたのだろうと千里は推測した。
 
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「代表候補の時点で海外合宿もあるし、アジア選手権も海外だし、取り敢えずパスポートを取っておいて欲しいんだけど」
 
「海外合宿ですか?私あまりお金無いですけど」
「費用はもちろん協会持ちだよ!」
「だったら良かった」
 
「でも貧乏な競技では、選手が自費でオリンピックに行く費用を調達したりするようなのもあるみたいですね」
と隣から川守先生が言う。
 
「バスケ協会が貧乏じゃなくて良かった」
「いや、わりと貧乏みたいだよ。前回の世界選手権で大赤字出したから」
「うーむ・・・」
「でもこのくらいの費用はちゃんと協会が出すよ」
 
「了解です。パスポートは市役所で取るんでしたっけ?」
と千里は尋ねる。
 
「君、住民登録はどこになってた?」
と宇田先生が聞き返す。
 
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「旭川市です」
「だったら旭川市役所でいいよ。申請書に親御さんの署名捺印も必要だから、申請書をもらってから、一度実家に行くかあるいは郵送でやりとりしてくれる?」
「分かりました」
「そうそう。戸籍抄本も必要なはずだよ」
「じゃそれも含めて1度留萌に行ってきます」
「うんうん」
 

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それで千里は母に連絡し、戸籍抄本の取得を依頼した。それで午後の授業を早引きして旭川市役所に行き、パスポート申請の用紙をもらう。そして留萌行きのバスに飛び乗った。
 
夕方留萌駅で母と落ち合ったのだが、母はギョッとした風。
 
「あんた、その格好でうちに帰ってこないよね?」
「え?」
 
千里は自分の服装を見る。あはは、女子制服のままだったぁ!
 
「ダメかな?」
「お父ちゃんが発狂するよ」
「面倒だなあ」
 
結局母と一緒に留萌市内のスーパーに行ってジーンズとトレーナーを買う。それに着替えて、頭にも短髪のウィッグを付けて、実家に戻った。
 
「おお、千里、春休みは全然帰ってこれなかったんだな」
「ごめんねー、お父ちゃん。バスケの練習が忙しくて」
「うん。まあ身体を鍛えるのはいいことだ」
 
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その日は父はかなり機嫌が良かった。
 
「そうそう。ホタテの養殖は俺が完全に引き継ぐことなった」
と父。
「じゃ、海の男復活だね」
と千里も言う。
「まあ船に乗るといっても、沿岸の養殖場を見て回るだけだけどな」
「でも船に乗るのはいいでしょ?」
「うん。俺は陸(おか)に居たら、まさに陸(おか)の上の河童(かっぱ)だよ」
 

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