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■女の子たちの新生活(4)

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大会が終わった後は、宇田先生が、暢子が勝手に約束したジンギスカンをポケットマネーで本当に部員たちにおごってくれた。
 
男子の方の打ち上げに行った昭ちゃんを除く51名の女子部員、宇田先生、南野コーチで53人の大人数。ジンギスカンの食べ放題のお店に行ったが、中高生女子1000円大人男2500円女2000円という料金を払うと55,500円である。千里は宇田先生の奥さんがあとでクレカの明細を見て絶句しないか?と心配した。
 
しかし1年生女子たちは入部早々、先日のすき焼きに今日はジンギスカンにとお肉をたっぷり食べられて、「ここのバスケ部は良い所だ」というイメージを持ってくれたようである。
 
お店に行くと、同じお店にM高校のメンツも来ていた。
 
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「そういえば、私たち打ち上げを一緒にしようということだったね?」
と橘花が言い、両校選手が入り乱れていくことになる。
 
「そちら男子は別なの?」
と伶子に訊かれるが
 
「最近、この手の催しで男女を分離してくれと校長先生から強いお達しがあったのよ」
と暢子が言う。
 
今回N高校男子も準優勝して道予選に駒を進めている。昭ちゃんのスリーが炸裂したのがその大きな原動力となった。M高校の男子は準々決勝で負けてしまっている。
 
「ああ、確かにこういう場って恋愛発生しやすいもんね」
「そうそう。万が一にも主力が恋愛でふぬけになったら、まずい」
「特に女子は恋愛すると運動能力的なパワー落ちるよね」
「最初から恋愛している前提の一部の子は別としてね」
と橘花が千里を見ながら言うので千里も苦笑する。
 
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「でも、女子はそもそも《ふ》が無いのでは?」
「あれ、男子は《ふ》を抜いちゃうと、パワー落ちるの?」
「肉体的にも精神的にもパワーダウンするみたいよ」
「へー」
 
「千里は抜いた時、パワー落ちた?」
「うーん。私は逆に上がったかな」
「ほほぉ」
 
正直千里は男の子の身体でいた時より今の《女子高生の身体》の方がパワーも出るし、動きも軽やかな感じがするのである。なお千里は今回この19-20の2日間だけ女子高生の身体になっている。明日からはまた女子大生の身体に戻るはずだ。
 
「千里は元々が女子だから、純粋な女子になることでパワーアップしたのでは?」
「あ、その説に納得」
 

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打ち上げが終わって帰宅する途中、千里は雨宮先生からメールが来ているのに気付く。
 
「メールしたらすぐ連絡しなさい」
「すみませーん!」
「あんた今夜、ちょっと時間取れる?」
「何でしょう? 今度はどこに行けばいいんでしょうか?」
 
もう突然呼び出されてあちこち行くのも随分慣れた。
 
「ラテ島あたりに行ってもらってもいいけど、それよりちょっと作業を頼む」
「はい?それどこですか?」
 
ラテ(Late)島はトンガにある直径3km程度の小さな火山島である(島の高さ=山の高さは海面から540m(海底から1500m)ほどで幅400m・深さ150mもの大きな噴火口を持つ)。噴火は1790, 1854年に2度観測されただけだが、2012年にはこの付近を震源とする地震が起きている。無人島であり交通機関は存在しない。行きたければ船をチャーターするしかない。
 
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「実はAYAのあすか・あおいが辞めた」
「えーーー!?」
「だから23日発売予定のCDはいったん発売中止」
「もうお店に送っていたのでは?」
「明日発送する予定で、既に運送屋さんの倉庫に入っていた。それを停めてもらった」
「ひゃー」
「『ティンカーベル』が23万枚売れているからさ。今回★★レコードは30万枚プレスしていた。とんでもない損害だよ」
 
30万枚を廃棄したら恐らく5000万円以上の損害が出る。既に配送予定だったのを停めたのであれば、ひょっとしたら損害は7000-8000万くらいに及んでいるかも知れない。
 
「どうするんですか?」
「緊急の会議を開いた。それでいったん、AYAのデビューは中止して、追加オーディションを来月開いて2人追加し、7月くらいにあらためてデビューを目指す方針を、出版社と$$アーツと★★レコードの間で合意した」
 
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「やむを得ないでしょうね」
「それでいったん、ゆみにもそう伝えた。ゆみも一応その方針を受け入れた。ところがさ」
「はい」
 
「その話にロサンゼルスに行ってた上島が異議を唱えた」
「へ?」
「この際、AYAはゆみだけでいいと言うんだ。実際AYAの歌というのは8割をゆみが歌っている。あすか・あおいは、メロディーを歌う部分が少なくて、大半ではコーラスを入れている。それにAYAのファンの大半はゆみのファンなんだ」
 
「じゃソロで歌わせるんですか?」
「ひとりユニットだよね。SuperflyとかT.M.Revolutionとかマイラバと同じ」
「確かにそういう例はありますね」
 
「それで、既存の音源から、あすか・あおいの声を除去して29日に発売することにした」
「はぁ!? 録り直さないんですか?」
「ゆみも決して歌唱力が高い訳ではない。録り直すと、商品品質になる歌にするのに1週間かかる。でも営業政策上、どうしても連休前に発売したいんだよ」
 
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千里はすごーくいやな予感がした。
 
「でもそれでは歌詞が歯抜けになりませんか?」
「歌詞を確認したんだけど、ゆみが歌っている部分だけでも何とか歌詞として成立しているんだよ、奇跡的に。だからDAW(Digital Audio Workstation)上の作業だけで済む」
 
「その作業、誰がするんですか?」
「音響技師に任せるという案もあったんだけど、それだと純粋に音(おと)的に処理されることになる。それより、ミュージシャンの耳で調整した方がいいという判断になったんだ。結局、ゆみが歌っていない部分、あすか・あおいがメインメロディーを取っていた部分は、楽器の音で代用する必要がある。そこまでの作業は、ただの音響技師には無理」
 
「下川さんの所とかでやるんですか?」
「うちでやる。特に北原の遺作は他人の手に任せたくない」
 
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雨宮先生のそういう気持ちは分かるなと千里は思った。でも・・・。
 
「それで『三色スミレ』は新島に作業させるから、『スーパースター』は千里、あんたがやってよ。ゆまにさせようと思ったら、あの馬鹿、こんな時に限ってロンドンに行ってると言うんだ」
 
ああ、私もロンドンに居たかったなと千里は思った。
 
「いつまでですか?」
「明日の朝10時までに工場に持ち込まないといけない。そのためには9時までにはマスタリングを終えないといけないから、音源は最悪8時までには完成させる必要がある。だから千里は今から指定するスタジオに急行して欲しい。そこで編集環境を整備させてるから。データも超高速回線で転送して既に★★レコードの協力会社の社員が、そのスタジオに持ち込んでるはず」
 
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「つまり私、今夜徹夜ですか?」
「あんた若いだろ?」
「私、今日大会でくたくたに疲れてるんですよー」
「北原の遺作なんだから頑張ってよ」
 
「ちなみに先生は何をなさるのでしょう?」
「PVからあすか・あおいの画像を消す」
「大変そう!」
「毛利も緊急に新潟からこちらに向かっている。関越の混み具合次第だけど、12時頃までには着くだろうから一緒に作業するけどね」
「毛利さん、免停は明けたんでしたっけ?」
「それは明けてる」
「スピード違反とかで捕まらないといいですね」
「捕まったらまた謹慎延長だな」
 

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それで千里は流しのタクシーをつかまえて指定されたスタジオに入る。叔母にはタクシーの中から連絡を入れた。あとで差し入れなど持っていくと言ってくれた。スタジオに到着したのが17時頃である。
 
スタジオでは既に編集環境は用意してもらっていたが、千里が若いのでスタジオの技術者荒木さんと★★レコードの協力会社の新田さんという人が一瞬不安そうな顔をする。そこで、こんな時に使えるとっても便利な名刺《鴨乃清見》の名刺を出すと
 
「おお、鴨乃さんにお会いできるとは光栄です」
「こんなにお若い方だったんですね」
などと言われた。
 
既にデータは到着しており、スコアもプリントしてもらっているので、それを見ながら音源を試聴し、まずは構想を練る。
 
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しっかし下手くそだな。
 
とあらためて千里は思った。数回繰り返して聴いてみた結果、比較的高いあすかの声をフルート、低めのあおいの声をアルトフルートで代用する方針を固める。
 
そこでスタジオの楽器を借りて、千里自身でこの部分を演奏して荒木さんに収録してもらった。使用しているProtoolsというソフト自体の問題もあり、MIDIで打ち込むより、この方がよほど手っ取り早いし、そのため自分が充分なスキルを持つ横笛という楽器を選択したのである(Cubaseなら打ち込みを選択していた可能性もある)。
 
新田さんがお弁当を買ってきてくれたのでそれを食べながらデータを見ていたら、完成音源ではあおい又はあすかが歌っているものの、ProTools上では同じ部分にゆみの声も録音されていて隠されている部分が結構あることに気付いた。録音作業中はたくさんテイクを取るので、そのデータはプレイリストとしてキープしていることが多い。
 
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おそらく制作途中でパート割が変わったものだろうが、その件について雨宮先生に電話して相談した結果、全部ゆみの歌を活かすことにした。それで歌詞の言葉のつながりが随分良くなった。
 
ここからしばらくの作業は千里ひとりでいいので、荒木さんと新田さんには少し休んでいてもらう。ちょうどその頃、叔母が来てお菓子とコーヒーを差し入れてくれた。
 
この歌唱の再構築作業が、結局12時近くまでかかった。
 
その後で今度は確定させたボーカルのトラックに混入しているあすか・あおいの声を丁寧に消していく。消すべき箇所は波形でもある程度は分かるが、最終的には自分の耳が頼りである。ゆみの歌は、あすか・あおいに比べたら随分ましなのだが、それでも下手なのには変わりはないので、何十回も聴いてて千里は頭が痛くなりそうだった。
 
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この作業に3時間ほどかかって既に時計は3時である。
 
スタジオ内で仮眠していた美輪子が声を掛けてくれたので
「おばちゃん、お腹が空いた」
と言ったら、新田さんが
「僕が何か買ってきますよ」
と言い、コンビニに行って、肉まん・おにぎり・やきとり・カツサンド・チキンなどを買ってきてくれた。こういう時はタンパク質がとっても欲しくなるのでありがたかった。
 
最後はやはり楽曲としての完成度を上げることである。
 
3人で歌う形で完成している音源だ。ひとりで歌うことにした場合、単純にそのまま1人の歌に変更すると、物足りないような雰囲気になってしまう。しばしばレコード会社が往年のヒット曲を「リミックス」した音源を出すが、そういう詰まらない音源になっていることが多い。
 
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千里は心をアルファ状態にして、再度楽曲のイメージを自分の脳内空間に展開する。千里はこの作業を目をつぶってやっていたので、美輪子はとうとう千里が力尽きて眠ってしまったかと思ったようで、肩をトントンした。
 
「大丈夫だよ、おばちゃん」
と返事をしてから、一度トイレに行ってくる。トイレで座っている内にイメージがまとまってくる。千里はパッと目を開けた。
 
貴司からもらったスントの腕時計で再度時刻を確認する。4時だ。
 
そして貴司からもらった腕時計を見たことで千里は貴司からパワーをもらったような気がした。貴司、私、頑張るね。ついでに**ちゃんと今日会うの禁止!(という念を大阪方面に送る)
 
結局1時間ほど構想をまとめていたことになるようだ。スタジオに戻ると千里は美輪子に
 
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「おばちゃん、ごめん。コーヒー入れてくれる?」
 
と言ってから、一心にPro Toolsのデータを調整していった。この楽曲の全てが頭の中に展開されているので、もう試聴しながら調整する必要は無い。ある種の確信を持って千里は調整作業を続けて行く。それどころか大胆にも新しいトラックを1個定義して、そこにキーボードを使ってMIDIデータを即興で入力していく。音色としてウィンドシンセっぽいのが欲しかったので荒木さんに相談して選択した。画面上で調整を掛ける。しかし、このウィンドシンセのトラックを加えたことで、全体が物凄く引き締まった。最後に各チャンネルのボリュームを調整してバランスよくする。
 
千里は美輪子が入れてくれた濃いコーヒーを飲みながら作業を続けた。
 
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そして「できた」と千里が確信した時、既に時計は6:40であった。
 
あらためて試聴してみる。
 
うん。上出来! これで歌手がもう少し巧ければもっといいんだけど。
 
そう思って微笑むと、千里は荒木さんと協力してそのデータをミックスダウンした(ゆみの声が入っているものと、オフボーカル版の2つ)。そのミクシングされたデータを東京のスタジオに送信する。
 
ここまでの作業が終わったのが7:30である。
 
あとはProtoolsのデータはあらためて新田さんが通信会社の拠点に持ち込んで高速回線で東京に転送するらしい。
 
千里は荒木さん・新田さんと握手した。荒木さんが
「若いのにセンスがいいですね!」
と褒めてくれた。
 
「千里、学校まで車で送っていくよ」
「ありがとう。お願い」
 
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替えの下着・ブラウスと制服は美輪子が持って来てくれていたので、スタジオ内の個室を借りて着替え、髪にブラシを入れる。スタジオを出て、美輪子のウィングロードのリアシートに乗り込み、とりあえず学校に着くまでの間、眠っていた。
 

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この日の朝のホームルームは全体集会に切り替えられ、東体育館(青龍)に全校生徒が集まる。この週末に行われた高体連の地区大会で、野球部が優勝、ソフトテニス部が準優勝、陸上の個人で男子3000mに出た子が3位、女子1500mに出た子が優勝、女子バレー部が3位、女子バスケット部が優勝、男子バスケット部は準優勝。更に千里はスリーポイント女王、薫が得点女王、昭ちゃんはスリーポイント王ということで、これらの部・個人がステージに順番に昇っては再度称えられる。
 
女子バスケ部は最後なので、それまで千里は控えている用具室で寝ていた。
 
「千里、どうした?徹夜でゲームでもしてた?」
「まあ何とかラスボスを倒したかな」
「体力あるなあ。あれだけ激しい試合した後で」
「いや、やはり体力無い。ごめんあと2分寝せて」
 
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と言って千里がすやすや眠っているのを、他のメンバーは半ば呆れるように眺めていた。
 
なお、この日の朝、大阪にいる貴司は昨日食事を一緒にすることを約束していた同僚の女子社員から「ごめーん。友だちと映画行く約束しちゃった」というお断りメールを受け取っていた。
 
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