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■女の子たちのラストゲーム(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-12-26
 
千里は白衣を着ていて、多数の同様の白衣を着た女性の中で動き回っていた。
「これ413号室の永田さん。エストロゲンの注射してきて」
と言って薬剤を渡される。注射器と清浄綿にブラッドバンを取ってその部屋に行く。入口の患者名を見てベッドの位置を確認する。中に入って「え?」と思う。エストロゲンと言われたから女性患者だと思ったのにここは男部屋だ。そのベッドの位置まで行くとベッドに居るのは女性に見える。年齢は65-66歳くらいだろうか。
 
「永田さん、お注射しますよ」
「はい。お願いします」
と答える声も女の声のよう。
 
なぜこの人は女性なのに男部屋に入れられているのだろう? 部屋が空いてなかったのかな?などと考える。
 
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薬剤を注射器に取る。少し押して空気を抜く。注射する箇所を清浄綿で拭く。注射器の針を刺して薬剤をゆっくり注入する。注射器を抜きブラッドバンを貼る。
「ありがとう。私これ毎日注射しもらわないと骨粗鬆症になって身体が縮んでしまうから」
 
ちょっとハスキーな声だ。
 
「大変ですね」
「女になったことは後悔してないけど、この注射を40年間してきたのだけは大変だったわ。体調悪くてもやめる訳にはいかないし」
 
あ。。。この人、性転換して女になったのか。昔の性転換者って割とこういうハスキーな声で話してたよなと思い起こす。でも・・・女になって40年も経っているのに病院に入ったら男部屋に入れられてしまうなんて可哀想。だいたい同室の男の患者に襲われたりしないか?と心配もした。
 
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ナースステーションに戻ると、薬剤倉庫からインシュリンの箱をひとつ取ってくるよう言われる。鍵を持って倉庫に行き、1箱出して管理表に記入し、鍵を確実に締めて戻り、所定の場所に置く。
 
「薬剤倉庫に行ってきた子はたとえ男の娘であっても、もう女の子と同様とみなしていいよね」
「うん。だから千里はもう私たちと同じ看護婦ね」
などと先輩2人が言う。
 
え〜〜!? 私っていまだに男扱いされてたの? もう性転換してから10年経つのにと千里は不満に思ったが、取り敢えず今後は女とみなしてくれるというのであれば歓迎だ。
 
「千里、もう女の子だから422号室の川島さんに尿道カテーテル入れるのやってきてくれる」
「分かりました」
 
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と言ってカテーテルと清浄綿を持ち422号室に行く。途中の廊下の隅に何だか薬剤がたくさん置いてある場所がある。あれ何だ?と思ったら一緒に同じ方角に行く先輩が
「あれは忙しくて、注射を打ちに行けなかった患者さんの薬剤を取り敢えず放置しているのよ。余裕があったら、作業代行しておいて」
などと言われる。
 
嘘。そんな適当なことでいいのか?
 
千里は422号室に入ると、川島さんのベッドに行き
「導尿します」
と言う。患者を見て驚く。何だか自分に似ている。でも私は村山だし、私じゃないよね? 見た感じは27-28歳くらいだ。
 
取り敢えずここは女部屋だし、患者は女のよう。良かった。女部屋に入れてもらえたのね、と何だか安堵する。患者のパジャマズボンを下げショーツを下げるとそこにあるのは女の陰部である。大陰唇・小陰唇を左手で開き、右手で尿道口を消毒した上でカテーテルをゆっくりと挿入する。膀胱に届いた所でバルーンを開く。採尿バッグをベッドの端のフックに引っかける。ショーツとズボンを戻すが自分にそっくりの患者がちゃんと女の身体になっていて、女部屋に入院していることに、千里は何だか安心した。
 
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あれ?でも私、いつ看護師になったんだろ?
 
と思った所で目が覚めた。
 

2008年の皇后杯決勝戦は1月13日土曜日に行われた。千里と宇田先生はこの日の朝の飛行機で東京に行って表彰式に出た。そのまま日帰りすることも可能ではあったのだが、東京日帰りは辛いしということで、翌日の男子決勝戦まで見て日曜日に帰ることにしていた(男子決勝戦会場の席は主宰者が用意してくれた)。
 
女子表彰式の後は、宇田先生も東京で会う人がいるということで、翌日の男子決勝戦までお互い自由行動ということにしたので、千里は以前から機会があったら一度おいでよと言われていた、雨宮先生のグループの中心になっている新島さんの《仕事場マンション》を訪問した。
 
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「つまらないものですが」
と言って白い恋人を出すと
「これ大好き〜」
と言って、紅茶を入れてくれて一緒に頂く。
 
「本来のお住まいも東京近辺なんですか?」
「うん。実家は奥多摩町なんだよね」
「都内ですね!」
「JRの奥多摩駅から車で20分くらい掛かるかなぁ」
「それはなんか凄い場所ですね」
 
「それで実際問題としてほとんどここに泊まり込みで、実家にはめったに帰ってないんだよ」
「あらあら」
 
「雨宮先生がこちらから連絡しようとしてもなかなか捕まらないから、結果的に仕事の手配とか、あちこちとの折衝とかもだいたい私がしてるしね。時には毛利君や北原君に手伝ってもらってたんだけど」
 
「ふたりとも今使えないですね」
「そうなんだよ。毛利君は謹慎中で実際には今新潟でずっと地震の後片付けのボランティアしてるし、北原君はAYAのプロデュースで大忙しだし」
 
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「AYAは2作目も結構良い出来でしたね」
「うんうん。北原君も頑張ってるよ」
 
北原さんは昨年9月にインディーズデビューしたAYAという女の子3人組のユニットをプロデュースしている。最初のCDは時間的な制約から雨宮グループの総力戦で楽曲を制作したのだが、2作目は北原さんが全ての楽曲の制作をしており、1作目・2作目ともに7000-8000枚ほどの売上をあげ、企画した出版社も気をよくして春頃にメジャーデビューの方向でいる。
 
「来月には3作目を作って、それが1万枚以上売れたらメジャーデビュー決定」
「行くでしょう。今の状況なら。そのことを告知すればファンも買ってくれるはずです」
「それで今そのための楽曲制作で大変みたい」
 
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「ロイヤル高島さんの方の病状はどうですか?」
 
AYAの名目上のプロデューサーはロイヤル高島である。ただ実際には名前を出しているだけで作業は全て北原さんがしている。しかしそのロイヤル高島さん自身が先日大手プロダクションの新年会の席上で倒れて現在入院中である。
 
「病状は安定しているらしい。しばらくは仕事できないみたいだけどね」
「でも取り敢えず影響は無いですよね?」
「うん。ロイヤルさんは名前だけだから」
 
「そういえば北原さんはご自宅なんですか?」
「彼も私と同様、作業用にマンション借りているみたい。詳しくは知らないんだけどね。私は携帯にしか電話しないし」
 
千里はひょっとして新島さんと北原さんって恋愛関係?というのも考えていたのだが、新島さんの言い方を聞く感じではその要素は無さそうである。
 
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「だけどさ」
と言って新島さんはぐいっと千里の方に乗り出して訊く。
 
「あんた、本当に男の娘なの?」
「あはは。どうもそうみたいです」
と千里は身体を引きながら答える。
 
「胸は本物だよね?一度触っちゃったし」
「はい。中1の頃から育ててきました」
「へー。その頃から女性ホルモンやってたんだ」
「そのあたりはちょっと説明すると長くなるんですけど」
 
「ちんちん付いてんだっけ?」
「さすがに付いてません」
「だよねー。高校2年だっけ?3年だっけ?でまだ声変わりが来てないってのは、もう手術してしまってるんだろうなとは思った」
「ある時期までは女性ホルモンで抑えていたんですよ」
 
「ああ、なるほどね。でも高校生で性転換しちゃうって凄いね」
「時々いるみたいですよ」
 
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「そうかもね」
と言って新島さんは誰かのことを考えているかのような顔をした。
 

千里が今日はホテル泊りということを言うと、だったら晩御飯食べて行きなよと言われたのだが、実際には緊急の電話が入り、新島さんは楽曲を大急ぎで制作しなければならなくなったため、その日の晩御飯は新島さんのマンションのキッチンを借りて千里が作った。
 
「お疲れ様です。カレーですけど、よろしかったら」
と言って、1杯盛って新島の机の所に置く。
 
「さんきゅ、さんきゅ。やはりこういう時カレーはいいよ。香辛料の塊だからけっこう精神を刺激するし、カロリーは取れるし」
 
「私野菜を炒めるのにバターとか使わずにサラダオイル少々で炒めるから少し薄味かも知れませんけど」
「私も基本的に薄味が好き〜。毛利君とか濃いのが好きみたいだけどね。UFOにウスターソース掛けて食べるって言うもん」
「それは凄いなあ。私はUFOはソース半分しか掛けないです」
「あ、私もー」
 
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作業の邪魔にならないよう、千里も1杯カレーを食べてからホテルに戻ろうとしていたのだが、千里がカレーを食べている最中に電話が入る。
 
「はい、はい。え!?」
 
新島さんの顔色が変わっている。何があったんだ!?
 
「分かりました。取り敢えずそちらに行きます」
 
と言って新島さんは電話を切る。
 

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新島さんは30秒ほど考えていたが、やがて千里に言う。
 
「千里ちゃん、悪いけど、今私が書いている曲。完成させて&&エージェンシーの白浜さんに送信してくれない?」
「いいですよ。何時までに?」
 
「今日の23:59までに」
「何とかします。何かあったんですか?」
「北原君が倒れたらしい」
 
「えーーー!?」
「出版社の人が、今日までにもらえることになっていたAYAに関するメッセージが夕方になっても送られてこないんで、電話やメールするもつながらないんだって。それで彼のマンションまで来て、台所の窓が鍵かかってなかったんで開けて見ると人が倒れているように見えて、それで管理会社に連絡して玄関を開けてもらって中に入ると、北原君が居間に倒れていて意識が無かったらしい」
 
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「ひゃー」
「すぐ救急車呼んで病院に搬送したんだけど、家族とかの連絡先が分からないという話で。携帯を見ようとしたけどパスワードロックが掛けられているし、壁に出版社と、雨宮先生と私の電話番号書いた紙が貼ってあったんで、雨宮先生につながらなかったんで私に連絡が来たみたい」
 
「すぐ行ってあげてください」
「うん」
 

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それで新島さんは飛び出して行った。千里は新島さんが途中まで書いていた楽曲をチェックし、それを完成させることにする。ごく普通の
前奏AABBサビAABBサビ間奏(転調)CCAAサビサビCoda
というパターンのようだ。このうち
前奏AABBサビ********(転調)CC********
の部分が既に完成している。
 
ここまであれば、普通に作曲の経験がある人なら完成させられる。間奏が無いがそこは適当に作ることにする。コーダも適当に付けることにする。
 
ソフト自体はいつも使い慣れているcubaseなので全然問題無い。千里は一心に作業を進めていった。
 
新島さんからは連絡が無い。貴司から電話が掛かってきたものの
「ごめーん。今日は忙しいからダメ。明日電話する」
と言った。
「忙しいって何してんの?」
「ちょっと音楽の方のお仕事なんだよ」
「ああ。なんか時々頼まれるって言ってたね」
「今日の23:59までに納品しないといけないんだよ」
「それは大変だ!」
「私はおしゃべりできないけど、だからといって**ちゃんに電話したりしたら、次会った時に貴司のおちんちん切っちゃうからね」
「なんで知ってんの!?」
 
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女の子たちのラストゲーム(1)

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