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■女の子たちのラストゲーム(6)

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翌日1月19日の早朝。旭川N高校の女子バスケ部メンバーは全員旭川駅に集まった。土日の2日間で愛知J学園、札幌P高校、旭川L女子高の3校との練習試合をするのである。J学園の花園さんや日吉さん、札幌P高校の片山さんや竹内さんにとっては、これが高校生としてのラスト・ゲームになる。旭川N高校・L女子高は3年生は既に夏までで引退しているので、1−2年生のチームである。
 
せっかくなのでAチーム戦、Bチーム戦をしようということになった。組合せはこのようにした。
 
19日
第1試合(11:30) L女子A−P高校A
第2試合(13:00) J学園A−N高校A
(1時間休憩)
第3試合(15:30) J学園B−P高校B
第4試合(17:00) L女子A−N高校A
(1時間休憩)
第5試合(19:30) J学園B−L女子B N高校B−P高校B
 
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20日
第1試合( 8:30) J学園A−L女子A
第2試合(10:00) N高校A−P高校A
(30分休憩)
第3試合(12:00) J学園B−N高校B P高校B−L女子B
(30休憩)
第4試合(14:00) L女子B−N高校B
第5試合(15:30) J学園A−P高校A
 
J学園が19日札幌に到着するのが11時で、帰りは20日の17:30には札幌を出たいということから、こういうスケジュールになった。このスケジュールを見た各校の選手の意見は。
 
「これって親善試合というより強化合宿ですか?」
というものであった!!
 
N高校の場合、チーム編成はこのようにした。
 
Aチーム
PG 雪子(7) メグミ(12) SG 千里(5) 夏恋(10) SF 寿絵(9) 敦子(13) 薫(16) PF 暢子(4) 睦子(11) 蘭(15) 永子(17) 川南(18) C 留実子(6) 揚羽(8) リリカ(14)
 
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Aチームはオールジャパンのエキシビションと同じメンツである。
 
Bチーム
PG.メグミ(12) 敦子(13) SG.結里(20) 昭子(21) SF.夏恋(10) 聖夜(24) 安奈(25) PF.睦子(11) 永子(17) 来未(22) 志緒(23) 瞳美(26) C.蘭(15) 川南(18) 葉月(19)
 
他校もそうだが、今回「Bチーム」というのはAチームからトップの7-8人を外したもの、ということにした。つまり今回の強化合宿、もとい親善試合のひとつの目的は1.5軍レベルの子たちの底上げである。おおむね4-10の背番号の選手を外すのだが、N高校の場合は薫を外すのと、リリカは留実子が万全でない状況では結構負荷があることから外したので、結果的に10番の夏恋はBチームに残ることになった。AとBを兼ねる7人はAチームとBチームの試合の両方に出るから、なかなか大変なのだが、夏恋はたくさん強い所と試合したいと言ってBチーム参加をむしろ嬉しがっていた。
 
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「J学園やP高校のBチームって、普通の学校のトップチームより遙かに強いだろうし」
と夏恋が言ったら、南野コーチは
 
「N高校のBチームだってかなりのもの」
と言っていた。
 
昭ちゃんは「湧見昭子」で女子バスケ部に登録しているので、その名前でエントリーシートに記入した。また今回のTO(テーブル・オフィシャルズ)チームは「補欠5人組」の葦帆・司紗・雅美・夜梨子である。
 

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この他、今回の遠征には「学校見学」の名目で来春入学予定の中学3年生を4人連れていくことにした。昭子の従妹の湧見絵津子(SF)、宇田先生が見い出した稚内の中学に在籍している黒木不二子(PF)、C学園の開校延期でこちらに入ることになった身長179cmの中井耶麻都(C)と100mを12秒台で走る俊足の広尾愛実(PG)の4人である。
 
愛実の場合、所属している中学のバスケ部が部員が3人しか居ないという悲惨な状態で、実は中学1〜2年の間は一度も公式戦に出ていなかったらしい。(陸上部の助っ人で、そちらの大会に出て200mと400mで地区大会優勝したらしい)しかし俊足なだけでなくドリブルもうまくポイントガードの素質は高いと宇田先生は見た。こんな子をC学園はよく見付けたものである。
 
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C学園の斡旋で近隣の中学でやはり部員の少ないバスケ部との合同チームを作って、昨年初めて中体連に出場。合同した相手学校も部員が4人しかおらず7人のチームだったが、頑張って地区大会BEST4まで勝ち進んだらしい。
 
19日の朝、長身の耶麻都を見た川南は
「私のインハイ出場の夢はついえた」
などと言っていたが、メグミから
 
「暢子とのマッチアップに勝って暢子を蹴落として12人枠を獲得しよう」
などとハッパを掛けられ
「うーん。奮起するか」
と少しは気合いが入っていたようである。
 

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湧見絵津子は昭ちゃんが女子チームと一緒なのを見て「性転換したの?」などと言っていた。
 
「性転換、みんなから唆されている」
と昭ちゃん。
「どうせ性転換するんなら早い内にやった方がいいんだってよ。やはり早い時期に性転換した人って凄くきれいだもん」
「うーん。どうしよう」
「別におちんちんなんて要らないんでしょ?」
「どちらかというと、こんなの付いてなければいいのにと、いつも思ってる」
「じゃ、取っちゃえばいいじゃん」
 
絵津子はメンバー表を見せてもらって「湧見昭子で登録されてる!」と言って何だか喜んでいた。
 

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「そうだ、忘れる所だった。歌子君、湧見君」
と言って宇田先生は男の娘2人を呼ぶ。
 
「これ君たちの暫定登録証」
と言って2人にIDカードを渡す。
 
「エンデバーに君たちを招集するのにJBAの登録が無いという話になってね。それで事情を説明した所、これを発行してもらった」
 
カードを見ると「歌子薫」「湧見昭子」という氏名と、所属として旭川N高校バスケットボール部(女子)と書かれている。
 
「これって今持っているカードと交換ですか?」
と薫が訊く。
「いや、あれは正式の登録カード。これは暫定カード。そもそもID番号が違う」
と先生が言うので、薫が持っているカードと見比べている。
 
「新しい番号を発行してもらったんですか?」
「そうそう。男子と女子ではそもそも番号の先頭の数字が違うから。男子は5で女子は6なんだよ」
「凄い!6だ!」
と言って薫は凄く喜んでいる。
 
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「協会と話したんだけど、君たちがもし女子選手として活動して行きたいということであれば、地区大会までは出場を認めるそうだ。道大会以上にも出たいという場合は審査が必要。むろんその場合、男子の試合には出られない」
 
「私が男子の試合に出ずに女子の試合に出ると言ったら北岡に殴られる気がします」
と薫は言ったが、自分を見つめる視線に気づき
「ついでに川南に包丁で刺されそうだから、公式戦は自粛して男子の方に出ます」
と言った。
 
しかしそんなことを言っていたら暢子が
「女子の方に出ないというのなら、チョン切っちゃうぞ」
などと言っている。
 
「薫、殴られて包丁で刺されるか、おちんちん切られちゃうかの二者択一なんだ?」
と留実子が笑って言っていた。
 
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薫は本当に困ったような顔をしていた。
 
「でも切っちゃう時は僕にちょうだいよ」
と留実子。
 
「うーん。。。いつになるか分からないよ」
と薫。
 
「僕の卵巣と子宮をあげるからさ」
「それは欲しい気もする」
 

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旭川駅で列車を待っていたら、M高校の橘花や伶子、それに3年生の友子・葛美・月乃などと遭遇する。
 
「わあ、今札幌に移動する所?」
と橘花が訊く。
 
「もしかして見学?」
と千里。
 
「そうそう。絶対見なくちゃと思って」
と友子。
「私たちもこの迎撃戦に参加したかったけどね」
「宇田先生はM高校にも声は掛けたんだけどと言ってた」
「予算が取れなかったらしいのよね」
「公立は辛いよね」
 
今回のJ学園の遠征費用は参加者の交通費・宿泊費・食費などを含めて合計180万円ほどになり、それをP高校・L女子高・N高校の3校で60万円ずつ負担している。公立高校ではこの種の費用を出すのは難しい。更に旭川組は自分たちの遠征費用も掛かる。
 
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一緒の電車での移動になったので車内で色々お話する。
 
「みなさん、進路は決まったんですか?」
と千里は訊いた。
 
「私は旭川市内のA大学。推薦で合格済み」
と友子。
「私も同じくA大学合格済み」
と月乃。
 
「あ、うちの久井奈さんがA大学を一般入試で受けると言ってました。新設の保健福祉学部なんですが」
「私も保健福祉学部だよ。看護師コース」と友子。
「私は経済学部」と月乃。
 
「すごーい」
「久井奈ちゃんと一緒になれるといいな」
「でも歯科衛生士の学校を2つ落ちてるから」
「はぁ!?」
 
「葛美さんは?」
「私は教育大学の旭川校。保健体育専攻。私も推薦で合格済み」
「えらーい」
「インターハイに行った実績を評価してもらったんだよ」
「良かったですね!」
 
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「でもまあ、受験勉強やっている最中なら、とてもこういうのに出てこられない」
「ですよね!」
 

やがて札幌に到着。P高校がスクールバスを出してくれていたので、それに乗ってP高校まで行く。席に余裕があるから乗っちゃうといいよと言って、橘花たちも乗せた。
 
千里たちが着いてから少し遅れてL女子高のメンツが到着する。L女子高はJRは使わずに学校のバスで旭川から走ってきたらしい。旭川から札幌までは2時間近くかかるが、JRの特急でも1時間半掛かるので、乗換えの手間を考えるとかえって楽かも知れない。溝口さんなどはひたすら車内で寝てたと言っていた。なおL女子高はこの試合に引退していた3年生のメンバーを数人連れてきていた。
 
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やがて愛知J学園のメンバーが到着。握手の嵐で歓迎した。
 
J学園の選手たちが到着したのが10時40分くらいだったのでスケジュールを30分前倒しにして第1試合は11:00から始めることになった。
 
最初はL女子A−P高校Aの試合であるが、千里の見た感じ、P高校は八分の力で試合をしている感じであった。普段道大会までで見るP高校の姿である。L女子高は池谷さんや本間さんなどこのリーグ戦が高校ラストゲームとなるメンツが気合い充分で積極的に得点するが、P高校側は淡々と点数を積み重ねていく。点数としては第3ピリオドまでは結構競っていたものの、第4ピリオドでP高校が引き離しにかかり、結局86対64でP高校が勝った。
 
そして第2試合(12:30)はJ学園A−N高校Aが組まれていた。
 
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スターティング・ファイブはJ学園が入野/花園/大秋/日吉/中丸、N高校は雪子/千里/薫/暢子/留実子である。キャプテン同士で握手した後、花園さんが薫に何か話しかけている。すると薫は花園さんに自分のバストを触らせている!何やってんだ!?
 
「女の子になったのかと訊かれたの?」
と暢子が訊く。
 
「うん。それでおっぱい触らせた」
と薫。
 
「でもちんちんのこと訊かれなかった?」
「まだ付いてると言ったらダメじゃんと言われた」
「その言葉、私からも薫に」
 

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ティップオフは中丸さんが取り、向こうが攻めてくるが、花園さんがいきなりスリーを撃ち3点先取した。点取り合戦になることを予感させる一撃であった。
 
こちらも即反撃する。ゆっくりと攻め上がり、相手の守備体制を見る。花園さんが千里をマークした他はゾーンを組んでいる。ゾーンを使うこと自体向こうが本気であることを示している。しかし雪子は千里がギリギリで取れる場所に素早いパス。千里は花園さんのブロックタイミングをずらしてシュート。3点。こちらもどんどん点を取りに行く。
 
向こうは花園さんのかなり遠目からのスリーと中丸さんのリバウンドという組み合わせで点を取ろうとする。千里が早い時期からマークに行くと、最初の数回は花園さんはその千里を巧みに抜いてそこからスリーを撃った。遠い地点でマッチアップしているため、千里を抜いた先もまだスリーポイントエリアなのである。
 
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花園さんはおそらくエキシビションでの対決のビデオを相当研究したと見た。
 
また日吉さんや大秋さんも積極的に中に飛び込んで点を取る。しかしこちらも千里がスリーを放り込むし、暢子も薫も中に飛び込んで行く。リバウンドは中丸さんと留実子が激しい争いをして、少なくとも最初は五分五分であった。
 
結局第1ピリオドは千里がスリー5本、花園さんもスリー6本を入れ点数は32対30と凄い点数での競り合いになった。
 

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女の子たちのラストゲーム(6)

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