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■女の子たちの火の用心(8)

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「それからこれはまだ他言無用にして欲しいんだけど」
と宇田先生は少し小さな声にして言った。
 
「実は特待生の条件を緩めようかという話が出ているんだよ」
「それは助かります」
 
「今全額免除には20位以内、半額免除には50位以内ということになっているのだけど、確かに文武両道という理想は理想として、さすがに厳しすぎるのではないかという意見が前々からあってね」
「ええ」
 
「実はそのC学園の方にいったん決まっていた子、こちらに来ると成績も高いレベルで維持しなければならないというので、そういう条件の無いC学園に傾いたというのがあったんだよ」
 
「中には勉強の方は全くしなくていい所もあるみたいですけど、多くの学校ではスポーツ特待生は赤点さえ取らなければ、そのスポーツの方の成績だけの条件でしょうね」
と千里は言う。
 
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「今どこに水準を置くか、検討している所なんだけど、このくらいになるかなというのが、道大会BEST4以上の場合でゲームの3割程度以上に出ている場合、全免は50位以上、半免は100位以上」
 
「かなり緩和されますね」
「道大会BEST4ということは、男女バスケと女子ソフトテニスだけか」
「うん。野球は今年の夏は道大会BEST8だから対象外」
「それは仕方無いですね」
 
「更に全国大会で活躍できるレベルの子については、80位以上で全免、150位以上で半免」
 
「氷山君はインハイかウィンターカップに出られたら半免してもらえるな」
「もし緩和された場合は、入学以来の成績を再確認して、該当者には差額を支給することになると思う」
 
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「よし、お小遣いにしよう」
と暢子は言った。暢子は入学以来、ずっと半免だったのだが、彼女の成績なら新しい基準では全免になるはずだ。
 
「でもこういう緩和の話がでてきたのも、ひとつには女子バスケ部の全国BEST4という立派な成績があるよ。女子バスケ部、女子ソフトテニス部、男子野球部に認められている進学コースでも3年生の夏まで活動できるという特例も少し成績条件が緩和される可能性がある。これは多分前年本人が全国大会の中核選手として出ている場合で、成績40位以内くらい」
 
「ということは、もしかして」
「うん。花和君が来年のインハイに出られる可能性が出て来た。でもこれまだ本人を含めて誰にも言わないように」
 
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「そうします。緩和されると聞いたら、あの子、絶対勉強サボるから」
「振分試験49位だったけど、12月の実力試験で40位以内まで上がれるかが勝負」
「インハイに行くには最終的に3月の振分試験の成績が基準になるけどね」
 
「しかし40位以内なら、どっちみち川南・葉月は厳しいな」
「更にウィンターカップの本大会ベンチに座ることが条件になるし」
 

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そして今回の放火騒ぎは思わぬ所にまで影響を及ぼした。11月上旬、鮎奈が千里と蓮菜・京子の3人だけを階段の下に呼んで話をした。
 
「うちの従妹の美空なんだけどさ」
「うん」
「女の子数人の歌手ユニットでデビューという話になっていたんだけど、とんでもない事態が起きちゃって」
 
「何何?」
とみんな訊く。
 
「レコード会社が倒産したとか?」
「事務所が爆発したとか?」
「美空ちゃん、とうとう性転換した?」
 
「いや、一緒にデビューすることになっていた子のひとりがさ」
「うん」
「例の放火魔の妹さんだったんだよ」
 
「えーーー!?」
 
「これ他の子には言わないで。お母さんは違うけど、お父さんが同じなんだって」
「わぁ」
「それで姉の不祥事に伴って芸能活動は自粛したいという申し出があったんだって」
 
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「それ、メゾソプラノの子?アルトの子?」
と千里は訊いた。
 
「アルトの子」
 
「可哀想」
「姉妹だって他人なんだから責任は無いのに」
という声もあるが
 
「いやデビューしたら絶対マスコミから追及されるもん」
「その前にお姉さんがそんなことしてたなんて、凄いショックだと思うよ」
 
千里は少し考えてから訊いた。
「ねぇ、そのお姉さんが捕まった後、自殺しようとしたお父さんというのは実際にはそのお姉さんと血はつながってないんだね?」
 
「うん。そうなる。その子のお父さんと、お姉さんのお母さんの間にお姉さんは生まれている。その後離婚してお姉さんは、お母さんに引き取られてその後学校の先生をしていた人と結婚。お父さんの方はその子のお母さんと結婚した」
 
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「分からん!」
という声が出るので、鮎奈が図に書いてみせる。
 
A男−M子の間にX子(放火犯人)が生まれ、M子はX子を連れて教師のB男と結婚。深川市在住。
 
A男−N子の間にY子(デビュー予定だった子)が生まれている。一家は東京に移住している。
 
「自分の血を引いた子でなくても、娘の罪の責任を取ろうとしたのね」
「その話を聞いて、このX子ちゃん、留置場で泣いてたって。それまでお父さんとの間にいろいろ確執もあったみたいよ」
「罪は重いけど、更生するといいね」
 

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「じゃ、そのユニットはどうなるの?」
「別のデュオと合体させて4人でデビューさせる方向で検討中らしい」
 
「うん。そのデュオと合体させるという話は私も聞いてた」
「だから5人の予定が4人でということに」
 
「しかしメンバーがぽろぽろ脱落するなあ」
と千里は言う。
 
「そんなに脱落したの?」
と京子が訊くので
 
「既に2人辞めてたんだよ。人数の予定もここまでほんの3ヶ月程度の間に5→4→3→5→4と変化」
と千里は説明する。
 
「じゃ一週間後には再度3になるな」
と、この時言ったのが京子だったことを千里は覚えている。実際にはこのユニットはその後、更に→3→4→3→4と変化してやっと2ヶ月後デビューに至ったことを千里は後で美空から聞くことになる。
 
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美空だけが知る(美空が思っている?)KARION前史 
 
−八雲・笹雨・陽子・小風・美空でメテオーナ結成の方針(5) 
−八雲が喫煙で補導され辞退(4) 
−笹雨が他の事務所に引き抜かれて脱退(3) 
−和泉・冬子を追加する方針になる(5) 
−陽子が姉の不祥事で辞退(4)  ←今ココ★ 
−名前がメテオーナからKARIONに変更 
−いったん和泉・冬子・小風・美空の4人で音源制作 
−冬子が性転換手術を受けるため離脱(3) 
−ピンチヒッターとしてラムを追加(4) 
−ラムを入れた4人で再度音源制作。この時ラムをリードボーカルにする。 
−ラムに反発した小風が実は辞表を書くも提出前にラムがお父さんの海外赴任で脱退し小風はユニットに留まる(3) 
−冬子が手術を延期して復帰し、元の音源を調整して和泉・冬子・小風・美空の4人でデビュー。但し冬子の契約が間に合わず音源は4人だがPVは暫定3人。でもデビューの記者会見は4人でしたし、記者会見の会場では4人版のPVを流す(4) 
 
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−八雲と陽子が・・・と言いかけて「内緒」と美空は千里に言った。
 

「それで色々ケチ付いたからさ。もういっそいきなりメジャーデビューという話になりつつあるらしい」
 
「それ、やぶれかぶれというか」
「でも驚くなかれ。デビュー曲は、ゆきみすずさんの作詞で、曲は木ノ下大吉さんに、東郷誠一さんだって」
 
「うっひょー!」
「とんでもない大物じゃん」
 
千里はその2人の作曲家の名前を聞いて頭痛がした。
 
「予算も2000万円の予定だったのを当面の資金として5000万円準備したとか。事務所の社長さんが、自宅をセール&リースバックしてお金を工面したらしい」
「社長さん頑張るな」
「もう賭けてるね」
「まさに社運を賭けて売り出すつもりみたい」
 
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「売れるといいね」
 
「だけど美空ちゃんデビューしちゃうなら、もうこちらの音源制作には参加できないの?」
と京子が訊く。
 
「それだけど、一応契約書は交わして、契約は12月17日の月曜日から有効ということになったらしい。デビューが1月1日の予定で、その少し前からキャンペーンとかで活動するからって」
「なるほど」
 
「それで17日から忙しくなるからというので、12月15-16日の週末に旭川に来てお父さんに会うらしいのよね」
「ほほぉ」
 
「もう来週くらいから音源制作始めるらしいから、実際このあとはなかな休めないらしいのよ。でも15-16日はちょうど予定が入ってないということで、お父さんに会いに行くのならいいよということになったらしい。だからさ、DRKの音源制作をその15-16日でやらない?」
 
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「いいの?」
 
「契約書が発効する前なら、何しても平気」
「そうかも知れないけど」
 
「美空ちゃん、他にもお姉さんのバンドのベース弾いて、結構大会とかに出てるみたいだし。次は2月に日本アマチュア軽音大会とかってのがあるらしいけどね」
「2月ならもう出られないね」
「それもバレなきゃ平気、とお姉さんは言っているらしい」
 
「それはさすがにまずい気がする」
「契約違反で何百万とか請求されないことを祈る」
「ってか、プロがアマチュア大会に出ていいわけ?」
「なんか二重にやばいな」
 

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11月上旬の午後。
 
陽子は弁護士・父とともに札幌拘置所から無表情な顔で出て来た。弁護士さんの事務所で少しお話をした後、父と一緒に近くのショッピングモールに行き、ラーメンを取って食べる。弁護士事務所を出た後、父とは何も会話が無い。
 
姉とはあまり会う機会も無かったし電話などで話したこともほとんどなかったので、あまり親密さも感じない。腹違いの姉とはいっても、実質従姉妹に近い感覚だった。しかしこういう事件を起こしたことはショックであった。向こうのお父さんも自殺未遂をしたが、実は陽子の父も自殺しようとした所を母に停められたのである。会社にも辞表を出したが仕事の切りがつかないということで年末までは勤める予定である。しかしここの所、ずっと眠れないようで、かなり憔悴しているようだ。お父さんにとっては実の娘だもんね、と陽子は考える。
 
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陽子自身も事件以来ずっと高校を休んでいる。クラスメイトとの連絡も途絶えている。ただ芸能事務所で交流のあった小風ちゃんが2度ほど心配して呼び出してくれたので一緒にお買い物したりマックを食べたりした。一週間くらい前に会った時、NANAを読んだことないと言ったら、、どーんと全巻持って来てくれたので、それを読んでたら何だか泣けて、泣いたら少し気が晴れた。何だかここしばらく変に肩が凝っていたのまで一緒に治ってしまった。
 
しかし不安は大きい、この後どうなるのだろう?と半ば空虚に近い心で考えていた時
 
「こんにちは」
と明るい声を掛ける人がいた。
 
「八雲ちゃん!?」
「あ、やはり陽子ちゃんだよね?」
 
それはつい先日まで小風ちゃんや自分と一緒に《メテオーナ》というユニットを組んで一緒にデビューすることになっていた、八雲ちゃんだった。彼女は喫煙している所を見つかって学校を自主退学させられ、メテオーナのプロジェクトからも辞退した。彼女とは実は2度しか話したことはなかった。
 
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「どうしたの?」
とお互い同時に言ってから笑顔になる。
 
ああ、自分が笑顔になったのって、1ヶ月ぶりかも知れない、と陽子は思った。小風ちゃんの前では私どうしても笑顔が出なかったのに。
 
「高校クビになっちゃったしさ。フリースクールとかに通おうかと思って。でも、気持ちを切り替えるのに少し休ませて、ってワガママ言って。今美幌町(びほろちょう)の叔父さんちに居候して、ちょっと牧場の手伝いしてるんだよ。今日は買い出しで札幌まで出て来たんだ」
 
「すごーい!北海道の牧場って少し憧れるな。美幌町って世界一景色のきれいな所でしょ?」
「それはもしかして美瑛町(びえいちょう)では?」
「あ、間違った!」
「でも美幌峠の景色は評価高いよ」
「へー。牧場は、牛さんとか馬さんとかのお世話するの?」
「うちは牛だけ」
「乳搾りとか?」
「毎日やってるよ」
「わぁ、私やってみたい」
 
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「時間取れるなら、うちに来たらやらせてあげるよ。あ、今日は旅行か何か?」
「私、北海道生まれなんだよ」
「そうだったんだ!」
「あ、こちらうちのお父さん」
「済みませーん。初めまして。桜木八雲と申します」
 
と八雲は陽子の父に挨拶した。父も少し笑顔になって
 
「陽子のお友だちですか? お世話になっています」
と挨拶を返した。
 
 
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