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■女の子たちの火の用心(6)

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福岡C学園はロングスローインからシューターの牧原さんがスリーを撃ってみたものの、入らず、このままゲームセットとなった。
 
整列する。
 
「67対60で旭川N高校の勝ち」
「ありがとうございました」
 
あちこちで握手やハグする姿がある。千里も橋田さんや津山さんとハグしたが、薫までちゃっかり熊野さんとハグしていた。
 
「じゃ、またウィンターカップで会いましょう」
と言って別れた。
 

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翌日日曜日。朝から電話で起こされる。
 
「どうしたの? 暢子」
「やられた」
「何が?」
「例の放火魔。朱雀が放火された」
「えーーー!?」
 
「幸いにもスプリンクラーが作動して、警備員さんも駆け付けて消火器で消し止めてくれて大事には至らなかったけど、壁を少し貼り直さないといけないし、2階に登る階段を作り直さないといけない」
 
「それまで2階に上がるのどうするの?」
 
照明やエアコン、バスケのゴールの上げ下げやカーテンの上げ下ろしなど電気系統のスイッチは2階の体育教員室にある。
 
「やはり棒登りで」
「それ私たちとか、南野コーチ・白石コーチは行けるけど、宇田先生や北田コーチは無理。川守先生なんて絶対無理」
 
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「あの人たちは少し身体を鍛えてもらうということで」
 
「だけど折角警戒を厳重にして、磁気カードまで導入したのに」
「昨日は校門開けていて部外者誰でも入れたからなあ」
「校門の所に警備員さんも立ってたのにね」
 
「つまり犯人は全然怪しく見えない奴なんだよ。度々犯行現場でセーラー服の女子が目撃されていたし、今回のイベントは中学生立入禁止なんで、警備員さんもA高校の制服以外のセーラー服着てる子・中学生っぽい子には全員声を掛けていたらしい。しかし、怪しい子は居なかったと言っていると。中学生は実は3人通したらしいが、全員保護者同伴だったらしい」
 
「保護者同伴の中学生ってまちがいなくC学園が勧誘中のバスケ選手だろうな」
 
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千里の脳裏にどうしても薫の姿が浮かんでしまった。薫ならそもそもN高校に出入り自由である。朱雀に居ても当然誰も怪しまない。千里は黙ってカードを引いてみた。
 
愚者のカード。
 
千里はため息を付いた。私は今「通(とお)っていない」。思い込みが強すぎて冷静に占いができない状態だということをこのカードは表している。愚者は千里そのものだ。
 

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とにかくも大事には至らなかったのが良かったねという話をした。その日は午前中にL女子高の体育館で今回の福岡C学園の遠征最後の親善試合、C学園対L女子高が行われた。
 
千里は、試合としては昨日の自分たちよりL女子高の方がずっといい試合をしていると思った。千里たちN高校のゲームはあちこちほころびがあるのをいろいろ間に合わせで何とか取り繕って、みっともなくはない程度にしたという感じだったが、L女子高はきれいな試合をしていた。
 
が・・・
 
点差は順調に開いていく。
 
実際問題としてまともなプレイをするのは全てC学園の術中にはまってしまう。結局はC学園に勝つには、インハイの時がそうだったし、今回もそうだったように、ある意味、無茶苦茶な試合運びをするしかないのだ。
 
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これが過去に数回、インターハイ・ウィンターカップで優勝・準優勝も経験しているチームの凄さなのだろうと千里は思っていた。
 

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結局、試合は72対56でC学園が勝った。橋田さんに完璧に押さえ込まれてしまった溝口さんが「また鍛え直します」と言って握手しているのを千里は聞いたが、自分たちもまた鍛え直さなければいけないということを感じた。
 
C学園は今回の遠征では札幌P高校と旭川N高校に敗れ、M高校とL女子高に勝って2勝2敗となった。
 
試合終了後は、M高校・N高校のメンバーも入って4校合同のお食事会を市内のレストランを貸し切りにして行った。お昼時ということもあり、食欲旺盛なバスケガールたちが物凄い勢いで食べるので、お店の人が目を丸くしていた感じもあった。
 
「まあ普通の女の子の食事会とは違うよね」
などと寿絵が言っていた。
 
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食事会は最初は学校別に座っていたものの、すぐ入り乱れて、千里は橋田さんと熊野さん、L女子高の溝口さんと登山さん、M高校の橘花・宮子たちと現在の国内主要高校の選手の論評で盛り上がる。暢子もここに合流した。
 
溝口さんはさすがに全国の有力選手を把握しているし、千里や暢子もだいぶ勉強したが、橘花はあまり研究していなかったようで「ひゃー」とか「それは手強そう」などと感想を口にしていた。
 
いくつかの選手は千里がいつも持ち歩いているパソコンに動画を入れているのでその場で再生してみせる。
 
「あ、この試合はうちも見てないや」
などと橋田さんが言うケースもあった。
 
「うちは今回数年ぶりのインハイだったんですけどね。毎年インハイに出てくれることを期待して、全国のOGが分担して、各都道府県予選から有力校の偵察をしてくれているんですよ」
 
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「そういう組織持っているというのは凄いですね」
「今回4年ぶりだったっけ?」
と千里は暢子に訊くが暢子も不確かなようで
「うん、そのくらい」
と言っていた。
 
「でもだいたい1回戦や2回戦で負けて帰ってくることが多かったからね」
 
「だけど、資金力もないとできない活動だ」
などと橘花が言う。
 
「漫画家の村埜カーチャさんとか、占い師の中村晃湖さんとか、他にも無名ではあるけど、大きな会社の役員している人とか、投資家としてかなりの実績をあげている人とかが、バスケ部のOGに居て、バスケ部は予算がたっぷりあるのよね」
 
「村埜カーチャさんはパワーフォワードでインハイにも出たし、それをネタにして女子バスケの漫画も書いてたけど、中村晃湖さんはポジション曖昧なまま地区大会のベンチに1度だけ座って5分くらい出してもらっただけらしい。それでも2人とも毎年何十万円も寄付してくれているんだよね」
 
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「中村晃湖さんって鑑定は1件20万くらい取るらしいね」
「そのくらいの料金にしておかないと、お客さんが殺到してどうにもならなくなるかららしいよ。基本的に1日に1件しか受けないらしいし」
 
「あの人、家相とかを現地に行って鑑定することが多いから、その場合は個人で1件20万、企業なら100万らしい。でも普通の個人の人生相談とかは1件5万と聞いた。それでも1日3人が限度だって」
と千里は言う。
 
「ああ、千里も占い師だよね」
「私は適当な占い師だから30分単位で占ったりもするけどね。中学の頃は中高生は1件500円とか1000円でやってた」
「安い!街頭でやってる人とか1人10分か15分でしょ?」
 
「まああれはお話を聞いてあげるのが主目的だから。その間隔で占える訳がないよ。占いって作曲をしたり、絵を描いたりするのと似たような作業だから。街頭の似顔絵描きさんとか10分で絵を描いちゃうし、フォークシンガーはギターつまびきながら即興で歌を歌ったりするけど、10分で占うというのは、その程度の占いってこと。私は30分間隔が限界」
 
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「そのたとえよく分かる」
と橋田さんが感心したように言った。
 

福岡C学園のメンバーは夕方4時の羽田行きの飛行機で帰っていった。
 
そしてその夜、千里は夜中に物凄い消防車のサイレンの音で目を覚ます。
 
「何だろう?」
とやはり起きてしまった美輪子が居間に出てきて言う。
 
「おばちゃん。火が見えるよ」
と千里はベランダに出て言う。
 
「あれ、あんたの学校の方角じゃない?」
「なんか凄い炎だね」
 
ふたりはしばし無言でその遠方の炎を見ていた。美輪子が火災情報のサービスに電話する。
 
「全然つながらないや」
「凄いサイレンだもん。起きちゃった人多いよ」
 

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翌日、千里は学校があるかどうか不安だったが、出て行くとN高校の校舎は無事であった。そして鮎奈から驚くべき情報がもたらされる。
 
「C学園の建設中の建物が放火されて全焼だって」
「全焼? それって警報とかスプリンクラーとか無かったの?」
「できあがったら設置するつもりじゃなかったのかな」
「工事現場自体の警備は?」
「特にしていなかったみたいね」
 
「通りがかりの人が気付いて通報してやっと消防車が出動したと聞いた」
「通りがかりって、そもそもあの付近夜中に通行人なんて居ないよね?」
「たぶん大通りの方を歩いていた人が気付いたんじゃないの?」
「だったら、もうかなり燃えてからでは?」
「それで、もう手の打ちようがないまま全焼したんだろうね」
 
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「これ誰の責任になるの?」
「工事をしていた工務店になると思うよ。C学園側はまだ引き渡し前だもん」
「警報とかを設置していなかった責任が問われそう」
「被害額凄まじいよね?」
 
「学校を建設するのって数十億円掛かるはず」
「じゃ数十億円が灰?」
 
「完成間近だったみたいだからね。最低でも10億円以上の被害が出たんじゃないかな」
「工務店、大変だね」
「保険に入っているんじゃないの? 一昨日のうちの高校の放火も修理費は保険から出ると言ってたよ」
 
そして少し遅れて学校に出て来た京子は追加情報を出す。
 
「事件現場に居た挙動不審の高校生を警察が拘束したって話」
「えーー!?」
 
「本人が黙秘しているし生徒手帳の類いも無いので身元は不明。でも持っていたカメラに火事の様子が写っていたらしい」
 
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「それただの野次馬ということは?」
「それが深川での事件以降、全ての放火事件の現場写真がカメラのCFカードに入っていたという話。実際には火事が発生しなかったA公園の摸擬住宅の件も千里が発火装置を投げようとしているシーンが写っていたらしいよ」
 
「それは・・・」
「犯人でもなきゃ全ての現場を撮影するのは無理。すぐ消し止められたものもあるし。特に千里のベストショットを撮ったというのは何か起きるということを予測してその場に待機していたということだし」
 
千里は突然不安になり、鮎奈・京子を置いて2組の教室に飛んで行った。
 
「薫? 薫居る?」
と2組の教室の入口で言う。
 
びっくりしたような顔をした薫が出てくる。
 
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「千里、どうしたの?」
「薫!居た!良かった」
 
と言って千里は薫に抱きつくと泣き始めた。
 
「ちょっとちょっと」
 
この後、「千里と薫は男の娘同士のレスビアンらしい」という噂がわずか1日で2年生女子全員に伝わっていた。
 

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「なんだ。そういうことだったのか。私が放火なんかする訳無いじゃん」
と昼休みに事情を聞いた薫は笑って言った。
 
「でも先月の連休24日にL女子高に居なかった?」
「その日は行ってたよ。うちのお祖母ちゃんが実は旭川L女子高の出身なんで、転校について打診したんだけどさ。やはり戸籍上も肉体的にも男性というのでは女子高では受け入れられないと断られちゃった」
 
「それは仕方無いね。あと9日始業式の日の早朝に旭川駅で見た気がしたんだけど」
「ああ、その日は旭川市内のおばちゃんちに泊めてもらったんだよ。でもこちらの学校に出てくるのに必要な道具とかをお祖母ちゃんちに置いたままだったから始発で深川に行って、あらためてこちらに出て来た」
 
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「大変だったね!」
 
千里はずっと後になってから冷静になって考えてみたのだが、放火事件は春頃から始まっていて、薫が北海道に来たのは、8月なのだから薫が放火犯人であるはずは無かったのである。
 

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