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■女の子たちの秋期鍛錬(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-10-03
 
千里たちが通う旭川N高校は市の中心部から少し外れた所にあり、すぐ隣に旭川M高校、少し離れた場所に大型のショッピングモールがある他は結構土地の空きがある。その中で石狩川沿いに操業停止した後10年近く放置されていた工場跡があったのだが(不審者も出没するので近づかないようN高の生徒達は指示されていた)、そこの建物が5月の連休明けに取り壊された後、工事用の壁が作られ何かの建築が始まったようであった。
 
何が出来るんだろう?というので、映画館やプールを含むアミューズメント施設だという説、ハイテク産業向けのオフィスビルだという説、はたまたアスパラガスやブロッコリーなどを土を使わずに育てる野菜工場だという説まで色々な説が飛び交ったものの、8月になって『旭川C学園建設予定地』という看板が出現し、ざわめきが起きた。
 
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「C学園の旭川校ができるの?」
 
[今、東京・兵庫・福岡にあるからさ。4校目を北海道に作ろうというので、最初札幌に出す予定だったらしい。でもどうしても適当な場所が見つからなかったのと、札幌の有力私立女子校がタグを組んで反対して、そこに旭川市議のKさんがぜひ旭川にって誘致したらしいよ」
 
と話を聞いてきたのは寿絵である。
 
「それって旭川の私立高校からその市議さん総スカンくったりして」
「あり得る、あり得る」
 
「福岡C学園の姉妹校か」
と言って千里はインハイで対決した橋田さんのことを思い出していた。
 
「C学園は元々スポーツに力を入れているけど、旭川校では特にバスケとスキーと野球に力を入れるんだって。バスケも専用体育館を作るし、野球も室内練習場を別途郊外に作るらしいし」
「金掛けてるね」
 
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「野球って共学なの?」
 
東京・兵庫・福岡のC学園は女子高である。
 
「男女併学になるみたい。男子棟と女子棟を作って、図書館とか職員室は共用。但し図書館も閲覧室は男女別。男子棟と女子棟は校門から違うし生徒会も別々に運用する。駅から校門までの歩き方も男女で分離されるらしい」
「蛇の生殺しだな」
 
「図書委員だけは、反対側の閲覧室にある本を取ってくるため、向こうに行くことができる。そもそも図書委員同士はどうしても接触が発生する」
「図書委員の希望者が多いかも」
 
「福岡C学園もバスケが全国区だけど、そちらから移籍もあるのかな?」
「それはないでしょ。所属が変わったら公式戦に出られないもん」
 
高校スポーツは無節操な引き抜きを防止するため、転校した生徒は半年間は公式戦に出場できない制限がある(親の転勤などによる転校は特例で出場が認められる場合もある)。
 
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そんな話を部活の練習が始まる前に南体育館でしていたら、宇田先生が「参った参った」と言って入ってきた。
 
「どうしました?」
「C学園の話聞いてる?」
「今その話をしていた所です」
 
「こちらが目を付けていた子がさ。かなりN高進学に傾いていたのを、あと少しという所で『済みません、他の所に決めました』と言われていたのだけどそれがC学園だったんだよ」
 
「なるほどー。既にスカウト活動を始めている訳か」
 
「どうも道内各地でかなりなりふり構わずに選手を集めている感じなんだよ。実は(旭川L女子高の)瑞穂さんや、(札幌P高校の)十勝さんとも少し話したけど、そちらも目を付けていた子を横取りされたみたいだ」
 
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「でも特待生って高体連の規定で何人もは取れませんよね?」
「うちも特待生でなくても奨学金出している例もあるし、やり方は色々あると思うよ」
「なるほど」
「多分特待か優待か、そういうので14-15人集めるつもりでいるのだと思う」
「新設校で2−3年生が居ないと、先輩後輩とかで苦労しなくて済むしベンチ枠に入れる確率も高いから魅力かもね」
 
「だったら道内の来年の有望新人が根こそぎ取られません?」
「という話を瑞穂さんともした所だよ」
「うーん・・・」
 

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ところで千里の身体はウィンターカップの地区予選の翌日、また突然の変化を起こしていた。
 
『いんちゃん、これって女子大生?女子高生?』
『女子大生の身体になってるよ』
『でもこないだとは感触が違うんだけど』
『あれは大学2年の終わりの方の身体。今回のは大学に入ってすぐの身体』
『なるほどー』
『こないだのは発生してしまった矛盾解決のために強引に入れ替えたもので、実は今日から本当に女子大生の身体が始まるんだよ』
『そのせいかな。こないだより随分頼りない』
『逆に昨日までとのギャップが小さいでしょ?』
『そうそう! だからこれ、女子大生なのか女子高生なのか少し悩んだんだよ』
 

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地区予選の翌週の連休。部活は休みだったのだが、千里は朝から暢子とふたりで例によって深川市内の体育館まで行き、お昼過ぎまで一緒に汗を流していた(その後、午後から神社に出る)。
 
ふたりが密かに練習していることを知った雪子が自分もやりたいと言ったのだが、3人以上集まって練習していると部活動をしているとみなされるので実は2人というのが、生徒会規約違反にならないボーダーラインなのである。それで結局雪子は揚羽を誘って、別の場所で練習しているようである。
 
リリカと蘭、敦子と睦子も、各々ふたりでジョギングをしたり腹筋などをしたりしているようだ。夏恋は父親に頼んで自宅の庭にバスケットのゴールを設置してもらったらしく(インターハイの銅メダルを娘が取って来たのを見てお父さんは結構舞い上がっている模様)、結里を誘って夏恋の自宅で黙々とシュート練習をしているらしい。彼女たちの場合は1on1とかをするより、むしろそういう基礎練習の方が良い。
 
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こういう自主練習に関して南野コーチは「無理せず怪我に気をつけるように」と注意した。部活動ではない場合、怪我してもスポーツ保険が下りない可能性が高い。また自主練習をする人は、その時間と場所を事前に南野コーチに届け用紙に書いて提出(FAX可)しておくようにというルールを設けた。部員の中には遠隔地から勧誘されて出て来て寮に入っている子もいる。そういう子に事故があったら、コーチや顧問は「練習しているとは知りませんでした」では済まない。
 

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しかし深川市内の体育館で練習していると、しばしば他の高校のバスケ部の人(大抵はトップクラスの子たち)とも遭遇する。それで
 
「奇遇ですね」
「ちょっと手合わせを」
などと言って一緒に練習することもしばしばあった。
 
「村山さん、フェイントが凄すぎる」
などと対決した相手からはよく言われた。
 
「インターハイのJ学園との試合のビデオ随分見たんですけどね。どうしてもどちらに行くかというのが読めないんですよ」
 
「だいたいは相手の意識がどちらに行っているかを読んでその逆を抜くんですけどね。花園さんとか秋田N高校の中折さんとかは、敢えて自分の意識をどちらかに向けて、反対側に誘うんですよ。だからこちらはその偽装まで読んで抜かないといけないから大変でした」
と千里は少し種明かしをする。
 
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「それハイレベルすぎ!」
 
「中折さんは村山さんを結構停めたけど、花園さんは全然停めきれませんでしたよね」
「彼女がうますぎるからですよ。うますぎて自分の術に自分ではまる」
 
「なんか難しい」
 
「気のコントロールに関しては、やはり村山は小学校の頃剣道やってたし、神社の巫女をもう4年半やってるからプロだから」
と暢子が言うと
 
「なるほど!剣道経験者だったのか」
と納得している感じ。
 
「千里をほぼ完璧に停めてるのはP高校の佐藤さんくらいだよね」
と暢子が言う。
 
「あの人は凄い。だって何も考えてないんだもん」
と千里は言う。
 
「ん?」
「無心だから、左右どちらにも隙が無いんだよ」
 
「あ、それ分かる」
と言ったのはR高校の日枝さんだった。
 
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「私もあの人は全然抜けない。佐藤さんって、量子力学的に左右に神経を置いてるんだと思う」
と日枝さんは言う。
 
「何それ?」
「ほら、物理の授業で、たった1個の電子を2つ穴が開いている壁に向かって飛ばすと、電子は2つの穴を同時に通過するって習わなかった?」
 
「あのあたりチンプンカンプン」
「私、物理取ってなーい」
 
「佐藤さんって左に警戒している佐藤さんと右に警戒している佐藤さんが量子力学的に同時存在しているんだよ。そして実際に抜こうとした側の佐藤さんが実体化する。シュレディンガーの猫と同じ」
と日枝さんは説明するが、
 
「ごめん。私の頭では理解不能かも」
という声が多数であった。
 
「それってジャンプ超能力漫画の世界では?」
という声もあった。
 
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この連休初日、深川の体育館で遭遇したバスケ女子の中に見慣れない顔があった。背が高い。多分176-177cmある。それに動きも良い。向こうが休憩していた時にこちらから声を掛けた。
 
「お疲れ様です。どちらの学校ですか?」
「あ、私、今学校行ってないんですよ」
「ああ、お勤めですか?」
「いや、NEETってやつで済みませーん。早い話がスネかじり」
「いえいえ謝ることないですよ。じゃずっとおうち?」
「それだと息が詰まるから、こうやって時々汗を流しているんですけどね」
「でもかなり巧いから、どこかの学校のレギュラーさんかと思った」
 
「7月までは東京の高校に行っててバスケット部にも入ってたんですけどね。ちょっと父親と揉めたこともあって、8月から深川の祖母の家に居候していて」
 
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「何か大変みたいですね。でも土地が変われば気分も変わるかも知れないし。そうだおひとりなら、ちょっと一緒に練習しません?」
 
ということでその日は彼女と一緒にシュートやリバウンドの練習をした。
 
「なんだか今日は楽しかった。あ、私、薫です」
と彼女が名乗ったので、こちらも
「N高校バスケ部の暢子です」
「同じく千里です」
と言って、握手をした。
 
その握手をした時、千里は何か変な違和感を感じた。何だろうこれ、と思ったものの、その時はその違和感の正体が分からなかった。
 

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この3連休の初日、千里は朝から午後までバスケの練習をし、夕方から神社に出ていたのだが、夜帰宅すると、留萌から母が出て来ていた。
 
「あ、お母ちゃんいらっしゃーい」
と千里は母を見て言い
「これ、おみやげ〜」
と言って帰宅途中のコンビニで買って来た肉マンを3個出す。
 
「3個あるんだ?」
と母が驚いている。
 
「うん。誰か来そうな気がしたから」
「千里はこんなものだね」
と美輪子は、この手の千里の行動には慣れているので平然としている。
 
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