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■女の子たちの秋期鍛錬(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-10-04
 
そして3日目、10月8日は3位決定戦のあと決勝戦が行われる。会場となっているJ高校の体育館では、最初に女子の3位決定戦が行われ、橘花たちのM高校がR高校に快勝した。少なくとも橘花が居る間は旭川地区の女子3強はL女子高・M高校とN高校の3校であることを印象づけた試合であった。
 
男子の3位決定戦に続き、女子の決勝戦が行われる。
 
L女子高とN高校は先日のウィンターカップ地区予選決勝でも当たっている。その試合で留実子が怪我して今入院中なので、お互いに少し後味が悪い気がしていたので、早い時期に公式戦でまた戦ってスッキリさせる機会が来たのは良いことであった。但しどうせスッキリさせるなら勝ってスッキリさせたい所である。
 
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スターティング5は、N高校は PG.雪子 SG.千里 SF.寿絵 PF.暢子 C.揚羽、L女子高は PG.藤崎 SG.登山 SF.大波 PF.溝口 C.鳥嶋、となっていた。これが現時点でのお互いのベストメンバーである。
 
試合は白熱した試合となった。揚羽も暢子も貪欲にゴールを奪っていくし千里のスリーも冴えている。一方のL女子高も溝口さんや大波さんがどんどん点数を取るし、登山さんはフリーにすると怖い。リバウンドも揚羽と鳥嶋さんの戦いはかなり激しかった。
 
お互いに適宜交替しながら試合を進める。千里も暢子も第2・第3ピリオドでは半分だけ出て、休んでいる間は蘭や夏恋が出ている。雪子もメグミと交代しながら、揚羽もリリカと交替しながら、寿絵も睦子や敦子と交代しなからである。
 
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溝口さんや大波さんも友坂さんや空川さんと交替しながら出ている。しかし第4ピリオド後半にはまたどちらもベストメンバーに戻っていた。
 
「なんか普段の練習試合の時には使ってないコンビネーションを何度か見せたね、L女子高さん」
「まあ、それはお互い様よ。こちらも結構隠し球はある」
 
と残り3分を切ってのタイムアウトでのミーティングで言い合う。
 
千里は話をしていてふと、何か視線を感じて客席を見た。そこには例の薫さんが居た。ああ、やはりバスケ女子としては、こういう大会は気になるよね。それで見に来たのかなと千里は思った。
 
「よし行くぞ」
最後に暢子が言う。ここまで82対82の同点である。
 
「千里も留実子も寿絵も雪子も気合い入れて」
と言ったのだが
 
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「私、揚羽です」
と本人。
 
「ごめーん。言い間違っただけ。揚羽、リバウンド頑張れよ」
「はい」
 

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それで出て行く。N高校の得点の後のタイムだったのでL女子高のスローインから再開である。
 
藤崎さんがドリブルで攻めあがって来るが、タイムアウトの直後なのでN高の守備は堅い。するといきなり登山さんがスリーを撃つ。
 
きれいに入って85対82。
 
N高の攻撃。雪子が攻め上がっていく。千里には溝口さんと登山さんが付いている。暢子には大波さん、揚羽には藤崎さんが付いている。マークの無い寿絵にパス。寿絵が中に進入していきシュートするが鳥嶋さんがブロックする。そのこぼれ球を大波さんが取ろうとした所を揚羽が一瞬早く奪う。暢子にトス。暢子がシュートするが溝口さんがブロックする。そのこぼれ球をまた揚羽が取り千里の左側(千里から見たら右側)へ速いパス。千里が飛びつくようにして取る。千里をマークしている登山さんがそちらへ動く。
 
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が、千里はボールを取ると右足をバネに使って反対側へ切り返す。登山さんが「あっ」と言いながらも身体が付いてこない間に千里はもうスリーを撃つ。
 
入って同点。85対85。
 
その後もお互いに4点ずつ取り合って残りはもう1分を切る。
 
L女子高が攻めて来て、ボールを運んで来た藤崎さん自身が壁になって溝口さんにドライブインさせる。暢子がフォローに来るが、強引に押しのけるようにしてシュート。
 
入って91対89。残り40秒。
 
N高が攻めて行く。
 
ここで得点しなければならないのは当然だが、残り時間が24秒以下になった場合、L女子高は時間をいっぱい使って得点すると勝ち逃げすることができる。つまりここは30秒程度残して得点したい。つまり10秒程度以内に得点したい。
 
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となると千里のスリーで速攻というのを考えてしまう所である。
 
がそれは向こうも読んでいるので千里にまた溝口さんと登山さんの2人が付いている。ここで雪子は自ら中に飛び込んで行った。藤崎さんがフォローに来る間もなく、そのままシュートする。
 
これがうまく入ってしまう。
 
91対91で残り32秒。
 
L女子高の攻撃。
 
ここでL女子高が得点すれば次はN高のボール。時間が充分残っていると色々な攻撃の選択肢ができてしまうから、できるだけ時間を残したくない。つまりここはゆっくり攻めた方がいいということになる。
 
N高ディフェンスにできるだけ足を使わせるようにボールを回す。そして残り15秒になった所で溝口さんが暢子のマークをうまく振り切って中に進入する。撃つが揚羽がブロックする。リバウンドを鳥嶋さんが取ろうとしたが、先に暢子が取った。
 
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千里にパスし、千里がドリブルして攻め上がる。藤崎さんが必死に戻って来て行く手を阻む。一瞬対峙するが、千里はうまいフェイントで藤崎さんを抜く。しかしその間に登山さんが戻ってくる。距離はスリーポイントラインまで結構あるがまだ登山さんとの距離がある間に撃つ。
 
がさすがに外れる。
 
落ちてきたボールを鳥嶋さんと揚羽が争ったが鳥嶋さんが取って藤崎さんにパスする。藤崎さんがまだ戻りきっていなかった溝口さんへ長めのパス。溝口さんはそのままゴール近くまで走り込んでシュート。
 
しかし暢子がギリギリで指を当てて停める。
 
落ちてきたボールを寿絵が確保。コート半ば付近に居る千里めがけて投げる。
 
がそのボールを登山さんがカットする。大波さんにパスし、大波さんがそのままドリブルで進入して行きシュート。
 
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しかし外れる。
 
落ちてきたボールを溝口さんと暢子で取り合う。
 
暢子が取ったものの溝口さんが奪い取り、シュートしようとするが暢子のガードが強くシュートできない。近くに居る大波さんにパス。大波さんが撃った所でブザー。
 
試合終了のブザーであった。
 
大波さんのシュートは外れてブザービーターは成らなかった。
 

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整列する。
 
「91対91の同点」
と審判が告げる。
 
この大会の決勝戦は同点の場合延長戦はしないルールなので、N高校・L女子高の両者優勝ということになった。
 
「ありがとうございました」
 
挨拶してから、あちこちでハグし合う。
 
「思いっきり闘(や)れてスッキリしたね」
「どうせなら勝ってスッキリしたかったけど」
「それはお互い様だね」
 
「またやろう」
などといった言葉を交わしてベンチに引き上げた。
 

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「だけど暢子、揚羽と留実子を10回くらい言い間違ったね」
と試合後、寿絵が指摘する。
 
「うん、まあ気にするな」
と暢子は寿絵の方を向かずに答えた。
 

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続いて行われた男子の決勝は、貴司たちのS高校と北岡君たちのN高校の対決である。
 
S高校は佐々木君・田臥君に貴司、更には清水君といった3年生が戦力の中心である。S高校の3年生は3年の12月まで活動できる。それに2年の戸川・柴田、1年の大林・小林などが加わる。この1年の「大小コンビ」が実に手強い。
 
一方のN高校は3年生がもう引退しているので2年生の北岡君(C)・氷山君(PG)が中心のチームである。SGは2年の落合君と1年の湧見君(昭ちゃん)を交替で使い、これに2年の室田・中西、1年の水巻・大岸といったあたりが加わる。
 
千里はこの対決は野武士軍団と正規兵軍団の対決だなと思った。S高校は貴司にしても田臥君にしても大小コンビにしても個性派揃いである。それに対してN高校は昭ちゃんを除けば「きちんとした訓練を受けた」行儀の良い、欠点が少ないバスケット選手が多い。
 
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試合は始まってみると貴司や田臥君がスタンドプレイでどんどん得点していき、大林小林コンビの巧いスクリーンプレイにもN高守備陣が翻弄され、最初から点差が開いていく。
 
これはインハイに行くチームと道大会上位でくすぶっているチームの差でもあるかも知れないと思って千里は見ていた。S高選手の動きの多くがN高側の想定外なのである。S高の攻撃の仕方はバスケットの理論からすると正しくないかも知れないが、正しくないゆえにN高側の意識から外れてしまっている。
 
その中で全体の3割くらいの時間出してもらった昭ちゃんは撃ったスリーの半分近くを入れたし、今回17番の背番号を付けていて「お試し」で出してもらった感のある浦島君が結構頑張って10点も取ったのが救いかなという感じであった。
 
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試合は途中からワンサイドゲームの感になり、108対61というダブルスコアに近い得点差にはなったものの、今回の大会では男子チームのベンチには入らず客席から見ていた宇田先生は頷くようにして試合を見ていた。
 
「昭ちゃんは次からは物凄くチェックされるでしょうね」
と千里は宇田先生のそばで半分ひとりごとのように言った。
 
「それが彼の今後の課題になるね」
と宇田先生も同じ事を考えたかのように答えた。
 

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決勝戦が終わり、その後表彰式を経て16時すぎに解散となる。千里はチームのみんなと別れると、私服に着替えてから市内某所に行く。貴司は16時半ちょうどにやってきた。
 
「ごめん。待った?」
「ううん。私も今来た所。優勝おめでとう」
「そちらも優勝おめでとう」
 
今日はインターハイの後でするつもりでいて出来なかったデートのリテイクなのである。最初にやはり試合で消耗してお腹空いたよね、と言って焼肉屋さんに行き、たくさん食べる。
 
「しかし千里もほんとによく食べるようになったな」
と貴司は言う。
「スポーツ選手は身体が資本だから。蛋白質はしっかり取らないと」
と千里。
「それが昔の千里からは想像できない言葉だ」
 
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「私はもう可憐な女の子じゃないから」
「千里は素敵な女性に成長したよ」
「貴司も格好良い男に成長したよ。ただ浮気が無ければね〜」
「それはもう勘弁してよ〜」
 
「とりあえず**ちゃんからのメールには返事しないでよ」
「なんで、そんなの分かるの〜〜!?」
「ふふふ」
 

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