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■女の子たちの秋期鍛錬(6)

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食事の後で、一度一緒にホテルに行きチェックインする。今夜ふたりで泊まることは貴司の母にも、美輪子にも承諾をもらっている。ただしホテルの部屋はシングルを2つ取っている。実際には1つの部屋で朝まで過ごす。
 
ホテルに荷物を置いてから夕方の町に出る。ゲームセンターでエアホッケーやバスケット対決などする(ふたりとも凄いので周囲にギャラリーができていた)。アクセサリーショップに寄って貴司が千里に雪だるまのイヤリングを買ってくれた。カフェでコーヒーなど飲みながらまたおしゃべりする。
 
しかし旭川の街中でデートしていると、どうしても知り合いに遭遇する。京子が彼氏の香取君とデートしている所とすれ違ったし、蓮菜とボーイフレンド・川村君のカップルにも出会ったし、お腹がかなり大きくなった忍が松川さんと歩いているのにまで遭遇した。
 
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「さっきすれちがったのって、田代の彼女じゃなかった?」
「うん。でも去年別れたんだよ」
「そうだったのか」
「別れたけどお友だちではあり続けているらしい。向こうにも新しい彼女はいるんだけどね」
「そういう微妙な関係を維持できるって凄いね」
 
「うん。恋人として別れてしまった場合は、一切のつながりを切ってしまう場合が多いけどね」
 
「千里」
「ん?」
「もし僕たちが別れるようなことになっても、僕は千里と友だちで居たい」
「いいよ。それは最初から、そう言ってたしね」
「うん」
 

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夜9時頃、ドラッグストアでおやつたくさん・飲み物たくさんに避妊具3箱を買ってホテルに戻った。交替でシャワーを浴びた後、ベッドの上に行く。ふたりともシャワーの後は裸である。貴司がシャワーを浴びている間に、千里はポストイットに1,2,3,...と11までの数字を書き、壁に貼り付けておいた。
 
「あはは、ほんとに11回やるんだ?」
と浴室から出て来た貴司がそれを見て言う。
 
「私たちの自主的な鍛錬だね」
「鍛錬なのか!」
「一晩中頑張れる体力を付けなきゃ」
「40分交替無しでコートを走り回るのとどちらがきついだろ」
「まあセックスは選手交代無いからね」
「交替しながらってのは嫌だな」
 
こういう発想が貴司ってやはり女性的だよなと千里は思う。
 
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「こないだ3回やったから残り11回だよ」
「一晩でそんなにしたら、もう二度と立たなくなるかも」
「その時は潔く男を捨てて女になる道を」
「そうならないように頑張る」
「そうなりたいとか?」
「そんなことないよ」
「怪しいなあ」
 
「取り敢えず1回戦」
と言って貴司は千里にキスをしてベッドに押し倒した。千里は手を伸ばして部屋の灯りを落とした。
 

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ふたりの愛の営みは適宜休憩しながら続いていく。1回到達したら数字を書いた紙を1個取り、30分くらい飲み物を飲んだりしながらおしゃべりして、その後、また続きをやる。最初の2回は正常位でやったが3回目は騎乗位、4回目は初めて後背位を試してみた。
 
「ねぇ。これヴァギナに入っているんだよね?」
と貴司が不安そうに訊く。
「まさか。私男の子なんだからヴァギナがあるわけない」
と千里は答える。
「じゃこれもしかして後ろの穴に入ってるの?」
「後ろの穴でないことだけは保証してあげるよ」
「じゃこれどこに入っているのさ?」
「スマタ」
「それ絶対嘘だと思う」
 
後背位は、千里はけっこう気持ち良かったが、貴司は「外れる〜」と言っていた。さすがに4回目だと勃起の程度が弱いので維持するのが大変なのだろう。5回目は側位、6回目は正常位でしたところで、もう時刻は朝の4時である。
 
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「ねぇ、これ朝までに終わらないよ。続きはまた今度にしない?」
と貴司。
 
「そうだなあ。じゃ今回のお互いの優勝記念に1回ずつ追加して次は6回」
と千里。
 
「え?今日6回したから残り5回だろ?2回追加したら7回では?」
「今からもう1回やるからだよ」
「えーーー!?」
 

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最後は千里がフェラをしてあげて、大きくなってきたところで逆正常位で結合してフィニッシュまで行った。
 
貴司はさすがに精根尽きたようで
「もう一生分の精子を使い切った気分」
などと言っていた。
 
「もう精子が無くなったのなら、役割を終えた男性器は取り除いて」
「その話はやめてよ〜」
 
「やめてと言う割りには、貴司言われて嬉しがっている気もするんだけど」
「そんなことはない」
 
最後のセックスを終えた後、シャワーを浴びてから服を着てホテルをチェックアウトする。駅前まで歩いて行く。ここで4:50に美輪子と待ち合わせていた。貴司を深川駅まで送ってくれることになっていた。朝5:47深川発の留萌線に乗ると6:38に留萌に着くので、ちゃんと学校に間に合うのである。しかし貴司は今日の授業は辛いだろうなと千里は思った。
 
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駅前で美輪子を待っていた時、早朝の静寂を切り裂くようなサイレンの音がする。何台もの消防車が通りを走って行くのを見た。
 
「何だろう?」
「まさかまた放火では?」
「放火?」
 
それで千里は先日から深川市内、そして旭川市内で放火が相次いでいることを言う。
 
「学校の用具置き場とか公園のトイレとか廃工場とか、ある程度大きな敷地にあって警備が弱そうな所が狙われているのよ。そのうち留萌に飛び火するかも知れないし、そちらも気をつけてね」
 
「うちの先生にも言っておくよ。通達回ってきているかも知れないけど」
 

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やがて美輪子の車が来るので貴司に乗ってもらう。それを見送ってから千里はタクシーで帰宅しようと思い(歩いても帰られないことはないので歩くつもりだったが都会で暗い中を女の子が歩いたらダメと美輪子から言われた)タクシー乗り場へ行く。
 
タクシー乗り場に3台駐まっていたが、どうも運転手さんは寝ているようだ。それでトントンとノックして乗せてもらった。
 
行き先を告げて車が走り出した時、千里は駅に入って行く高校生くらいの女の子の姿を見た。それは薫のような気がした。彼女は深川のお祖母さん宅に居ると言っていた。始発(6:25)で帰るのだろうか? しかし旭川で夜中何をしていたんだろう?などと千里はぼんやりと考えた。
 
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帰宅した後は1時間ほど仮眠してから(《せいちゃん》に起こしてもらって)学校に出かけた。
 
連休が終わり、今日からN高校は2学期である。
 
始業式の時に放火事件についても校長は触れ、不審人物を見たらすぐ連絡するようにと言った。今朝の火事はJ高校の校舎裏手にある体育倉庫が放火されたものだそうであった。ただもう使っていない倉庫だったので被害額としては大したことなかったらしい。燃えたのも本来廃棄すべきだったような道具ばかりだったそうである。このJ高校は昨日千里たちがバスケの決勝戦をした場所である。
 
「どんな奴がやってるんだろうね」
「ほとんどの場所が誰でも入ろうと思えば入れるような場所ばかりだから、警察も犯人像を絞り込めずにいるみたいね」
 
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「でも不審人物を見たら連絡をと言われたけど、不審人物ってどんな奴だろ?」
と京子が疑問を呈する。
 
「うーん。こんな感じかな」
と梨乃が描いてみせたのは、いわゆる絵に描いたような不審人物という雰囲気。髪がボサボサしててアニキャラのTシャツによれたジーンズ、メガネを掛けていて、紙袋を持った小太りの男である。
 
「これは怪しすぎる」
「さすがに目立ちすぎ」
 
「こんな感じで買物公園通りを歩いていたらまだそんなに目立たないかも知れないけど、学校の中で見たら言われてなくても速攻で通報するよ」
 
「ねぇ、L女子高も放火されたんでしょ?」
「うん」
 
「だったら犯人は女なんじゃないの?」
と鮎奈が言った。
 
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一瞬みんな考える。
 
「あり得るね」
「女子高に男がいたら、それだけで目立つもん」
 
「意外と女子高生だったりして」
「うーん・・・」
 

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2学期は振分試験の結果で若干のクラス移動が発生するが、6組の女子で移動になった子はいなかった。やはり理系女子は勉強に対するテンションの高い子が多い。今回の振分試験上位は1位鮎奈・2位浜中君・3位蓮菜と6組勢がベスト3を独占していた。
 
千里は14位で特待生・授業料全免を維持した。暢子も36位で半免を維持している。病室で受験した留実子はかなり頑張って49位と初めて50位以内に入り、奨学金の増額をしてもらった。
 
「これだけもらえたらバイトしなくてもいい」
などと本人は言っていたが
「入院中にバイト考えるのは無茶」
と千里たちは言っておいた。
 
留実子は土日を中心にデパートの配送品の整理をするバイトをしていたのだが、最近は実際問題としてバスケ部が忙しくて、千里が神社になかなか行けないのと同様、留実子もなかなかデパートに出て行けないようである。それでも向こうの人は留実子をクビにはせず「出て来られる時に出てくればいいからね」と言ってくれているということだった。
 
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なお、バスケ部進学組の川南は82位、葉月は93位で、いづれも20位以内にはほど遠かった。これで2人は12月の新人戦地区大会には出られないことが確定した。(12月下旬の実力試験で20位以内に入れば2月の新人戦道大会には出られる)
 

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そしてこの日2組に転校生があったことを千里たちは1時間目が終わってから知る。
 
「薫ちゃん!」
と千里は驚いて声を掛けた。
 
「えへへ。この学校に入っちゃった」
と薫はちょっと照れている。
 
「それ前の高校の制服?」
「うん。ここの高校のは今頼んでるんだ」
「セーラー服も可愛いね」
「そうそう。セーラー服にしては可愛いんだよね、これ」
 
「バスケット部に入るよね?」
「うん。入る」
「それは凄く楽しみ!」
と千里は本当に嬉しそうに言う。
 
「いや、そう喜ばれても。困ったな」
と薫が言うのに、千里が首をかしげていると、2組の教室から暢子が出てきて
「参った、参った」
などと言っている。
 
「どうしたの?」
「私も、これはバスケ部に強力な戦力ができたと喜んだのだけど」
「何か問題でも?」
 
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「ひとつは転校生なので、3月末までは公式戦に出せない」
「あ、そうか。10月9日付けで転入したの?」
「書類上は10月6日付けにしてもらった。だから4月6日以降なら試合に出られる。もっとも9月は向こうの学校、全く出席してないけどね」
 
「そしてこちらが問題なのだけど」
と暢子は本当に困ったように言う。
 
「薫ちゃんは男子バスケ部に入るんだよ」
「は?」
 
千里は暢子のことばを理解できなかった。
 
「すみませーん。私、戸籍上、男子なので」
と薫。
 
「えーーーーー!?」
と千里は驚く。
 
そしてハッと思った。こないだこの子と握手した時に何か違和感があった。それはこの子が男の子だったから、女の子と思って握手したのに、手の感触が女の子ではなかったからだったんだ!
 
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「学校側との話し合いで、生徒手帳の性別は女にしてくれるそうです。着替えについては個室を用意するからそこで着替えてくれと。でも身体が男なので、部活は男子の方に参加することになりました」
 
「薫ちゃん、おちんちんあるの?」
「ある」
「おっぱいは?」
「ない。この胸はパッドなんだよ」
「でも薫ちゃん、声が女の子」
「努力して出せるようになった」
「女性ホルモンとか飲んでないの?」
「うん。飲んでない」
 
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