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■女の子たちの辻褄合わせ(8)

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「あれ〜、昭ちゃん、なんで男子チームに入ってるの?」
などとM高校女子の選手たちから言われる。
 
昭ちゃんはこれまで毎日N高女子チームに入って練習試合に出ていたのである。おかげで、両チームの女子たちのアイドル(=おもちゃ)みたいになっていた。
 
「僕、男子なので」
「えーー? 性転換しちゃったの?」
「最初から男です〜」
「だったら再度性転換して、女の子に戻ろう」
「女の子になると可愛い服とか着れるよ」
「そういうの好きだよね?」
「えっと・・・好きですけど」
 
「おお、そういう子はどんどん女装して、その内手術も受けて本当の女の子になるべきだよ」
 
などと言われて、またまた昭ちゃんは俯いて真っ赤になっていた。
 
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「でもインターハイに行けなかったので、男子バスケ部の練習は当面他の部と同様に18時終了と言われてしまったから中核メンバーだけでも遅い練習に参加できるのは助かる」
 
と新キャプテンに予定されている北岡君は言う。
 
バスケ部は絶対インターハイに行くからと言って特例で19時までになっていた練習時間を4月から男女とも20時までに超特例で伸ばしてもらっていた。女子の方はインターハイに行けたことでこの超特例が持続するが、男子の方は2ヶ月半にわたって1時間延長していたので、1学期いっぱい(10月上旬まで)は18時終了で夏休みも練習は週に1回までと言われた(本当は夏休みは練習自粛の約束だったのをそこまで許してもらった)。しかしこの練習試合については「インターハイに出場する女子の練習に協力する」という名目で、参加者だけ20時までの活動が学校側から認められたのである。
 
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「それにこの女子チームは3つとも男子並みに強いから、ほんとにこちらの練習にもなるし」
 
「この5人が秋の大会の中核になるんだろうね」
「うん。シューティングガードは落合を連れてくるか湧見を使うか悩んだんだけどね。湧見は4月に比べると、かなり体力付けてきているみたいだし。落合は別途毎日600シュートを課してる。あいつは試合に出すより、そういう練習の方が良い」
 
「うんうん。バスケって各々のポジションの専門家が必要なスポーツだから」
「そのあたりが、ラン&ガン派と、いつも議論になる所だけどね」
 

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「だけど、男子チームさん、相手が女子だからといって遠慮しないでよね」
「こちらは身体の接触とか何にも気にしないから」
「でも、おっぱい掴んだりしたらぶん殴るから」
 
「ああ、千里は男子チームに入ってた時、まともにおっぱい掴まれたことあるらしい」
「それでつかんだ男子が『ぎゃっ』て声あげたらしい」
「まあ、男かと思ってホールディングして、女だったら驚くよね」
 
「やはり千里は女なのに男子チームに無理に入って、色々問題を引き起こしてたんだな」
 

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この練習試合が始まる前日の6月25日、女子バスケ部は臨時で休みとなった。さすがにまだみんな疲れが残っていたのである。
 
その日千里は学校が終わった後、旭川駅17:38の列車に乗って留萌に行った。駅で母が待っていてくれた。千里は女子制服姿だし髪の毛もショートヘアのウィッグだが、その件に関して母は何も言わない。
 
「お母ちゃん、これお土産」
と言って、旭川で買ったお菓子を渡す。そして母の車に乗り込む。
 
「お前、次帰って来られるのはいつ?」
「インターハイに行くことになったから、8月上旬までは全く時間の余裕が無い」
「だったら、お盆には帰れる?」
「それがお盆も用事が入っているんだよ」
 
実はお盆に旭川に来る予定の美空に合わせて、DRKの音源制作をする予定なのである。
 
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「どこかで一度帰れるとは思うんだけどね」
 
母の車は貴司の家の前に停まる。家の中から貴司とお母さんが出て来て、母同士挨拶のやりとりである。
 
「それではよろしくお願いします」
と母は言って、車で帰っていった。
 
千里は貴司と貴司のお母さんと一緒に家の中に入る。
 
「あ、千里ちゃん、いらっしゃい」
と貴司のお父さんは言ったが、
「いや、お帰りと言った方がいい?」
と訊く。
 
「はい、おかえりでいいです。ただいま戻りました、お父さん」
と千里は笑顔で挨拶した。
 
「でも髪、伸びたんだね」
「はい。少し伸びました」
「千里ちゃんは中学時代は腰まである長い髪だったんだけどね」
とお母さんが言う。
「それを丸刈りにしちゃうなんてもったいない」
 
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「まあ、それで貴司、18歳の誕生日おめでとう」
と言って、千里は貴司に誕生日プレゼントを渡す。今日6月25日は貴司の誕生日なのである。
 
「ありがとう。何だろう?開けていい?」
「もちろん」
 
「おぉ!G-SHOCKだ!」
 
「3月にお財布もらったから、そのお返し。ハミルトンのジャズマスターとどちらにしようかと迷ったんだけど、貴司、ハミルトンなんか持ってても練習の時には使わないだろうし、G-SHOCKなら、いつでも付けててくれそうな気がしたから、こちらを選んでみた」
 
「ああ、僕は格好良いのより、実用性が高いものの方が好き」
「うん。そのあたりの好みは多分私と同じかと思った。これ世界各都市の時刻も表示できるから、貴司日本代表になって世界選手権に行った時も使えるよ」
「行ってみたいな」
 
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最初にデコレーションを施した生クリームのホールケーキに大きなロウソク1本と小さなロウソク8本を立て、火を点けて貴司が一気に吹き消す。
 
「Happy Birthday!」
 
ケーキを千里が6等分に切って、皿に載せて配った。
 
道大会に行った帯広で買って来たぶどうジュースを開ける。
 
「あれ?2本あるんだ?」
「そうそう。僕も千里も偶然同じものを買ったんだよ」
「気が合うね!」
 

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食事はお母さんがビーフシチューと唐揚げ・サラダを作ってくれている。
 
「お肉が凄く軟らかくて美味しいです」
「3時間煮込んだから」
「すごーい」
 
「唐揚げも食べてね」
「食べてまーす」
 
「でもふたりともインターハイに行けて良かったね」
「貴司さんとこは実力ですけど、うちは運が良かったです」
「後でゆっくり状況を聞いたけど、P高校は不運が重なったみたいだね」
「トーナメントの組合せもあったと思う。うちは比較的楽できたから」
 
「でも千里、男子チームに居たら、インハイ行けてない」
「かもねー」
「N高は男子と女子のレベル差が大きいから」
 
「でもなんで男子チームに入ってたの?」
とお父さんから訊かれる。
 
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「実は貴司さんと戦いたかったからなんです。1勝1敗でしたけど」
 
「だけど、こいつ協会から性別を疑問視されて、それで調査されたら、そもそも戸籍も女だし、念のため病院で精密検査受けさせたら、やはり医学的にも女だというので、女子チームに移籍になっちゃったんですよ」
 
「いや、精密検査も何も、千里お姉さん、ふつうに女の子にしか見えないよね」
と妹たちからも言われる。
 
「すみませーん」
 
「だいたいこいつ中学では女子バスケ部に入っていたのに」
「えへへ」
 
貴司・貴司の母と話し合い、お父さんには、千里は実は普通の女の子であるということにしておくことにしたのである。
 
そしてふたりがまだ現実的に結婚を考えられる年齢ではないことは承知の上で、これまで4年間も交際してきていることを配慮して、お互いに『お嫁さん』と『お婿さん』に準じて扱ってもいいということにした。但しセックスは禁止はしないが、やりすぎないこと、する時は必ず避妊することは大前提である。
 
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御飯の後で、千里が旭川で買って来た洋菓子をみんな食べる。千里がお土産に持って来た紅茶の封を開けて、ティーポットで煎れる。
 
「なんかインドの文字が書かれてるね」
「ええ。知り合いがインドに出張で行って現地で買って来たらしいです。これはケララと書いてあるらしいです」
と言ってから、千里は一瞬後ろの方に《気》をやって
「こちらの小さい文字はカンヌールと書かれているそうです」
と言う。
 
千里が後ろの子と交信したのに気付いたのはお母さんだけである。
 
「このお土産をくれた人は、ケララは南インドの紅茶・緑茶の生産地で、カナンデバンなんかのある州だと言ってました」
 
「ケララカレーとか売ってるよね」
「あ、スパイスのセットですね。あれ自分でブレンドしてカレー粉作れるんで美味しいカレーが作れるんですよ」
「千里、今度来た時、それ作ってよ」
「いいよ」
 
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「カナンデバンといったら2000m級の山の上で作ってる紅茶だよね」
「ええ、癖が無いのでミルクティーに良いそうですよ」
 
「ミルクティーにいいというと、ニルギリも南インドだよね?」
とお母さん。
「あ、近いそうです。ニルギリは何と言ってたかな・・・タミール・ナドゥー州です」
 
「よくそういう外国の固有名詞が頭に入るね」
「あ、私、割と記憶に残りますよ〜」
 
「千里ちゃん、人の顔を覚えるのも得意だし」
「そうですね。一度見た人の顔と名前はだいたい一致します」
 
「スナックのママさんができる」
とお父さんが言うと
「別にスナックのママさんしなくてもいいと思うけど」
とお母さんは言う。
 

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お茶を飲みながら歓談しつつ、交代でお風呂に入る。そして夜11時頃には各々の部屋に引っ込む。
 
なお、明日は朝1番5:53留萌駅発の汽車に乗ると7:30に旭川に着くので0時間目(補習)には間に合わないものの、通常の授業にはちゃんと出席できる。むろんその前にしっかり朝練をやってから駅まで送ってもらう予定である。
 
部屋の中でふたりきりになると、千里と貴司は、まずはディープキスをする。
 
春休みはバスケの練習で帰れず、ゴールデンウィークは帰省しようと思っていたら雨宮先生に呼び出されたので、お正月以来5ヶ月ぶりの甘い時間である。
 
「何度か旭川に出ようかと思ったけど、ずっとバスケの練習してたから」
「私もひたすらバスケの練習してた」
 
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「千里、何だか凄く大人っぽくなった気がする」
「かもね〜。私実は今17歳なんだよ」
「え!?」
 
「ついに本当に性転換手術しちゃったから。その後1年療養してたのよね。バスケの勘を取り戻すのにも時間掛かったけど、気合い入れて頑張ったから」
「意味が分からないんですけど」
 
「その後で元の時間に戻してもらったから、実は1年留年したようなもの」
「まあ確かに性転換手術したら、1年くらい棒に振る気はするよ」
「棒を取って、棒に振るのね」
「千里がそんな下ネタ言うなんて」
「少しおとなになったから。それに私、今、排卵期だから性欲強いのよ」
 
と言って千里は再度貴司にキスする。
 
「千里、生理あるの?」
「秘密」
 
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そして千里は貴司の股間のものを掴んで強く弄ぶ。
 
「痛痛・・・」
 
「私を満足させてくれないと、これ私が食べちゃうぞ」
「食べられたーい。でもその前に普通に逝きたい」
「いいよ」
 
千里は灯りを消す。カーテンも引いているので真っ暗だ。服を脱ぐ。暗闇の中に千里の裸体がほんのりと浮かぶ。
 
「千里、おっぱい成長してる気がする」
「女の子になったからね。今日は普通に入れていいよ」
 
「えっと、普通って・・・スマタ?」
「ヴァギナに決まってるじゃん」
と言って千里は貴司に抱きつく。そして自ら貴司に押し倒されるようにした。
 
「やはり千里、ヴァギナがあるんだよね?」
「日によってはね」
「日替わりなの〜?」
 
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「貴司がインターハイに行けたお祝いにさせてあげる。それから私がインターハイに行けたお祝いに、貴司私としてよ。更に誕生日のお祝いで1回。だから3連発」
 
と言って千里は避妊具を3枚貴司の手に握らせた。
 
「よ、よし!」
「3発行ける?」
「頑張る!」
 
ふたりは微笑んで本能を全開にした。
 
「でも妹さんたちに聞こえないように音立てずにね」
「努力する!」
 
 
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