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■女の子たちの辻褄合わせ(3)

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結構休んだので、海ほたるを出発する。そのまま木更津方面へアクアブリッジを走る。
 
「気持ちいい!」
 
その絶景に千里は絶叫する。
 
『良かったね』
『運転がお留守にならないように』
『見とれて脇見しないように』
『千里制限速度で走ってるから、追い抜かれる時に進路が不安定にならないように気をつけて。結構風圧変化が来るから』
 
千里は木更津から館山自動車道で千葉市まで行き、首都高で羽田に帰還した。首都高に入った所からは、この道はまだ千里には無理と言われて《きーちゃん》が運転を代わってくれたが、千里は途中で眠ってしまった。
 
『運転結構楽しかった』
『まあ、免許取るまでは、あまり無茶しないように』
『僕たちが警察に見つからないように気をつけてはいるけど、見つかると厳罰食らうからね』
『うん。気をつけるよ。あれ?そういえぱ私、高速代払わなかった』
『ああ、それはETCで引き落とされるから』
『千里が大学生になったら作るETCカードをこの車にはセットしておいたんだよ』
『実際の引き落としは2009年の6月だね』
『レンタカー代もね』
『なんか、その程度の時系列の混乱はどうでもいい気がしてきた』
 
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羽田空港でのんびりとおやつを食べ、東京ばな奈を買って旭川行きに搭乗した。
 

そしてその夜も千里はしっかり出羽の山駆けに参加した。
 
「女の子になった感想は?」
「まだ実感が湧かないです」
「おちんちん無くなって変な感じしなかった?」
「お風呂でお股を洗うのが楽になった」
「男の子って面倒なんだっけ?」
「さあ、男になってみたことないから分からないなあ」
 
「ダイレーション、ちゃんとしてる?」
「あ。忘れてた!」
「毎日ちゃんとするように」
「寝る前にやるといいよ」
「面倒くさいなあ」
「千里、あと30年くらい毎年冬の山駆けしたら、それ本物の女性性器に変えてあげてもいい。するとダイレーション不要になる」
「30年後じゃ46歳じゃないですか!」
「100日ずつ余分に使うから実際は55歳くらいかも」
「うむむむ」
 
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「千里。あるいはさ」
と、とても澄んだ声がした。昨日自分の《時間の組み替え》を「許可する」と言った人だ。
 
「ヴァギナはそのままで代わりにこういうのはどう?」
 
千里はその提案にドキッとした。。。。ことだけ覚えている。この時何を言われたのか、千里は記憶が残っていない。
 
「但し毎年山駆けするのが条件」
「30年後にですか?」
「千里は物凄く細胞が若いんだよ。だから身体の物理的な年齢が55歳でも普通の人の40歳くらい」
 
千里は真剣に悩んだ。
 
「大神様も楽しんでおられますね」
と佳穂さんの声がした。
 
それで千里は今対話している、とても澄んだ声の持ち主がみんなから《大神様》と呼ばれている、この集団の管理者であることを認識した。
 
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千里はハッとして目が覚めた。
 
おそるおそる自分のお股に手をやる。
 
あれ〜〜? 付いてる!?
 
じゃ、今まで私、夢見てたのかなあ。
 
やはり朝起きたら突然女の子になってたなんて、そんな出来の悪いファンタジー小説みたいなことが、自分に起きる訳ないよなあと思う。
 
千里はついおちんちんをいじって大きくしてしまった。こんなことするの久しぶりだ。
 
やっちぉおうかな・・・・。
 
千里は何だか唐突にそんな気分になって、それを弄んだ。千里のおちんちんはほんとに弱いので、大きくなるといってもそんなには大きくならない。だから男の子みたいに握って往復運動はできない。女の子みたいに指で押さえて回転運動を掛ける。ずっとやっていたら、女の子になっちゃった夢など見たこともあって、凄くHな気分になり、10分ほどで到達感が得られた。
 
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到達しても何も液は出ない。私の睾丸実はもう死んでるのではなかろうか。最近女性ホルモン大量に飲んでるし、などと思いながら、千里は到達感から来る疲れで眠ってしまった。
 

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千里はハッとして目が覚めた。
 
あれ?あれ? 私、夢見てた?
 
自分の「位置付け」が何だか定まらないような変な気分だ。
 
千里は自分がどういう状態なのか再確認しようと、お股に手をやった。
 
ふっと大きく息をした。
 
やっぱり夢か〜〜!
 
『千里、どうかしたの?』
と《りくちゃん》が声を掛ける。
 
『私、何が何だか分からなくなって来た』
『自分が現実だと思うものが現実でいいんだよ』
『そうかもね』
 
『でも私って何なんだろう?』
『千里は千里だよ』
『自分がこうでありたいと思うものであることを信じればいいんだ』
『自分の思いが自分のあり方を決めるんだ』
 
『千里がそんなくだらないことで悩んでいる間に、暢子も橘花も溝口さんも佐藤さんも花園さんも、凄い練習してるぞ』
 
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『そうだね。私、バスケの練習頑張る』
『うん、頑張れ』
 

その日、千里が最初から女子制服を着て部屋から出て来たのを見て、叔母が言った。
 
「千里、今日はその服で行くの?」
 
ここの所千里は、練習疲れ+山駆け疲れで朝はだいたいボーっとしていたので、叔母が用意してくれている女子制服を何にも考えないまま身につけて学校に出かけるというパターンが多かったのである。しかし今日は自主的に女子制服を着た。
 
「うん。私も少し女の子の自覚が出来てきた」
と千里は笑顔で答えた。
 
「ああ。それはもっと早くから自覚を持つべきものだったね」
 

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そして6月22(金)。道大会(インターハイ予選)が始まった。
 
N高バスケ部は男女とも金曜日は(TOなどのスタッフとして行く子も含めて)大会参加をもって授業出席扱いにしてもらい、学校のバス2台で大会の行われる帯広市に行った。
 
今回の道大会では、地区大会で選手枠15人に入れなかった敦子が選手登録を果たした。弾き出されたのが睦子だが「勝ち上がってインハイに行く時はまた分からないからね」と南野コーチからは双方とも言われている。一応睦子は予備登録してTO兼任で来ているので、怪我人や謹慎者!?などが出た場合はベンチ入りする可能性もある。今年の夏までは出場可能性の無い1年生の蘭をマネージャー登録してベンチに入れ雰囲気を体験させる。蘭は声援係だ。
 
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旭川地区から参加する高校は、女子は千里たちのN高校、橘花たちのM高校、そして旭川L女子高の3校である。男子は千里たちのN高校、鞠古君たちの旭川B高校、旭川W工業の3校が出場する。留萌地区からは貴司たちのS高校が男女とも出場するし、札幌地区で田代君たちの札幌B高校も出場している。
 
女子の試合は4つの山に別れて各々トーナメントを戦い、各山で勝ち上がった4校によるリーグ戦で順位が決まる。2位までがインターハイに行ける。
 
予め行われていた組合せ抽選で、N高校・M高校・S高校は、それぞれ別の山に入っていた。M高校の橘花たちとも、S高校の数子たちとも、
 
「当たるのは決勝リーグだね」
「お互い頑張ろう」
と言って、各試合会場に散った。
 
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千里たちの1回戦の相手は札幌市内の高校であったが、それほど強い所ではないので、千里・久井奈・暢子・留実子の4人を温存して、PG.メグミ、SG,透子、、SF.穂礼、PF:みどり、C.麻樹というスターティングメンバーにした。通常の先発組の中で穂礼だけを残してキャプテン代行とする。
 
それでも順調に点差が開いていくので、後半ではPGを雪子に、Cをリリカに、PFを敦子にと交代させたが、もっと点差は開いていき、快勝した。
 
2回戦は函館F高校と当たった。昨年のインターハイ道予選の決勝リーグで争った相手であるが、その時も、新人戦道大会でも、N高校が勝っている。しかしそれだけに向こうはリベンジに燃えているので、こちらはPG.久井奈 SG.千里 SF.夏恋 PF.暢子 C.留実子 というメンツで出て行く。穂礼は1回戦で経験の少ないメンバーをコントロールして長時間ゲームメイクしていたので、取り敢えず休ませておく。
 
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新人戦の時と同様に、向こうは暢子と千里に専任マーカーを付けて残りをゾーンで守るトライアングル2の守備体制で来た。そのゾーンの運用が新人戦の時より、ぐっと上手くなっているのを感じた。
 
しかしこちらもパワーアップしている。何よりも千里のスピードがかなり上がっているので、従来のように気配を消して相手の目の前から消えるというだけでなく、暢子と同様にスピードと瞬発力で振り切ることもできるようになっている。ふたりともマーカーをものともせずに、どんどんシュートを撃ち、どんどん得点していった。結局82対62で勝った。
 
明日午前中はブロック決勝である。
 
なお、N高男子も今日は1回戦・2回戦を勝って、明日に残っている。
 
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帯広での試合は2月の新人戦道大会に続いてであったが、宿舎は前回とは違う所になった。
 
前回泊まった所はホテル型の所でバストイレ付きの4人部屋単位(千里は留実子・暢子・夏恋と一緒)で、食事はバイキングだった。千里は久井奈さんから「もっと食べろ」と言われるのを「入りませーん」と言って、スポーツやってる女子とは思えない食事量で呆れられていた。
 
今回は旅館型の所で風呂は大浴場でトイレも共同の10人部屋である。男子2部屋・女子2部屋だが、宇田先生と北田コーチ・白石コーチは小部屋を1つ使っている。南野コーチは女子生徒と一緒である。そして食事は1日目は焼肉(食べ放題)であった。
 
千里は暢子・久井奈・雪子とテーブルを囲んだのだが、千里が網で焼かれているお肉を積極的に取って食べているので
「お、今日の千里は偉い」
などと久井奈さんから言われる。
 
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「だってしっかり身体を作らないと、戦えませんよ」
と千里が言うので
「凄い進歩だ」
と久井奈さんは言う。
 
「千里、今体重はいくら?」
「ウィッグを外した状態で53kg」
「ウィッグ!?」
「ウィッグって結構それ自体の重さがあるんですよね〜。学校で身体測定する時は実はそこをちょっと誤魔化している」
「千里はいろいろ誤魔化してるな」
「えへへ」
「でも53はやはり軽すぎる」
「うん。インターハイに行くまでに55-56kgくらいにはしたいと自分でも思ってる」
「それだけ筋肉を付けようってことか」
「うん」
 
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