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■女の子たちの辻褄合わせ(6)

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「ね、もしかして勝てたりして」
という声も控え組からあがるが
 
「無心!」
と久井奈さんがひとこと言い、スポーツドリンクを一気飲みして最後のピリオドに出て行った。
 
最終ピリオド、やはりP高校は千里を片山・猪瀬でマークし、暢子に宮野さんが付く体制でディフェンスする。ポイントガードは疲れの目立つ竹内さんに代えて2年生の徳寺さんが入り、とにかく速攻で攻めて来る。徳寺さんは純粋なポイントガードというより、スモールフォワード的な性格も併せ持っていて、自らドライブインして上手にフェイントを入れて撃つので、得点能力が高い。
 
第4ピリオド5分経過した所でとうとう72対70と逆転されてしまう。
 
久井奈さんがドリブルで攻め上がるが、千里にも暢子にもしっかりマークが付いている。左手に居る留実子にパスするが、すぐ尾山さんがチェックに来る。それを見て留実子は反対側に居る雪子にバウンドパス。即雪子が飛び込んで行くが、徳寺さんが出て来て、雪子と一瞬のマッチアップ。ゼロコンマ数秒の心理戦の末、雪子はシュートを選択。
 
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うまくタイミングを外したのでブロックできない。しかしボールはバックボードに当たっただけで落ちてくる。リバウンドを猪瀬さんと留実子で争い、留実子が獲得する。そのまま誰も居ない所にボールを投げる。
 
そこに千里が走り込んでキャッチし、即撃つ。
 
スリーポイントラインの外側である。
 
入って72対73。再逆転でN高リード。
 

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P高校の徳寺さんがドリブルで攻め上がってくる。尾山さんに誰もマーカーが付いていないので、尾山さんにパスして、即スリーを撃つ。
 
が外れる。
 
リバウンド争いで猪瀬さんが勝ち、そのままシュートするが留実子のブロックが決まる。そのこぼれ球を宮野さんが確保。うまくタイミングを外してシュート。これが決まって 74対73。再逆転でP高リード。
 
この時点で既に千里は相手コートに向かって走り出している。暢子が長いパスを投げる。例によって到達直前に千里は振り向き、ボールをキャッチして2歩で停止する。相手ディフェンスはまだひとりも戻っていない。必死で追いかけて来た片山さんが千里の所に到達する前に、千里はシュートする。
 
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バックボードにも当たらずネットに飛び込み、74対76。再逆転N高リード。
 
残り時間は60秒を切る。P高校が攻めて来る。尾山さんがスリーを撃つ。きれいに入る!再逆転。77対76。P高リード。
 
N高校が攻め上がる。久井奈さんがパス相手を探すが、全員にマークマンが付いている。それで自ら飛び込んで行く。千里に付いていた片山さんが防御に行く。千里のマークが弱くなるので、すかさず千里にパス。
 
というのを向こうは読んでいた!
 
猪瀬さんが千里の前に立ちふさがってパスカット。
 
そしてその時には既に尾山さんが走り出している。先行する尾山さんへパス。尾山さん自らドリブルしてスリーポイントラインの直前で停止する。
 
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暢子と千里が必死で追うがふたりが戻る前に尾山さんは撃つ。
 
入って80対76。
 
P高のリードが広がる。
 

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残り時間は28秒。必死でN高校が攻め上がる。久井奈さんから暢子へのパス。暢子がマーカーの宮野さんを押しのけるようにしてキャッチし、そのまま中に飛び込んでシュート。
 
しかし外れる。
 
リバウンドを留実子が取り、自らシュート。
 
しかしブロックされる。
 
こぼれ玉を雪子が取り、外側に居る千里にパス。
 
シュート。
 
しかし片山さんのブロックが決まる。
 
こぼれ球を徳寺さんと久井奈さんが追うが、僅かの差で徳寺さんが確保。そのまま攻め上がる。そして自らシュート!
 
しかし外れる。
 
リバウンドを暢子が取り、千里にパス。そしてそのまままだ戻りきっていなかった留実子にパス。留実子が中に入ってダンク。
 
と思ったものの、ボールはリングに当たって跳ね返り、そのまま下に落ちてくる。
 
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落ちてきたボールを暢子と猪瀬さんが取り合う。
 
そこでブザー。
 
試合終了。
 
千里も暢子も天を仰いだ。
 

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整列する。
 
「80対76で札幌P高校の勝ち」
「ありがとうございました!」
 
この試合でも、またあちこちでハグし合う姿が見られる。千里も、宮野さん、片山さん、猪瀬さん、尾山さんとハグした。
 
「あとちょっとだったけどなあ」
「やはり女王は底力が凄い」
「消耗した〜」
「200分くらい走り回った気分」
「いや、ほんとに普通の試合の5倍消耗したよ」
 
「私、寝る!」
と暢子は宣言して、汗を掻いた下着だけ交換すると、タオルケットをかぶって寝てしまった。
 
「私も寝ようかな」
「私、御飯食べてくる」
 
千里も500ccのスポーツドリンクを3本飲んでから着替えて、やはり少し寝た。
 

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目が覚めると、もう13時であった。おにぎりを1個食べる。水分が欲しいので烏龍茶を1リットルくらい一気に飲んだ。
 
決勝リーグの第三戦、1試合目のM高校対P高校の試合が始まる頃である。暢子や久井奈さんはまだ寝ている。千里は夏恋や敦子など、起きているメンバーと一緒に観戦に行った。
 
「千里、疲れ取れた?」
と敦子から訊かれる。
 
「まだ少し残ってる。やはり女の身体になってから少し疲労回復遅くなった気がするよ」
「へー。そういうのも変わるもんなんだ?」
「自分としてはあまり男っぽくない身体のつもりだったんだけど、身体のシステムが変わった気がするんだよね」
「やはり男の身体と女の身体って違うんだね」
 
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観客席に座る。ここまでの勝敗をまとめると、こうなっている。
 
P−C  73-26
N−M  89-84
M−C  83-27
P−N  80-76
 
勝敗表にまとめると、こうである。
 
女子の勝敗表
_P N M C
P− ○ _ ○ 2勝
N× − ○ _ 1勝1敗
M_ × − ○ 1勝1敗
C× _ × − 2敗
 
現時点で数字の上では全ての高校にチャンスがある。現在2敗のC学園も、この後の試合で千里たちのN高校に勝ち、M高校がP高校に負けると、3校が1勝2敗となって、得失点差の勝負になるのである。但しP高校にもM高校にも大敗しているから、N高校にかなりの大勝をしないと厳しい。
 
千里たちN高校の場合は、C学園に勝てたらインターハイに行ける確率が高い。逆に橘花たちのM高校はこの試合P高校に勝てないと難しいが、P高校に勝つのは、かなり大変である。
 
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ところが見ていると、M高校はP高校に結構良い勝負をしていた。
 
「P高校の主力が、うちとの試合で無茶苦茶消耗したんだよ」
「うん。片山さんも宮野さんも、私たちと対戦した時の切れが無い」
「M高校の方は午前中はC学園戦だったから、あまり消耗してないんだよね」
「武村さんのマークをしていた橘花が、さすがに動きが鈍いけど、その分、宮子ちゃんが頑張ってるね」
「今年のM高校って、凄い充実してるもん」
 
P高校は層が厚いので、疲れの見える主力を適宜休ませては、バックアップメンバーを入れているが、今のM高校の力だと、P高校の控えレベルの選手では、主力選手ほど相手を圧倒するまでの力は無い。
 
「ね、これもしM高校が勝ったら、どうなる?」
「えーー? そういう事態は考えてなかったよ」
 
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第3ピリオドまで終わって、48対48と同点であった。
 
「ちょっと待って。これ万一M高校が勝った場合のインターハイ進出条件を計算してみる」
と言って、南野コーチがノートパソコンを開けて、計算し始めた。
 

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「この試合に、もしM高校が勝った場合は、M高校、代表確定」
「えーー!?」
「だって、P高校もM高校も2勝1敗になりますよね?」
「得失点差でM高校が有利なんだよ。ここまでの得失点差がP高校もM高校も、どちらも同じ+51。つまりここでM高校が勝てば、M高校はP高校を得失点差で上回ることになる」
「なんと」
 
P−C  73-26(47)
N−M  89-84(5)
M−C  83-27(56)
P−N  80-76(4)
 
(P高校は47+4=51, M高校は56-5=51, N高校は5-4=1)
 
「その場合、うちはどうなるんですか?」
「うちのここまでの得失点差は+1。だからC学園に50点以上の点差で勝てたらインターハイに行ける」
「激しい点差勝負ですね」
 
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「要するに今回の決勝リーグは、各高校がC学園に何点差で勝つかというのが鍵だったんだな。P高校はC学園に47点差で勝ってるけど、M高校は56点差で勝ってる。この差が出たんだ」
「うむむ」
 
「でも得失点差って時々不合理だと思うことあるよ。だってP高校相手に取った点もC学園相手に取った点も同じ1点なんだもん」
「P高校相手の点数は2倍して欲しい気分だね」
「まあ、スポーツはゲームだからして」
「得失点差の勝負って、辻褄合わせだよね〜」
「だけど、実力で代表が決まるんだったら、私たちはそもそもここに居ない。L女子高やH学園が来てますよ」
「それも言えてる」
 
「P高校がC学園に47点差しか付けられなかったのは、直前のZ高校との試合で消耗してたからだと思う」
「そのあたりも運だな」
「まあその前にまさか点差勝負になるとは思ってなかったろうな」
 
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「ちなみに、この試合にP高校が勝った場合は、もちろんP高校代表確定」
「そのケースしか考えていませんでした!」
 
「P高校が勝てば、P高校3勝・M高校1勝2敗になるから、私たちはC学園に勝ちさえすればインターハイに行ける」
 

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試合は第4ピリオド、抜きつ抜かれつの激しい勝負となる。
 
どちらも疲労限界を超えているのを、気力と根性で戦っている感じである。両チームとも、第4ピリオドは交代要員を使わずに、本来のベストメンバーで戦っている。そうしないと悔いが残るだろう。
 
最後59対58と1点P高校がリードしている状況でN高校はフリースローを得た。
 
撃つのは葛美である。センターの彼女はゴール下からのシュートは得意なのだが、フリースローはあまり得意ではない。残り時間は0.9秒である。外したリバウンドを取って撃つにしても急がないと間に合わない。
 
一応左側にはP片山・M宮子・P猪瀬、右側にはP宮野・M橘花と並んでいる。
 
審判がボールを渡す。気持ちを集中させるようにボールを1度2度、床にバウンドさせる。セットする。
 
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撃つ!
 
入った。同点!
 
2本目。審判がボールを渡す。葛美はもうボールに床を打ち付けない。じっとゴールを見詰めている。セットする。
 
撃つ!
 
同時に全員動き出す。
 
がボールはきれいにネットに飛び込んだ!
 
逆転!
 

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P高校の片山さんがスローインする。センターラインの向こうでそのボールを尾山さんが受け取ったが、即試合終了のブザーが鳴る。尾山さんはブザーと同時に遥か彼方のゴール目がけでボールを投げたが、ボールはバックボードにも当たらなかった。尾山さんはそのまま座り込んでしまう。
 
《女王》札幌P高校がまさかの敗戦を喫した瞬間であった。
 
両者整列する。
「60対59でM高校の勝ち」
「ありがとうございました」
 
あちこちで握手したりハグしたりする姿があった。大激戦だったがファウルのひじょうに少ない試合だった。P高校としてもZ高校との試合で注意されているのでこの試合では気持ちを抑えて戦ったようである。しかし最後のフリースローにつながるファウルを犯してしまった竹内さんが泣いているのを片山さんが抱いて慰めていた。
 
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「私たちはC学園に50点差以上で勝たなければならない」
と南野コーチが、千里たちに言った。
 

 
やっと起きてきた暢子が試合結果を聞いて驚いていた。
 
「P高校が負けるなんて、何十年に一度の出来事だろうに、それを見られなかったのが悔しい」
などと暢子は言うが
 
「その代わり、暢子ちゃん次の試合で50点取って」
と南野コーチは言った。
 
南野コーチがインターハイ代表校の決まり方を解説する。
 
「私たちはC学園に勝つという前提で話す。その場合、P高校・M高校・N高校の3者が2勝1敗で並んで、得失点差の勝負になる。なお、現時点で既にC学園は2敗しているからインターハイに行けないことが確定している」
 
「M高校は得失点差+52、P高校は+50だから、これでM高校のインターハイ進出は決まった。N高校はここまで得失点差は+1。だから、私たちがC学園に49点差で勝った場合は+50でP高校と並ぶけど、その場合直接対決でP高校が勝ってるから、P高校が代表になる。50点差で勝てば得失点差は+51となって、P高校の得失点差を上回り、私たちが代表になる。ちなみに50点差だと1位M高校で2位N高校だけど、51点差なら1位N高校、2位M高校になる」
 
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「まあ100点差で勝てばいいってことだよね?」
とあまり考えるのが得意ではない暢子が言う。
 
「うん。そのつもりで頑張ろう」
「私は武村さんのマークに入るから、千里150点取って」
「うん。200点取るよ」
 

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女の子たちの辻褄合わせ(6)

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