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■女の子たちの辻褄合わせ(2)

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「そんなことできる?」
「ほら、ここをこう入れ替えてだね。こうすればうまく行くじゃん」
「おお。だったら、うまく行くね。千里は今度の道大会前に性転換を終えているけど、高3の1月後でもちゃんと男の子の身体になってる」
「ここまで千里の要望を取り入れたら、完璧な計画だぞ」
 
「まあ、要するに時間をモザイクにするんだな」
「精神上の時間と肉体上の時間を分離して組み替えるんだよ」
 
「あのぉ、私分解か何かされるんでしょうか?」
「気にしない、気にしない。あんた巫女なんだから、神様に自分を捧げた身でしょ? どうしようと私たちの勝手」
「私、供物だったのか・・・」
「まあ、昔なら人身御供だね」
「もっとも今では生身の人間を食べるのは禁止されてるから」
 
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昔は食ってたのか!?
 
「でもそれ原理的には何とかなりそうだね。誰か正確に計算してよ」
と美鳳さんが言うと
「あ、私が計算してあげるよ」
と言ってその人物は20分くらい、何やら計算をしていた。
 
「これで完成だと思う」
と言って、その人が美鳳さんに計算表を見せたようである。
 
「おお、本当に最後の試合が千里の体内時計で2009.3.31だ」
「パズルを解くような感じだった」
 
「どんな感じになるんですか?」
と言って千里はその計算表を見ようとしたが
 
「今はこれは見せられない」
と言われた。
 
「これでやると、最終的に辻褄が合うのは2012年12月9日なんだよ。だから、それが過ぎたら見せてあげてもいい」
 
「いや待って。今大神様から言われた。その計画表に入ってないことが何か起きるらしい。この表を見せていいのは2020年6月1日以降だって」
「へー。何があるんだろう」
「まあ何か起きたら起きた時」
 
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「とにかくこのスケジュール表で行動すれば、こういうことが保証される」
と計算表を作ってくれた人が言う。
 
「道大会・全国大会に出場する時は、間違い無く高校生タイム」
「道大会・全国大会に出る時、既に千里は女の子の身体。性転換済み」
「高3の1月に男の子の身体になっている日がある」
 
「この一連の辻褄合わせを2012年12月8日までやることになる」
「しばしば時間の切り変わり目で自分の体力や運動能力が唐突に変化するポイントがあるけど、気にしない」
「体重や体形もね」
「できたらそれまでバスケでなくても何かスポーツは続けた方がいい。でないと、その落差が辛いぞ」
「性転換した後の150日間だけは休んでてもいいから」
 
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「千里の体内時計は、今、歴史日2007.5.20の終わりが体内では8.13の終わりになっているんだけど、3ヶ月後の11月6日に去勢手術を受けてもらう」
「はい!」
 
3ヶ月後か・・・。こないだ本気で去勢するつもりになったんだもん。もういいよね?男の子の私、さよなら。ごめんね。睾丸ちゃん。今度は男の子として生きたい男の子にくっついて生まれてきてね。
 
「これは体内時刻では2007.11.6だけど、歴史時刻では2011.7.19なんだ」
「そして11日後の2007.11.17に性転換手術を受けてもらう」
「きゃー」
 
去勢して即性転換か。まあ、いいか。もう勢いだ。おちんちん君もごめんね。私おちんちんじゃなくてヴァギナが欲しかったの。
 
「これも体内時刻では2007.11.17だけど、歴史時刻では2012.7.18になる」
「体内では11日しか経ってないけど、歴史時刻では1年後なんだよ」
 
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「そういう訳で、君は体内時計レベルで、あと3ヶ月しか男の子ではいられない」
「それは構いません。もう覚悟を決めました」
 
「性転換手術を受けた後、240日間、2008.7.14まで療養・リハビリ・再度のバスケ練習」
「その期間に、以前女の子の身体を体験した2日間を組み込むから」
「そして体内時計で2008.7.15を歴史的には明日5.21にする」
 
へ?
 
「ちょっと待って下さい。そしたら明日の朝、私が起きた時には、まさか・・・」
「君はもう既に女の子の身体になっている」
「性転換したあと8ヶ月が経過した状態」
「えーーー!?」
「だって、道大会に女の子の身体で出たいんだろ?」
「はい」
「だったら、それでいいんだよね?」
「はい!」
 
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と千里は答えたものの焦っていた。え〜!?もう目が覚めたら私、女の子なの??
 
「実際には体内時計で1年近い時間が経っているんだけどね」
「体内的には3ヶ月後に去勢、続けて性転換。そして約8ヶ月間の療養・リハビリ・再度のバスケ練習をした後」
 
「だから、君が実際に自分のおちんちんに触ることができるのはあと数分間」
「君が元の時刻に戻ったときは、もうおちんちん無いから」
「今してるような偽装じゃなくて本物の割れ目ちゃんになっている」
「ヴァギナもあるから、毎日ダイレーションするように」
「うっそー!」
 
「ちょっと待って。心の準備が」
「心の準備はあと数分の内にするように」
 
「ひぃーー!」
 
千里は唐突にそんなことを言われて、ほんとに悲鳴をあげた。
 
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「女の子になりたくない?」
「やめるなら今から60秒以内に言わないと、このスケジュールは起動する」
 
「女の子になりたいです」
と千里は言った。
 
「OK。OK。大神様。よろしいですよね?」
と美鳳さん。
 
「うん。面白い実験だから許可する」
とそれまで1度も聞いたことのなかった澄み切った声がした。
 
やはり私は実験台なのか!?
 
「では発動」
「これからは女の子としてしっかり生きて行くように」
 

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千里は目が覚めた。
 
取り敢えず時計を見る。5時少し前。ふつうに起きる時刻だ。
 
なんか凄い夢見たなあ、と思いながら千里は取り敢えずトイレに行った。いつものようにパジャマとパンティを下げて便器に座る。おしっこをしていて何か変な感じがした。
 
あれ?
 
なんか感触が違う?
 
何気なくお股を触ると、何だか変だ。
 
え?え?
 
割れ目ちゃんが開ける!?
 
この割れ目ちゃんは、タックという技法で、実は陰嚢の皮を寄せて接着剤でくっつけたもののはずなのである。
 
接着剤でくっつけて偽装したものなので、それを「開く」ことはできないはずなのに、そこは千里が指2本で簡単に開けてしまった。
 
えーーー!?
 
それでおそるおそる、割れ目ちゃんの中を指でまさぐる。この状態は昨年12月と今年1月初めにそれぞれ1度だけ体験しているのだが、どうもあの時と同様に女の子の形になっているような感じだ。
 
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クリちゃん・・・ある。ここが尿道口だ。そして・・・ここにヴァギナがある。
 
千里はちょっとどきどきしていた。こういう問題に答えてくれそうな《いんちゃん》に訊いてみた。
 
『ね、私、女の子の身体になってるみたい。これいつまでこの状態なんだろう?』
 
すると《いんちゃん》は答えた。
 
『千里は既に性転換手術を終えて8ヶ月ほど経っている。今千里は歴史的には高校2年生の5月だけど、千里の体内時計は高校3年の7月なんだよ。既に性転換は終わっているのだから、これからはずっとこのまま女の子の身体だよ』
 
『えーーーー!?』
 
『女の子になりたくなかった?』
『ううん。なりたかった!』
『だったら、いいじゃん』
 
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『体内時計は1年進んじゃったけど、この後数年間、時間の辻褄合わせが頻繁に起きるから』
と《きーちゃん》が注意してくれた。
 

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千里は結局その日5月21日(月)は学校を休むことにした。自分なりに色々考えてみたかったのである。
 
「おばちゃん、今日学校サボる」
と千里は宣言する。
 
「ふーん。まあ、たまにはいいかもね」
「明日からはちゃんと行くから」
「うん。出かけるの?」
「うん」
「だったら制服じゃなくて私服で出なきゃだめだよ」
「そうだね」
 
それで千里は普通のトレーナーにスカートという格好で家を出た。そのまま取り敢えず旭川駅まで歩いて行った。目の前に空港連絡バスが停まったので何となくそれに乗る。
 
空港を何気なく歩き、JALのカウンターで表示を見ていたら10:10の羽田行きがある。それで空港のATMでお金を降ろしてきて往復で航空券を買った。帰りは羽田17:55で旭川到着19:30である。東京に行ってくることと帰りの時刻を叔母に連絡。お土産は何がいい?と書いて送信したら、東京ばな奈と書かれていた。
 
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ぼーっとしている間に羽田に着く。ぼんやりとしたまま空港内を適当に歩く。東京の地図を売店で買い、椅子に座って眺めていた。
 
どこに行こうかな・・・。
 
その時、ふと思いつく。
 
『ね、私、車とか運転しちゃだめだよね?』
と後ろの子たちに訊いたら
 
『私が借りてあげるよ』
と《きーちゃん》が言った。それで入口の所でしばらく待つと目の前にヴィッツが停まる。
 
『気をつけて運転しなよ』
という《きーちゃん》の声に、千里は
『ありがとう』
と言って、微笑んで運転席に就いた。
 

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『悪いこと言わないから首都高の中心部は避けた方がいい』
と言われるので、《きーちゃん》の誘導に従って、アクアラインに乗った。
 
『長いトンネルだね』
『ずっとトンネルだよ』
『えー!?私、景色見たい』
『海ほたるから先は橋だよ』
『何それ?』
『途中の休憩場所。いったん休んだ方がいい』
『おっけー』
 
『ここ覆面パトカー多いから気をつけて』
『うん』
『例えば3台前を走ってるスカイラインは覆面パト』
『へー』
 
『でも千里、結構運転できるじゃん』
『こないだ、きーちゃんが運転するのをずっと体験してたから』
『よそ見しないようにね。ちゃんと前向いて運転』
『うん』
『それからバックミラーにも定期的に目をやって』
『了解』
『速度は制限速度ジャストで走ろう』
『あ、その感覚は何とかなると思う』
 
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海ほたるで休憩する。駐車スペースに駐める所は、《きーちゃん》に身体を預けてやってもらった。
 
東京湾を眺める。何だか変な形のものが見える。
 
『あれ、何?』
『風の塔』
『モニュメント?』
『アクアトンネルの換気口だよ』
『へー』
『元々アクアラインの3分割点にあの川崎人工島とここ木更津人工島を作ってそこと川崎の浜と3箇所からトンネルを掘り始めたんだよ』
『なるほどー』
 
海を見ていると、たくさんの船が目の前を横切っていく。千里は何も考えずにぼーっとしてその景色を眺めていた。
 

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お腹が空いたのでスタバに入り、コーヒーとサンドイッチを頼む。またぼーっと景色を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
 
『千里、女の子になっちゃったこと後悔してる?』
『それはしてないよ。でもあんまり突然だったんで戸惑ってるだけ』
『だって千里、今度の道大会に女の子の身体で出たいというから。そのためには速攻で性転換する必要があったんだよ』
『あの時説明された、時間の入れ替えっての、さっぱり分からないんだけど』
『あれは勝手に動いていくから気にすることない』
 
『最初3ヶ月後に去勢と言われた時も、わっと思ったんだけど、最後に明日の朝にはもう女の子の身体になっていると言われて、なんで〜?と思った』
 
『この後、千里が男の子の身体に戻る時間が全部で90日ほどあるからさ』
『ふーん』
『インターハイが終わったら、いったん男の子に戻るよ』
『え?そうなの?』
『秋の大会が始まる前に女の子に戻るから』
『その次は高校3年の1月』
『けっこう男になったり女になったりするの?』
『いやその後は臨時に男に戻ることが30回くらいあるだけ』
 
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『その30回、千里、ひたすら射精しまくることになるから』
『やだぁ!』
『30回の射精のために時間も3ヶ月必要なんだよ』
『千里の睾丸は精子の生産能力が弱いから、まともな濃度の精子を作るのに3日掛かる』
『ああ、弱いだろうね』
『男の子として女の子とのセックスも15回するから』
『そんなのしたくないよぉ』
 
『そして3ヶ月も男性機能をフルに使っちゃうから、千里もう女の子の身体になっているのに声変わりも来ちゃうんだよ』
『うーん・・・・・』
『でも3ヶ月間男性機能使うことで、千里はペニスも成長してヴァギナの材料に困らなくて済むんだよ』
『・・・・』
『千里、昨日までのペニスのままだと、サイズ足りなさすぎだったから』
『でもたった3ヶ月でそんなに成長するもん?』
『ああ、超親切な子が凄いパワーで千里の男性能力を強化してくれるから』
『やだなあ・・・』
 
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『まあ、かなり無茶なことやってるから、色々歪みは来ると思う』
『歪みね。まあ、来たら来た時だな』
『そうそう。物事はなるようになるんだよ』
 
『ねぇ、ひょっとして神様たち、私の身体で遊んでない?』
『ああ、それは間違い無く遊んでる』
『神様たちも娯楽が少ないから』
『生け贄はどう扱おうと自由だからね』
『私、やはり生け贄なんだ!』
 

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女の子たちの辻褄合わせ(2)

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