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■女の子たちの辻褄合わせ(7)

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整列する。挨拶して試合開始する。ティップオフは向こうが取って攻めて来るが、いきなり雪子がスティールを決める。そのままドリブルで攻め上がり、追いついてきた千里にパス。そこからスリーを撃つ。
 
入って3点。
 
N高校が先制してゲームは始まった。
 
こちらは相手に大差で勝たなければいけないので、積極的にプレスに行く。この試合では雪子はスティール、パスカット要員である。雪子はそういうのが本当に巧いので、相手はボールを盗られたことに一瞬気付かず、ドリブルを続けようとしたり、あるいはシュートしようとして「あれ?」となるシーンが多かった。
 
C学園のシューター武村さんには、ピタリと暢子が付いて一切仕事をさせない。P高校では片山さん、M高校では橘花がやっていたポジションを、暢子はこの試合でしっかりとやりとげた。とにかく武村さんへのパスが通らないし、最初から武村さんがドリブルで運んで来た場合も、雪子や千里が忍び寄ってスティールしてしまう。C学園はこういう強いチームとの対戦経験が今回の決勝リーグにあがって来るまでは、あまり無かったようで、このあたりが無防備であった。
 
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雪子は本当にスティールが巧いし、千里も相手に近づく時は気配を消しているので、相手はこちらに全く気付かないことが多かった。
 

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試合は前半を終わって30対10とトリプルスコアだが、点差は20点しか無い。50点差以上にしなければならないので、もっとペースを上げる必要がある。
 
観客席で、M高校、P高校のメンバーが自分たちの試合を見ている。P高校は佐藤さんの姿もある。自分が出られなかった試合で負けて、出場した選手以上に悔しい思いをしているだろう。P高校がインターハイに行くためには、この試合の点差が49点未満であることが条件である。
 
「点数取られるのは気にしないことにしよう」
「うん。相手の4倍取ればいいことよ」
 
それで、守りの要の留実子を下げて、点取り屋として揚羽を入れる。そもそもこの試合では守備重視の穂礼ではなく、攻撃重視で雪子を入れているので、これで久井奈・千里・雪子・暢子・揚羽と、超攻撃的布陣になる。
 
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後半、暢子がとにかく相手の武村さんをしっかりマークし、残りの4人で試合を進める。千里はどんどんスリーを撃つし、雪子はどんどんスティールを決め、揚羽が積極的に敵陣に侵入してゴールそばからシュートを決めるし、リバウンドを取る。揚羽はリバウンドを取るのがひじょうに巧い。
 
武村さんに警戒する以外は守備は不熱心になったことで、相手の点数も前半よりは入るが、こちらの得点ペースはもっと上がった。
 
第4ピリオド、残り2分の時点で74対26と48点差。あと2点差を付ける必要がある。ここでやや疲れの見えた暢子のマークを振り切って武村さんがスリーを決め、74対29(45)。しかし速攻で反撃して、こちらも千里のスリーを入れて77対29(48)。相手が攻めてくるが、ここで再び武村さんが暢子のマークを外してパスを受け・・・・ようとした所を千里がカットする。
 
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実はこちらの「マークを外される」こと自体がフェイントで最初から代わりに千里が入ることにしていたサインプレイである。
 
千里が空中で体勢を崩しながら夏恋にパス。夏恋がドリブルで運ぶ。頑張って走って奥深い所まで行っている揚羽がいる。そちらにパス。そのボールをドライブインしてゴール近くからシュート。
 
入って79対29(50)。
 
やっと50点差!
 
相手が攻めて来る。残り1分。向こうのフォワードが強引に中に持ち込んでシュートするが外れる。リバウンドを揚羽が取って速攻。揚羽から雪子、雪子から千里へとパスをつなぎ、千里がそのまま勢いでゴール下まで走り込んでレイアップシュート。入って81対29(52)。
 
残り28秒。相手が攻めて来る。向こうのポイントガードが攻めあぐねて自らスリーを撃つ。これが入っちゃった! 81対32(49)。残り5.2秒。
 
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暢子から千里へロングスローイン(時計は千里がボールを受け取った所から動き出すので時間が稼げる)。そこからスリーを撃つことも考えたが、夏恋が走り込んできたのを見てそちらにパス。そしてシュート。しかしブロックされた
 
・・・かに見えたが、ファウルを取られた。
 
フリースローになる。残り1.4秒である。夏恋は大きく息をしながら審判からボールを受け取る。じっとゴールを見詰める。
 
1本目。リングには当たったものの入らない。
 
「落ち着いて、落ち着いて」
「入れたらカツサンドおごってやるぞ」
「クォーターパウンダーでもいいぞ」
「入れたら彼氏紹介してもいいぞ」
「何も考えるな」
と味方から声が掛かる。
 
心を落ち着けるようにしてシュート。
 
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ボールはバックボードに当たり、そのままネットに吸い込まれる。
 
82対32(50)。
 
やった!!
 
相手チームがスローインするが、すぐにブザー。
 
試合終了!!!
 

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整列する。
「82対32でN高校の勝ち」
「ありがとうございました」
 
この結果、N高校は得失点差で+51となり、道大会2位でインターハイ進出が決まったのであった(M高校+52、P高校+50)。最後のフリースローを決めた夏恋がみんなにもみくちゃにされていた。
 
観客席に目をやると、M高校の生徒たちは冷静だが、P高校の生徒たちは悲痛な表情で引き上げていく。しかしその中で佐藤さんだけが、まだ立ったまま、こちらを見詰めていた。千里がそちらに目をやると、両者目が合う。
 
その佐藤さんの熱い目に、千里はインターハイでの健闘を誓った。
 
最終的な勝敗表
_P N M C 
P− ○ × ○ 2勝1敗
N× − ○ ○ 2勝1敗
M○ × − ○ 2勝1敗
C× × × − 3敗
 
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_P N M C 得 失 差
P− 80 59 73 212 162 +50
N76 − 89 82 247 196 +51
M60 84 − 83 227 175 +52
C26 32 27 − 85238_-153
 

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着替えて、帰ろうとしていたらロビーでM高校の橘花・友子・伶子の3人に会う。あらためてハグし合い、「インターハイ進出おめでとう」「佐賀でも頑張ろう」と言い合う。
 
「そうだ、そうだ、千里。千里に関するまた新しい噂を仕入れたぞ」
と友子が楽しそうに言う。
 
「今度は何ですか?」
「N高男子で活躍していた子とN高女子のシューターは一卵性双生児だったというのだよ」
「へ?」
「それでふたりとも男だったけど、兄弟そろって性転換した」
「へー!」
「兄弟から姉妹への性転換か」
「ほんとにそれやられると親は頭が痛い」
「いや実は兄弟から姉妹へってのは割とよくある」
「やはりそういう傾向も多分遺伝なんだよ」
 
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留実子が何だか居心地の悪そうな顔をしている。
 
「まあそれで、妹になった元弟は1年早く性転換したので、療養期間も終えて、性転換後1年経過したというので女子としての出場が認められてN高女子チームに参加しているが、姉になった元兄の方は去年の秋に性転換手術を受けたので、まだ療養中だというんだな」
 
「なんか微妙に真実に近づいている感じもしますね」
と暢子が楽しそうに言う。
 
「でも性転換手術なんて受けたら実際に1年間くらい療養・リハビリに掛かるだろうなあ」
「性転換してすぐには練習できないだろうね。最低半年くらいは休まなきゃ」
「その間に体力も技術も落ちるだろうから、その感覚を取り戻すのに更に3−4ヶ月は掛かると思うよ」
 
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「まあ、実際には千里は小学生の内に性転換済みだったからね」
と友子。
 
「なんかもう、そういう話でいいやと、最近思うようになりました」
と千里。
 
「だって、中学1年夏のバスケ部の合宿の時、一緒にお風呂に入ったもんね」
「友子さんたちにはバッチリ、裸を見られましたね」
 
と千里が言うと、暢子は「ふーん」という顔をしていた。
 

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男子の方では貴司たちのS高校は今年は決勝リーグ3連勝でインターハイ出場を決めた。千里は試合終了後、S高校のチームが引き上げてくる所に待ち構えていて
「インターハイ出場おめでとうございます」
と声を掛けた。
 
「ありがとう」
と貴司は笑顔で言って、千里と握手をする。
「そちらもインターハイ出場おめでとう」
「ありがとう」
 
「細川、村山、コート外だからキスしてもいいぞ」
「会場では控えておきます」
 
「ああ、会場から出た後、セックスするんだな」
「ふたりだけ別便で帰るんだっけ?」
「既にホテルを予約しているという噂が」
「佐賀でもふたりだけで別宿舎とか」
 
などという声が掛かるが、千里と貴司は笑顔で見つめ合っていた。
 
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「じゃ、また連絡するから」
「うん。これから佐賀に向けて頑張ろう」
「うん。お互い頑張ろう」
 
ふたりは再度握手をして別れた。
 

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「だけど千里、今回の大会では何か達観したような雰囲気を感じた」
と帰りのバスの中で千里は穂礼さんから言われた。
 
「地区大会まではまだ自分の中で納得していないものがあったんですよ。自分は実は男なのに、こうやって女子の公式試合に出てていいのかってのが」
 
「千里は実は女のはず」
と横から暢子が言う。千里はそれに頷いた。
 
「でも実は私、本当に女の子になっちゃったんです。だから何の迷いもなく、全力でプレイできました」
 
「えーっと、女の子になったって、初潮が来たとか?」
「ああ。生理なら、ちょうど中間テストの時にありましたから、道大会には全く影響無かったです」
 
「・・・・・」
 
「千里、生理あるんだっけ?」
「女の子だから、あるのが普通だと思いますけど」
 
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と千里が笑顔で言うと、穂礼さんは何だか悩んでいた。
 

M高校とN高校が、ここ1ヶ月ほど毎日練習試合をやっていたというのを聞いてL女子高の溝口さんが「私たちも入れて」と言ってきた。
 
「おお、歓迎、歓迎」
「去年も今年も決勝リーグに残れなかったし」
「でも実力的には、やはりL女子高さんが旭川では最強」
「実力より結果だよ」
 
「だけど3チームだと1チームは見学?」
「それはもったいないよね」
「どこか、あと1校引き込もうよ」
 
「A商業さんか、R高校さんあたりに声掛けてみる?」
「いや、それより男子入れない?」
「え?」
 
話し合いの結果、M高校とN高校の合同男子チームがこのプロジェクトに参加することになった。M高校・N高校・L女子高ともに、バスケット部が練習している体育館は2面コートが取れるので、そこで毎日19時から20時までふたつの練習試合を同時並行で進める。組合せは毎日変えていくので、同じ相手とは3日に1度当たることになる。
 
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練習試合は道大会が終わった後、1日置いて6月26日から始めた。
 
合同男子チームはM高校とN高校から5人ずつ出すことにした。これにN高校では、新チームの中心となる北岡(C)・氷山(PG)に、1年生の水巻(PF),大岸(SF),湧見(昭一,SG)という5人で初日はやってきた。
 
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