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■桜色の日々・小6編(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-03-02
 
小学6年生ではクラス替えが行われて、私は男子の友人では荻野君や伊藤君などとは別のクラスになってしまったが、女子の友人で令子やカオリなどとは同じクラスであった。担任は今年の春、他校から移ってきた女の先生で森平先生と言った。まだ20代の若い先生で独身である。
 
最初の朝礼で先生が自己紹介した後、点呼が取られる。私は苗字が「吉岡」で、しばしばクラスの男子の最後になっていたが、このクラスでも多分最後のようであった。しかし男子のほうで、「山崎君」と呼ばれたあと、次は女子の方に行き「我妻さん」と呼ばれる。
 
「はい」と返事をした令子は、私の後ろの席だったのだが、鉛筆でツンツンと私の背中を突いた。私は『まただよ〜』という顔をして令子を見た。果たして、女子の方で「雪下さん」と呼ばれて好美が「はい」と返事をした後「吉岡さん」
と呼ばれたので私は「はい」とわざと男の子っぽい声で返事した。
 
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「あれ?吉岡さん、のどの調子が悪いのかな?まるで男の子みたいな声に聞こえたよ」と森平先生は言うと、そのまま今日の『お話』を始めた。
 

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「ねえねえ、『私、男子です』って言わなくて良かったの?」
 
朝礼に引き続きクラス会で学級委員や各種係が決められた後、2時間目との間の休み時間で、私はカオリからそう言われた。
 
私の名前は「晴音」と書いて「はると」と読むのだが、この字はしばしば「はるね」と誤読され、女の子と思われることも多い。実際、名簿で女子の方に入れられていたのも今回が初めてではない。
 
「うーん。性別違ってても、特に何か問題があることもないような気がするし、先生もそのうち気付くでしょ」
「ああ、確かに性別なんて大した問題じゃないかもね」と令子。
 
2時間目は体育だったが、着替えを男女交替でする以外は、体操服は男女ともハーフパンツで、同じ格好しているし、特に大きな問題もなかった。もちろん私は男子たちと一緒に着換えたが、昨年も同じクラスだった坪田君が
 
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「吉岡、お前女子の方に入ってたじゃん?男と着換えていいの?」
と言ったが
「女子の方から出張サービス」と答えておいた。
「女子から出張サービスなら、ブラジャー付けろよ」と言われるが
「おっぱい大きくなったら付けるよ」と返事した。
 
実際小6の1学期の段階では、まだブラジャーを付けていない女子も結構いた。
 
翌日は体重測定があったが、直前に県下の他の地区の小学校で破廉恥な教師が逮捕されたなどというニュースが流れたばかりで、学校側が過敏になってしまい、今年の体重測定は着衣でおこなわれることになった。
 
私が男子の測定が行われる体育館の方に行こうとしていたら、カオリから腕を掴まれた。「ハルは女子でしょ。こちらに来なきゃ」と言われて女子の測定が行われる保健室に連行される。「着衣だから、女子に混じっててもいいって」
などと令子まで言う。「だいたい多分ハルの書類、こちらに来てるよ」
 
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そういう訳で、私はその月の体重測定を女子たちと一緒に受けてしまった。保健の先生が私を見て「あら?」と言ったが「ま、いっか」と言って笑って、ふつうに体重・身長を測られた。体重は服の分をおよその重さとして男子は1.5kg, 女子は1kg を引くということになっていたが、その子の服を見て、若干勘案している感じだった。保健の先生は私を見て「吉岡さん、ふつうの女子と同じで1kg減算で良さそうね」といい、体重計の数字から1kg引いた数字を書類に書き込んでいた。
 
胸囲はひとつ前の子が測ることになっていて(ただし名簿先頭の子は次の子に測ってもらう)、私は名簿ひとつ前の好美に測ってもらった。
「名簿最後だから、私は誰も測らなくていいのね」
「何なら私の再度測る?」と好美。
「いや。いい」と私が慌てて言うと
「照れなくてもいいのに」と好美は笑って言った。
保健の先生も笑っていた。
 
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何となく、誰もその問題を指摘することもなく、先生も気付くことなく、私が女子のほうの名簿に入れられたまま1ヶ月ほどが過ぎてしまった。
 
女子の方に入れられているので、私を含む女子5人で6週間に1度、女子トイレの掃除もすることになり、4月の下旬にその当番に当たった。普段、私は一応男子トイレの方を使っているのだが、その週は好美たちと一緒に女子トイレの掃除をした。
 
手分けしてブラシやモップを持ち、便器や床を掃除する。
 
「ハルが女子トイレに居ても、全然違和感無いなあ」
「ハル自身は、女子トイレに入るの、抵抗感無いんでしょ?」
「うん、まあ」
「だったら、普段も男子トイレ使わずに、こっちに来ればいいのに」
「それはさすがに」
「誰も文句言わないよねー」
「ほんとほんと」
 
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「でも、ハル、男子トイレで立っておしっこするの?」
「ううん。個室を使うよ」
「へー。なんで?」
「いや、それは・・・・」
「やはり、おちんちん付いてないからじゃない?」と環(たまき)。
「ああ、その問題はちょっと追求してみたい気がしていた」と美奈代。
「令子やカオリは、ハルには一応、おちんちん付いてるけど、偽物だって言ってたね。付いてないのと同じって」
「へー。どういう意味なんだろう?」
 
「でも、男子トイレに入っても個室使うんなら、女子トイレに来てもいいんじゃない?」
「うーん。。。そのあたりは。。。。」
 

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6年生は毎年運動会などで鼓笛隊をすることが恒例となっていて、私たちもクラス会の時間などを使って練習をすることになった。私はファイフ(横笛)を吹くことになった。ファイフ自体は去年ちょっとクラスメイトの間で流行したのでその時に買ってもらっていて、一応音階は吹けていたのだが、半音を出すのは苦手だったので、この機会にかなり練習しようと思った。
 
「あれ?ファイフ組はよく見たら全員女子だね」と一緒に練習していた典代。
「そういえばそうだね。リコーダー(縦笛)組は全員男子みたい。男女で分けたんだね」と隣で練習していたリコーダー組の木村君。
 
などといった話をしていたら、リコーダー組にいた笹畑君が
「あれ?僕もファイフ組はみんな女子かと思ったけど、吉岡がいるじゃん」
などという。
 
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「あぁ、そういえば」と木村君は言ったが
「でも吉岡は女子でもいいんだよ」と続ける。
「え?そうなの?そういえば、なんで吉岡は名簿で呼ばれる時、女子の最後で呼ばれてるんだろう?」
「きっと性転換したんだよ」と木村君。
 
「えー?吉岡って、性転換して女子になっちゃったの?チンコ取っちゃった?」
「どうだろ?吉岡、チンコ付いてる?」
「うーん。あんまり自信無い」と私は答えた。
 
「ハルは女の子だよ。私ちゃんと確かめたから」などと言って、カオリが私の後ろから首に抱きついた。それを見て木村君が
 
「わあ、なんて羨ましいことを。西本〜、俺にもそんな感じで抱きついてよ」
などと言う。
 
「えー。そんな恥ずかしいよ。ハルとは女の子同士だから出来るけどね」
「うん。まあ」
「吉岡はこの瞬間、男子の敵を5〜6人は作ったな」と高岡君が笑って言った。
「でも、西本、吉岡が女の子だと確かめたって、どうやって確かめたの?」
「ひ・み・つ」とカオリは笑顔で答える。
「気になるなあ」
 
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鼓笛隊の最初の披露は5月になった。地元でサッカー大会が開かれることになり、そのオープニングに私たちが出場するのである。
 
鼓笛隊の正式の衣装を身につけて1度練習することになった。衣装は学校にストックされているのだが、私が男子用の服を着て集合場所に居たら、先生から声を掛けられた。
 
「吉岡さん、なんでズボン穿いてるの?」
「あ、えっと・・・・」
「スカート嫌い?でもファイフのセクションは全員女子で揃えてるから、女子の衣装着てもらいたいんだけど」
などと言われる。
 
私が今更だけど何と説明すればいいのかと思っていたら、カオリが
「ハル、女子の衣装着ておいでよ。ハルなら着れるでしょ?」
などと言うので
「うん。じゃ、着換えて来る」
と言って、私は用具倉庫に行って、自分のサイズに合う女子の鼓笛隊衣装を取ると、(教室まで戻る時間が無いので)その場で着換えて集合場所に戻った。
 
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「ハル、スカート似合ってるよ」と典代から言われる。
「うーん。何となく予感はしてたけど、やはりこれ着ることになったか」
「アピールする機会はあったはずなのにアピールしなかったんだから、元々女子の衣装着たかったんでしょ?」などと、みちるからは冷たく言われる。
「ファイフは吹きたかったから」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるね」とカオリは笑って言っている。
 

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本番衣装を着けての練習が終わったあと、普通の服に戻るのに男子用の更衣室に入ろうとしたら、私は入口のところで追い出された。
 
「女子は教室が違うだろ?」と数人の男の子から言われた。
「えー?でも私の服、ここにあるんだけど」
 
ふだんの体育の時間は時間差で同じ教室で着換えているのだが、このように学年全体で着換える場合、1組と3組で男子が、2組と4組で女子が着換えることになっていた。私は3組なので自分の教室でもある3組の教室で、普通の服から男子の鼓笛隊衣装に着換えていたので、ここに服があるのである。
 
「じゃ、持ってきてやるよ」と言われて、ひとりの男の子が私の机の上から服を持ってきてくれた。
「はい。女子はちゃんと4組で着換えてよね」と言われて渡される。
 
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渡されたものの、どうしよう?と私は困ってしまった。
そこに4組で着換えて出て来た好美が声を掛けた。
 
「ハル、どうしたの?」
「お前、ここ教室が違うって言われて、追い出されちゃった」
「あぁぁ。ハルは女子の方で着換えても苦情出ないよ。おいで」
「えー?」
 
などということで、私は好美に手を引かれて、まだ女子達が着換えている最中の4組の教室に連れ込まれてしまった。
 
「ねえねえ、みんな」と好美が声を上げる。
「ハルが、男子の方から追い出されちゃったらしいんだけど、ここで着換えてもいいよね?」と訊くと、あちこちから
「ハルならいいんじゃない?」
「問題無ーし」
などと声が掛かった。
 
「ほら、いいって。ハル、だいたい体重測定は、先月も今月も女子と一緒に受けたじゃん」
「うん、まあ」
 
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というこで、私は女子たちと一緒に4組で着換えることになってしまった。
 
着換えていたら朱絵から、いきなり胸を触られた。
「ハル、胸無いねー」
「それは仕方ないよお」
「でも、胸大きくなったら、ブラ付けられるよ」
「うーん。付けてみたい気はするけど」
 
「ほーら、カオリのに触ってごらん」と言って、朱絵は私の手を取って、隣でのんびりと着換えていたカオリの胸にタッチさせる。
「きゃっ」
「わっ、ごめん」
「いや、ハルなら別に構わないけどね」とカオリ。
「でもカオリ、胸大きい。いいなあ」と私。
「Bカップのブラ付けてるよ」
「すごーい。小6でBって大きいよね」
 
「ハルも腕立て伏せとか、バストマッサージとかすると、大きくなるかも」
「うーん。やってみようかな・・・・」
「がんばれ、まだ全然胸が無い子もいるしさ。ほら、令子みたいに」
「なぜ、私を引き合いに出す?」と令子。
「ほら、令子のも触ってみよう」と言って、朱絵は私の手を取って、令子の胸にタッチさせた。
「あ、でもちゃんと膨らんでる」と私は羨ましそうに言った。
 
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「ハル、本気で胸大きくしたいんだったら、女性ホルモンの注射とか、お医者さんに行ってしてもらうといいんだって」と令子は言う。
 
「でも、ハル、下着は男の子の下着着けてるのね」
「え、それが何か?」
「女の子の下着付ければいいのに」
「そんなの持ってないもん」
 

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翌週のサッカー大会が本番であった。私たちはふつうの服で会場まで行き、会場に隣接した体育館で着換えた。体育館にパーティションが置かれていて、左半分が男子更衣室、右半分が女子更衣室になっていた。
 
「私。。。やはり、こっちかな?」と私が右の方に行くのをためらっていたら「今更、何言ってるの?」といって、朱絵から手を取られてそちらに連れ込まれた。
 
高校生の大会なので、私たち以外は選手らしい高校生のお姉さんたちがたくさん着換えている。
 
「胸、凄く大きい人いるね」などと思わず好美が言う。
「羨ましいね」と私が言うと環が
「ハルの感覚として、胸の大きい人見たら、『こういう女の子を抱きたい』と思うの?それとも『自分もこういう胸が欲しい』と思うの?」
と訊く。
 
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「抱く?」私は意味が分からなかったので聞き直した。
「ああ、ハルはウブだから、分かってないよ。性交したいと思うかってこと」
「えー?そんなの考えもしなかった。自分もこんなおっぱいあったらなって、思ったけど」
「やはり女の子感覚だ」
 
「ハルは女の子と性交したいの??男の子と性交したいの?」と訊く。私が答えを迷ったが
「ハルは男の子と性交するだろうね」とカオリが代わりに答えた。
「ハルのおちんちんは偽物だから、女の子とのセックスには使えないもん」
と令子も言った。
 

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