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■桜色の日々・小6編(5)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-03-03
 
修学旅行の2日目、私はそういう訳でスカート姿で歩き回った。担任の森平先生も最初集合の時に「あら?」と言ったが、「ほんとにそういう格好が好きなのね」などと言っていた。
 
その日は朝から宮島に行く。バスで宮島口まで行き、フェリーに乗って宮島に渡り、厳島神社に参拝した。神社内の記念写真スポットで、この修学旅行の写真を撮ったのだが、私は2列目に並んだので、私がスカートを穿いていることは、その写真をよくよく見ないとわからない。
 
「私、神社とお寺の区別がよく分かってない」と好美。
「鳥居があるのが神社で、山門があるのがお寺」と、みちる。
「神主さんがいるのが神社で、お坊さんがいるのがお寺」とカオリ。
「祝詞(のりと)をあげるのが神社で、お経をあげるのがお寺」と令子。「神様を祀っているのが神社で、仏像が置いてあるのがお寺」と私。
「ここはどっち?」と好美が訊くので
「神社」とみんなで答えた。
 
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「あ、そういえば赤い大きな鳥居があったね。海の中に」
「うん、あれはここの名物だよ」
「神様を祀ってるの?」
「そう。宗像(むなかた)の三女神っていって、美人の三姉妹だよ」
「へー。じゃ、お参りしたら美人になれるかな」
「ごりやくはあるんじゃない?」
「そういえば、さっき烏帽子姿の神主さん歩いてたね」
 
「ここは島全体が神社の聖域ってんで、お墓とかも作っちゃいけないのよね」
「えー?そしたら島に住んでる人が死んだらどうするの?」
「本土のほうに墓を作る」
「お産もしてはいけないから、臨月になった女性は本土に渡って出産する」
「なんか凄い」
「今はしないけど、昔は生理中の女性は『月の小屋』に籠もってたらしいね」
 
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「月の小屋?」
「別にここだけの風習じゃなくて、世界的にあったんだけどね。ここは聖地ということで、かなり近年まで残ってたみたい」
「生理中の女性はそこに籠もって静かに過ごすって場所ね」
「何それ?女を隔離するわけ?」
「うん。フェミニストさんたちは隔離というけど、ペイガニズムの人たちは逆に、生理中の女達がのんびりと休憩する場所だった、みたいな言い方をする」
 
「ああ、確かに生理中くらいはゆっくり休みたい気もするね」
「今は生理中だろうと何だろうと、フル稼働の女性多いから、逆にいえば大変な世の中だよね」
「生理中はテストも延期してくれないかな」
「ああ、それかなりマジにそう思う!」
「生理ってやっぱり大変なの?」と私はつい訊いてしまった。
「そっか。ハル、まだ生理来てないんだよね?」
「生理来たら大変さが分かるよ」
「私、生理来るのかな?」
「うん、来る来る」とみんなに言われた。
 
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「だいたい、ハル、ナプキン持ってるよね?」
「あ、私借りたことあるもん」と典代。
「みちるがナプキン買いに行くのによく付き合ってるから、その時、私も何度か買ったよ」
「買ったナプキン、どうしてるの?」
「学校に置いてるけど、増えたら令子に引き取ってもらってる」
「うちは女3姉妹だからトイレに置いとけば誰かが勝手に使うし」と令子。
「なるほど」
「今、持ってる?」と環。
「この旅行に5個ほど持ってきた。令子が『生理って突然来ることあるから』
なんて言うもんだから。今もこのバッグに2個入ってるよ」
「あ、じゃ突然来たら、ハルにもらおう」
 

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「でもさ、ハルのあれって、昔から『偽物』だったの?」と環が訊いた。私たちは乗るフェリーが来る時間まで少しあるので、ターミナルの近くで、手すりに腰掛けて、ここまで戻ってくる途中で調達した紅葉饅頭を食べながらしばしおしゃべりをしていた。
 
「小学1年生の頃にたくさん、ハルに女の子の服を着せてたんだよね。ハルがこんなになっちゃった責任の一端は私にもある気もするんだけどさ。でも当時はハルのおちんちんって『本物』だったよ」と令子が言った。
 
「小学3年のクリスマスに偽物になったんだよ」と私は説明した。
「その日夢を見てね・・・といっても、自分では夢じゃなくて現実みたいに感じたんだけど。サンタさんが現れて、君は女の子になりたがってるでしょ?だからクリスマスプレゼントで、女の子にしてあげるって言われて、おちんちんとタマタマを取られちゃったの」
「へー」
「それで割れ目ちゃんも出来てたんだけど、突然女の子になってお母さんに叱られるかも、なんて私が言ったら、じゃ、バレないように偽物おちんちんを付けてあげるよ」と言われたんだよね。
 
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「面白い。それじゃその時、お母さんに叱られるなんて言わなかったら、ちゃんと女の子になれてたんだ?」と好美。
「うん。それ、ちょっと惜しかったなって思うことある」と私。
 
「でも、それから偽物を付けてるのね?」と環。
「その後では、めったに大きくなることはなくなった」
「大きくなることもあるの?」
「何度かなったことはあるよ。でも10cmくらいまでしか大きくならなかった」
「それ、かなり小さいよね」
「普通、あれって、大きくなると、どのくらいになるの?」
「人にもよるけど、だいたい15cmから18cmくらいって聞くよ」と男の兄弟がいる子が言う。
 
「わあ、じゃ大きくなってもかなり小さいんだ」
「でも、4年生の頃は何度か大きくなったことあるけど、去年の夏頃以降では1度も大きくなったことないんだよね」
「じゃ夢精とかするの?」
「それしたことない。だから、私って実は1度も射精した経験がない」
「ああ、じゃ、やはりハルは男の子の機能は無いんだね」
「というか、そもそも男の子になってないんじゃない?」
「そうかもって気はする」と私は言った。
 
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「ハル、まだ声変わりしてないもんね。クラスの男子たちは、もうみんな声変わりしてるのに」
「このまま声変わりしないといいけど。無理だろうなあ」
「今すぐ、おちんちん取っちゃえば声変わりしないんじゃない?」
「おちんちんというか、タマタマだよね」
「ハル、今すぐ女の子になっちゃえば中学でもセーラー服着れるのに」
「それ、こないだから、みんなに言われるんだけど!」
 

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宮島から宮島口に戻ると、私たちはバスに乗り、そのまま山陽道を走って、倉敷まで行き、ここでお昼を食べてから、美観地区を歩き大原美術館に寄った。
 
私たちはしばし「受胎告知」の絵の前で立ち止まった。
 
「赤ちゃん欲しいなあ」と私が言うと
「まだ小学生には早いんじゃない?」などとカオリから言われる。
「ううん。ずっと先の話」
「ハル自身が産めなくても、養子もらったりして子育てはできるかもよ」
とカオリは言う。
 
「ハルって優しいから、いいお母さんになりそうな気がする」と好美も言った。
「100年後くらいに生まれていたら、きっとハル自分で赤ちゃん産めたろうね」
と環が言ったが、
「いや、100年後なら誰もが赤ちゃん、自分で産まなくてもいいようになっているかも。人工子宮とかで」と令子が言い、みんな「そうかも!」などと言っていた。
 
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「でも、そうなった時、母親って何なんだろう?」と私は疑問を投げかけたが「それは子供を育てる人が母親なんだよ」とカオリが明快に断言した。
 

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その後私たちはまたバスに乗り、バスは岡山道・米子道・山陰道を走って学校に帰還した。私はバスが学校に着く少し前に車内でズボンを穿き、スカートを脱いだ。洗濯してから返すねと環に言ったのだが、スカートが洗濯物に入ってたら、お母さんがびっくりするよなどと言われ、こちらで洗濯するから大丈夫だよと言われたので、御礼を言ってそのまま環に返した。
 
「だけどハル、ウェスト細いね。環のスカートが入るなんて」と美奈代。「ああ、以前聞いてたハルのウェストなら、これ入ると思ったんだよね」と環。「うん。私ウェスト57cmだから」と私。
「このスカートはガールズの130サイズだからね。私も実は入らない。間違って持って来ちゃったのよ」と環。
「環が入らないスカートがハルは入っちゃうの!?」
「ハル身長はあるのにね。もっと御飯食べた方がいいよ」
「うん」
 
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修学旅行から帰った翌週、6年の各クラス学級委員と担任の先生たちの話し合いで、今年の学芸会で各クラスが上演する劇が決まった。私たちのクラス3組は結局「十二の月(twelve months,通称「森は生きている」)」をすることになった。最初「小公女」を希望したのだが、2組もそれをしたいと言い、2組の学級委員とジャンケンをして負けたのだという。他は1組が「あしながおじさん」、4組が「オズの魔法使い」をすることになった。
 
「ごめーん。ジャンケン負けちゃった」と木村君。
「ノープロ〜」「無問題(モーマンタイ)」
 
「でも何となく主要配役は決まっちゃう感じがするなあ」
 
放課後、みちると木村君が打ち合わせから戻ってくるのを待っていた私たち(令子・カオリ・好美・高岡君・山崎君)はそんなことを言った。
 
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「私たちだけで決めていいのかなあ・・・」とカオリは言うが
「配役案として出せばいいさ」などと高岡君は言う。
「じゃ、今ここにいるメンバーは学芸会実行委員ということで」
 
「アーニャはカオリ、女王がハルだよね」と令子。
「まあ、そのふたりは動かないね」と山崎君。
「問題は西本が突然風邪を引いたりしないかということで」と木村君。「ごめーん。節制します」とカオリは本当に申し訳無さそう。
 
「私がアーニャの母ちゃんをやるから、姉ちゃんを好美しない?」と令子。
「うん。いいよ。万一カオリが休んだ場合は、ハルがアーニャ、令子が女王にシフトかな?」と好美は言うが
「いや、私は女役だめだもん。その時は女王はみちるがやってよ」と令子。
 
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「いいよ。カオリが休んだ場合はね。じゃ、私は一応、女王の家庭教師ということで。みんなできるだけ複数の役のセリフを覚えておくようにしようよ」とみちる。
 
「俺4月をやるから、高岡は1月をしない?」と木村君。
「ああ、それがいいね。僕は4月をやるには体格が大きすぎるから。スマートな木村の方が4月っぽい」と高岡君。
「じゃ、僕が総理大臣あたりかな?」と山崎君。
 

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次のクラス会で、学芸会は「十二の月」をすることになったというのを学級委員から報告し、取り敢えず委員側で主要配役の案を提示して、他に参加したい人、特にこの役をやりたい!という人はいないかと尋ねた。
 
すると、坪田君が1月か4月をしたいと言ったので、坪田の体格なら1月の方がいいだろうということで1月をしてもらうことにし、1月役を予定していた高岡君は、老兵士の役をすることにした。また笹畑君・環・美奈代も何かしたいということだったので、笹畑君が12月、環が7月、美奈代は10月をやってもらうことにした。
 
その他、11月,2月,3月に男子3人、5月,6月,8月,9月に女子4人を、司会の木村君とみちるとで、目を瞑って名簿に指を当てる方式で抽選して指名した。
(この7人の月は単独の長いセリフが無い)
 
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アーニャ、姉、母、女王、家庭教師、総理大臣、老兵士、そして12人の月の精で19人という大編成、クラスの半数以上が参加する劇となったが、更に練習している時に見学していた子を、カラス、リス、馬、東の大使、西の大使、女官長、などに任命して追加していったので、最終的にはクラスのほとんどが参加する多人数劇になった。
 

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学芸会は10月にあるのだが、その前に9月上旬には水泳大会、中旬には運動会があった。
 
水泳大会は修学旅行から帰ってきた翌週の水曜日だった。私はその日、家からは男子用の水泳パンツを持って出かけたが、実際には令子に預かってもらっている女子用スクール水着を着た。着替えも女子たちと一緒にした。
 
小学4年生まで、私は体育のプールの授業は体調が悪いとか何とかいって全部見学していたのだが、小4の時の「白雪姫事件」をきっかけに、私の性別指向がバレてしまうと「もしかして男子用の水着になりたくないから、水泳の授業見学してるの?」などと、令子やカオリから指摘された。
 
かなり図星だったので頷くと、令子から「姉ちゃんのお古の水着でよかったらあげようか?」などと言われ、令子のお姉さんの浩子さんが小学生の頃使っていた水着がまだ残っていたのをもらったのである。浩子さんは背が高くて、身長の高い子用の水着を使っていたので、私の身体にけっこうフィットした。それで小5の夏休みから、私は女子用のスクール水着でプールで泳ぐようになったのであった。
 
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小4の時まで私は水泳は(そもそも授業に出ていないので)全くできなかったのだが、小5の夏休みにたくさん練習したので、一応クロールで息継ぎしながら泳ぐことはできるようになっていた。今年の夏はそれでカオリたちと競争で何往復もプールをしながら、かなり長い距離を泳いで楽しんでいた。
 
「授業にも、この水着で出ればいいのに」
「えー。それは叱られないかなあ」
「そんなこと無いって。体育の先生はハルの性別のこと分かってるもん」
「見学するよりマシだよねー」
「ほんと、ほんと」
 
などとやっていたものの、私は今年の水泳大会も見学で押し通すつもりでいたのだが、修学旅行で女子のみんなに「見られ」ちゃったので、今更恥ずかしがることもない気分になったので、堂々と女子更衣室で女子用スクール水着に着換えたのであった。
 
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桜色の日々・小6編(5)

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