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■夏の日の想い出・そして誰も居なくなった(8)

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記事を読むと、XANFUSの音羽は音楽の勉強をやり直すため、来月発売のアルバムを最後にXANFUSから卒業すると書かれている。今後のXANFUSについては当面光帆ひとりで活動していくとなっていた。
 
私はびっくりして音羽の携帯に電話したのだが『この番号は使われておりません』というアナウンスが流れる。どうも番号を変更したようだ。光帆の番号に掛けてもやはり同じアナウンスである。
 
私は★★レコードの加藤課長に電話してみた。
 
「その件、実は僕もさっきニュース見て知った」
などと加藤さんは言っている。
 
「XANFUS担当の福本も寝耳に水だったらしくて、今&&エージェンシーに行かせたところなんだけどね」
 
「来月発売のアルバムってどのくらい制作は進んでいたんですか?」
「事実上終わっているらしい」
「随分速いですね!」
「先週発売したシングルもだけど、打ち込みはアルヒデトさんが概略を打ち込んで細かい強弱付けとかはバイトの学生にやらせて、録音は1日2曲のペースで12曲入りのアルバムを1週間で作ってしまったらしい」
 
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「それではXANFUSの品質のアルバムになりません」
「僕もそう思う。しかし&&エージェンシーの新社長の悠木さんも、事実上のプロデューサーのアルヒデトさんも、音源製作に何千万円も掛けるなんてばかげているという意見らしくて」
 
アルヒデトさんは、まだノンリニア編集ができなかった時代からDTMをやってきている徹底的な「自宅制作」派である。数小節しか記録できない本来の意味でのシーケンサーを使用して1980年代から机上で音源を作っていた。一度彼は「伴奏なんて1曲1万円で作るもの」と発言したこともある。
 
私は疑問を感じたので聞いてみる。
 
「XANFUSの音源製作って予算は★★レコードから出していたんじゃなかったんでしたっけ?」
 
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「それが原盤権に関する契約が9月更新だったのだけど、&&エージェンシー側は契約の更改を拒否した。つまり今後はXANFUSの原盤権は向こうが持ちたいということのようでね」
 
「ああ、やはり過去のは原盤権は★★レコードですよね?」
「そうそう。100%うちが持っている。ただ、それだと売り上げの取り分も小さくなるから、全部向こうで製作して、利益も全部向こうで取りたいということのようなんだよね」
と加藤さんは淡々と語るが、かなり機嫌が悪い感じであった。
 

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この件は何でも先走って知っていたりする千里も驚いたようで、政子と3人で、ネットの書き込みを眺めながら、何が起きているんだろうねと言い合っていた。千里も自分が帰っていい状態になったら電話があるだろうし、などと言って、お茶など飲みながらのんびりとしている。幸いにもここには食べきれないほどお菓子の類いがある(ファンからの贈り物である)。
 
そしてお昼前のことだった。桃香がうちのマンションにやってきたのだが、思わぬ人物を連れていた。
 
「桃香が冬と知り合いだったなんて、私全然知らなかった」
と織絵(音羽)は言った。
 
「織絵って、桃香と知り合いだったの!?」
と私の方が驚いて言った。
 
「私は洋楽ばかりで、日本国内の音楽ってほとんど聞かないもんだから、織絵が歌手をしていたなんて全然知らなかった」
と桃香は言っている。
 
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話を聞いてみると、織絵は桃香と同じ高校に通っていたらしい。XANFUSに参加するのに東京の高校に転校してきたのだ。
 

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「でも織絵、音楽の勉強って何をするのよ?」
と私は訊いた。
 
「特に具体的なものはない」
「早い話がクビ?」
「そういうことみたい」
「何したの?」
 
「唐突に契約解除通告をされた。契約期間中の中途解約ということで違約金として2000万円もらった。ネットで残高見て桁数数えちゃった。それが要するに退職金代わりってことみたい。それと私のマンションを事務所が買い取ると言われた」
と織絵。
 
「この春に引っ越したマンションだよね?」
「うん。3000万円で買ったんだけどね。実際にはお金は美来(光帆)と半分ずつ出している。もっともローンがまだ2500万円残ってるけど」
 
「でもどうして桃香の所に?」
 
「私、呆然としたまま事務所を出てさ、それでこのあとどうしようって何にも思いつかない状態で新宿の街を歩いていたら、ばったりと桃香に会っちゃって。デート中みたいで悪かったんだけど、私、桃香に抱きついて泣き出しちゃって」
と織絵。
 
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「かなり焦った。一緒に居た子は騒ぐし」
と桃香。
 
「今更だから気にしなくていいよ。過去に桃香の修羅場は何度も目撃してる」
と千里が言う。
 
「嘘!? 見られてた?」
「桃香の恋人が2人かち合って喧嘩しはじめるのも、見てるし」
「いや、その・・・」
と桃香はかなり焦っている。
 
「で、取り敢えず桃香、私を自宅に連れて行ってくれたんだよ。ごめんね。デート邪魔しちゃって」
と織絵。
 
「気にすることないですよ。この子、しょっちゅう振られてるし」
と千里。
 
「Hしたの?」
と政子が興味津々な顔で訊く。
 
「したうちに入るのかなあ・・・・」
と織絵。
 
「それは織絵の気持ち次第ということで」
と桃香。
 
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「まあ女の子同士って、既遂か未遂かというボーダーラインが曖昧だよね」
と私は言ったのだが、
 
「桃香の場合は入れたかどうかでハッキリする」
と千里が言う。
 
「本体は入れてないよ」
と桃香。
 
何だか微妙な言い方だ。
 

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こういう時は、取り敢えず飲もうよと政子が言い、カティサークを出してきたので、唐突に酒盛りが始まってしまう。桃香はお酒が好きだし、政子は普段は飲まないのだが、この日は少し飲みたい気分だったのだろう。千里も飲むし、織絵も「あ、このカティサーク美味しい」などと言って飲んでいるし、結局私も飲むことにした。
 
「でも車を動かさないといけない時はどうする?」
「私が誰か友だちを呼び出すよ」
と千里が言うので、必要な時はお願いすることにする。
 
「マンションの件では最初から揉めたんだよね」
と織絵はカティサークをロックで飲みながら言う。
 
「美来(光帆)のマンションの家賃を1年ほど前から事務所が払ってたんだけど、悠木さんが社長になって帳簿を見てて、これはなぜかと訊かれて、実際は使っていなかったので解約したかったが、そちらを解約してしまうと私たちが一緒に暮らしているというのが公式のものになってしまうから、それを避けるために事務所が家賃を払って、美来は向こうに住んでいるという建前を作っていたという事情を説明したんだよね。でも悠木さんはそもそも君たちは恋愛禁止になっているはずで、それを黙認した上でこのような処理をするのは認められないと言って、そこから論争になっちゃってさ。だから家賃は自分たちで払いますということにして、その場ではそれで一応、うやむやの決着になったんだけどね」
 
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「そのあたり、白浜さんが退職したのも痛いね」
と私は言った。
 
「うん。白浜さんなら、もう少しうまく新社長に説明してくれていたかも知れないけど、他の事務所のスタッフは、そもそもよく状況を把握していなかったみたいだし、私も美来も説明はあまり上手ではないし」
と織絵は言う。
 
「昨夜は私も混乱していたんだけど、起きてから少し考えていて、おそらく悠木さんは、私と美来の関係は、どちらが仕掛けたのかを調べていたのだと思う」
 
「何となくくっついたんじゃなかったの?」
と政子が訊く。
 
「こないだ、高校の同級生でさ、浜名麻梨奈と私と3人でバンドやってた鈴子って子から連絡があったんだよ。私が高岡の高校に居た頃に恋人が居なかったか教えてくれないかと聞きに来た人がいたって」
 
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「織絵って高岡だったの?」
と政子が尋ねる。
 
「うん。だから桃香と同級生」
「あ、そうか!」
 
「もちろん鈴子は知らないと答えたらしいけど、どうもあちこちで私の昔のことを調べているみたいだって。だから多分、興信所を使って、私や美来のデビュー前の恋愛遍歴を調べたんだよ」
と織絵。
 

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「もしかして、織絵と桃香って元恋人?」
と政子が訊いた。
 
「あ、えーっと・・・」
と織絵は言いよどむし、桃香も困っているようであったが千里が言う。
 
「桃香は格好いいタイプの女の子がいると、すぐちょっかい出す癖があるんだよ。織絵ちゃんとのことは知らなかったけど、その鈴子ちゃんは私も知ってる」
 
と言って千里が携帯を開いて、鈴子が桃香と並んでいる所の写真を見せると、桃香が慌ててその画面を閉じている。
 
「他にも弥生ちゃんとか、広実ちゃんとか、優子ちゃんとか、英子ちゃんとか、季里子ちゃんとか」
「なんで知ってるの!?」
「桃香、隠す気が無いとしか思えない。桃香がいない時に女子会でいつも話題になってた」
 
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「桃香、変わらないね」
と織絵も呆れているようだ。
 

「でもそういう訳で、おそらく興信所の調査で、私にはレスビアンの前歴があって、美来にはそれは無いという結論になったんだと思う。だから私がクビにされたんだと思う」
と織絵は言った。
 
「でもそしたらふたりの関係って最初は織絵が誘った訳?」
「考えてみたんだけど分からない。いつの間にかそういうことになってた。でも先にバージンあげたのは私だよ。そのあとで私が美来のバージンもらった」
 
「ああ、以前の恋人とは、入れるとこまではしなかったんだ?」
「うん。実は桃香のお母さんが入って来て、未遂に終わった」
「自宅でやってたのか!?」
 
桃香がまた焦っている。
 
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「(桃香の)お母さんが言ってたよ。てっきり普通の友だちと思ってたからおやつでも持っていってあげようと思って部屋に行ったら、裸で抱き合ってるからびっくりしたって」
と千里が笑いながら言っている。
 
「厳密に言うと契約違反ではないはずなんだけどな。契約で禁止されていたのは男性との交際や性的行為、婚約・結婚・出産だから」
と織絵は悔しそうに言う。
 
「いや、だからといって女性となら交際していいだろうというのは、さすがにへりくつだと思う」
と私は言った。
 

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「私たちって恋愛禁止されてなかったんだっけ?」
と政子が訊く。
「うん。私たちの契約条項には恋愛や出産の禁止規定は無い」
と私は答えた。
「冬、KARIONの方では禁止されてないの?」
「婚約・結婚・出産は25歳まで禁止されてるけど、恋愛は禁止されてない」
「それ、小風や美空も一緒?」
「4人の契約書はほぼ同じ。私の場合、ローズ+リリーとしての活動や作曲家としての活動は自由という条項が入っているだけ」
「恋愛を禁止しないって面白いね」
「性転換も禁止されていない」
「いや、ふつうそういう事態は想定していない」
 
「実は最初は恋愛は禁止されていたんだよ。でも2008年12月に契約更改する時に禁止条項から外された。10代の女の子が恋愛するのは当然であって、そういう体験を通して成長していくんだというのが、∞∞プロの鈴木社長の考え方で2008年夏以降の契約改定で16歳以上の女の子、18歳以上の男の子には∞∞プロでは恋愛は禁止条項ではなくなった。それで∴∴ミュージックもその流れに沿うことになった。ただ結婚・出産はアーティスト活動に支障を来すから一定年齢までは禁止している。要するにちゃんと避妊しろってこと」
と私は説明する。
 
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すると千里が微笑んでB7版くらいの小冊子を出す。
 
「何これ?」
「∞∞プロが10代のアーティストに配っている避妊のしかたの本」
「へー!」
「冬ももらったでしょ?」
「もらった! なんで千里持ってるの?」
「鈴木さんからもらったよ」
 
「あ、そうか、千里、ゆまさんと関わってたもんね」
 
「そうそう。Lucky Blossomの件で、私も蓮菜も∞∞プロとの関わりができて。ふたりとも∞∞プロと契約した訳ではないんだけど、君たちも気をつけなさいと言われて、この冊子をもらったんだよ」
と千里は桃香を見ながら説明した。
 
「これ写真とかが、もんげー! なんか面白そう、ちょっと貸して」
と織絵が言うので、千里が
「あげるよ。私、避妊の必要無いし」
と言うと
 
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「確かに!」
という声があがった。
 

「でも織絵、このあとどうすんの?」
 
「実は鍵を取り上げられて自分のマンションにも戻れないから行き先が無くて。携帯も取り上げられたから実は美来との連絡もできない。お母ちゃんに電話したら、高岡に戻っておいでと言われた」
 
「それいいかも。東京にいたら、たくさん記者とか来るよ」
 
「いや、高岡に戻っても記者は来るよ」
「ありそう」
「どこかに身を隠す?」
「外国にでも行くとか?」
「まるで犯罪者だ!」
 
「札幌にでも行く?」
と千里が訊いた。
 
「札幌?」
「私の妹がアパートでひとり暮らししてるんだよ。大学4年生。彼氏は居ないはず。ミーハーな子だから織絵ちゃんが来ると聞いたらきゃーきゃー騒ぎそうだけど、私とXANFUSって接点がないから、しばらくは記者とかにもかぎつけられないと思う」
 
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「そういう子は割と歓迎」
「じゃ電話してみるよ」
 
それで千里が電話してみると、札幌の玲羅は、千里が言ったようにキャーキャー騒ぎ、電話で織絵と話しをさせると、熱烈歓迎。ずっと居てください、などと言う。それで千里が連れ添って札幌に行き、織絵はしばらく千里の妹のアパートで過ごすことになった。
 
 
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■夏の日の想い出・そして誰も居なくなった(8)

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