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■夏の日の想い出・そして誰も居なくなった(3)

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『雪うさぎたち』の演奏のあとメンバーが手を振って幕が降りる。拍手がアンコールの拍手に変わる。幕が上がって私たちは再び出て行く。
 
私たちは左右対称になるようなTシャツを着ている。
(後半着た衣装の上にこのTシャツをかぶっただけ)
 
その衣装を見ただけで大きな拍手がある。
 
『鏡の国』を演奏する。デビューCDに収録されていた曲だが、4人でないと歌えないので、私が後ろの方で伴奏していたり、あるいは影で隠れて演奏していた時は、コーラス隊の子のひとりが私の位置に入って歌っていた。衣装も対称だし、振り付けも対称になっている曲だ。
 
春のツアーでもアンコールで演奏したのだが、この曲を和泉・小風・美空と一緒に歌っていると、4人での一体感と連帯感を感じる。私って、ここに居ていいんだな、というのを凄く感じて個人的に充足感を感じる曲だ。
 
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曲が終わってから和泉がMCをする。その間にトラベリング・ベルズのメンバーは退場する。
 
「アンコールありがとうございました。アンコールって本当に嬉しいです。この拍手をしてもらうと、2時間の公演の疲れが吹き飛ぶ気分です」
 
拍手があるので、それが落ち着いてから、和泉は『各自ひとこと』と言う。
 
「今回大きな会場ばっかりのツアーになったので、みんな買ってくれるか不安だったんですけど、全会場ソールドアウトで嬉しかったです」
と小風。
 
「各地の美味いものを食べてツイートするので、みなさん拡散して下さい」
と美空。
 
「アルバム制作で疲れが溜まっていますけど、頑張りますので、応援よろしくお願いします」
と私。
 
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「今日は会場に来て下さった皆さん、ほんとにありがとうございました。KARIONは40周年か50周年くらいまで頑張りたいです」
と和泉は言った。
 
「では最後の曲、Diamon Dust」
 
和泉がそう言うと、ステージ脇から最後の曲の伴奏者が入ってくるが、ざわめきが起きる。キーボードの所に就いたのは、猫のお面をかぶった人物。そしてグロッケンの所に就いたのはマリである。
 
「実はKARIONは6人だったんです。名前も尻取りで、はるみ・みれい・いづみ・みそら・らんこ・こかぜ、となっています」
 
と和泉が言ったのに観客がざわめく。そのざわめきを無視して、お面をかぶった人物のピアノ前奏がスタートし、それに合わせて4人の歌がスタートする。そしてマリがグロッケンの音を入れる。
 
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透き通るような透明感のある曲である。『Crystal Tunes』に続いて《少女A作詞・少女B作曲》のクレジットでデビューの年に公開した曲である。今思えばあの頃にKARIONのサウンドの方向性は固まっていった気がする。
 
やがて終曲し、大きな拍手と歓声の中、私たち6人は1列に並んで挨拶する。そして、6人が手を振る中、幕は降りた。締めのアナウンスは★★レコードの新しいKARION担当者土居さんがやってくれた。
 

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その日は6人で東京での公演ということもあり、恵比寿の私のマンションになだれこんで食事を取った後、本来は各自自宅に戻る予定だったのだが、結局全員泊まってしまった。そして翌朝一緒な新幹線で大阪に移動して、大阪公演を行った。
 
ただしセットの運搬・設営班はその日の内にセット一式を大型トラックで大阪に運び、翌日朝から設営を行ったようである。ご苦労様である。今回のツアーでは、札幌の翌日に仙台、福岡の翌日に沖縄という厳しいスケジュールも入っている。KARIONのライブはお昼過ぎから始めるので、セットを解体して何とか飛行機に乗ることはできるが、午前中に組み立て終わらないといけないのは厳しい所だ。ホログラフィなどに不具合があるとまずいので、テストも大変なようである。
 
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17日大阪公演が終わった後、出演者の打ち上げをする。今回のツアーでは毎回日曜日に打ち上げをすることにしている。水曜と土曜のライブの後は簡単に祝杯をあげるだけで早めに解散する。
 
打ち上げにはKARIONの4人、トラベリング・ベルズ, Voice of Heartとその他の伴奏者、美野里・夢美・敏・風花・、ゴールデン・シックスの6人、マミカ・テルミ、櫛紀香さん、神原さん、春美(エルシー)、水鈴(マリ)、そして畠山社長・三島さん、マネージャーの花恋、★★レコードの加藤課長と土居さん、といった面々が出席した。
 
敏さんは会社勤めなので水曜日の公演には出席できない。それで水曜日の公演ではグロッケンは代わりに線香花火の干鶴子さんが打ってくれることになっている。
 
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ゴールデン・シックスはカノン・リノン以外の4人が学生なのだが、ちょうど夏休み中なので何とか今回のツアーに全員付き合ってくれる。
 
「もっとも今必死で修士論文書いてる」
と京子。
「右に同じ」
と千里。
 
京子も千里も理学部の修士2年である。
 
「私は卒論は無いけど国家試験の準備で大変」
と蓮菜。
「右に同じ」
と鮎奈。
 
このふたりは医学部の6年生である。
 
「醍醐さん、横笛が凄いとお聞きしたんですが」
と神原さんが言うが、本人は
「大したことないですよ」
などと言っている。
 
「千里、龍笛を吹いてみせてよ」
と私が言うと、千里は微笑んで鞄から龍笛を取り出すと美しい曲を演奏する。すると部屋の中のあちこちで起きかけていた雑談が皆停まってしまった。皆、その演奏に聴き惚れているというより、何もしゃべられなくなってしまったのである。
 
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例によって途中で落雷がある。
 
そして演奏が終わると、物凄い拍手である。
 
「それ何という曲ですか?」
「ゴールデンシックスの前身バンドDRKのラストCDに入っている曲で『アクア・ウィタエ』といいます」
と千里は説明する。
 
「それカバーしたーい」
と和泉が言うので
 
「いいよね?」
と千里は花野子に確認する。
 
「私はOKOK。ってそもそもDRKの権利は私持ってないし」
と花野子。
「あれは結局誰が管理することになったんだったっけ?」
と千里が訊く。
「蓮菜じゃない?」
と鮎奈。
「あれ?そうだったんだっけ?」
と蓮菜本人が慌てている。
 
「それ、曖昧だったら、蓮菜・鮎奈・千里・麻里愛あたりで集まって話し合って確認しておいた方がいいよ。曖昧にしてたら後で揉めかねないよ」
と梨乃が言う。
 
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「ところで、それ、何ていう笛ですか?」
と神原さんが訊く。
 
「龍笛。ドラゴン・フルートですね」
と千里は微笑んで答える。
 
「こんな演奏、初めて聴いた。巧いとかいうのを超越して凄い」
と神原さん。
 
「私より巧い人は全国に40-50人は居るし、私より凄い人も20-30人は居ますよ」
と千里は笑って答える。
 
「千里はそんなこと言うけど、水曜日にリーフちゃんが何と言うか聞きたいなあ」
などと政子が言う。
 
「リーフって、スイート・ヴァニラズの曲を書いてる人ですか?」
「そうそう。醍醐さんの妹」
「へー! 凄い。音楽姉妹なんですね」
 
「元兄弟の姉妹だね」
と美空。
「それ、わざわざ言わないでよ。例の件もバラすぞ」
と千里。
 
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「元兄弟って男の人だったんですか?」
と神原さん。
「ふたり同じ日に性転換手術を受けたんだよ」
と私が言うと
「それは凄い」
と神原さんは驚いている。
 
「まあ妹は国内、私はタイで手術したんですけどね」
と千里は言う。
 
「時間もほとんど同じだったよね?」
「うん。私も妹も16時スタートの19時エンド。ただし時差があるから
実際には私の方が2時間遅れで手術されている」
 
「合わせてもらったんですか?」
「偶然ですよ。日付が同じになったのもびっくりしましたが、時刻まで同じになるとは思いませんでした」
と千里は言っているが、私はふと思ったので訊いてみた。
 
「でもそれって、青葉が先に手術を受けないといけなかったんでしょ? しかもできるだけ短い時間差で」
「よく分かるね」
と言って千里は微笑んでいた。
 
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「でも水曜日は打ち上げが無いし、私は横笛吹かないもんね」
などと千里は言っている。
 
「いや、何とかして吹いてもらおう」
と政子。
 
「私が休もうか?そしたらフルート吹く人が必要になる」
と風花。
 
「私はフルートはそれほどでもないよ」
と千里。
 
「そんなことない。苗場での演奏は巧かった」
と風花は言う。
 
「知る人ぞ知るトリビアだけど、AYAのデビューCDでフルートを吹いたのは醍醐さん」
と美空がバラしてしまう。
 
「嘘!? AYAの音源って全部打ち込みじゃないの?」
とAYAのバックバンドのサブリーダーでもある神原さんが言う。
 
「あの時、短時間で音源を修正する必要があって、打ち込みでは間に合わないから生フルートを吹いたんですよ」
と千里。
 
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「千里はフルートも巧いけど、やはり龍笛が凄いよ」
と私は言う。
 
「ゴールデン・シックスの元メンバーなんですか?」
 
「正確には、ゴールデン・シックスには入ってないんですよ。その前身のDRK, Dawn River Kittens というバンドに入っていたんですよ。DRKは私たちが高校時代にやっていたバンドなんですが、卒業とともにあちこちに住む所が別れたんで、3つのバンドに分裂したんですよね。後の2つは消えてしまって、東京周辺に来たメンバーで始めたゴールデン・シックスだけが残っているんです」
と千里は説明する。
 
「ゴールデン・シックスも始めた時は6人だったんですけど」
「1人辞め2人辞めて」
 
「最後に辞めたのが私」と京子。
「その前に辞めたのが私」と鮎奈。
 
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「で、私とカノンはこの春、会社を辞めた」
と梨乃がオチを付けたと思ったら
 
「私は男を辞めた」
などと千里が言い出す。
 
「どさくさ紛れに嘘は言わないように」
「そうだそうだ。千里は中学生時代に既に男は辞めていたはず」
などとみんなから言われていた。
 

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9月初旬。私はXANFUSの光帆から電話を受けた。
 
「冬さ、どこかで歌手の伴奏をするバンドを探している所とか知らない?」
「へ? 何があったの?」
「実はさ、パープルキャッツが契約解除されちゃったんだよ」
「嘘!? 何があったの?」
 
「うち、お盆過ぎに社長が交代したんだけど、新しい社長がXANFUSの伴奏は打ち込みでやりたいと言い出して」
「えーー!? 斉藤さん辞めたの?」
「それも解任なんだけどね」
「斉藤さんってオーナー社長じゃなかったんだっけ?」
 
それで光帆は&&エージェンシーの設立の経緯と株の所有者について説明した。
 
「うん。元々1960年代から80年代に掛けて第一線で活動した麻生有魅子さんのマネージングをするために設立された会社なんだよね。麻生さんの当時のマネージャー・悠木稀治さんが60%、麻生さん自身が40%出資して設立された。でも、その悠木稀治さんが1995年に亡くなって、実質後を引き継いだのは弟の悠木朝治さんなんだけど、朝治さんは芸能界のことは分からないからというので、当時$$アーツでマネージャーをしていた知人の斉藤さんを社長に据えたんだよね」
 
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「雇われ社長だったのか」
 
「それで株は25%をその朝治さん、35%を稀治さんの娘の栄美さん、20%を麻生有魅子さん、あと麻生さんのお兄さんと弟さんが10%ずつ持っていたけど、お兄さんは2010年に亡くなって息子の麻生道徳さんが継承していた」
 
私はメモしながら聞いていた。
 
「つまり悠木家で60%、麻生家で40%という構図は変わっていなかったんだ」
「そうそう。斉藤さんは社長をするのに5%の株を麻生家から借りていたんだけどね」
「なるほど」
 
「それが2月に麻生有魅子さんが亡くなって、続くように6月には悠木朝治さんが亡くなったんだよ」
「その株を継承したのは?」
「有魅子さんの株は娘の麻生杏華さんが継承した。杏華さんは4年前にイタリア人の男性と結婚して、現在ナポリに居て、お葬式に帰って来ただけでトンボ帰り」
「へー」
「悠木朝治さんの株は息子さんの朝道さんが継承した。それでこの人は、この会社の設立者・悠木稀治さんの娘の栄美さんの夫なんだよね」
 
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「ちょっと待って」
 
私は人間関係を図に書いて整理してみた。
 
┌麻生一郎──道徳(10)
├麻生有魅子─杏華(20)
└麻生二郎(10)
 
┌悠木稀治─栄美(35)
│      ||
└悠木朝治─朝道(25)
 
「つまり従兄妹どうしの結婚なのね?」
「そうそう。だからこの2人は夫婦でうちの株の60%を持っている」
 
「それだけ持っていれば絶対的なオーナーだね」
「うん。だから自分の流儀で会社を運用しようとしているみたいなんだよ」
「うーん・・・・それでうまく行けばいいんだけど」
 
「取り敢えず、この会社は資産の割に利益が低いと言い出したんだよね」
 
「それは安全経営のためじゃないの?」
「そうそう。斉藤さんはリスクのあるプロジェクトには手を出さない方針だった。だから他の芸能事務所に比べると利益率は低いかも知れないけど、借金も無いんだよね」
 
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「私は良い経営だと思う」
 
「でも新オーナーさんにはそれが気に入らなかったんだよ。XANFUSも現在年間7-8億円稼いでいるはずだけど、売りようによっては20億稼げるはずだと言ってたみたい」
 
「それって、無茶苦茶働かされるのでは?」
「そんな気がするよ。バンドまで連れているとどうしても機動力が落ちる。だから伴奏をカラオケにするという方針なんだと思う」
 
「だけどXANFUSのサウンドって生バンドで伴奏するのが前提だよね」
「うん。テレビ番組などではいろいろな制約でカラオケしたり、マウスシンクとかもするけど、ライブでは生バンド・生歌唱というのが絶対だったんだよね、これまでは」
 
「変な方向に行かなきゃいいけど」
「うん。実は制作中だったアルバムに関しても既に色々言われてて、どうしようと織絵(音羽)とふたりで悩んでいるんだよ」
「状況によってはさ、★★レコード側から介入してもらいなよ」
「うん。場合によってはそれも考えている」
 
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私はバンドの件に関しては知り合いにも当たってみると答え、あちこちに問合せてみた。するとゴールデンシックスの事務所、∞∞プロでデビュー予定の丸山アイという18歳の女性歌手の制作のお手伝いをしてくれないかという話があり、音羽を通じてPurple Catsのmikeに照会した所、ぜひやりたいということで両者を引合せてあげた。丸山アイは一見、どこにでも居そうな目立たない少女であったが、何か不思議なものを持っているような気がした。彼女はこの春に高校を卒業してバイトをしながら自作曲を書きつつボイストレーニングなどをしていたらしいが、音源製作自体が初めてということで、mikeやnoirがそのあたりの指導も含めて付き合ってあげることになった。
 
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「場合によっては春のキャンペーンツアーにも付き合ってもらえたら」
などと∞∞プロの鈴木社長は言っていた。
 

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■夏の日の想い出・そして誰も居なくなった(3)

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