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■夏の日の想い出・そして誰も居なくなった(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-03-07  
9月下旬。★★レコードの松前社長のもとに社員が3人訪れ、14名もの署名がある要望書を手渡した。それは社内での性別の取り扱いに関する要望書だった。
 
実はこれはローズクォーツが『Rose Quarts Plays Sex Change −性転換ノススメ』というとんでもないアルバムを発表した余波であった。
 
この社会では、実は女の子になりたいのに、男を装って生きている人というのが結構居る。この人たちは一応背広にズボンを着て通勤してきているものの、実は下着はブラジャーとショーツを着けていてみたり、穿いているズボンがよく見るとレディスだったり、またワイシャツに見せてブラウスを着ていたりする。しかし、特に靴下などで女物を履いているとしばしば注意される。
 
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数年前、★★レコードの鹿児島営業所では、スカートを穿いて通勤しようとした、戸籍上男性の社員が上司からズボンを穿くように言われて反発し、話がこじれて結局退職したケースもあったらしい。
 
今回要望を提出したグループが個人的なネットワークで「悩んでいる社員」たちから聞いたのでは、あのアルバムを聴いて自分の心の本音が刺激され、やはり自分は「本来の性別」で生きて行きたいと思ったこと、しかしだからといって自己認識している性別の服装で会社に出て行ったら、首にされそうで怖いという意見がずいぶんあったらしい。
 
(鹿児島の件は本人が退職した半年後にSNSの書き込みでこの問題に気付いた本社法務部が動き、本人に別営業所での再雇用あるいは退職金の積み増しのどちらかを選択できないかと打診。本人はこの機会に性転換手術を受けたいということで退職金の追加を選んだとのこと。営業所長は減給処分を受けた。同様のケースで他の会社で裁判になった例もある)
 
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それで要望書では、社員の性別は戸籍上のものより、本人が自己認識しているものを優先して欲しいということ、自己認識する性別が戸籍の性と一致していない場合、自己認識する性別に沿った服装で勤務させて欲しいということ、またそういう社員を、仕事の割当てや賞与査定、また昇進などで差別したりしないようにしてもらいたいいうことであった。
 
松前さんは社内で検討することを約束した。
 

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10月初旬、私は町添部長から、その件について私の意見を聞きたいと言われたので出て行った。
 
行ってみると、私の他に雨宮先生と千里、蔵田孝治・樹梨菜夫妻が居る。樹梨菜さんは妊娠中なのだが、男装している。おそらく同性愛者の意見とFTMの人の意見を聞きたいということで呼ばれたのだろう。
 
「私は雨宮先生の鞄持ち」
などと千里は言っているが、雨宮先生は
「私はふつうの男性だから関係ないはず。まあ醍醐春海の付き添いで」
などと言っている。
 
会社側では、松前社長、村上専務、町添部長、人事部の須賀部長、法務部の紙矢部長と、先日の打上げで会った社員の八重垣さんが居る。このメンツの中に八重垣さん(肩書きは係長)がいることに少し違和感を感じたのだが、その視線に気付いたように八重垣さんが自分で
 
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「実は僕はその要望書を提出した本人」
と言った。
 
「八重垣さん、仮面男子だったんですか?」
「僕はFTM」
 
「えー!?」
と私は驚く声を挙げてしまってから
「ごめんなさい」
と言った。
 
私はハッとした。先日の打ち上げの時、音羽があの場に性転換者が5人いたと言っていた。1人はこの八重垣さんだったのかというのに思い至っていた。
 
「まあ虎ちゃんは完璧に男としてパスしてるから、知ってないと気付かないよね」
と樹梨菜さんが言っている。
 
「お知り合いだったんですか?」
「女子高の同級生」
「なんとまあ」
「当時もう虎ちゃん、男の子してた」
「まあ3年間ズボンで通学しきったから」
 
「女子高でそれって凄いですね」
「だけど、樹梨は女の子たちに人気だったけど、僕は全然もてなかったんだ」
と八重垣さんは言っている。
 
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「女の子たちは本物の男性との恋愛には臆病だから。虎ちゃん、女の子の部分が全然無くて、男の子が女子制服を無理矢理着ているようにしか見えなかったもん」
 
「でもなんで、女子高に行ったんですか?」
「まあ中学からのエスカレーターで」
「なるほどー」
「中学の頃まではまだ自分の性別に悩んでいたんですよ」
と八重垣さん。
 
「私もそうだなあ」
と私が言うと
 
「嘘はつかないように」
と千里と雨宮先生が同時に言った!
 

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「八重垣君の場合、そもそも会社の面接に男装で来たし、戸籍上の性別は女であることは話してもらったものの、ふつうに男性社員として採用していいという判断を前任の人事部長がしたんですよ」
と須賀人事部長が言っている。
 
「更衣室も僕は男子更衣室ふつうに使えますよと言ったら、じゃそれでと言ってもらえたしね。トイレもふつうに小便器で立ってするし」
と八重垣さん。
 
「八重垣君の例もあるし、私としては社員が各々の個人の性別に沿って生きるということ自体には異論が無いんだけどね」
と松前さんが言うが、村上専務は
 
「それで性別を変更した場合に、その社員が担当しているアーティストから苦情が出た場合はどうしますか?」
と問題点を提示する。
 
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「苦情があれば、それは別の担当者に変更していいと思うよ。アーティストと担当者の相性が悪いというので移動させるケースは毎年けっこう出ている」
と社長は答えた。
 
「この業界は、もともと性別が曖昧なアーティストとか多いし、A&Rの性別が曖昧なのもそう問題にならないと思うけどね」
と蔵田さんは発言した。
 

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「こないだから町添君・紙矢君と少し話していたんだけど、FTMの社員については、あまり大きな問題は無いのではという話になった。MTFの社員の場合で、更衣室やトイレをどうするかというのを少し悩んでね」
 
「トイレは今の時代、問題は無いと思う。女の格好をしている前提で」
と雨宮先生が言う。
 
雨宮先生はおちゃらけた発言が多いが、今日はけっこうマジメなようだ。
 
「更衣室は、本人のトランス状態次第じゃないかな」
と雨宮先生。
 
「うん。まだちんちんが付いてて、おっぱいも平たい人は個室か何かで着替えてもらう。最低でもおっぱいがあって、ちんちんは取っているか最低でも機能喪失していることが、女子更衣室の使用を認める条件だと思う」
と蔵田さんは言った。
 
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「個人的には本人が女だと言ったら、身体をまだ直してなくても女子更衣室を使わせてやって欲しいんですけど、世間的に厳しいかなというのは私も理解します」
と八重垣さんも言う。
 
「ただ、性別を変更しても給料が下がったり、昇進に差が出たりはしませんよね?」
と念を押す。
 
「その点はうちの会社は最初から男女同一賃金、同一昇進基準ということでやってきているからね」
と村上専務が言う。
 
「でも現在取締役に女性は2人しか居ないし、課長で20%、係長でも30%しか女性はいませんよね」
 
「よかったら、その男女の待遇の問題と、今回の問題はまた別途討議にさせてもらえない?」
と社長が言うと、八重垣さんも了承した。
 
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私たちは、法務部長さん(弁護士の資格を持っている)が作ってくれた、社内での性別取り扱い移行に関するガイドラインのたたき台をもとに、自由に意見を出し合って細かい問題の調整をしていった。
 
私たちは基本的に本人の自己申告に基づいて会社での登録性別を変更すること、社員証の氏名は申告された性別と違和感のないものを届けてもらうこと、源泉徴収票は戸籍上の氏名で行うことなどを確認した。この付近は異論が出なかった。
 
「名前に関しては、結婚しても旧姓を使い続けている女性社員も結構いるし、外国籍でいわゆる通り名を使っている社員もいるので、この場合も戸籍名と異なる名前を社員証に記載しても問題無いと思います」
と人事部長さん。
 
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「年金手帳とか健康保険証はどうしますかね?」
「年金手帳は戸籍の名前と合わせないと問題が起きると思いますが、健康保険証は本人の自己申告でもいいと思います」
と法務部長が言う。
 
「ではその線で」
 
「だけど性別の変更に性転換手術を受けていることは要件にしない訳でしょう?女だと思って裸になってもらったら男だった場合、病院がびっくりしませんかね?」
と村上さんは言ったが
 
「ここに居る醍醐さんとか、ケイさんは、健康保険証が男になっているのに、裸にしてみたら女の身体なのでお医者さんが驚いていたと思う」
と町添さんが言い、村上さんも納得しているようであった。
 
「醍醐さんやケイさんっていつ性転換したんでしたっけ?」
と村上さんが訊いた。
 
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私が答えようとしたら、その前に雨宮先生が言う。
 
「いくつかの証拠から、醍醐は小学6年生の時、ケイは小学5年生の時に性転換していることが確実」
 
「それは凄い!」
と村上専務が感心している。
 
「私がケイと初めて会った時、既に女の子の身体だったもんね。あの時ケイは確か小学6年生だったはず」
と樹梨菜さんも言った。
 
「だって醍醐は中学に入ると同時に女子バスケット部に入部しているんだから中学に入る前に性転換が済んでいたとしか考えられない。ケイの場合は小学6年生でビキニの水着姿を写真集で曝しているから、その前に性転換は済んでいたはず」
と雨宮先生は補足した。
 
私は何か言おうと思ったのだが、千里が苦しそうに笑っているのでやめておいた。
 
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「しかしうちの場合、そもそも服装規定が無いから、問題は起きにくいよね」
という意見も出るが
 
「それでも鹿児島支店の松原さんは退職に追い込まれましたからね」
と八重垣さん。
 
「あれは元々、営業方針を巡っての対立もあったみたいだね」
須賀さん。
 
「やはり性別変更届の書式を作って、それを提出したらその性別に沿った服装でいいということにすれば、そのあたりは問題が起きにくいと思う」
と蔵田さん。
 
「その時、その性別変更をコロコロと何度も男から女に、女から男にと出された場合、どうしようというのを言ってたんだよね」
と町添さん。
 
「一度だけしか性別変更は認めないというのでいいんじゃないですか?」
と村上さんは言う。
 
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「それ1年くらい経過していたら再変更を認めてもらえませんかね?」
と八重垣さん。
 
「最大2回というのではだめですか?」
と須賀さんが言ったが
 
「その場合はせめて3回にしてください。男から女になって違和感を感じて男に戻ったけど違和感がもっと大きくて結局やはり自分は女だという結論に到達する、というパターンは割とよくあるんですよ」
と私は言った。
 
「ああ、そのパターンの奴知ってる」
「私も知ってる」
「俺の知り合いにも居るな」
 
と雨宮先生、千里、蔵田さんが言った。
 
「つまり奇数にする必要があるんだね?」
と社長。
 
「そうです。だいたい最終的にはやはりトランスしちゃう人が多いんですよ。そこまで10年以上かかる場合もありますけど」
「最初はめげちゃうんだよね。性別変更に伴って発生する問題があまりにも大きすぎるから」
 
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「あれって全世界を敵に回すような気分だよね」
と千里が言う。
 
「そして元の性別に戻そうとすると、それまで理解してくれていた友人たちからまで見捨てられるんだ」
と雨宮先生。
 
このあたりは当事者がみんな悩んでいる道だ。誰もが後戻りしたり足踏みしていたりする。
 
「私も男に戻るなんて言ったら死刑にするとマリから言われてたよ」
と私も言う。
 
「そりゃそうだろうね。だって女の子だという本人の主張を認めて、男の子には見せられないようなものを随分見せていたのに、唐突にやはり男でしたと言ったら、痴漢の大罪人」
と樹梨菜さん。
 
「いっそ性別保留あるいは変更準備期間みたいなの作ったらだめですかね。その期間は男でも女でもどちらの服を着てもいいというのは?」
と人事部長が言う。
 
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「それはむしろ強制的に入れてもいいかもね」
と蔵田さんが言った。
 
「性別移行猶予期間みたいな感じで。最終的に変更するまで3ヶ月か半年くらいを猶予期間にする」
 
「それで本人がやはり新しい性別でやっていく自信が無いということになればキャンセルしてもいいと思う」
 

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