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■夏の日の想い出・鈴の音(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-08-24
 
2007年7月22日(日)。高1の夏。
 
私はハンバーガー屋さんのバイトを13時に終えて、いつものようにハンバーガー屋さんの制服から学校の女子制服に着替え、お店を出た。
 
普段はこの後、同僚の和泉と一緒にカラオケ屋さんに行って歌うのだが、この日は和泉はふだん出入りしているプロダクション(∴∴ミュージック)で臨時の仕事を頼まれたということで、そちらに行ったので私はひとりで町を歩いていた。
 
でも女子制服で出歩くのにも随分慣れたなあと思う。
 
そういえば1年前はコーラス部の友人・倫代にうまく乗せられてかなりの日数セーラー服で学校に出て行ったなというのを思う。あの時はけっこう自分としてはおどおどしていたのだけど、高校に入ってから、こうやって女子制服を着ているのは自主的に始めたものなので、その分開き直りができたかなという気もする。
 
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いっそ、和泉や詩津紅から唆されているように、学校にもこの制服で出て行っちゃおうかな、とも考えるが、まだその勇気は無い。
 

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少しぼんやりとして歩いていたら、バッタリと蔵田さんと樹梨菜さんのカップルに遭遇した。樹梨菜さんは男装していてデート中のように見えたので、私は会釈だけして通り過ぎようしたのだが、
 
「こらこら」
と言って、蔵田さんに後ろから抱きとめられる。
 
「挨拶だけで通り過ぎるのは無しだぞ」
と蔵田さん。
「えっと、お邪魔かなと思ったので」
と私。
「うん。邪魔だ。あっち行けよ」
と樹梨菜さん。
 
「洋子、お前さぁ、ちょっとゴスロリの服とか着たくないか?」
「ゴスロリって、どんなのでしたっけ?」
「お前、デスノート読んでない?」
「何でしたっけ?」
「知らないの〜? 少年ジャンプ見てない?」
「少年誌は読まないので」
「デスノートに出てくる、弥海砂(あまね・みさ)って知らない?」
「あ、そういえば聞いたことあるような」
 
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「その海砂ちゃんが着てるのがゴスロリだよ」
「へー」
「樹梨菜に着せようとしたらそんな女みたいな服着たくないというし」
と蔵田さん。
「孝治が着ればいいじゃん」
と樹梨菜。
「俺が着たら、俺が鑑賞できないじゃんか」
と蔵田さん。
 
そういえば蔵田さんも女装するみたいだけど、実際に女装している所は見たことないなと私は思った。182cm,98kgという元バレーボール選手でもある蔵田さんの体格・筋肉質の体形を考えるとあまり見たくない気もするのだが(但しバレーをしていた頃は80kgくらいだったらしいので、恐らく20kg分くらいは筋肉ではなく贅肉かもしれない)。
 
「まあ、そういう訳でちょっと来い」
「えー!?」
 

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ということで、私は結局蔵田さんに連れられて都心に出て、ゴスロリの服を売っている店に連れていかれ、私のサイズに合う服を買って、その場で着替えさせられ、結局そのまま3人でスタジオに入った。
 
「なんでこんな服を着るんですか〜?」
「いや、お前、結構ゴスロリ似合ってるよ」
「そうですか?」
 
「(ζζプロの)観世専務が、今度の松原珠妃の曲は『ゴツィック・ロリータ』というタイトルにしよう、と言ってさ」
「はい」
「じゃ、後はよろしくと言われてしまったんだよ」
「あぁ」
 
「という訳で、お前のゴスロリ姿を鑑賞しながら俺は曲を書く」
 
と言って蔵田さんは私にその場で立たせたり、あれこれポーズを取らせて五線紙に何やら書き込み始めた。椅子に座ったり、歩けと言われたり、楽器を借りてきてギターやヴァイオリンを弾いている所、歌っている所を見せる。唐突に男装の樹梨菜さんが私をレイプしようとしているシーン!?とかまでやらされた。
 
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「今ちょっとマジになりかけた」
と樹梨菜さん。
「今ちょっと怖かったです」
と私。
 

ヌードも見たいなどと言われるので、蔵田さんならまあいいかと思って裸になった。本当は15歳の女の子を裸にするなんて、マスコミに知られたら半年くらい謹慎をくらいそうだ。
 
「洋子、おっぱい小さい」
「男の子だから仕方無いですよ」
「小学生の頃からほとんど成長してない」
「だって男の子なんですから」
「だけどチンコ無いじゃん」
「隠してるんですよぉ」
「俺たちにまで嘘付かなくてもいいよ」
 
オナニーしてみろなんて言われる。
 
「私、セクハラで訴えようかなあ」
「いいじゃん、別に。俺たちの仲なんだから。樹梨菜とのセックスでもいいけど」
と言うと、樹梨菜さんが、絶対やだと言う。彼女はFTMだが、女性は恋愛対象ではないらしい。むしろ女の身体が嫌だから、その嫌な女の身体を持っている人には性的な関心も持てないらしい。
 
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「じゃ、やはり洋子のオナニーで」
「ポーズだけじゃダメですか?」
「実際に恍惚の表情になっているところが見たい」
 
仕方無いので、椅子に座りタオルを掛けてその付近を隠した上で、あそこに右手の指を当て、グリグリと回転運動を掛ける。私のおちんちんは当時、往復運動を掛けると勃起するのだが、回転運動では熱くはなるものの堅くはならなかったし、大きくもならなかった。性的な興奮のチャンネルが違うのを感じていた。しかし、樹梨菜さんまでじっと見てる。やだなあ。でも見られていると思うと結構マジで興奮してしまった。
 
「今、逝ったよな?」
「逝っちゃいました」
「よし」
 
と言って、蔵田さんは歌詞とメロディーを同時に書いている。
 
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でも私、今逝ったのに精液出なかった。何でだろ?と私は少し不思議に思っていた。女性ホルモンの摂取しすぎかなあ、などと不安になる。前回は女性型のオナニーをしても勃起しないまま射精したのに。(実際にはこの時は特殊な状況だったことからドライで逝ったのだと思う)
 
なお、この部分は松原珠妃が音源制作の時に歌うのを嫌がったものの、発売後は女性ファンたちの間から「子宮で感じる」という評価をされたところである。部分的にも「女の心」を持っている蔵田さんだから書けた歌詞だと思う。しかし歌詞自体に性的な描写は全く無いのでR18とかにはなっていないし中学や高校でも学校放送での禁止などの処置はとられていない。
 
「濡れただろ?」
と蔵田さんは一通り書き上げてから訊く。
 
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「濡れるような器官がありません!」
「お前、ヴァギナはまだ作ってないの?」
「私男の子ですよー」
「今更そういう無意味な嘘は付くな」
と蔵田さん。
 
「この身体を見て男と思えってのは不可能だよね」
と樹梨菜さんまで言う。
 

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「よし。結構いい感じのモチーフが出来たなあ」
「良かった。それで終了ですか?」
「いや。全部で12曲作らないといけないから。シングルとアルバムを同時発売するんだよ。アルバムにはシングルの曲を別テイクで収録する」
 
「いつまでにですか?」
「5日はドリームボーイズのライブだからさ。その前日、4日までに向こうに渡したい」
「かなり短期間ですね」
「それで最終的なスコア譜を作成させるのに3日くらいかかるからさ」
「えっと・・・」
「ピアノ譜のレベルまで今月中に仕上げたい」
「今月中って、10日しかないですよ」
「うん。だから頑張ろう」
「お疲れ様です。頑張ってください」
「まさか、洋子帰られると思ってないよな?」
「私、何するんですか〜?」
 
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「試唱」
と蔵田さんと樹梨菜さんは言った。
 

それで母に電話し、しばらく松原珠妃絡みの蔵田さんの用事で帰宅できないことを連絡する。またバイト先にも急用で半月ほど休むことを伝えた。
 
結局樹梨菜さんも女装させられる。本人はブツブツ言っていたが、全部私がモデルになるのも、樹梨菜さんとしてはあまり面白くないようなので、微妙な線である。私と樹梨菜さんは交替で、あるいは絡む形で、いろんなシーンを再現して、蔵田さんの発想のお手伝いをし、またふたりで試唱もした。
 
キスシーンまでやらされた。キスは一応寸止めだったのだが「寸止め疲れる。やっちゃわない?」などと樹梨菜さんは言っていた。でも結局ふたりとも裸になって抱き合うところまでやらされた。セックスだけは樹梨菜さんが断固拒否したおかげで、しなくて済んだが、女の子同士のセックスってどうするんだろと私はちょっとだけ興味を持った。
 
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試唱については、私にしても、樹梨菜さんにしても、男声・女声の両方を使えば結果的にかなり広い音域が出るので、とんでもない声域を持っている珠妃の曲の試唱ができるのである。でも樹梨菜さんの男声を聞いてるのは多分、蔵田さん以外では私だけなんだろうな、などと作業をしていて思った。
 

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この蔵田さんの作曲作業は26日の木曜日まで掛かった。途中、ドリームボーイズの大守さん、珠妃の後輩の谷崎潤子ちゃんも手伝いに来てくれた。しかしそれでも、よく5日で12曲も書けるものである。蔵田さんのこういう集中力は凄いといつも思う。
 
「お疲れ様でした」
「何とかできたね」
「じゃ、洋子、後はよろしく」
「へ? 私何をするんですか?」
「だってこの譜面、アレンジャーにこのまま渡してスコアになると思う?」
「うーん。ちょっと厳しいかも。蔵田さん独特の省略記号が大量に入っているし、TT(『適当に展開して』という蔵田さん独自の記号)は意味が分かってもどう展開すればいいのか、アレンジャーさんには分かりませんよ」
 
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「ということで、それを整理するの、洋子の仕事な」
「そんなあ」
「今月中に整理して俺の居る所に送って」
 
「居る所って御自宅じゃないんですか?」
と私。
 
「実は明日から樹梨菜の実家に行って、親父さんに会ってこないといけない」
と蔵田さん。
「僕も実家じゃ、女の振りしないといけないから面倒だけどね」
と樹梨菜。
 
「樹梨菜さん、実家はどこでしたっけ?」
「九州の武雄(たけお)ってとこなのよ」
「それ、有田の近くでしたっけ?」
「ピンポーン」
「住所は後で携帯に送っておく。8月1日まで滞在する予定だから、それまでによろしく」
「というか、1日にはアレンジャーに渡さないといけないですよね?」
「できたら7月31日までに」
 
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「分かりました」
私は心の中で半ば悲鳴をあげながら返事をした。
 

その日は取り敢えず自宅に戻り、母に礼を言ってひたすら寝た。
 
翌日27日。楽譜の整理作業をするのにどこかで集中してやりたかったので私はまた外出し、取り敢えず麻布先生のスタジオに行き、空いている部屋を借りて無音状態の中で集中して、その日の午前中2曲の譜面をまとめあげた。気分を出すのに、蔵田さんと一緒に作業した時に着ていたゴスロリの服を着て、弥海砂みたいにしたツインテールのウィッグまで付けているので、途中でのぞきに来た麻布先生が一瞬「誰?」と訊いた。
 
蔵田さんの「作曲」した譜面というのは細かなモチーフの連続で、目的の曲が40小節程度であれば、実際には半分の20小節程度しかない。そのバリエーションを考えて曲としてまとめるのが私の役目である。蔵田さんと組んで作曲作業を始めた頃は40小節の内の32-36小節程度まで蔵田さんが書いていたのだが、私の「補間」作業がだいたい蔵田さんの意図通りにできているというので、少しずつ私が書く割合が増えてきている気がする。それで最近は「補間」というより、むしろ「補完」になってきているなというのも感じる。
 
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