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■夏の日の想い出・鈴の音(2)

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取り敢えず2曲できた所で念のため蔵田さんに電話してみたら、まだ自宅を出る前ということだったので、スタジオのファックスを借りて譜面を送信した。
 
「いつもながら、よくできてるな」
と蔵田さんは電話してきて言った。
 
「ありがとうございます」
「洋子さ」
「はい」
「これだけ書けるなら、お前完全にゼロから自分の作品も書けるんじゃないの?」
と蔵田さん。
 
「それ何度か試してみたのですが、どうにも自分で納得のいくレベルに到達しないんですよね」
「それって、俺の作品を意識過ぎてるんじゃない? 俺の作品は俺の世界観。洋子は洋子なりの自分の世界観で曲を書けばいいんだよ」
 
「そうですね」
「何かきっかけがあればお前もブレイクするのかも知れないな」
「きっかけですね・・・」
 
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「あのさ、洋子。お前のヌード見た感じは既に性転換手術済みにしか見えなかったんだけど、本当にまだ手術してないのなら、やっちゃったら? それで絶対感覚が変わるから」
「ああ・・・」
 
それも実は高校に入った頃から考えていたことである。さすがに中学生では無理だが、高校生なら、探せば手術してくれる病院はあるはずだ。
 
「お前、性転換手術なんて200-300回受けられるくらい、お金はあるだろ?」
「300回も性転換してどうするんです!?」
 

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お昼を食べるのにスタジオを出て駅のそばにあるカフェに入り、窓際の席に座って、半分ぼーっとしながら、スパゲティ・カルボナーラを食べていたら、駅前に停まったバスから政子が降りるのを見た。
 
政子の自宅はこの駅からあまり遠くない距離にある。どこに行くのかな?と思って眺めていた時、唐突に私は彼女と話したい気分になった。
 
それで会計をして店を出て駅に入っていく。すると政子が駅員さんを捕まえて訊いている。
 
「羽田に行くには、お茶の水で乗り換えるんでしたっけ?」
 
なぜそんな所で乗り換える!?
 
「新宿か神田で山手線に乗り換えて、浜松町まで行ってください」
「あ、そーか。ありがとうございます!」
 
私は政子に声を掛けようとしたのだが、その時自分が女装していたことを寸手で思い出した!
 
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やばー!
 
それで政子が切符を買って自販機を離れてから、自分も行って浜松町までの切符を買った。
 
どこかで男装に戻さないと会えないなと思いながら、政子から少し遅れて改札を通り、結局一緒の電車に乗る。割と近い距離に乗っているのだが、こちらがゴスロリ女装している上にツインテールのウィッグまで付けているので、政子は私が分からないようである。
 
携帯で盛んに何か打ち込んでいる。花見さんとメール交換しているのかなと思ったら、何だか少し嫉妬するような気分になった。私って彼女のこと好きになりつつあるのだろうかなどとも思う。私、女の子には興味無いはずなんだけどなあ。。。
 

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それで新宿で山手線に乗り換え、浜松町まで行ったのだが、そこでモノレールの方へ歩いて行っていたら、飛行機のチェックインの機械が並んでいる所を何気なく眺めていた時、思わぬ人と目が合う。
 
その人はこちらに寄って来た。
 
「ね、ね、柊洋子ちゃんだよね?」
「ご無沙汰してます。白浜さん」
 
それは&&エージェンシーの白浜藍子さんであった。
 
「洋子ちゃん、どこか旅行にでも行くところ?」
「いえ。空港を見物に行こうかなと思っていたんですが」
「今日明日時間がある?」
「はい。何か?」
 
「実はさ、Parking Serviceの営業で、これから九州まで行くんだけど、ダンシングチームの**ちゃんが急病で来れないのよ。洋子ちゃん、良かったら付き合ってくれない? ギャラは色付けるからさ」
 
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「九州ですか!?」
 
そんなことを白浜さんと話している内に政子はエスカレーターを登って行き、見失ってしまう。それで、白浜さんに付き合うのもいいかなという気分になってしまった。母に電話する。
 
「ごめーん。昨日までスタジオに籠もりっきりだったのに、急用で九州に行ってきたいんだけど」
「あんたも忙しいね!」
 
母はあまり無理しないようにねとだけ言って許してくれた。それで白浜さんに付いて行くと、旧知のParking ServiceとダンシングチームPatrol Girlsの面々が居る。
 
「お、冬子ちゃんじゃん!」
とParking Serviceのリーダー・マミカちゃん、Patrol Girlsのリーダー・逢鈴ちゃんから声を掛けられる。
 
「うまい具合に遭遇したから**ちゃんの代役」
「ああ、冬子ちゃんは代役の天才だから、行ける行ける」
「営業って聞いたけど、新譜のキャンペーンか何かですか?」
 
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「いや実は私たちが今年のインターハイのバスケット競技のテーマ曲を歌っているんで、そのバスケットの開会式で歌うんだよ」
「へー!」
 
「雨宮三森さんの作詞作曲で『走れ!翔べ!撃て!』という曲なのよね」
「雨宮三森って言ったら、元ワンティスだっけ?」
「あ、それ絶対に『元ワンティス』と言っちゃいけないんだよ」
「へ?」
「ワンティスは解散した訳ではないから単に『ワンティス』と言わないといけない」
「え?そうだったんだ?」
 
「うっかり雨宮さんの前で『元ワンティス』と言っちゃった子が、罰といわれてホテルに連れ込まれたという話」
 
私は眉をひそめる。
 
「それってただのレイプでは?」
「しー!」
「そんなこと言ったら、お怒りくらうよ」
「干されちゃう。あの人、業界に影響力大きいから」
「うーん。困った人だなあ」
 
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ちなみにこの時期、私は「モーリーさん」と既に知り合っていたのだが、その人がまさか雨宮三森先生とは、全然気付いていなかった。
 

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Parking ServiceとPatrol Girlsは、インターハイの行われる佐賀に行くついでに、九州各地でキャンペーンをして回るということだった。でも、私にはバスケの開会式にだけ出てもらえばよいと言われた。
 
「ダンスのフォーメイションをバスケットっぽくまとめたんだけど、6人・6人でないと、うまくまとまらないのよね」
「でもバスケって5人なのでは?」
「Parking Serviceは6人だし」
「確かに」
 
「**ちゃんが行けないという連絡が入って、OGの**ちゃんに連絡したら、良いけど、明日は別件の仕事が入っていて出られないというのよね」
「でも明日が本番なんですね」
「そうなのよ! だからどうしよう?と思っていた所で洋子ちゃんに会ったのは千載一遇という感じ」
「その後は**ちゃんに入ってもらうから」
 
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それで彼女たちと一緒に福岡空港行きに乗り込む。私は政子はどこに行ったのかなあなどと思いながら、逢鈴と機内でおしゃべりをしていた。
 
インターハイは佐賀と聞いたので、佐賀市に行くのかと思ったらバスケットは佐賀市ではなく唐津市だと言われる。それで福岡空港から唐津行きの電車に乗り継いだ。
 
「明日からの移動にはマイクロバスをチャーターしているんだけど、今日は電車で」
 

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明日のバスケットの開会式は唐津市内の体育館で行われるのだが、その関係で唐津市街地のホテルはバスケットの選手で埋まっているということで、唐津から更に路線バスに乗り、朝市で有名な呼子の旅館にその日は投宿した。
 
「洋子ちゃんの帰りの航空券を手配するけど、明日帰る?」
「開会式は何時ですか?」
「午前中」
 
「だったらついでに寄る所があるので、オープンにしておいてもらえませんか?」
「いいよ」
 
その時私が思ったのは、このインターハイの陸上に出場する、中学の時の先輩・絵里香さんを激励しに行こうというのと、武雄まで行って、松原珠妃の楽曲の譜面を蔵田さんに渡さなきゃということであった。
 
白浜さんに頼んで宿を調べてもらったら、佐賀市内はインターハイの選手で埋まっているものの、武雄には宿の空きがあるということだったので、それを押さえてもらった。8月1日チェックアウトにしておく。それまで武雄で宿に籠もって楽譜を仕上げることにする。絵里香さんも確か1日に佐賀に入ると言っていたから、そちらが終わってから会いに行けばいい。
 
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この27日の晩も私は譜面のとりまとめをしたかったのだが、ここ数日の作曲作業の疲れが出たようで、(部屋付きの)お風呂に入った後は、他の子とおしゃべりした記憶も定かでないくらい、すぐに眠ってしまい、起きたらもう朝であった。
 

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明けた7月28日(土)。
 
新鮮な玄界灘の海の幸をたっぷり使った朝御飯に舌鼓を打ってからマイクロバスに乗り込み、唐津市街地に入る。ここで今回の九州キャンペーンに同行してくれるレコード会社の九州支店の担当者さん、及び補助スタッフさんたちと合流した。女性のユニットというのに配慮してスタッフも全員女性である。結果的に男性はマイクロバスの運転手さんだけである。
 
開会式の行われる体育館に入る。2階の事務室から選手入場を見る。
 
「凄いなあ。なんか格好いい。私たちと同年代の子たちだよね」
とマミカが言う。
 
「向こうから見るとマミカちゃんたちを凄いなあ、自分たちと同年代なのにと思っているかもよ」
と言って私は微笑んだ。
 
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「そうかもね!」
 
「みんな、それぞれ自分の才能が与えられた分野で頑張ればいいんだよ。あの選手たちはバスケットの才能があるんだし、マミカちゃんは歌の才能があるんだし」
 
「私の歌が下手なのは分かってるくせに」
「そういうフォローのしようがない発言しないでよ」
「あははは」
 

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開会式は、優勝旗の返還、偉い人のお言葉、そして選手宣誓、と進んでいく。そして一通り終わった所で、Parking Serviceのステージである。
 
私たちはステージに走り出して行き、マミカが「こんにちは! Parking Serviceです。ちゃんと聴いてくれないと逮捕しちゃうぞ!」と、決まり文句を言って歌い出す。伴奏はマイナスワン音源である。
 
Parking Serviceのダンスチームに参加するのは初めてではないのでたいていの曲は踊れる自信があったのだが、『走れ!翔べ!撃て!』は初めてなので、朝から逢鈴にビデオを見せてもらっていた。確かにバスケットのドリブルをしたり、シュートをしたりする動作が入っていて複雑である。Parking Servieの6人とPatrol Girlsの6人とで、各々1on1をやるような動作が間奏部分に入っていた。そして私は踊りながら思っていた。
 
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この曲って凄くセンスが若い!
 
しかも何だか未熟な感じさえする。これって30歳近い?ベテランの雨宮さんの作品とは思えない。実は10代のゴーストライターではないかという気がした。そしてこのくらいの曲なら自分でも書けそうな気がしたのである。
 
私は踊りながら考えていた。
 
やはり蔵田さんみたいな凄い人の作品に並ぶような作品を自分が書ける訳無い。もっと等身大の歌を書けばいいのだということを。
 
それはこういう「若い曲」を自分でパフォーマンスしていて、初めて認識したことであった。
 

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