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■夏の日の想い出・鈴の音(4)

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「あれ? 他にも人がいたんですね。誰もいないかと思った」
「こんばんは。高校生さんですか?」
と私は焦りながら、声色を使って答える。
 
「ええ。こんばんは。諫早のお祖母ちゃんちに行くつもりだったんですけど、武雄温泉でホームに降りて自販機でジュース買ってたら、乗ってた特急が発車しちゃって」
 
ああ、政子らしいと思う。
 
「それは大変でしたね。最近の列車って停車時間が短いですもんね」
「そうなんですよねー。荷物は全部列車の中。駅で相談して連絡してもらって荷物や切符は確保してはもらったんですけど、小銭入れと携帯しか持ってないので、明日親戚の人に荷物を受け取ってこちらまで持って来てもらうことにして、今夜はここに泊まることにしたんですよ。だから宿代も明日にならないと払えない」
 
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「いや、ほんとに大変でしたね」
と言いながら、私は何か違和感を感じていた。少し考えていて、そのことに気付く。
 
「あのぉ、諫早に行くとおっしゃいました?」
「はい」
「なんで、武雄温泉を通るんです?」
「ああ、それ親戚の人からも言われました。なんか博多を出る時、長崎行きと佐世保行きが連結してたみたいなんですよ」
 
長崎行きの「かもめ」と佐世保行きの「みどり」は《二階建て列車》として鉄道好きの人の間では有名である。これに更に「ハウステンボス」まで連結されて《三階建て列車》になっている場合もある。諫早に行くには長崎行きの「かもめ」に乗る必要がある。
 
「佐世保行きの方に乗っちゃった?」
「そうみたい。私、全然気付かなかった」
 
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両者を分離する肥前山口では車内アナウンスがあるだろうから、たいていの人はそこで気付くと思うんだけどな。多分政子のことだから、ボーっとしていてそのアナウンスをちゃんと聞いていなかったのだろう。
 

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政子とはその後は割とふつうの世間話もした。列車にユニフォーム着ている人がたくさん乗っていたというので、今インターハイをやっているんですよと言うと全然知らなかったと言う。
 
「誰か知り合いが出てます?」
「ああ、はい。陸上の1500mに先輩が出るんですよ」
「すごーい。1500mって、どのくらいの距離を走るんですか?」
 
1500mは1500mなんだけど!?
 
「あ、えっとトラック4周より少し短いくらいかな」
「へー。トラックって375mくらい?」
「あ、いえ400mですよ」
 
と答えながら、私は今1500÷4を一瞬で暗算したのか。凄いな、この子と思っていた。
 
結局政子とは20分近く話していたが、30代の女性グループが5-6人で露天風呂に来たタイミングで
 
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「それじゃまた」
と言って、顔を見られないように気をつけながら出て、急いで脱衣場に抜け、服を着て部屋に戻った。
 

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部屋に戻ってから露天風呂で月を見ながら思いついたメロディーを急いで書き留める。ついでにそこから展開していって、ABABCACという56小節の歌に仕上げた。こういうモチーフから曲を作り上げること自体は、蔵田さんの作曲のお手伝いで、いやというほどやっている。
 
その曲を仕上げた余韻に私はしばし酔っていたが、ハタと気付く。
 
大変だ!静花さん(松原珠妃)に渡す曲を10曲しあげないといけなかったんだった!!
 

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それで私は近くのコンビニに行って、おやつと飲み物をたくさん買って来て、曲のまとめ作業を始めた。
 
その時、私は何か不思議な感覚を覚えていた。
 
なんか・・・・
 
普段より、スイスイ行くような気がする!?
 
私は月末までに10曲のとりまとめ作業をしなければならないのだが、その晩、深夜3時までに2曲のまとめが終了し、仮眠して起きた(29日)6時頃から作業再開して、お昼までに更に3曲まとめることが出来た。こんなハイペースで作業ができるとは思ってもいなかった。
 
旅館に付属している割烹料理店でランチを食べた後、また部屋に籠もって作業を続ける。さすがに疲れが出てきたので、1曲だけまとめてから仮眠する。目が覚めたら夕方だったので、またお風呂に入って来てから作業再開。深夜までに2曲まとめてこれで8曲である。
 
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コンビニで食料を買ってきてから、朝まで頑張って残り2曲を書き上げた。日付は7月30日である。優秀優秀! 31日ぎりぎりまで掛かるかと思っていたのだが、1日半の余裕で仕上がってしまった。
 
そして私は悩んだ。
 

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蔵田さんに電話する。
 
「お早うございます。実は残り10曲分の整理作業が終わったのですが」
「もう終わったの!?」
「なんか調子がいいんですよ。それで実は最初にお送りした曲をもう一度手直ししたい気分になって」
「ほぉ」
「『ゴツィック・ロリータ』をもう一度整理し直させて頂けませんか?」
 
「だったらあらためて整理して仕上がったら、こちらにファックスしてよ。それで前のと新しいのと、俺が判断して良い方を使う」
 
「分かりました。でも今武雄温泉にいるんですけど」
「こちらに来てるの!?」
「ちょうど別件で仕事があったもので」
「どこかホテルに泊まってる?」
「○○館です」
「いい所に泊まってるじゃん! じゃ仕上がったら連絡してよ。迎えに行くから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
 
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それで私は朝御飯を食べてきてから、ブラックコーヒーを飲んで眠気を覚まし、あらためて最初に書いた曲、『ゴツィック・ロリータ』の楽譜編集作業を始めた。
 
何かこの九州旅行で自分の感覚が変わったような気がした。それで東京のスタジオでまとめ作業をした時には「これで最高」と思っていたものが最高とは思えなくなってしまったのである。
 
自分で納得いくまで試唱しては調整し、また音符を修正しては歌ってみる。しかしどうも微妙な所が「かゆい所に手が届かない」ような感覚である。
 
私はフロントに電話してみた。
 
「この辺に大きな電器店とかありますか?」
「ベスト電器がございますが」
「ちょっと行ってきたいのでタクシー呼んでもらえます?」
「かしこまりました」
 
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それで私はベスト電器まで行き、電子キーボードを1個買って来た。それで歌うだけでなく伴奏を弾いてみて、それで更に調整を掛ける。
 
結局その日の夕方まで掛けて、私は『ゴツィック・ロリータ』を自分でもかなり納得のいく線まで仕上げることができた。
 

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蔵田さんが迎えに来てくれたので、念のためキーボードも持ち、一緒に樹梨菜さんの実家に行く。樹梨菜さんが同じドリームボーイズのバックダンサーでサブリーダーの洋子ちゃんと紹介してくれたので、樹梨菜さんのお母さんは
 
「樹梨菜の女の子の友だちがうちに来てくれたの初めて!」
などと言って、歓迎してくれた。
 
ああ。樹梨菜さんは実質男の子だから、友だちもみんな男の子だったんだろうなと私は思った。
 
晩御飯も頂き、それを食べながら、蔵田さんは私の書いた譜面を読んでいる。
 
「洋子」
「はい」
 
「お前、何があった?」
「あの・・・何か変ですか?」
 
「違う。お前、物凄く進化してる。もうお前は俺の助手じゃない」
「はい?」
「1本立ちしていい、プロのミュージシャンだよ」
「えっと・・・・つまり首でしょうか?」
 
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「違う違う。こんな凄い弟子を手放さないよ。だけど、これからは自分の仕事を優先しろ。俺の助手よりな」
 
「自分の仕事と言われても・・・」
「すぐに仕事がもらえるようになるさ。取り敢えず、今後、お前の取り分は10%に上げるから」
「ありがとうございます」
 
「私は?」
と樹梨菜さんが言うが
「お前の分はそのまま。特に進化してないし」
とあっけなく蔵田さんは言った。樹梨菜さんは膨れっつらをしていた。
 
松原珠妃はこの年『ゴツィック・ロリータ』が『硝子の迷宮』以来2年ぶりのミリオンセラーとなりRC大賞の最優秀歌唱賞を受賞することになる。ちなみにこの年、津島瑤子も『See Again』で歌唱賞を受賞している。
 
松原珠妃と津島瑤子はどちらも木ノ下大吉先生の曲が出世作になった、いわば姉妹格の歌手同士である。この時、私はまだ『See Again』を書いた鴨乃清見という作曲家が、インターハイ・バスケットの開会式で自分がダンサーとして参加して演奏した『走れ!翔べ!撃て!』の本当の作曲家と同じ人であるとは、思いも寄らなかった。
 
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その晩は結局夜通し蔵田さんと2人で楽曲の検討を続け、私は2日連続の完徹となった。それで31日は朝旅館に帰ると、夕方まで半日眠り続けた。旅館の人が生きてるかどうか心配になり、何度か部屋の中に入って、私が息しているのを確かめたらしい。
 
8月1日の朝。旅館をチェックアウトする。結局予定通り28日から4泊したことになる。
 
さすがに今回は疲れたなと思いながら旅館の送迎バスに乗って武雄温泉駅まで行った。JRで佐賀まで移動すると絵里香さんにメールする。この日、インターハイの陸上に出場する絵里香さんが佐賀入りすると聞いていたのである。
 
お昼すぎに佐賀駅に到着するということだったので、私は駅内のトイレで男装に変更して彼女の到着を待った。
 
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ほんとに12時を過ぎてすぐ、絵里香さんは特急「かもめ・みどり」で到着した。
 
「お疲れ様です。おひとりですか?」
「うん。うちの高校からの参加者は私ひとりだけだから」
「でも凄いですよね。インターハイなんて。私には夢のまた夢って感じです」
「地区大会、都大会と勝ち抜いてやっとインターハイだからね。他の競技見た?」
 
「唐津のバスケットをちょっとだけ。開会式を見たんですけど、ここに集まった選手がみんな、各都道府県大会を勝ち抜いてきたのかと思うと、凄いなあと思いました」
 
「出て来ただけでも、みんな凄い選手ばかりだけど、その中で頂点を極める人たちがいるから」
「絵里香さんは頂点でしょ?」
「とてもとても。強敵がいっぱい居るよ」
「だって都大会で凄い記録出したんだから」
 
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「あれはまぐれだからねぇ。ところで冬」
「はい?」
「男の子の格好で良かったの?」
「なんでですか〜?」
 
「だって知ってる人のいない所でなら、女装しちゃえば女で通るよ」
「私、女装して人前に出る勇気無いです」
 
「それは絶対嘘だ」
「なんで信じてくれないんだろう」
「君は絶対女の子の格好でたくさん出歩いているに決まっているからだよ」
「そんなことできたらいいんですけどねー」
 
「まあいいや。東京に戻ったら、また女装させてあげるね」
「あはは、お手柔らかに」
 
宿舎で食べて下さいと言って、小城羊羹と、嬉野茶のティーバッグを渡して、握手して別れた。
 
 
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■夏の日の想い出・鈴の音(4)

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