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■夏の日の想い出・鈴の音(3)

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Parking Serviceの出番が終わって控室の方に下がる。次は地元の高校の吹奏楽部が出て、このインターハイ全体のテーマ曲『君色の風〜想〜』、ZARDの『マイ・フレンド』(スラムダンクのエンディングテーマ)、そして『走れ!翔べ!撃て!』
に最後は『若い力』を演奏した。
 
その吹奏楽部の演奏が行われている間、控室では次の出番になる、唐津くんちのお囃子の人たちが練習をしていた。私はその中の笛を吹いている人に耳を奪われた。
 
「なんか不思議な音がする笛ですね」
と私はついその人に語りかけてしまった。
 
「あ、興味ある?」
「ええ。私、横笛も大好きなので。去年京都に行った時も、横笛1つ買って来て練習してるんですよ」
 
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「でも横笛って地域地域で全然違うでしょ?」
「そうなんですよね〜。なんかピッチとか音階も全然違うし」
「そうそう。その地域の音や節があるからね」
 
「この笛、不思議な音色がしますね。なんか格好良い」
「これ、この音が出るようになるまで、結構練習が必要なんだよ」
「へー! やはりお兄さん、小さい頃から吹いてたんですか?」
「うんうん。保育所の頃から吹いてたよ」
「すっごーい!」
 
笛の人は私が「お兄さん」などと言ったので結構気をよくしたようで、饒舌になる。この年代の人が実際問題としてParking Serviceなんて知っているとは思えないので、私のこともアイドルと思っているかも知れないなとチラっと思った。
 
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それで色々話してたら
「何なら1本あげようか?」
と言われて、予備の?笛を頂いてしまった。
 
「わぁ!ありがとうございます!」
「それ練習して、そのうちあんたたちのCDにもフューチャーしてよ」
「はい、その内入れます!」
 

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それでその人たちの出番が来て、ステージに出て行った後、試しにその笛を吹いてみたのだが・・・・
 
音が出ない!
 
うーん。帰ってから練習しよう、と思って私は笛を自分のバッグに入れた。
 
彼らのステージが行われている間に「そろそろ出ましょう」と言われ、会場の外に出た。開会式が終わると選手たちも出てくるので、混乱を避けるため先に出ようということである。
 
マイクロバスに乗り込む。
 
「じゃ、洋子ちゃんは唐津駅で降ろせばいいかな?」
「はい、済みません。よろしくお願いします。それで唐津線で久保田に出ます」
 
Parking Serviceのメンバーはこの後、取り敢えずマイクロバスで博多に戻り、夕方から天神地下街でパフォーマンスということであった。夕方なら応援で入ってくれることになってくれている**ちゃんが間に合うらしい。
 
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それで駅の方に向かっていたら、途中で何か鈍い音がして、バスはスピードを落とし、脇に寄せて停まる。
 
「どうしました?」
「どうもパンクのようです」
「あらら。スペアタイヤはあるんですか?」
「あります。交換します。少しお待ち下さい。エンジン停めるので窓開けてもらえますか?」
 
エンジンを切ってエアコンが停まると、バスの車内は数秒で温室になる。
 

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運転手さんが降りてタイヤの交換作業を始めたようであるが、時間が掛かっているので、前の方に座っていた私とマミカが降りて様子を見る。運転手さんはスペアタイヤは取り出したものの、どうもジャッキアップに苦労しているようだ。これ時間掛かるかな?などと言っていた時、
 
「パンクですか?」
と声を掛ける中年の男性があった。一緒にユニフォームを着た女子が15-16人ほどいる。バスケの選手だろうか?
 
「ええ。でもこのジャッキ弱いもんで、なかなかうまく持ち上がらなくて」
「貸してください。でも乗ってる人は降ろした方がいい」
とその男性は言った。
 
それは私も言おうと思っていたことだったので、白浜さんに言って全員降ろす。そして、声を掛けてくれた男性が運転手さんと協力して、タイヤ交換を始めた。
 
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ユニフォームを着た女の子たちが騒ぐ。
 
「ファンなんですー」
などと声を掛けてくるので、メンバーは笑顔で握手をしている。
 
「サインもらえますか?」
などと言って、手帳にサインしてもらっている子もいる。
 

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「冬子ちゃん、列車の時刻は大丈夫?」
とマミカが私に訊いた。
「まだ大丈夫だよ。それに時間が掛かるようだったら、最悪、ここから歩いて行っても間に合うと思うから」
と私は答える。
 
そのマミカも何人かのバスケガールと握手をしたりサインを書いてあげたりしていた。
 
「そうだ。冬子ちゃん、さっき何か笛を吹いてたね」
とマミカが言う。
 
「これでしょ?」
と言って、私はさっき頂いてしまった唐津くんちの笛を取り出す。
 
「素朴で良さそうな笛だね」
「いいですね、いいですね、と言ってたら、1本もらっちゃった」
「凄い、凄い」
 
「でも実は私は横笛は苦手なんだよね」
と言って実際吹いてみせる。あまりまともに音が出ない!
 
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その時、バスケガールのひとりが
 
「あの、ちょっとその笛貸してもらえません?」
と声を掛けてきた。
 
「いいですよ」
と言って、私は笛の歌口をウェットティッシュで拭いて彼女に渡した。
 
すると彼女はその笛を構えて息を吹き込む。何とも言えぬ美しい音色が響く。あ!これさっきのお囃子の節じゃん。凄い記憶力だなと私は思った。でも何だろう。美しい音色だけど、さっきのお囃子の人が出した音色とは違う。笛は同じでも、吹き手によって音色は変わるんだな、というのを私はあらためて思った。
 
そうだ。だから私が自分自身で書く曲は、蔵田さんの曲とは違っていいんだ。
 
「ありがとうございました。これいい笛ですね」
と言って彼女は笛を返してくれた。
 
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「あなた上手いですね! 笛、色々なさるんですか?」
「ええ。篠笛、龍笛、フルートと吹きます」
「それで!」
「今日は笛はどれも持って来てないので、吹いてみせられませんけど」
「バスケの選手さんですか」
「はい」
「頑張って下さいね」
「そちらはデビュー前夜くらいの方かな。そちらも頑張って下さい」
「はい、ありがとうございます」
 
それで私は彼女と握手した。その時、私の心の中のどこかで小さな鈴の音がしたような気がした。
 
やがてタイヤ交換が終わる。私たちはバスケガールたちに手を振りバスの中に戻った。それで私は唐津駅で降ろしてもらい、武雄温泉駅までの切符を買った。
 

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列車の出発時刻まで30分ほどあったので、駅前の商店街で取り敢えずの着替えと手荷物を入れられそうなカバン、それに非常食を買ってきた。
 
列車に乗り込み、景色を見ながら揺られている内に、レールと車輪が作り出す「タタンタ・タン、タタンタ・タン」というリズムが、まるでドラムスの音のように思えてきた。そしてまるで空中のどこかから、そのリズムに合わせたメロディーが聞こえてくるような気がした。
 
私は五線紙を取り出すと、その聞こえてくるような気がしたメロディーを書き留めていった。
 
その曲は久保田のひとつ手前。小城(おぎ)駅に着いた時、ひととおりの完成を見た。小城羊羹で有名な町である。車窓から、田圃に多数の稲穂が見える。日本にはこういう美しい風景がまだまだ残っているんだなあと私はあらためて思った。
 
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そして私はその五線紙のタイトルの所に「花の里」と書いた。
 
うーん。まだまだ楽曲として未熟! でももう少し頑張れば《ボーダーライン》を越えられるかも知れない。そんな気がした。
 

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久保田で長崎本線の佐世保線直行の列車を待って乗り換え、30分ほどで武雄温泉に着く。龍宮城みたいな門が迎えてくれる。私は送迎のマイクロバスで予約していた旅館に入る。たくさん汗を掻いていたので、取り敢えず温泉に入りに行く。
 
着替えとタオルを持ち「→大浴場」の案内を見ながら廊下を歩いて行く。エレベーターに乗って6階まで上がる。そして暖簾が2つ並んでいる所で立ち止まり、しばし悩む。
 
むむむ。これはどちらに入ればいいんだ?
 
片方は「桐の湯」と書かれた白い暖簾、片方は「桜の湯」と書かれた黄色い暖簾である。
 
私が悩んでいたら、そこに浴衣を着た従業員さんらしき人が通りかかる。
 
「お客様、お客様は桜の湯でございます」
「ありがとうございます」
 
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と私は笑顔で答えて、桜の湯の黄色い暖簾をくぐったが、その中が果たして男湯なのか女湯なのか、若干の不安があった。
 
しかし中に入ると、60代くらいの感じの女性(胸があるから多分女性)が3人ほど、上半身裸のままでおしゃべりしていたので、私は女湯に誘導されたんだなと認識した。
 
取り敢えず私は女に見えたんだなと安心するが、あらためて思う。
 
確かに桜と桐では桜の方が女性的なイメージかも知れないけど・・・分からないよう!これ。
 

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私はその女性たちに一礼してから、ロッカーの戸を開けて、着替えを入れ、服を脱ぎ始める。全部脱いで浴室に行こうとした所で、そのおばちゃんたちから声を掛けられる。
 
「あんた、どこから来なさった?」
「こんばんは。東京から来ました」
「ああ、なんか垢抜けてると思った」
「あんた、ウェスト細いね」
「太らない体質みたいで」
「でも、おっぱい小さいね」
「お父さんに似たんです」
 
と言ったら、何だか大笑いしていたので、その間に一礼して中に入った。
 
身体を洗って浴槽に浸かるとほんとに身体の疲れが取れていく感じだ。
 
あれ?そういえば温泉に入るのは久しぶりかなと考えた。昨年の夏ドリームボーイズのキャンペーンとPV撮影で和倉温泉に泊まって以来だというのを認識する。でも高校に入ってからは初めての温泉だ!
 
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でも温泉とか銭湯に入るといえば、もう女湯に入るのが普通の感覚になっちゃったなと思う。今更男湯には入られないけどね! おっぱい結構膨らんできてしまったし。
 

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露天風呂もあるので、そちらにも行ってみる。ここは6階なので展望が良い。東の空から、まん丸に近い形のお月様が登ってきている。今夜は十五夜くらいだろうか、その少し前だろうかなどと考えている内に、どこからともなくメロディーが浮かんでたきた。
 
えーん。今書き留められるようなものがないぞ!? と焦る。
 
私はそのメロディーを忘れないように、ドレミで復唱しながら頭に刻みこんだ。
 
このくらい復唱しておけば何とかなるかなと思っていた時、露天風呂に若い女性が入って来た。月明かりでその顔が見える。私は「うっ」と声をあげそうになった。
 
政子だ!
 
きゃー。こんなところで、しかも女湯に入っているの見られたら、最悪警察に通報されるぞと焦る。
 
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しかし私がいる所はちょっと陰になっているせいで、どうも向こうはこちらの顔までは判別できないようである。
 
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■夏の日の想い出・鈴の音(3)

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