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■夏の日の想い出・食事の順序(8)

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和泉はそう言ったのだが、質問が出る。
「黒木というのはトラベリングベルズのSHINさんのことですか?」
「そうです。黒木信司さんです」
「黒木さんが作曲なさるんですか?」
 
「KARIONの楽曲で、櫛紀香さんの詩にも福留彰さんの詩にも、TAKAO名義で曲を付けていたのですが、実際にはこれまでも、福留さんの詩には相沢孝郎さん、櫛さんの詩には黒木信司さんが概ね曲を付けていたんです。実際には印税をトラベリングベルズの全員で共有したいということで、リーダーの相沢さん名義にして印税は山分けしていました。でもお互いの責任を明確にした方が競いあえるということで、今回からは本来の作曲者の名義にすることにしました。なお過去の作曲者に関しても既にJASRACの登録を変更しています」
 
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この問題は翌日の新聞にもこの件単独で記事を作成したところが数社あった。
 
「アルバム制作に専念なさるのでしたらKARIONのツアーはどうなりますでしょうか?」
 
「夏のツアーは予定通り実施します。詳細は金曜日までには発表しますが、年末はツアーはせずにどこかの地区で単発の公演をするつもりでいます」
 
「夏のツアーの時期は多分ローズ+リリーの方はアルバム制作で多忙だと思うのですが、らんこさんのスケジュールは大丈夫ですか?」
 
「ローズ+リリーと私は別に関係無いと思いますが」
と私は笑顔で答えた。
 

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今回のKARIONのシングルに収録された曲は『コーヒーブレイク』(泉月)『夕映えの街』(照海)『恋の足音』(櫛)の3曲である。
 
『恋の足音』が櫛紀香さんの作品ということで、さきほど和泉が説明した内容から、てっきり櫛紀香作詞・黒木信司作曲かと思い込んだ記者もあったようだが、和泉が《櫛紀香作詞作曲》であることを注意した。
 
3本ともにPVが作られており、先週末からテレビスポットや動画サイトで流されている。
 
『コーヒーブレイク』ではKARIONの4人がコーヒーを飲んでいるが、美空だけ巨大なカップである。コーヒー豆を挽くのが光帆でサイフォンで煎れるのが音羽、コーヒーを持ってくるのがマリとケイ、ということで08年組総出演のビデオになっている。私はKARIONの蘭子としてテーブルに座ってコーヒーを飲みながらおしゃべりしているし、ローズ+リリーのケイとしてウェイトレスさんもしている。実際の撮影の時は夢美が私のスタンドインを務めてくれている。この時期、夢美はKARIONの重要なスタッフになりつつあった。
 
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『夕映えの街』は醍醐春海がこの曲の着想を得たという、千葉の玉依姫神社で撮影を行った。神社の裏手に4人が佇み、夕日を背景に各々楽器(和泉ギター、小風ギター、美空ベース、蘭子ショルダーキーボード)を弾いているシーンを撮影している。これに千葉市内の夕暮れ時の映像をミックスしている。
 
『恋の足音』はためらいがちに男の子に迫っていく女の子の姿を下半身のみ映している。実際に出演しているのは女の子は小風で、男の子は櫛紀香さん自身である。バスケットボールをドリブルしているシーンが出てくるが、これは『恋のブザービーター』で頼んだ美空の友人のバスケ選手にまたお願いしたという話であったが・・・つまり醍醐春海こと千里である!
 
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この記者会見の翌日・土曜日、私は政子と一緒に少し良い服を着て帝国ホテルに出かけていった。この日、葵照子(蓮菜)の時間が取れるということで一緒に会食をすることになったのである。葵照子・醍醐春海ペアに会えるということで、和泉たちも来ると言い、それに★★レコードの氷川さんも参加して合計8人による会食となった。
 
但し、入るのは前回千里と入った高級フレンチレストランではなく、今回は和食の店である。あまり他の客に見られないように個室に案内してもらう。お勘定はレコード会社持ちで、取り敢えずおひとり様2万5千円の懐石料理を頼んでいるが、氷川さんは美空や政子の前で「天麩羅やお刺身など、自由に追加で注文していいですから」などと、私にはとても言えないセリフを言って、ふたりがワクワクした目をしていた。和泉も頭を抱えていた。
 
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最初に、初対面となった蓮菜・千里に、和泉・小風が名刺を交換して握手をした。
 
「少し関係を整理しておきましょう」
と氷川さんは言う。
 
「色々なものの発端になっているDRKに、葵さん・醍醐さん、それに美空さんが居たんですよね?」
「そうでーす」
「女子高生バンドだったんでしょ?」
「そそ。メンバーはピーク時には15人まで膨れあがってる。プロデューサー役の男の子を入れれば16人だけどね」
 
「鮎川ゆまさんが、鍵を握る人物のひとりのようなのですが、DRKが発端になりデビューすることになったのがLucky Blossomで、鮎川さんはそのサブリーダー。でも鮎川さんとケイさんって、おふたりともドリームボーイズのバックダンサーだったんですね」
「ええ、ゆまとは長い付き合いです」
 
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「鮎川ゆまさんと近藤七星さんが元同級生で、七星さんは現在ローズ+リリーの事実上のサウンドプロデューサー役」
「私とマリの理解者です」
 
「醍醐春海さんの妹さんがリーフ、別名大宮万葉さんで、スイート・ヴァニラズの曲や槇原愛の曲を書いていますが、彼女は鮎川ゆまさんの生徒なんですよね」
「姉妹で2人とも作曲家って凄いですね」
「しかしゆまさんは、いろんな人とつながってますね」
「今頃くしゃみしてますね」
 
「鮎川さんの先生が雨宮三森先生ですが、雨宮先生は、葵さん・醍醐さん、ケイさん、にとっても先生なんですよね?」
 
「そうなんですけど、ごく最近までそのことをお互いに認識してなかったのですよ。私も鮎川さんとはLucky Blossomの結成の頃にはお会いしたのですがその後は全然交流が無かったし、ケイさんが雨宮先生と関わっていたというのも、ごく最近まで知らなかったんですよね」
と千里は言う。
 
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「こちらはつい先月まで知りませんでした!」
と私は言う。
 
私と千里はふだんはお互いに呼び捨て・ため口だが、この場では氷川さんがいるので、業界的に上位の私に「さん」を付け敬語を使っていた。ただし、この日は話が進むにつれ、次第にお互いいつもの口調になってしまった。
 

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「雨宮先生って男の娘を育成する趣味に燃えてたんじゃないかなあ」
と政子が発言する。
 
「ケイでしょ、醍醐さんでしょ、花村唯香でしょ、新田安芸那でしょ。特に言ってなかったけど、多分、近藤うさぎも関わってるよね」
 
「え?醍醐さんって男の娘なんですか?」
と和泉がびっくりしたような声を出す。
 
「生まれた時は男の子でした。でも性転換して戸籍も修正して今は完全に女になりました」
と千里は言った。
 
「うっそー!?」
「全然そんな感じに見えない」
 
と和泉と小風は本当に驚いた様子である。
 
「冬と千里さんって、たぶんどちらも幼稚園くらいのうちに性転換しちゃったんだと思う。でないと説明できないことが多すぎるんだよ」
と美空が言う。
 
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「私が性転換したのは大学2年の時だけど」と私。
「私が性転換したのは大学4年の時だけど」と千里。
 
「いや、どちらも嘘ついてる」
と政子が断定する。
 

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「政子さんが喜びそうなものを見せてあげよう」
と言って蓮菜が1枚の紙を取り出す。千里は手で額を押さえて苦笑している。
 
「何、何? 診断書」
「ん?」
「陰茎・陰嚢・精巣を認めない。CTスキャンで残留睾丸を認めない。大陰唇・小陰唇・陰核・膣を認める。尿道は通常の女性の位置に開口している。外見的に女性型の性器に近似している。これって?」
 
「ああ、性別変更の申請書類に添えた診断書でしょ?海外で手術した場合、国内の病院でこれを取らないといけないんだよ。私も書いてもらったよ」
と私は言ったのだが、
 
蓮菜は
「日付を見るように」
と言う。
 
「ん?」
「平成18年11月13日?」
「平成18年って何年?」
「2006年」
「ちょっと待って。その時、千里何歳?」
 
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「まだ15歳だよ」
と千里は答える。
 
「それって、その時、既に性転換手術済みだったってこと?」
 
「まあ、それで私は女子バスケ部に登録されることになったんだけどね」
と千里は言う。
 
「千里、インターハイに行ったって言ってたけど、女子チームで行ったんだ?」
「うん。うちの高校、男子はインターハイに行ったことない。伝統的に女子が強い学校なんだよ」
「えーーー!?」
 
「まあこの診断書があれば女子チームに入れるだろうね」
「実は最初男子チームに入ったんだけど、私の性別を協会から疑問視されて、精密検査を受けさせられたんだよ。そしたらお医者さんがこれを書いたんで私は女子チームに移籍することになった」
 
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「じゃ、やはりそれ以前に性転換してたんだ?」
 
「ところが私が性転換手術を受けたのは、大学4年の時なんだよねぇ」
「じゃ、これはお医者さんを誤魔化して書いてもらったとか?」
 
「そんな誤魔化しとか利かないと思う。それからこれは誓って言うけど、私はインターハイに出た時は間違いなく女の子の身体だった」
と千里は言う。
 
「私はやはり千里は中学生くらいの内に性転換したんだと思う。だいたい高校の生徒手帳は性別・女になってたしね。実際、千里は高校ではほとんど女子制服を着ていたよ」
と蓮菜は言う。
 
「冬も生徒手帳は女で、高校はずっと女子制服だったんでしょ?」
と美空。
「私の生徒手帳は男で、男子制服を着てたよ」
と私。
 
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「それが嘘だということは私が証言する」
と政子。
 
「そんなあ」
 
「ただ、千里が中学くらいで既に性転換していた場合、一昨年タイに行って、何の手術を受けてきたのか私も分からないんだよね」
と蓮菜。
 
「うん、私自身もそのあたりがさっぱり分からない」
と千里本人。
 
「もしかして若くして性転換していたから、人工的なヴァギナが縮んでしまって、それを再手術で拡張したとか?」
「美空ちゃん、勝手な妄想をしないように」
 
「冬は小学生の内に性転換したんでしょ? 後で拡張が必要にならなかった?」
「小学生で性転換なんてしてないよ」
 

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千里の性別問題で話は随分盛り上がってしまったが、その後はローズ+リリー、KARIONのアルバム制作の話も、かなり突っ込んだ議論をした。お互いに非公開の仮MIDI音源(アルバム候補曲なので双方20曲程度)を聴き、どの曲がいいかというのも、お互いに言い合った。千里や蓮菜も遠慮無く意見を言ってくれた。
 
「これ、せっかく頂いたのにケチつけるのも何だけど、上島先生の作品はちょっと見劣りするよ」
「冬、この仮音源を先生に聴かせてごらんよ。きっと書き直してくれるよ」
「ちょっとさすがにそれは言えない」
 
などと言っていたのだが、氷川さんが
「それ、私から要求します」
と言ってくれた。
 
「上島先生は仕事のしすぎだよなあ」
「楽曲の品質が全体的に落ちている気がする」
「いや去年くらいが底だったと思う。今年は去年よりはいい。でも数年前からするとまだまだ」
「もっと仕事の量を絞った方が品質は上がると思う」
 
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「たくさん書きすぎて、多分自分が書いた作品を覚えてない」
「いや、覚えていたら次の作品を作れない。書いたら即忘れてると思う」
 
「樟南さんの作品もちょっと見劣りするな」
「いや、他の楽曲がハイレベルすぎるんだけどね」
「ごめーん。私がそれ調整する」
「ん?」
 
「樟南名義の作品って、半分は冬の作品だよね」
と千里が言う。
 
「うん、実はそう。樟南さんから頂くのはモチーフだけだからそれを構成するのは私の仕事」
「えーーー!?」
 
「蔵田さんの作品もでしょ?」と千里。
「今の発言、みんな聞かなかったことにして」と私。
 
「ほほぉ」
 
「ローズ+リリーのアルバムは14曲にするのか」
「今回、いろんな人から楽曲をもらうから、それでマリ&ケイの作曲能力が衰えてるとか言われないように、マリ&ケイを10曲入れる」
「なるほど」
 
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「こちらは何曲になる?」と小風。
「今回8組のソングライターさんで構成するからね。和泉+歌月を4曲入れて12曲になるかな」と和泉。
 
「いや、その計算はおかしい」
「あれ?」
「8組って誰々だっけ?」
 
「泉月(森之和泉+水沢歌月)、雪鈴(ゆきみすず/すずくりこ)、広花(広田純子/花畑恵三)、照海(葵照子/醍醐春海)、福孝(福留彰/TAKAO)、櫛信(櫛紀香/SHIN)、天万(岡崎天音/大宮万葉)、樟南、東堂千一夜」
と和泉が考えながらリストアップする。
「天万さんはスイート・ヴァニラズの代わりね」
 
「既に9組いるけど」
と小風。
 
「うっそー。なぜ〜〜!?」
と和泉は声をあげる。
 
「ああ。アルバムタイトルが四方八方だったから、歌うのは4人で、ソングライターは8組という趣旨だったのね?」
と美空。
 
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「いづみちゃん、マリ&ケイからも1曲提供しようか?」
と政子が言い出す。
 
「待って。ちょっともう1度計算してみる」
と和泉は珍しく焦って指を折っていた。
 
そんな議論をしながらも、政子と美空の食は進み、天麩羅の盛り合わせを何度もお代わりして、見ている蓮菜が目を丸くしていた。そしてお勘定はかなりのものになったようであった。
 
「美空ちゃんや政子さんにディナーをおごる時は、その前にラーメンでも食べさせておこう」
などと蓮菜は言ったが
 
「あ、ここに来る前にまぁりんとふたりでラーメン3杯ずつ食べてきたよ」
 
と美空が言うと、蓮菜は声も出ないようであった。
 
 
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■夏の日の想い出・食事の順序(8)

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