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■夏の日の想い出・食事の順序(3)

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夕食が出て来て話は続く。
 
夕食の後は、私たちの作品を離れて最近の若手作曲家、シンガーソングライターの論評に入る。これは長引きそうだと思ったが、果たして話は淀みなく続く。夜10時くらいにケンタッキーが出てくる。政子の胃袋をご存じだったようで、5人で話しているのにチキンは20ピース、ビスケット8個が並べられるがむろんきれいに無くなる。
 
夜2時くらいになって、お孫さんがドライカレーを作って持って来てくれたので、それを頂く。「お代わりありますから」と言ったら、政子は3回お代わりしていた。
 
「お孫さんは普通の会社勤めですか?」
「そうそう。この子は製紙関係の会社に勤めてる。子供にも孫にもひとりも音楽関係の仕事に就いたのは居なくてね」
 
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「私、レコード会社の人からアイドル歌手になりません?って高校の頃誘われたんですけど、私、すっごい音痴だから」
などと本人は言っていた。
 
深夜になると、話はベテラン作曲家たちの論評になる。これには私も和泉も氷川さんもかなり言葉を選んで応じる。うかつな事は言えない。政子は気軽に色々言うので、かなりヒヤヒヤしていたが、その反応を先生は心地良く感じていたようであった。
 
やがて朝5時くらいになって、奥さんが「冷凍食品で申し訳ないですけど」
と言ってピザを焼いて持って来てくれる。最初3枚焼いてきてくださったのだが、あっという間に無くなったので、追加で更にピザ3枚に、やはり冷凍のチキンボーンも2kgほど揚げて持って来てくださった。
 
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夜が明けてからは、DAWの話になる。先生はCubaseをかなり使いこなしておられるようであったが、その日はabletonLiveの話をかなりした。ああいう道具を使ってのライブ・パフォーマンスにかなり興味がおありのようで、
 
「一度自分でライブしてみたいんだけどね。ステージで倒れられたら困るから」
と言われて、松前君(★★レコード社長)からも吉田君(%%レコード社長)からも止められてるんだよ」
 
などとおっしゃる。
 
「DAW使ったライブはKARIONでは結構やったね」
と和泉が言う。
 
「うん。私がどうしても他のユニットとの兼ね合いでKARIONライブに出られなかった時、私の演奏パートをDAWから流したんですよね。元々生演奏を収録したものだから、よほど耳のいい人が聴かない限りは生演奏に聞こえるし、専門のサウンド技術者に操作してもらったので、他のパートの演奏者は普通に演奏できて、それにDAW側は高精度に同期してくれたんですよ」
と私も言う。
 
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「いつだったかはSHINさんが出だしをミスった時に、技術者さんが瞬間的に反応してタイミングを合わせたんだよね」
と和泉。
 
「それ、後から聞いてすごっと思った」
と私。
 
「ああ、そういう現場に居たかった!」
と先生はおっしゃる。
 
「私の代わりにピアノとかヴァイオリンを演奏してくれる代替演奏者を確保したことも多いですが、3割くらいはDAWで代替してるんですよね」
「多くの曲を代替演奏者に弾かせて、難しい曲だけDAW使うというパターンも多かったね」
「ただ、ああいうライブはそれなりにハイレベルの技術者さんが付いてないとなかなか難しいでしょうね」
 
「普通はDAWに生演奏者が合わせるというライブが多いよね」
「最近のライブは多分半分くらいがそれですよ」
「でもそれやると、生演奏で起きがちなハプニング的なおもしろみ、セッションの掛け合い的なおもしろみってのが無いよね」
 
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「でもDAW操作している側もハイレベルなら、生演奏者との本当の意味でのセッションができるんです」
「それが本当にDAWが《楽器》に進化した時だろうね」
 
「僕も体力付けて、そういうのに参戦したいなあ」
と先生は意欲満々であった。
 

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8時くらいになって、玄米御飯にシャケの切り身、ワカメの味噌汁などという日本的な朝御飯が出てくる。先生の話が終わる気配は無い。
 
唐突に男の娘の話になる。
 
「最近は、どう見てもふつうの女の子と区別の付かない男の娘が増えてる」
などと先生はおっしゃる。
 
「裸にしてみないと分からない人が居ますよねー」と和泉。
「裸にしてみても分からない人も増えてるよねー」と政子。
 
「上島君なんかは、そういう子の摘まみ食いまでしてるみたいだけど、セックスしても普通の女の子と変わらんなどと言ってたな」
と先生。
 
「Post-op(性転換手術済)の人なら実際普通の女性とほとんど変わらないとは思いますが、Pre-op(未手術)なのに、あまり女性経験の無い男性が相手なら、普通の女性とセックスしているように相手を思い込ませてしまう上手な人ってのが居るんですよね」
と私はコメントする。
 
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「そういう子とやってみたい気もするけど、浮気したらうちのが慰謝料1兆円と言ってるから」
と東堂先生。
 
「先生現役ですか?」
と政子が訊く。
 
「現役、現役。女房とも週に1度はしてるよ」
「仲が良くていいですねー」
「女房が今夜はきついと言った日はTENGA使ってるから」
と先生が言うと
「あれ私1個買って中身分析してみました」
などと政子が言う。
 
それでにわかにTENGAの各タイプの評価なんて話になり、私や和泉はちょっと距離を置いて先生と政子の会話を聞いていた。
 

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11時くらいになって、ラーメンが出てくる。
 
「あ、これマルちゃんの生麺・味噌味ですね」
と政子は食べただけでブランドを指摘する。
 
「うん。僕も色々食べてみたけど、結果的にはこのシリーズがいちばん美味い気がしてね。安いしさ。醤油味も好きだよ」
「私もこれ結構好きですよー」
 
「チャーシューはお手製ですか?」
と政子が奥さんに訊く。
 
「うんうん。孫が朝から作ってくれた」
「美味しいですー」
 
「そうだ!君たちに曲を書いてあげよう」
と唐突に東堂先生は言った。
 
それで先生はピアノを弾きながら15分くらいで、とても美しい曲を1曲書いてしまった。『アラベスクEG』と書かれている。
 
「これはKARION向きだなあ」
「きれいな曲ですね」
 
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「先生。まさかアラベスクってラーメン丼の唐草模様から来ていて、EGってミソで味噌味だとか・・・」
「良く分かったね」
 
「制作現場に居た人以外には分からないでしょうね」
と氷川さんも笑っている。
 
「歌詞は誰か若い子に書かせよう。編曲はそちらでして」
「はい」
 
「なんかもう1曲行けそうだ」
と言って先生が書いてくださったのが後で話題になる『苗場行進曲』である。
 
その曲が完成した後で
「これ実際に苗場フェスティバルに出たことのある人たちの声を入れよう」
と言って、様々なアーティストに直接先生が電話して、楽曲への声の参加許諾を取ってしまった。
 
「ところで今年、ローズ+リリーは苗場に出るよね?」
「出場依頼を頂きました。昨年まではマリの公演回数に契約上制限があったので、お断りしていたのですが、その制限が無くなったので今年は出ます」
「よし」
 
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この曲にはその場で先生が歌詞を書くが、途中、私や政子・和泉に色々意見を言わせて、それをまた歌詞に反映させておられた。
 
「まだ少し調整したいけど」とはおっしゃっていたが、仮の歌詞ができた段階で私と政子にその場で歌わせ、その録音を氷川さんに渡して、
 
「さっき電話した人たちにこれ聞かせて、思い思いのメッセージを入れさせてよ。但し場所がダブらないように管理して」
と言った。
 
「了解です。今日の午後から何人かで手分けしてすぐにやります」
と氷川さんは言っていた。
 
「ローズ+リリーのアルバムの発売はいつになるの?」
「えっと、8月末くらいになるのではないかと思います」
「だったら苗場に間に合わないじゃん」
「そ、そうですね」
「だったら、それシングルに入れてよ。次のシングル出す予定は?」
「7月16日の予定です」
と氷川さんが答える。
「苗場の直前か。だったら、それ先行公開できない?」
「それは問題無いと思います」
「よし。じゃ、それで。君たちのアルバムにはあらためてもう1曲書いてあげるよ」
「ありがとうございます」
 
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そういう訳で、私たちは13時頃にやっと解放された。23時間ほど、先生はしゃべり続けたのである(途中、作曲をしている間と電話を掛けていた時間だけ、おしゃべりが停まった)。
 
さすがに私たちはみんなくたくたに疲れたのでその日は帰ってそのままベッドに倒れ込んだ。しかし氷川さんは会社に戻って『苗場行進曲』に入れる様々なアーティストのメッセージの録音の件を加藤課長にお願いしてから休んだらしので、本当にお疲れ様である。
 
「東堂先生のお宅に車で行ってはならない、という話があったんだけど意味が分かった」
「ああ。あの耐久対談の後で運転は無理だよね」
 
なお『苗場行進曲』の各アーティストの声は「場所がだぶってはならない」というひじょうに大変な制約があるので、私も政子も寝てるしということで加藤さんは結局、七星さんを呼び出して各アーティストへの割り当て場所を確定し、それで依頼を掛けたようであった。
 
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その『苗場行進曲』を含むローズ+リリーの19枚目のシングル『Heart of Orpheus』
は7月16日に発売された。私と政子は当日、大宮副社長・氷川さん・加藤課長と5人で新曲発表記者会見に臨んだ。
 
冒頭私は特に発言を求めて言った。
 
「楽しみにしてくださっていたファンの方には大変申し訳ないのですが8月末に発売予定にしておりましたローズ+リリー2枚目のオリジナル・アルバムとなります『雪月花』の発売を12月に延期することになりました。また、ローズ+リリーの夏のライブも8月末に横浜で1公演実施するのみとさせて頂きます」
 
ローズ+リリーの「夏のツアー」に関して、ひじょうに多数の問合せをもらっていたのだが、事務所サイドでもレコード会社からも「検討中」ということだけで具体的な発表が無かったのだが、この会見で明確に今年は実質夏のツアーを行わないことを明言した。
 
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「それはもしかしてアルバム制作に専念なさるということでしょうか?」
と質問が出る。
 
「そうです。やはり昨年出した『Flower Garden』がひじょうに高い評価をしてもらいましたので、次のアルバムの品質が悪かったら、なーんだと言われてしまいます。ですから昨年のアルバムに負けないようなものを作ろうということで制作期間を延長することにしました」
 
「8月発売予定でしたから、既にかなり制作は進行していたのでは?」
「既に音源製作が完了している楽曲もあります。ただ私たちは6月までツアーをやっていて、そのツアー後半の平日に、今日発売のシングルの制作を進めていたので、実質的にアルバムの制作は7月になってから始めました。それでやはり良いものを作るには昨年同様、数ヶ月間、他のお仕事は休ませて頂いてアルバム制作に専念しないと無理という判断をしました」
 
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「昨年、ケイさんは『Flower Garden』を出した時には、もうこんな品質のアルバムは来年からは作れないとおっしゃいましたね?」
 
「そうです。でも欲が出ました」
と私が言うと、記者席には笑い声があがる。
 
「夏のツアーもぜひともやりたかったのですが、やはりツアーをやりながら、アルバムの制作もとなると、どちらも中途半端になりかねないので、アルバム制作に専念させて頂いた上で、そのあとツアーをやるつもりです」
 
「では年末あるいは年始頃にツアーをなさいますか?」
「全国20箇所程度のツアーを現在考えています」
 
その後多少の質疑の後、やっと本題の今日発売のシングルの話になる。
 

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「この『Heart of Orpheus』のPVの意味が良く分からないという声があったのですが」
と質問が出る。
 
「これはオッフェンバックの『地獄のオルフェ』という物語がベースになっています。日本では『天国と地獄』というタイトルで馴染んでおられる方も多いかと思いますが。運動会の音楽として名高いですね」
と言うと、頷く記者が多い。
 
「これ自体がギリシャ神話のオルフェウスの物語のパロディなんです。元々のオルフェウスの物語では、オルフェウスが最愛の妻・エウリュディケーが亡くなり悲しんで、妻を蘇らそうと地獄まで出かけて行きます。地獄の王ハーデスは、オルフェウスの弾く竪琴の音に心を動かされ、妻を連れ帰ることを認めます。ただ条件があって、地上に戻るまで決して振り向いてはならないというのです」
 
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この物語は有名なので、記者さんたちもみな知っているようである。
 
「ところがオルフェが先に歩き、その後をエウリュディケーが歩くという形で地上への道を歩いていると、オルフェは本当に妻が後ろから付いてきてくれているのか疑心暗鬼になってしまいます。やがて足跡も聞こえなくなってしまい、とうとう不安に勝てなくなってしまって、後ろを振り向いてしまう。その途端、エウリュディケーは再び地獄に連れ戻されてしまう」
 
いわゆる「見るな」の物語のひとつの形式である。
 
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■夏の日の想い出・食事の順序(3)

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