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■夏の日の想い出・食事の順序(2)

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「でもトライアル&エラー、私結構好きだったのに、解散しちゃったんですね」
と政子。
 
「解散という宣言はしてないけど、事務所との契約解除で事実上の解散だよね」
と杏堂さん。
 
「あれは元々あったバンドなんですか?それとも事務所かレコード会社で企画したものなんですか?」
 
「私以外の3人は元々組んでたのよ」
「へー!」
 
「四島(しじま)・香田(こうだ)・作音(さくね)・伍代(ごだい)の4人の名前から《試行錯誤》というバンドを組んでいたんだけど、スカウトされて、メジャーデビューする段階で、香田という人が脱落したのよね。事実上解雇に近かったみたいだけど。遅刻が多くて」
 
という言葉にギクッとする子が若干2名いる。
 
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「だから四島光平で《しこう》という後付けで。あと元々のバンドはギター・ベース・ドラムスだったんだけど、キーボードの音が欲しいということで私が別途スカウトされて加わったのよね。その時、私の名前を《アンド》ということにして《トライアル&エラー》という名前が作られたのよ」
「なるほど」
 
「最初からあった名前を使うと権利関係が面倒だから事務所主導で新しい名前を作ったというのもあったみたい」
「ああ、そのあたりって良く揉めますしね」
 
「楽曲はだいたい《作詞作曲:トライアル&エラー》になってましたけど、杏堂さんが作ってたんですか?」
 
「9割はリーダーの四島君の作品だよ。残りの1割が他の3人の作品だけど、それはほとんど売れてない。ヒットしたのはたいてい四島君の作品。クレジットをそうしたのは印税を山分けするため。実際には四島君がリーダーはいろいろお金が掛かるしということで4割取って、他の3人は2割ずつ」
 
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「なるほど。杏堂さんが作った作品で売れたのってあります?」
 
「うーん。いちばん売れたのは『Girls on Clocks』かな」
「あ、それ好き!」
と美空と政子が同時に言った。
 

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おしゃべりしている間にも肉はどんどん無くなり、私は冷凍しているお肉をどんどん解凍する。既にお肉は4kg消費されている。杏堂さんは
 
「噂には聞いてたけど、マリちゃんも美空ちゃん凄い」
などと言っていた。
 
「杏堂さん、おっぱいはあるんですか?」
 
かなりおしゃべりが進んだ時、政子が随分訊きたそうにしてたことをとうとう訊いた。
 
「ちょっとだけね」
「おちんちんは?」
「まだある」
「たまたまは?」
「まだある」
 
「じゃ、身体には手は入れてないんですか?」
「女性ホルモンは実は10年くらい前から飲んでる」
「へー!」
 
「じゃトライアル&エラーをしてた頃も、既に女性化始めてたんですか?」
「うん。でも女装での外出禁止で、お店とかで女物の服を買うのも禁止って事務所から言われてた」
 
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「じゃ女物の服は通販で?」
「そうそう。だから今年になってからなのよ。お店で堂々と女物買うようになったのは」
 
「最初どきどきしませんでした?」
「怖かった。レディスコーナーに近寄る勇気が出なくて、何度も近づいては離れ、近づいては離れ。別に悪い事してるんじゃないんだから、と自分に言い聞かせても、なんか怖いんだよ」
 
「うろうろしてたら、まるで痴漢みたい」
「そう! 何度もやってると、それが変に思われないだろうかって、それがまた不安になるのよね。人が多い時は怖くて近寄れないから平日の午前中に何度もトライして、少しずつ慣れてきた」
と杏堂さんは言う。
 
それで私が
「私も最初はなかなか近寄れなかったです」
と言ったら
 
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「それは嘘だ」
と政子にも美空にも言われてしまった。
 

締めきりの迫っている作曲案件があるということだったので、狭い所が落ち着くなら、うちの防音室(エレクトーンやクラビノーバを入れている防音ユニット)はどうですか?キーボードも使っていいですよ、と言ったら、やってみると言って中に入り、五線紙に書いては悩み書いては悩みしているようであった。彼女も直接打ち込むのではなく、紙に書いて創作するタイプのようである。
 
「みーちゃん、今日はどうする?おうちに帰る?ここで寝る?」
「泊まって、まぁりんと色々情報交換しようかな」
「おお、わが盟友よ」
「まあ、いいけどね」
 
ということで美空は泊まることになる。2人が寝室に入るのを見送って、私は居間でパソコンを開き、アルバムに入れる曲目のスコアの調整作業を続けた。
 
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夜2時頃になって、防音室から杏堂さんが出て来て、
 
「済みません。眠くなったので毛布か何か恵んでもらえます?」
と言う。
 
「あ、寝室で寝て下さい」
と言って、客用寝室に案内した。布団を敷いて、洗濯済みのシーツを掛ける。
 
「今の時期はタオルケットで充分とは思いますが、寒かったら遠慮無く押し入れから布団出して着てください」
 
「ありがとう。大丈夫とは思うけどね」
 
「でも今どちらのお仕事なさってるんですか? あ、訊いちゃいけなかったかな?」
 
「あぁ。ケイちゃんなら話してもいいかな。鈴鹿美里2つ、チェリーツイン、小野寺イルザ、山村星歌、FireFly20、各1本ずつ。今月はこの6本だけど、まだ3本しか仕上がってなくて。今4本目を書いている所」
 
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「ああ。こういうのどうしても書ける速度に波が出ますからね。でもあちこちの事務所のアーティストですね」
「うん。★★レコードから依頼をもらっているから」
 
「ああ。じゃあ私が受注してるのと似たような形か」
 

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「でもケイさんもほんとに忙しいみたいですね。4月の記者会見、あれ私は意味がよく分からなかったんだけど、結局、ローズクォーツは辞めるってことですかね?」
 
「あまり人には言って欲しくないんですけど、実質そういうことです」
「いや、私は漠然と『へー、ケイちゃんまだ頑張るのか』と思ったんですけどね、先日、伊賀海都さん(富士宮ノエルの作曲家)と会った時に、『あれって辞めるということ?』と訊かれて」
「あはは」
 
「伊賀さんの言うにはね、4月1日という日付でわざわざ『辞めません』と言ったというのは、つまり『辞めません』というのが嘘で、本当は辞めるということなのでは、と」
「明察ですね」
「それでふたりで録画されていた記者会見を再度見ると、確かに伊賀さんの言うのが当たっている気がして」
 
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「うちの副社長のアイデアなんですよ。私は実質離れますが、名前だけは在籍していることにしておきます」
「なるほどねー」
 

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「そうだ。ローズ+リリーの次のアルバムはいつ出すんですか?」
「8月末にリリースする予定です。でも6月中旬までツアーやってたから、実質制作の時間が1ヶ月しか無いんですよね。今、最終的な楽曲のラインナップを確定させようとしている段階で」
 
「ああ、去年みたいに半年掛けて制作って訳にはいかないんですね」
「そうなんですよ。昨年はライブほとんどやってなかったから、ああいうことができたんですけどね。活動再開しちゃったから、もうあのクォリティのアルバムを制作するのは無理かなと思っているんですよ」
 
「それはちょっと残念だな」
と茜音さんは言う。その言葉が自分の心に突き刺さる気がした。その問題は実は自分でもずっと心が咎めていたのだが、やむを得ないと割り切るつもりでいた。
 
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「しかも今年の夏、まだ発表してないのですが、全国アリーナツアーをやらないかという話もあっていてですね。それをやると、ほんとに制作の時間がないので勘弁してくれというので今交渉中なんですよ」
 
「あ、私もローズ+リリーは夏のツアーはしないんだろうか?発表が無いけどと思っていた」
「レコード会社にも事務所にも問合せが凄いんですけどね」
 
「そうだ」
「はい?」
「まだアルバムのラインナップ確定していないんだったら、もし良かったら、ローズ+リリーさんに私の曲を1本歌ってもらえません?」
 
「それは大歓迎です! ただ実際に使うかどうかはその曲を見てから考えさせて下さい」
 
「うんうん。それは当然。実は去年の夏に書いた作品で、誰か女性デュオに歌って欲しいなと思っていた曲があるんですよ」
 
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「チェリーツインや鈴鹿美里じゃなくていいんですか?」
「どうせなら、もっと上手いデュオがいいなと思って」
「あははは」
「それに鈴鹿美里に歌わせるには若すぎるんですよ」
 
「なるほど。譜面ありますか?」
「月明けたらそちらに送りますよ」
「はい。ではそれを見てから、加藤さんと相談の上でということでいいですか?」
「うんうん」
 
杏堂さんは7月3日になってからこちらにMIDIデータをメールしてきた。3日になったのは多分30日の24時ぎりぎりまで作曲作業をしていて、クタクタに疲れていたからだろう。
 
曲は『カオル』というタイトルで、カオルという女性への愛を歌う曲であった。本来男性歌手が歌うべき曲かとも思ったのだが、女性が歌うと、自分自身に対する叱責や励ましを歌った歌に聞こえる。
 
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この件は★★レコードの加藤さんが了承してくれたらOKということにした。それで今回のアルバムには、杏堂さんこと、萌枝茜音から1曲頂くことになったのであった。
 

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東堂千一夜先生と会ったのは、4月の《若山冬鶴》のお披露目の直後であった。音楽業界関係の招待者リストは、★★レコードの氷川さんが町添部長に確認しながら作ってくれたのだが、その中に東堂千一夜の名前があった。
 
○○プロの丸花社長と同い年1943年生まれで70歳を過ぎているが、まだ60前後に見える。師にあたる故・鍋島康平先生(1926-2009)も若かったが、この先生も若い。かえってお弟子さんに当たる木ノ下大吉先生(1957生)の方が老けて見えていて、並んでおられる所に取材に行って師弟関係を間違った新人記者が居たという話もある。
 
お披露目パーティーの当日は政子は美空・穂花(シレーナ・ソニカ)と3人で、ひたすら食べ歩いていた。私はひたすら挨拶回りをしていた。それで最初は★★レコードの町添部長と話をしていて、その町添さんに挨拶に来た、私の恋人・正望が東堂千一夜先生に捕まってしまい、約3時間のパーティーの内の1時間半くらい、正望は先生と話していたようである。何話してたの?と後から訊いたら、最近の若手作曲家の論評だったようである。先生がひたすらしゃべるのをひたすら聞いて相槌を打ったり短いコメントをしたりしていたらしいが、先生がホントに最近のクリエイターたちをよくよくフォローしているので驚いたと正望は言っていた。
 
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それで、先生は結局、私とも政子ともお話ができなかったので、明日空いてるから、ちょっと来ない?などと言われ、東堂先生から言われて行かない訳にはいかないので、私と政子、★★レコードの氷川さんの3人で翌日訪問することにしたのである。
 
私の友人・若葉のお見舞いに行った日の午後である。その若葉のお見舞いには若葉の元同級生である和泉も来ていたのだが、この後、東堂先生の所に行くと言うと和泉も会いたいと言った。和泉ちゃんなら大丈夫でしょうと氷川さんも言うので結局、私・政子・和泉・氷川さんと4人での訪問になった。
 

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「おお、マリ&ケイ、森之和泉+水沢歌月を同時に見られるとは」
と東堂先生は最初からご機嫌だった。
 
私たちの作品をいくつか取り上げて、そのコード進行や曲の構成などについて率直な感想を言われる。先生がそこまでよく楽曲の中身を把握していることに私たちは驚いた。
 
先生のお宅を訪問したのは14時くらいだったのだが、まずは4時間ほど『花園の君』
『女神の丘』『アメノウズメ』『歌う花たち』に関する先生の《講義》が続く。先生のお話の中には海外の最近のアーティストの名前がポンポン出てくるので、氷川さんがマジで感心していた。
 
「ケイちゃんの曲には、アヴリル・ラヴィーンとかテイラー・スウィフトとかの影響を感じる」
「ええ。どちらも好きです」
「ケルティック・ウーマン聴いてるでしょ?」
「アルバムは全部持ってます」
 
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「去年グランドオーケストラもやってたけど、自分で編曲してる曲はポール・モーリアっぽいのがかなりあるよね」
「ポール・モーリアのLP/CDは多分8割くらい持ってると思います」
 
「時々和風の曲もあるけど、民謡の基礎があるんだろうけど、椎名林檎とかGO!GO!7188とかの影響を感じる」
「椎名林檎さん、尊敬してます」
 
「先生、年齢詐称してません?実は28歳くらいってことないですか?」
などと政子が言うと
「うん。僕は永遠の28歳だから」
などと応じられる。
 
先生は何とAKB48とももクロとスパガのファンクラブにも入っていて、ライブにも何度か行ったらしい。これにはみんな驚いていた。先生の作品の「若さ」の秘密を知ったような気がした。
 
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