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■夏の日の想い出・セイシの行方(8)

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オープニング。幕が開くと古い琉球の神殿のセットがあり、白い衣装、白い鉢巻きに花飾りを付けた女性の輪が三重にできている。古い祝い歌を歌いながら輪が回転する。
 
もう50年も途絶えてしまったイザイホーの再現である。
 
イザイホーの祝い歌は2〜3分ほど続いた上で、ローズ+リリーのヒット曲で琉球音階を使った曲『花遊び』へと変化する。拍手のタイミングを見つけきれずにいた聴衆からやっと拍手が湧き起こる。
 
私とマリはいちばん内側の輪から抜け出して前面に立ち、白い巫女の衣装を脱ぎ、ふつうの白いドレスでこの曲を歌った。
 
歌い終わると大きな拍手と歓声が来る。
「マリちゃーん!」
「ケイちゃーん!」
 
こういう声を掛けてもらうのは快感だ。きっとこの快感を得たくて私たちはライブをしてるんだ。
 
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「○○大学・古舞研究会、琉球歌謡研究会のみなさんでした」
と私たちは一緒に踊ってくれた人たち、琉球音楽を演奏してくれた人たちを紹介した。
 
拍手があり、それが収まったところで挨拶する。
 
「こんにちは、ローズ+リリーです」
 
またしばらく拍手と歓声がある。
 
「私たちもキャンペーンやツアーで毎年沖縄を訪問させて頂いてますが、この琉球の音階やリズムって、何か不思議な高揚感がありますね。では次はそういう私たちが初めて琉球音階を使って書いた曲『サーターアンダギー』」
 
私たちが話していた間に後ろでセットしていたフラワーガーデンズの演奏が始まる。元からアンプやスピーカーを通して発音させることを想定して音作りがされている電子楽器の音は、本当のアコスティック楽器より本物っぽく聞こえるから不思議だ。
 
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私たちはまるで本物のようなフラワーガーデンズのメンバーが演奏するギター、ベース、ドラムス、ピアノ、フルート、それに今回サポートで入っている三笠さんの電子ヴァイオリンの音に包まれてその歌を歌った。
 
「この曲書いた時って、ケイは女子高生の格好で沖縄まで来たよね」
「まあそうだね」
「航空券の性別もFになってたし」
「私性別がFでない航空券って、例の時以外使ってない」
「ああ、例の時か」
 
それは性転換手術を受けにタイに行った時である。パスポートがMなので航空券の性別もそれに合わせざるを得なかった。
 
「当時のケイって変なんだよね。学校の中ではほとんど女子制服姿を見なかったのに、外では結構女子制服も着てたみたいでさ。私もほとんど気付かなかったんだけど」
「まあ、そんなこともあるでしょ」
 
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「だけどさケイ、今の歌を歌ってたら、私、本当にサーターアンダギーが食べたくなった」
「幕間までは我慢しようね」
「きっとお客さんの中にもサーターアンダギー食べたくなった人いるよ」
「ああ。それは売る人を呼んでおくべきだったかな」
「でも私たち、食べ物の歌をたくさん作ったね」
 
「そういう曲を集めたアルバムも何度か出したね。食べ物讃歌、お料理讃歌、御飯讃歌におやつ讃歌って」
「また今度ああいうの作ろう」
「そうだね。また少し溜まってきてるよね。それではそういう食べ物系の歌で最新の作品『ハートの形のハンバーグ』」
 
三笠さんが弾くヴァイオリンの美しい前奏に続き、ピアノのフレーズが8小節入り、それからドラムスのスタートとともに私たちの歌が始まる。私とマリの愛の言葉の掛け合いに合わせて、ギターとフルートも呼び合うように音を奏でる。初期の名作『ピンク色のクリスマス』と同様のかわいい系の歌である。
 
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前半はそんな感じでアコスティックな音で、比較的おとなしい感じの曲やフォーク系の曲を演奏していった。
 

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「それでは本日のゲストの紹介です。渡部賢一グランド・オーケストラ!」
 
えー!?という声が客席にこだまする。フラワーガーデンズのメンバーが下がり代わりに上手・下手から別れて、パイプ椅子と楽器を持ったオーケストラのメンバーがぞろぞろと入ってくる。ビブラフォン・マリンバなどの大型楽器はスタッフの手で運び込まれてくる。コンサートマスターの合図でクラリネットの人が音を出し、それで全員チューニングを確認。渡部賢一さんが登場して私たちと握手をする。
 
元々は「ローズ・クォーツ・グランド・オーケストラ」として2013年に結成された楽団である。その活動は半年で終了したのだが、グランド・オーケストラのサウンドに魅せられた全国のファンから「ぜひ活動を継続して」という声が多く寄せられ、半アマチュアの状態で活動を再開した。元々私たちのバンド演奏に弦楽器と金管楽器のメンバーを加える形でオーケストラは構成されていたが、活動再開後はその時のメンバーに木管楽器とリズム楽器のメンバーを募集・補充してグランド・オーケストラとしての陣容を整えた。
 
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メンバーはどうしても年々入れ替わりがあるが、会社務めしているメンバーや学生さん、それに学校の先生などもメンバーには多いので、土日をメインに活動を続けており、毎年1枚くらいずつアルバムも発表している。何度か夏休みを利用してグランド・オーケストラの本場であるフランスやドイツにも出かけて演奏し、現地でも高い評価を得た。
 
まずはグランド・オーケストラの演奏をバックに私とマリが『夜間飛行』を歌う。飛行機のエンジン音が、楽団のエレキギターの演奏で模されている。トロンボーンが奏でる流れ星の音、オルガンが奏でる行き交う飛行機の音。こういう様々な音が出てくるのはグランド・オーケストラならではである。
 
大きな拍手とともに演奏が終わり、私たちはいったん退場する。そして着替えて休憩している間にグランド・オーケストラの演奏で『ダイヤモンドヘッド』
(ベンチャーズ)『青い影』(プロコルハルム)そして『ダンシングクイーン』
(ABBA)といった古いポップスヒットを演奏する。
 
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私たちはその演奏を聴きながら服を全部着替えていた。1時間も熱唱すると3月の気候とはいえども汗だくである。下着から全部交換してから、後半用のステージ衣装を着ける。そして水分補給をするが、マリはミネラルウォーターでは無くシークヮーサーのドリンクを飲み、ゴーヤバーガーを1個ぺろりと食べたあとで、サーターアンダギーを摘まんでいる。
 
「ケイはおなか空かないの?あんなに歌ったのに」
などと言っている。
 
「私もライブの途中では水分しか取らないなあ」と七星さん。
 
やがてグランド・オーケストラが『エーゲ海の真珠』を演奏しはじめると、私たちは舞台袖でスタンバイする。そしてサビのスキャット部分。
「ランラ・ラッラー、ララララーラ、ランラ・ラッラー」
と歌いながら、私たちは袖から出てステージ中央へ向けて歩いて行く。
 
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観客から拍手が来る。私たちは歌いながらお辞儀をする。
 
そのあと演奏は私たちのスキャットを織り込みながら、トランペット、ピアノなどの音、そして華麗なストリングスの音とともに終曲に向かう。
 
大きな拍手が来て、私たちは
「渡部賢一グランド・オーケストラ!」
と再度名前を紹介。
 
ピアニスト、第1ヴァイオリン、第1フルート、第1トランペットも紹介して最後に「指揮・渡部賢一!」と紹介して、拍手とともに、オーケストラのメンバーはみんな自分で座っていた椅子も持って退場した。
 
代わってフラワーガーデンズのメンバーが入ってくる。前半は「電子」楽器を持っていたメンバーが後半は「電気」楽器を持っている。
 
賑やかなエレキギターの音で『影たちの夜』の前奏が始まり、私たちはその音に乗せて、この古いヒット曲を歌った。後半はヴァイオリンの三笠さんはお休みで、フラワーガーデンズのメンバー5人だけの演奏である。キキョウも電子フルートではなくウィンドシンセを持っている。最近のウィンドシンセはとても自然なサックスの音も出るのだが、わざと古い「電子笛」っぽい音を出している。エレキギターやエレキベースの音にはこちらがかえって合うのである。
 
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更に私たちは『夏の日の想い出』『結婚奇想曲』『キュピパラ・ペポリカ』
『Angel R-Ondo』『怪盗の一日』『Spell on You』『引き潮-ebb tide-』
『ダンスの量子』など、新旧取り混ぜた曲を演奏していった。
 
最後は最新アルバムから『草原を抜けて』を歌って、幕が下りた。
 

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そしてアンコールの拍手が来る。私たちはいつものようにお色直しはせずに後半の衣装のままステージに出て行った。
 
「アンコールって何度受けても嬉しいですね」
と私は本気で観客に向かって笑顔で言う。
「2時間歌って疲れていてもこのアンコールの拍手でたちまち元気になります」
 
観客が拍手で応えてくれる。
 
「それでは『天使の歌声』」
フラワーガーデンズのメンバーが走り込んで来て、伴奏を始める。私たちは自分たちの最初のこどもである、あやめが生まれた時に書いた曲を歌った。
 
2018年春から2019年の2月頃まで、私とマリは、上島先生のピンチヒッターをしたために年間700曲ほどという自分たちでもアンビリーバブルな曲数を書いたが、その最後くらいに書いたのがこの美しい曲で、ミリオンヒットになった。そしてこの曲を最後に私は絶不調に陥り、数ヶ月にわたって曲が書けなかったのであった。
 
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「この1年ほどかなり無理して書いてもらったからなあ。とりあえずゆっくり休んでね」
と声を掛けてくれた町添専務(当時)も、内心は本当に私の作曲能力が回復してくれるかどうか不安であったろう。
 
しかし政子は私を連れ、あやめと3人だけで宮古島を訪れ、そこで流れるゆったりとした時間の中に身を置いた。旧知のユタさんの祈りの歌を聴いたりして心を超解放した状態で一週間過ごしたら、また創作の泉が復活したのであった。私はこの歌を歌いながら、もう10年以上前になる当時のことを思い出していた。
 
歌い終わってお辞儀をする。拍手が来る。私たちはいったん下がるが拍手はすぐにアンコールの拍手になる。私たちは手を取り合って出て行く。
 
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「ほんとにアンコールありがとうございます。それではこれが本当に最後の曲です。11年前に宮古島で書いた曲『Atoll-愛の調べ』」
 
スタッフさんが中央にグランドピアノを出して来てくれた。今回全く出番の無かった七星さんが愛用のフラウト・トラヴェルソを持って出てきてくれて、ピアノのそばにスタンバイする。私がピアノの椅子に座り、マリはいつものように私の左側に立つ。
 
この曲のタイトルの『Atoll(環礁)』というのは、那覇から宮古島へ行く時に見える「ルカン礁(Rukan Atoll)」のことで、11年前に私の創作能力が復活した時、最初にあの美しい風景が目に浮かんでこの曲を書いたのであった。
 
私のピアノの前奏を聴いて、七星さんのフルートの音も鳴り出す。私とマリはその何とも不思議な音階の旋律を歌い始めた。
 
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それは天から音の粒子が降り注いできて、身体の中に染みていくような、本当に不思議な夜だった。
 
ああ、この音の粒子が私の心の中の、音の泉を復活させてくれる。そんな気持ちになることができた体験だったが、今でも私は、あの体験がリアルだったのか夢の中の出来事だったのか、自信が無い。(マリはどうせ覚えていない)
 
観客もこのとても不思議なサウンドを、手拍子も打たずに静かに聴いてくれていた。
 

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やがて曲はきれいなドミソの和音で終わり、フルートの音も鳴り止む。
 
私たちは立ち上がり、
「フラウト・トラヴェルソ、近藤七星!」
と紹介した上で、ふたたび三人で客席に向かってお辞儀をし、幕が下りた。
 
進行係をしてくれている放送局のスタッフさんが
「本日の演奏は全て終了しました」というアナウンスをした。
 

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「今日はイザイホーでオープニングでしたけど、他の地域ではどうするんですか?」
と打ち上げに同席した、沖縄の放送局のスタッフさんから尋ねられた。
 
「今回のツアーでは、その地域ごとのオープニングを用意しています。私たちのツアーを追っかけて沖縄から北海道まで駆け抜けるつもりの熱心なファンもいるようですが、彼女たちは毎回違うオープニングを見て、驚くでしょうね」
 
「でも1回のツアーでそんなに多数のオープニングのアイデア使うってもったいなくありません? 少し来年以降に取っておけばいいのに」
「この世界ではね。出し惜しみするアーティストは売れませんよ」
「ああ!」
 
「うんうん。毎回自分が持っているものを全力投球。それがプロの条件ですね」
と七星さんも言った。
 
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「やはり、そのあたりがアマとプロの違いなんですかね〜」
と放送局のスタッフさんは感心したように言った。
 
私の心の中で最後に演奏した『Atoll-愛の調べ』を書いた時の不思議な夜の記憶がリプレイされていた。
 
 
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