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■夏の日の想い出・セイシの行方(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-03-22  
「さあ、そろそろ覚悟を決めようか、大輝」と夏絵に言われたが、大輝は「嫌だよお、手術受けたくないよぉ」と言って泣いている。
 
さきほど逃げだそうとしたので「もう縛っちゃおう」と言われ、紗緒里と安貴穂にロープでベッドに縛り付けられたところである。
 
「大輝、あんた凄く可愛い顔してるんだもん。きっと素敵な女の子になれるよ。あんたみたいな子が男の子になっちゃうのってもったいないもん」
とあやめが言う。
 
「だから、僕、女の子になんかなりたくないって」
「聞き分けの無い子だねえ。スカートも穿かないし」
「だって僕男だからスカートは穿かないよお」
 
「ほら。博史を見てごらん。おとなしくスカート穿いてる。博史、スカート好き?」
「うん。好き。これ気持ちいいよね。ズボンは蒸れるんだもん」
「博史、女の子になりたい?」
「そうだなあ。女の子になるのも悪くないかなあ」
「ほら、大輝も博史を見習いなさい」
 
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そんなことを言っている内に看護婦さんがやってきた。
 
「そろそろ手術の時間だけど、女の子になる手術を受けるのは誰?」
「今、ベッドに寝てる子です」
「あら、あなた女の子じゃないの?」
「おちんちん付いてるんですよ−」
 
と言って大輝のズボンとパンツを下げると、おちんちんとタマタマがある。
 
「あら、あなたみたいな子に、こんなのが付いてるなんてきっと何かの間違いね」
「でしょ、潔く女の子になればいいですよね」
「そうそう。こんなの取っちゃって、代わりに割れ目ちゃん作りましょうね」
と看護婦さんから言われている。
 
「精子も保存したから、子供作りたくなった時はそれで作れるからね」
「私たちで1人1回ずつ射精させたからね」
「あら、お姉ちゃんたちにしてもらったの。良かったね」
「あれも縛り付けてやったんじゃん」
「だって恥ずかしがるからねぇ」
 
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やがて時間となり、大輝は「いやだぁ!」「助けて!」と叫びながら手術室に運び込まれていった。
 
一時間後、手術室から戻ってきた大輝は「ぐすん」「ぐすん」と泣いている。
 
「よかったね。これで大輝、私たちの妹になれたね」
「私たちと一緒に、温泉にも入れるよ」
「中学生になったらセーラー服着れるよ」
「セーラー服なんて嫌だよお。僕、女の子になんかなりたくなかったのに」
 
「泣き虫だなあ」
「やっぱり性格的に女の子だよね」
「でもこれでちゃんとお嫁さんに行けるよ」
「大輝のウェディングドレス姿って素敵だろうなあ」
 

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あやめと夏絵が「共同執筆」したという絵本を読んで私は頭を抱えた。政子はテーブルをバンバン叩いて笑っている。なんとまあ《青い清流》で書いた最初の作品がこれなのである。最後のページにはウェディングドレスを着て結婚式を挙げている大輝の絵が描かれていた。
 
「姉ちゃんたち、ひどいよぉ。僕は絶対女の子になる手術なんて受けないからね」
と大輝が言っている。
 
「そんなこと言ってるからロープで縛り付けて手術しないといけないのよ」
とあやめ。
 
「この絵は誰が描いたの?」
「かえでだよ。あの子、絵が凄くうまいんだもん」
 
その絵はとても小学1年生が描いたとは思えない。とてもしっかりしたタッチの絵である。かえでは小学校の図工の成績はあまり良くない。教室ではほとんど絵が描けず、課題を与えられてもたいてい白紙で出してしまう。しかし自分の部屋などで集中して描くと、凄くしっかりした絵を描く。あまりにしっかりした絵を描くし、ふだんの授業では全然描けてないので、夏休みの宿題に描いた絵を先生から「お姉ちゃんに描いてもらったんじゃないの?」と疑われた程であった。
 
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その時、私は学校まで行き、かえでが家ではちゃんと絵を描いていること、教室のように騒がしい所では集中できず、絵や作文を書けないようであることを話した。かえでが自宅で描いた色々な絵を見せたら担任の先生は驚いていた。作文も学校ではかえではいつも白紙の原稿用紙を出しているのに、自宅では自作の童話をたくさん書いていた。
 

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「でも、あんたたち博史にもスカート穿かせたりしてるの?」と私が訊くと「あ、博史はスカート素直に穿くよ。結構楽しそうにしてるし」と夏絵が言う。
 
「ああ、大輝と博史が女の子になって8人姉妹ってのもいいかなあ」
などと政子は言うが。
「お母ちゃん、勘弁してよお」
と大輝は言っている。
 
「大輝が女の子になった後の名前も考えてあげたんだよ」とあやめ。
「へー」
「輝子(てるこ)っていうの。輝の字はそのまま使えていいでしょ?」
「ああ、輝子ちゃんか。いいなあ。輝子に改名する?」
などと政子は面白がって言っている。
「だから、そういうのやめてよぉ」
と大輝はあからさまに嫌そうな顔をしていた。
 

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2030年1月、私と政子は新しいアルバム『怪盗の一日』の制作をしていた。2月中旬に発売し、それに合わせて3月にローズ+リリーの全国ホールツアーを予定していた。
 
タイトル曲の『怪盗の一日』は政子がモーリス・ルブラン作『緑の目の少女(La Demoiselle aux yeux verts)』が映画化されたのを見て、感動した!と言って書いた作品である。(この作品は『カリオストロの城』の原作のひとつである)湖底に隠れている遺跡のシーンは数億円掛けて作った巨大セットが使用されていた。主演(アルセーヌ・ルパン)は若手人気俳優の桜幸司、ヒロインはオーディションで1万人の応募者の中から選ばれた新人・秋山怜梨(ヒロインの名前オーレリーにちなんで付けられた芸名)であった。
 
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そのほか映画には、ヒロインを助ける謎の覆面少女怪盗「赤い彗星」ことクラリス(映画オリジナルキャラ)として、昨年春にデビューした人気アイドルの美濃山淳奈が助演で出ていたし、橘美晴をリーダーとするロックバンド《ムラン・ルージュ》のメンバーもルパンの部下達の役でゲスト出演していた。
 
(「ルパン3世」ではなく本家「ルパン」なので、次元や五右衛門は登場しない)
 
このアルバムを企画していた段階で、映画の制作委員会側から接触があり、美濃山淳奈が歌った映画の主題歌をローズ+リリーがカバーし、主演級3人の写真をジャケットに使用した「映画版」も通常版の他に制作されることになっていた。
 
アルバム収録曲は、マリ&ケイ作の表題作『怪盗の一日』、映画の主題歌で橘美晴作詞作曲の『眠れる街』の他、マリ&ケイ作の曲を8曲。これに4人(組)のソングライターから1曲ずつ提供を受けて構成していた。この4人の作品の中に「快速紳士」という名前でクレジットされた作品『草原を抜けて』が入っていた。
 
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最近ローズ+リリーのアルバムに新人作曲家の作品が1〜2個入るのは恒例になっていて、それをステップにしてソングライターとして活躍するようになった人もいたので、これもそういう期待の新人作曲家なのだろうと思われたようである。
 
今回のアルバム制作で伴奏をしてくれている、女の子バンド、フラワーガーデンズのリーダー・ランも『草原を抜けて』の譜面を見て「まだまだ未熟な面があるけど素質を感じさせるソングライターさんですね」と言った。ラン本人がバンドのベーシスト・ミズキと組んで書いてくれた作品『引き潮-ebb tide-』もアルバムに入れられる。
 
フラワーガーデンズは、電子ギター・電子ベース(エレキギター・エレキベースではない)、電子ドラム、電子ピアノ、電子フルートという5ピースのバンドだが最新鋭の電子楽器でアコスティックな音を出すのが特徴で、私とマリは彼女らの標準装備である横波スピーカーから出るアコスティックな音と響き・振動に包まれて、気持ち良くアルバムの曲を歌っていった。
 
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「でもケイさん、マリさんって、声が20歳前後の頃とほとんど変わらないですよね。先日もローズ+リリーの古い曲がラジオ局で掛かってるの聴いてて思いました」とバンドのピアニスト・フジが言う。
 
「ははは、発展性が無いのよ」
「いえ、違います。20歳頃の声を維持しているのが凄いです」
 
「そうだよね〜。20歳頃に4オクターブくらい出していた人が40歳頃になると2オクターブくらいしか出なくなってたり、情緒性は上がっても声の切れが落ちてしまう人多いから。ケイちゃん・マリちゃんの歌は、私デビュー間もない頃からずっと聴いてるけど、確かに18歳頃から声質が全然変わってない。声域も落ちてないでしょ? ケイちゃん今でもF6出るよね?」
 
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と初日なのでレコーディングに付き合ってくれている八雲(旧姓氷川)部長なども言う。
 
「出ます。というか18歳頃はF6出てなくて、22歳頃にやっと出るようになったんですけどね。15歳頃何度か偶然出たことはあったんですけど、その後出なくなってて」
「ケイは男の子の声も使えば4オクターブ出るのに使わないね」と政子。「あれは封印」と私。
 
「凄いなあ。多分毎日かなり練習してるんですよね?」
とフルートのキキョウが言う。
 
「そんなに練習してないよね」と政子が言い
「うん。歌はせいぜい2時間程度だよね」と私が言うと
 
「負けた〜。私歌の練習は30分もやってないかも」
とドラムスのジャスミン。
 
「あんたたちは若いんだからやはり3時間は練習しよう」
と八雲さんに言われている。
 
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「でも練習しすぎで喉潰さないようにね」
「そうそう。無理な発声で声が出なくなったり、ポリープ作っちゃう歌手ってよくいるから」
「水飴とか舐めるのもいいよ」
 

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その日、私と政子は上島先生から、ヨーロッパ旅行のお土産を渡したいからと言われて御自宅までお伺いした。上島先生が若い頃はこの家に来ると徹夜覚悟だったのだが、最近はさすがに先生自身の体力が衰えたようで、だいたい午前2時か3時くらい!にはお開きになる。その日は雨宮先生も来ておられた。
 
「ああ、アルバム制作してるんだったね。ごめんね。楽曲提供できなくて」
「いえいえ。先生お忙しいですもん」
「でも昔よりはだいぶ作曲ペースが落ちたよ」
「いえ、昔がアンビリーバブルなベースでしたから」
 
「ケイちゃんたちが大学生の頃って雷ちゃんは年間1000曲くらい書いてたよね」
と雨宮先生。
「うん。そのくらいかな。今じゃ年間300曲くらいだから」
 
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「それでもアンビリーバブルです」
「マリ&ケイが多作だと言われるけど150曲くらいだもんね、年間で」
「そのくらいですね」
 
「マリの詩はたくさんあるんですけど、私の作曲が追いつきません」
「まあ、曲にするのになじまないような詩もあるけど」と政子。
「うん。フェイスマークだけで綴られた詩とか、どうしろと?という感じでしたし」
「あれ、曲を付けられてたら今度は歌いようが無かったね」
「そうやって埋もれて行ってる曲もたくさんあるけどね」
 
「その埋もれてたアルバム『性転換ノススメ』なんて、まさか発売することになるとは私も思わんかった」
と政子。
 
「あれは八雲(氷川)さんの大英断だね。これ絶対売れますからって言って制作を勧めてくれたから。それに雨宮先生がプロデュースしてあげると言ってくださって」
 
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「ミリオン売れたからなあ。性転換推奨ソングだらけのアルバム」
「あれで性転換手術受ける人が倍増したという説もあるから」
「雨宮先生が性転換美女5人並べた全国キャンペーンやったのも大きかったですよ」
 
「伴奏してくれたタカが、変な気分になっちゃうと言ってた」
「タカちゃんも女の子になれば良かったのにね」
「まあその後、女性と結婚したから、そちら方面には行かなかったんだろうけどね」
「当時のタカちゃんの女装は美人だったね」
「最近は女装しないのかしらね?タカちゃん」
「女装はせいぜい40までですよ、とか言ってたね」と政子。
「そんなことないのにね。女装なんて開き直りよ」と雨宮先生。
 
上島先生が苦笑しておられる。
 
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