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■夏の日の想い出・高校進学編(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-08-10
 
ボクは中学3年の秋に失恋をして1ヶ月ほど落ち込んでいたものの、陸上部のOGである絵里花に「こういう時はパーっと女装しようよ」と言われて自宅に連れて行かれ、女装させてもらったら、たくさん涙が出て来て、そこで泣き明かしてそれをきっかけに立ち直ることができた。
 
しかしボクの失恋に関しては友人たちがみんな心配してくれていた。
 

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ボクが振られた翌々日、小学校の時の友人で隣の中学に通う奈緒がいきなり自宅を訪問してきた。
「どうしたの?久しぶりだね」
「久しぶりって先週も会ったよ。冬のCDライブラリ聴かせてくれる?」
「いいけど・・・・」
 
奈緒はそれから週2回くらい、ボクの家に来ては、特に何かする訳でもなく、ボクの部屋にあるCDを適当に流しては、進研ゼミの問題集をやっていた。ボクは失恋のショックで何もせずにただボーっとしていたし、奈緒はボクに何も話しかけなかったが、気心の知れた友人なのでしゃべらなくても気まずくも無かったし、お茶を入れたり、お菓子を出してきたりして、一緒に食べたりして過ごしていた。
 
後から考えれば音楽なんてほとんど興味の無い奈緒がCDを聴きたがるということ自体、変なことで、落ち込んでいるボクに敢えて何も言葉を掛けずに、ただ一緒に居てくれた、彼女の優しさにボクは涙が出る思いだ。
 
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奈緒の来ない日にはしばしば若葉が来て「プールに行こうよ」と誘ってくれた。これも後で考えてみると、奈緒の来ない日に若葉が来てくれていたというのは、ふたりで話し合ってしてくれていたのだろうけど、その時はボクはホントに何も考えていなかった。
 
若葉が来ると、ボクは自分のアソコを若葉に見られていることも意識しないまま(女子用)水着を着ると若葉と一緒に自転車で隣町の市民プールまで行き、2時間ひたすら泳いでいた・・・・と思う。「と思う」というのは記憶が曖昧だからで、若葉と一緒にプールに出かけた記憶だけは残っているので、多分泳いだのだろうという推測だ。それにやはりプールに行った日は爽快感もあった気がする。若葉とも何を話したのか覚えていない。たぶん何も話してないのではという気もする。ボクはただボーっとしていた。
 
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奈緒と若葉が交替で来てくれていた感じなのに対して有咲はいつも突然ふらっとやってきて勝手におやつを食べ、姉の部屋の本棚から少女漫画を勝手に持ってきて読んでいた。有咲が突然ふらっとやってくるのは以前からなのでこちらも全く気にしていなかった。
 
「冬〜、自殺するなら他人に迷惑掛けないところで死んでね。電車に飛び込んだりしたら凄まじい迷惑だからね」
などとこの時期、有咲は言っていた。
 
「自殺か・・・・今、自殺する気力も無いよ」
「ああ、そんな感じに見えるね。オナニーしてる〜?」
「ははは。それする気力もない」
「私とセックスしようか?」
「へ?」
 
「私、今日とってもしたい気分なんだよね〜。冬とは恋愛感情抜きで出来そうだから、後腐れ無しで」
「そうだね〜。有咲とならできそうな気もする。でも避妊具の用意無いよ」
 
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「私持ってるよ〜」
「誰かとしたの?」
「今年の8月にさぁ。絶対やることになると思ってデートに行ったらさぁ。デートどたキャン。んで、電話掛かってきて。ごめん。他の女の子と恋人になったって」
 
「そうだったの。。。。。気付いてあげられなくて御免」
「ううん。私、もう失恋3回目だから平気。最初の時は落ち込んだよ」
「そう」
 
ボクは思わず有咲を抱きしめた。
「えーっと、お布団行く?」と有咲。
 
「ごめーん。有咲とは友情しか無いし、正直な話、ボク女の子に対して性欲を感じないの。ってか、ボク自身女の子に恋愛感情持てるとは思ってなかったんだよね〜」
 
「うーん。。。。私は冬はバイだと思ってたよ」
「そうかな?」
 
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「今回の恋ではさ、冬は男の子として相手を好きになろうとしなかった?」
「・・・・うん」
「多分、冬はその形では恋を維持できないよ。次に女の子を好きになったらさ、女の子同士として愛し合おうとしてごらんよ。冬はレスビアンラブならできるはず」
「・・・・・」
「冬、男の子として愛そうとしたらさ、自分自身が女の子なのに、という思いと恋愛感情が衝突するから、恋愛と同時に自分の性別認識まで揺らいでしまう。女の子同士の恋をするつもりでいたら、ちゃんと安定した恋愛関係が結べるよ」
 
「ああ、そうなのかも」
 
失恋直後の1ヶ月の記憶はほとんど飛んでいるのだが、有咲とこんな話をしたことだけはしっかり覚えている。
 
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でも有咲とこの時、何かHなことをしてしまったのかどうかは、よく覚えていない。後でそれとなく有咲に聞いたら「ふふふふふ」などと笑っていた。
 

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美枝が「走ると気持ちいいよ」などと言って、ボクをしばしばロードワークに誘ってくれた。若葉に誘われてプールに行って泳ぐのもそうだったが、ロードに出て5kmとか10kmとか走って汗を掻くと、確かに気持ちいい感じだった。結構この時期、こういったスポーツによってボクの精神は支えられていた部分もあると思う。
 
美枝とふたりで走ったりもしたし、また陸上部の後輩たちのロードワークに便乗して一緒に走ることもあった。
 
倫代もボクを発声練習に誘ってくれた。合唱部の方も既に3年生は引退しているのだけど、昼休みにボクの手を引いて音楽練習室に行き、防音個室を使って、一緒に音階を歌ったり、声域のギリギリを使う歌を歌ったりしていた。
 
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「冬、凄いじゃん。今F6が出たじゃん」
「今の音、F6だっけ?」
「ああ、ふだんの冬ならちゃんと音程分かるのにね」
「今、何か頭のネジが何本か抜けてるから」
「ネジが無くなってるから、限界突破できるのね? よし今のキーでもう一度歌おう。身体に覚えさせておこうよ」
 
倫代と一緒にしていた発声練習も、一種スポーツのようなものという感じでやはり爽快感があった。倫代によれば、この時期ほんとうにボクはF6が出ていたらしいけど、ボク自身が立ち直った後は、どうしてもそんな高いキーは出なかった。たぶん出せたのだろうけど、出し方を忘れてしまったのだと思う。
 

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主な友人たちの中で唯一人、ボクにこういう「優しいこと」をしなかったのが貞子だ。ただ彼女は
「辛い? でもこれは冬が自分で解決すべきことだからね。私は何も手伝えないけど、私がここにいることは忘れないで」
とだけ言っていた。
 
ボクの友人の女子って、わりと「漢らしい女子」が多いのだけど(実際この時ボクに同情したり「慰めよう」とした友人はひとりもいなかった)、貞子はその中でもトップクラスの「漢らしさ」を持つ。ボクはその貞子の突き放したような優しさに涙した。
 

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担任の先生は「唐本どうした?最近宿題もやってこないが」と言ったが、他に陸上部の花崎先生や合唱部の上原先生も心配して面談室にボクを呼び出して、優しい言葉を掛けてくれた。ボクは何も答えられずにただ泣いていた。
 
ボクが1ヶ月ちょっとで立ち直ることができたのは、この優しい友人たちや先生たちのお陰という気もする。絵里花に女装させられた時、ボク自身の中でも、もうそろそろ立ち直らなきゃ、という気持ちが芽生えてきていたのだろう。
 
この失恋が自分にとって大きかったのは、有咲にも指摘されたように自分の性別問題との兼ね合いもあった。ボクは小学4年生頃から自分の性別のことで悩み始めていた。中3のこの時点で女の子と恋愛をした事は、自分はやはり男として生きなければいけないのだろうかという迷いを生じさせた。しかしその恋に破れたことで、もう男として生きる気持ちがほとんど無くなってしまった。それは物凄く大きな人生の舵取りだったので、その分悩むことも多かったようにも思う。
 
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絵里花の家で女装させられた時、絵里花はボクの前に生理日調整用の低容量ピルを並べた。
 
「さて。この3つの内、2個は本物のピルです。1個は休薬用のプラセボです。1錠だけあげる。本物に当たる確率は3分の2」
「え?え?」
ボクはじっと錠剤を見つめ1錠取って飲んだ。
 
「さあ、今飲んだのは本物かあるいは偽薬か。それは神のみぞ知るだね」
「うん」
絵里花は薬を片付けた。
 
本当は絵里花はプラセボを3錠並べていたのだけど、ボクはその日はもしかしたらボクは女性ホルモンを飲んじゃったかもと思い込んでいた。それでやっぱり自分はもう男は捨てるんだという気持ちが固まって、結果的に心が安定した面はある。
 
でも、それが全部プラセボだよなというのには翌日の朝には思い至った。
 
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絵里花さんがボクに本当の女性ホルモンを飲ませる訳ないもん、と思ってボクは微笑んだ。ああ、でも本当に女性ホルモン飲んじゃおうかなぁ、などと思って姉がどこから調達してきたのか、ボクの鞄に入れていた女性ホルモン剤の瓶を取り出し、ふたを開けてみる。3錠ふたに取り出した。
 
これ飲んじゃおうかな。。。。。もう男の子では無くなっちゃってもいいし。ボクはその時はそんな気分だったが、結局その朝は飲まずに錠剤は瓶に戻した。
 

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そのプラセボを飲んだ翌日(朝女性ホルモンを飲むかどうか迷った日)は日曜日だったが、若葉が朝からやってきて「冬〜、プールに行こう」と誘ってくれた。
 
ボクが元気な声で「うん、行こう」と言ったので若葉は驚いて
「おお、立ち直ってる」と言った。
 
「全然。まだ落ち込んだままだよ〜」と言ったが、若葉は
「金曜日に見た顔と全然違う」と言う。
 
「よし。景気づけに新しい水着を買わない?」
「あ、お小遣いがちょっと・・・・」
 
ボクはその年、春から秋に掛けての恋人との交際でお年玉のストックを使い切っていて、お小遣いに余裕が無かった。
 
「私がお金貸してあげるよ。出世払い」と言って姉が1万円札を渡してくれた。
「1万円?」
「若葉ちゃんの分もね。冬、若葉ちゃんにたくさん水泳教えてもらってるでしょ? その御礼に水着くらいプレゼントしなさい」
「わーい、プレゼントしてもらおう。お姉さん、ありがとです」
「ううん。ちゃんと後で冬から回収するから」
 
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「姉ちゃんに出世払いにしてもらっているものが増えて行ってる・・・・」
「今残高5万6千円だね」
「そんなに貯まってたっけ!」
「冬、歌うまいし。その内アイドル歌手になっていっぱい稼いで返してよ」
「それって、女の子のアイドル歌手ですよね?」と若葉。
「当然」
 

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町に出て若葉と一緒に水着を選ぶ。その日はそんな気分だったので、凄く可愛いセパレート水着を選んでしまった。
「胸が無いのは開き直っちゃおう」
「うん、その意気、その意気。胸はシリコン入れちゃってもいいじゃん」
と若葉も煽った。若葉もわりと可愛い水着を選ぶ。
 
それで2時間プールで泳いだら、とっても気持ち良くなった。
「ここ1ヶ月くらい、ずっとボクを誘ってくれててありがとね」
とボクはやっと若葉に感謝するだけの心の余裕ができていた。
 
「それは奈緒にも言っておきなよ」
「うん」
「でも今日は冬のペースが凄いから、私付いてくの大変だったよ」
「そんなに飛ばしてたっけ?」
「うん。凄かった」
「へー。全然意識してなかった」
「意識してないから全開になったんだろうね。ちょっと疲れたな。疲労回復のサプリ飲んじゃおうかな」
 
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と言って若葉は何かの薬のシートを取り出した。
「あ、冬にもあげるよ」
と言って、若葉はボクはにその錠剤を4つ分、切り取ってくれた。
 
「ありがとう」
と言ってボクは何も考えずにシートから錠剤を取り出すと口の中に入れ、ウーロン茶で飲み干した。
 
「あれ?若葉は飲まないの?」
「うん。生理を乱したくないから」
「へ?」
「今、冬が飲んだのはエストロゲンだからね」
「えーーー!?」
 
「箱ごとあげるね」
と言って若葉は薬の箱を4つ渡してくれる。
 
「これ1箱で3ヶ月分くらいあるはず。だからこれ1年分ね。ついでにこちらのお薬もあげる。こちらはプロゲステロン。1箱で4ヶ月くらいかな。3箱でだいたい1年分。代金は出世払いでいいから。中の薬の説明英語だけど冬は読めるよね?」
「あはは」
 
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「毎日そのエストロゲン2〜4錠とプロゲステロン2錠くらい飲んでたら、たぶん半年で、おっぱいできるよ。まあ男性機能は消失して睾丸は機能停止するし、ペニスも一切反応しなくなるだろうけどね」
「少し考えさせてください」
 
「今4錠飲んじゃったから、数日は男の子機能使えないかもね」
「あはははは」
 
「でも冬って、そもそも男の子機能、もう使ってないでしょ?」
「昨夜は使った」
「へー」
「多分1年ぶりくらいかなあ」
「ほほお」
 
「次も1年後くらいかも」
「いや、たぶん、昨日のが冬にとって最後の男の子としてのひとりHだよ」
「そ、そうかな?」
 
そして若葉のその予言は本当のことになったのであった。
 

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夏の日の想い出・高校進学編(1)

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