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■夏の日の想い出・高校進学編(3)

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12月17日(日)。ボクは家で中学の女子制服に着替えて市民会館まで歩いて行った。3年生で出て来ていたのは、倫代と日奈だけだった。ふたりと何となくハグし合う。
 
「どこかでその制服に着替えて来たの?」
「ううん。家からこの格好で来たよ」
「おうちの人にはカムアウトしちゃったの?」
「ううん。日曜のこの時間帯、お父ちゃんはまだ寝てるし。お母ちゃんがトイレに入った隙に、部屋から出て居間にいたお姉ちゃんに手を振って堂々と玄関から出て来た」
「ああ、お姉ちゃんは冬のこういう趣味知ってるんだ」
「でも帰りはどうするの?」
「運任せ」
 
この時期、ボクは親に見られたらカムアウトしちゃえばいいと思っていたのだが、幸か不幸か一度も両親に女装姿を見られることは無かったのであった。
 
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ボクたちがハグし合っているのを見て、下級生の何人かが
「倫代先輩〜」「冬子先輩〜」「日奈先輩〜」
と言って寄ってきて、しばしハグ大会となる。
 
「こういうのやると緊張がほぐれますよね」
「そういえば小学校の時はおっぱいの触りっこしてたね。本番前に」
「あの伝統、今でも続いてるみたいですよ」と1年生の子(伝統発生時4年生)。
「変な伝統作っちゃったなあ」
とボクと倫代は笑う。
 
合唱部で1年過ごさせてもらってコンクールにも出たが、やはりこのクリスマスコンサートの、のんびりとした雰囲気は良いなあと思う。何かを競うのも大事だが、こういう競わないものも大事だ。たぶんこういうのって音楽の両輪なのだろう。技術向上があってこそ良い音楽を生み出せるけど、一方で楽しむことも忘れてはいけない。
 
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やがて出番となりステージに登る。ボクは小学6年生の時の合唱サークルの時以来、初めてソプラノの列に並んだ。2年生の子が指揮棒を振る。ピアノ伴奏が始まる。ボクは最前列で倫代と並んで大きな声で『王様の行進』を歌い始めた。
 
「聖なる人がお生まれになった朝に、贈り物を持つ3人の王が来る」
 
ソプラノとアルトが僅かな拍ずれて疑似追いかけっこになるようなアレンジをしている。行進曲なので、間奏の間にリズムに合わせて右を向いたり左を向いたりというパフォーマンスも入れた。こんなことまで許されるのもクリスマスコンサートならではだ。
 
『メレ・カリキマカ』の方はハワイっぽい、のんびりとした雰囲気の曲である。これを歌っていると、真夏のクリスマスという感じになっていく。ステージに立つのは3ヶ月ぶりだが、やはり気持ちいい。
 
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思えば前回ステージに立った翌週にボクは失恋したんだった。クリスマスを祝う歌だけど、ボクはこの明るいクリスマスソングを歌っていて、それが自分の心の復活を祝う歌のような気がしてきた。そしてこのステージで歌ったことで、ボクは、やっとSのことを思い切ることができたのだった。
 

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クリスマス、お正月と過ぎていったが、受験生にそのようなものは無かった。一応クリスマスケーキは食べたが、
「今年はチキンはパスね」
と言って、今年はボクはフライドチキンをクリスマスに作るのは免除させてもらい、その時間も惜しんで勉強をしていた。
 
仕方ないので母がスーパーでお総菜のフライドチキンを買ってきていたが
「冬が作ったものの方が美味しい」
などと姉も父も言っていた。
「萌依、あんた冬から少し料理習いなさいよ」
「ああ、無理〜。私、料理の上手な男の子と結婚するから」
 
「でも冬みたいに料理の上手い男の子はめったにいないよ、たぶん」
「そうだねぇ」
「冬と結婚する女の人は楽でいいだろうね」
「ああ。私、冬はたぶん男の人と結婚する気がするよ」と姉。
「うーん。そっちの方かね〜」
「だって、いい奥さんになりそうだもん」
「確かにね〜」
 
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「ふふ。ボクはね、女の子の奥さんになるのが理想」
「ああ! 私みたいなタイプと結婚するのね」
「そうかも」
 

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クリスマスイブも遅くまで勉強していたら、深夜トントンと部屋のドアを叩く音。
「なあに?」
「冬、ちょっとおいで」
と姉が自分の部屋に呼ぶ。
 
「今夜はクリスマスイブだしさ。プレゼント代わりに成人式で着る私の振袖ちょっとだけ着せてあげるよ」
「わあ・・・でもいいの?」
「私、着付けできないから、肩に掛けるだけ」
「うん」
 
ボクはそんなの着るのなら、ということでちょっと時間をもらって女の子の服に着替えてきた。ブラとパンティ、その上に膝丈のスカートとTシャツを着た上に、振袖を着せてもらう。着るといっても肩に掛けて前をちょっと合わせただけだが、鏡に映してみると「きれーい」と思わず言ってしまった。
 
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「5年後には、冬自身で振袖買って着なさい」
「成人式に振袖か・・・・」
「まさか背広着て出たりしないよね」
「まさか」
 
「冬は私のよりもっと派手な柄が似合いそうだなあ」
「この振袖もきれいだよ」
 
「バイトで貯めたお金が吹っ飛んじゃったよ。それでも、半分お母ちゃんに出してもらったんだけどね」
「ボクも大学に入ったらバイトして振袖のお金貯めなくちゃ。ボクの分は半分親には出してもらえないかも知れないし」
「そうだね〜。まあ1割くらいなら、私が出してあげるよ」
「ありがとう」
 
「でも冬は性転換手術のお金も貯めなくちゃね」
「性転換手術か・・・・」
「受けるんでしょ?」
「えーーー、そうだなあ」
 
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「女の子として生きていくつもりなら、早い内にやっちゃった方がいいよ。年齢が高くなるほど、その後が大変だよ」
「うん・・・・」
 
「成人式までに女の子の身体になっちゃうとか」
「資金的に無理って気がする。よほど怪しいバイトでもしなきゃとても100万とか200万とか、大学生の1-2年の内には貯められないよ」
 
「そうだね。まあ、焦らずに頑張りな」
「うん」
 
「怪しいバイトでなかったら、何かでどーんと稼いだりしない限り厳しいよね」
「何かでドーンか・・・・・」
 
「凄い発明して特許取るとか」
「あ、そういう頭はボク持ってない」
「歌手になってミリオンヒット出すとか」
「そんな売れるもんじゃないよ」
「株で一儲け」
「あれは1千万を1億にする技術だからね〜。20万円を200万円にするには辛い」
 
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学校に内申書を書いてもらい、1月下旬に私立♀♀学園、2月頭に公立◆◆高校の願書を提出した。公立の願書を出した4日後が私立の入試であった。
 
ボクは自分の部屋でお気に入りのブラとショーツのセットを付け、白いブラウスを着た上に中学の女子制服を着た。リボンタイを結ぶと何かとても気分が昂揚する。
 
父は既に出かけていた。母が台所で片付け物をしている間に、あまり音を立てずに居間を通過し、玄関を出る時に「行ってきまーす」と言って出かけた。姉が笑っていた。「あっ。行ってらっしゃい」という母の声を戸が閉まる直前に聞いた。
 
♀♀学園に行くにはいったん電車で都心に出てから、地下鉄か山手線で移動し、また別の路線に乗って、かなり走る必要がある。東京というのは各地区と都心を結ぶ路線は発達しているが、地区同士を結ぶ路線はほとんど存在しない。これはホントにここに行くことになったら通学が大変だぞとボクは思った。
 
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試験会場には開始30分前に着いた。受験票の番号を見て、指定の教室に行く。自分の番号の席を確認する。先にトイレに行っておこうと思い、それらしき所を探すが、男女表示が無くて戸惑う。でも女子の受験生らしき人たちが出入りしているので女子トイレみたいだなと思い中に入ると、確かに個室が並んでいて女子トイレのようである。空いている個室があったので中に入り用を足す。
 
ふっと息をつく。なんか若葉に言われたことあるけど、ボクって本当に学校の外ではかなり女子トイレに入ってるよなあと思う。ひとりで出歩いている時はけっこう男子トイレを使っているのだが、友だち(当然女の子)と一緒に行動している時はノリで他の子と一緒に女子トイレに入っちゃう。今日みたいに女の子の服を着ている時は女子トイレしか選択肢は無い。
 
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紙であの付近を拭き、パンティを上げ、服の乱れを直す。流して個室から出て手洗い場で手を洗う。トイレを出て受験する教室に行き自分の番号の所に座った。
 
ぼちぼちと受験生がやってくるが「あれ?」と思う。なんか女子の受験生ばかりだ。◆◆高校に合格する気満々だったので、こちらは試験の前哨戦、試験に場慣れするため程度に考えて出てきていて、ろくにこの学校のこと調べてないけど、女子の比率が高い学校なのかな?
 
やがて試験監督の先生が入ってきて、注意事項を言う。そして試験が始まる。1時間目は国語だ。最初は文章を読ませて質問に答える問題。この手の問題は文章の中にちゃんと答えがあるから焦らずにしっかり読むことが大切だ。ボクは気持ちを集中して文章を読んでいった。
 
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問題を解いている間に試験官の人がずっと席を回っている。どうも受験票の顔と受験者とを見比べている雰囲気。高校で替え玉受験も無いだろうけどな、という気はする。でも何年か前に女子受験生のお父さんが替え玉受験しようとして捕まった事件があったっけ。中高生世代のお父さんが女生徒の振りをするのはいくらなんでも無茶すぎるよな。そんなことをふと思っている内に、ボクの所にも試験官さんが回ってきて、ちょっと受験票が問題用紙に掛かっていたのを指で動かしてから、こちらの顔を見つめて、次の席に進んでいった。
 
2時間目は数学だった。わりと得意科目だけど気は抜けない。ひとつひとつの問題を良く読み、引っかけ問題になってないかというのを慎重に考えて問題を解いていく。ボクは微積分が出来るので、微積分を使った方が楽な問題はそれを使って解いて、中学生方式の解き方で解いたのと答えが一致することを確認しながら、回答していった。
 
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お昼の休憩をはさむ。ボクは早朝からお弁当を作っておいたので、それを食べながら、頭を空白にしていた。こういう時は暗記項目などをやろうとするよりいったん頭を空っぽにした方が、だいたい実力が出る。しかし・・・ほんとに女子の受験生ばかりだなあ。男子の受験生を全然見ない。あるいはこの教室は女子ばかりだけど、他の教室では男子の比率が高い所もあるのだろうか?
 
お昼を食べたあとトイレに行ってきてから自分の机の所に座り、目を瞑って精神を統一する。やがて3時間目の英語が始まる。
 
英語は大得意だからスイスイ回答できる。ボクは時間の半分くらいで回答を終わり、2度見直した後で、答案を裏返しにして、目を瞑り頭を休眠させた。
 
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ボクはこの英語で試験は終わりと思い込んでいたのだが「このあと面接です」
という案内があり、え? と思う。面接なら、この女子制服はまずいかなとも思ったのだが、まあいいやと開き直る。性別問題を指摘されたら指摘された時だ。どうせ本命ではないし。
 
受験生はいったん教室を出て、廊下で待機することになる。やがて1人ずつ受験番号で呼ばれ中に入る。1人の面接時間は3分くらいの感じ。ボクは自分の受験番号を考えて1時間待ちかなと考えた。進行状況を見て、あと15分くらいかなという所でいったんトイレに行って気持ちを鎮めた。
 
やがて呼ばれる。「失礼します」と行ってお辞儀をして中に入り、椅子に座る。
 
「●▲中学校の、からもとふゆこ君ですね?」
「はい」
 
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あれ?冬子になってる?まいっか。どうせ女子制服着てるし。ボクはノリで女声で答えた。
 
中学でどんな活動をしてきたかを聞かれるので陸上部と合唱部で活動したこと。陸上部では地区大会で1度優勝したこと、駅伝で区間新記録を出して表彰されたことなどを言うと、面接官の人は大いに興味を持った感じである。でもこの手の話は内申書にも書かれているんじゃないかなあ。この高校を志望した動機に付いては、自由な校風であるように思えたこと、また上位の国立大学合格者を多数出していて、大学進学にも有利であると思えたことを語る。
 
「どちらの大学を狙っていますか?」
「名古屋大学の経済学部です」
「おお、それは頑張ってくださいね」
 
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その他、自分の長所・短所についても聞かれたので適当に答えた。併願についても尋ねられたので正直に公立と併願していて、そちらに合格した場合は申し訳ないが辞退すると思うと言ったが、面接官の人は正直にそう言ったことを好感した雰囲気だった。面接時間は既定より少し長かった気もしたが、なごやかな雰囲気で面接を終えることができた。
 
丁寧にお辞儀をして退出する。
 
これでこの日の試験が終わったので、またいったん都心に出てから自宅に戻った。
 

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「ただいまあ」
「お帰り、どうだった?」
 
帰宅すると姉だけだった。母は買物に出ているという。ボクは着替えにも行かずに居間でお茶を飲む。
 
「最近大胆だね」
「うん。お母ちゃんに見られたらその時カムアウトするつもりだから」
「見られる前にカムアウトすればいいのに」
「そうだね〜」
 
ボクがバッグから受験票と筆記用具を出し、面接の様子などを話していたら姉が「あれ?」と言う。
 
「なあに?」
「この受験票、名前が『カラモトフユコ』になってるけど」
「え?」
と言ってボクはよくよく受験票を見る。
 
「あれ〜。ほんとだ。なんでフユコなんだろ?」
「あんたが自分でそう記入したんじゃないの?」
「えー、まさか。ちゃんとフユヒコと書いたと思うけどなあ」
「あんたしばしばぼーっとしてるから」
「それでも自分の名前を書き間違うことはないと思う」
「でもあんた、自分の名前を冬子と思ってたりしない?」
「うっ・・・・」
 
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「英検2級の合格証、Fuyuko Karamoto になってるよね」
「あっと・・・・あれはわざとかな。口頭試問にも女の子の服で行ったし」
「それは初耳だった。これもわざとじゃないの? だいたい今日も女子制服で受けに行ってるし」
「うーん。。。。」
 

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■夏の日の想い出・高校進学編(3)

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