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■夏の日の想い出・高校進学編(5)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-08-11  
「あれ?冬だよね?」
「わ!麻央だよね?」
「わーい、久しぶり」
 
ボクは愛知の小学校の時の旧友と手を取り合ってひさしぶりの再会を喜んだ。
「こちらには旅行?」
「うん。春休みを使って遊びに出て来た」
「このあと予定ある?」
「特に何も決めてない。17時までに母ちゃんと泊まるホテルに戻ればいい」
「じゃ、2000円貸してくれない?」
「へ?」
 
ボクは麻央から2000円借りて代金を支払いボールペンを受け取った。
何だか立派なケースに入れてくれた。新入学応援キャンペーン中ということでサービスで替え芯を1本付けてくれた。
 
お店の人が、今さっきボクが名前と電話番号を記入した紙を返してくれる。麻央を促して、電車に乗り、自宅へ向かう。
 
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「でも、その控えの紙、唐本冬子って書いてある」と麻央。
「えへへ。この格好だし」とボク。
「リナから冬はもうかなり女の子になってるとは聞いてたけど。それ中学の制服だったよね?」
「うん」
「もう中学には女生徒として通ってたの?」
 
「うーん。一応男子生徒として通ったけど、去年の夏休みにクラブに出て行った時はたいてい夏服の女子制服着てたし、この3学期はけっこうこの冬服で通学した。でも授業には一応学生服で出てたんだよね」
「なにそれ? 変なの」
「うん。我ながら中途半端かなというのは思ってたけど」
 
「高校はどうするの?」
「今迷ってる所かな・・・・本当は入学式に制服を間に合わせるには昨日までに申し込まないといけなかったんだけどね」
「ふーん・・・」
 
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自宅に戻ると誰もいなかった。お湯を沸かし、その間に制服を脱いでセーターとキュロットに着替える。ニルギリでミルクティーを入れ、麻央とふたりで飲んだ。
 
「さっきはありがとう。2000円返すね」
と言って渡すが、
「ね、これ返さなくていいから、代わりに冬がそのポシェットに差してるボールペンをもらえない?」
「これ?」
 
ボクは愛用のミニーマウスのボールペンを取り出す。
「冬が引っ越していった時って、何か急に決まってバタバタだったじゃん。その後も何度か会ってるけど、ボク、考えてみたら冬と記念の品みたいなの一度も交換してなかったなと思って」
 
「確かにそうだね〜。このポシェットはリナからもらったんだよね」
「だから、今日買ったボールペンはボクと冬との間の記念品ということにして、代わりにそのミニーマウスのボールペンをボクにくれない?」
「うん。そうしよう」
と言って、ボクは微笑んで、ミニーマウスのボールペンを麻央に渡した。
 
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「このミニーマウスのボールペンも誰かからもらったもの?」
「それはね。小学5年生の時に絵画コンクールで入賞した時の賞品」
「よし。大事そうなのだから、しっかりもらった」
「ふふふ」
 
「でもね、そのボールペンたぶん、使うのは冬じゃないよ」と麻央。
「へ?」
「冬はそのボールペンを誰か親しい友達にあげることになると思うな。ボクってこういう霊感は当たるんだ」
「昔から、麻央は霊感強かったね」
 
「そもそもこのボールペン、向こうから『私を買って』と言ってるみたいな気がしたんだよね。それでボクも凄く欲しくなっちゃって」
「呼ばれたんだね。冬はきっと、本来の持ち主に行くための仲介者なんだよ」
「なるほどー」
 
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そういう訳で、後に30曲以上のミリオンヒットを含む何万曲もの歌を生み出すことになるこのセーラーのボールペンは実はボクと麻央が共同で買ったものなのである。
 
「前から思ってたけど、冬も一人称が『ボク』だよね?」
「そう。麻央の影響だよ。昔は『僕』と言ってたから、違和感があったんだけど、麻央と同じイントネーションで『ボク』と言うようになってから気持ちが安定した」
「ボクって女の子の一人称だもんね」
と言ってふたりで笑う。
 
「麻央は結局『わたし』になってないんだね」
「堅苦しい場では『わたし』とか『わたくし』とか言えるようになったよ。でも普段はやっぱり『ボク』のまま」
「麻央はそれでいいと思うよ」
「うん。でも冬は『わたし』と言えるようになった方がいいと思うよ」
「ふふふ。その内」
 
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「制服迷ってると言ったね?」
「うん。採寸はしてもらったんだよねー。でも期限までに申し込む勇気が持てなかった」
「じゃ学生服か何かで通うの?」
「それも憂鬱なんだけどねー」
 
「冬って昔から、それしか選択肢が無いって時にまた迷うよね」
「うん。ボクって優柔不断なんだよ」
 
「そうでもないと思う。冬って必要な時の決断力と実行力は凄いよ。でも冬が優柔不断になってる時って、そこで決断せずに待ったことが結果的に良い方向に進んでいく元になる場合がしばしばあるんだ」
「そうだっけ?」
 
「だから今迷うんだったら、迷うままにしてればいいよ。でも学生服で通えば冬は男扱いされるから、それがものすごいストレスになるから覚悟しといたほうがいいよ」
「・・・そうだろうね」
 
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「それと冬自身が苦しむだけじゃなくて、周囲も戸惑わせる。だって男の子と思って接したのに、実態は女の子だったら『え?』でしょ」
「ああ、それ昔からよくリナに言われる」
 
ボクはSとの恋愛も結局それだよな、という気がした。
 
「女子制服で通えば、そのかなりの問題を解決できる。でも冬はひょっとして第三の道を見つけてしまうかも知れないなあ」
と麻央は言って微笑んだ。
 
この日の麻央との会話でボクは女子制服の発注はいったん保留し、新学期は取り敢えず学生服で学校に出て行くことにした。
 
なお、この日は麻央との会話がはずみすぎたので、17時にホテルに戻るのではなくお母さんの方をボクの自宅に呼び、一緒に御飯を食べた。うちの母と麻央の母も久しぶりの再会だったので、懐かしそうにしていた。
 
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夕食後はお母さん同士が話し込んでいたのもあり、ボクと麻央はボクの部屋に入った。
「凄いCDだね!」
「この内の2000枚はリナの大伯父さんの遺品をもらったんだよ。それからお母ちゃんと伯母ちゃんが若い頃聴いていたCDを合計1000枚くらいもらってる」
「へー。冬のことだから、これ全部聴いてるよね」
「うん。聴いてる」
 
「冬はピアノもうまいし、音楽家になるのもいいかもね」
「ボクは音楽的な専門教育受けてないからね。そちら方面はさすがに無理」
「んじゃ、歌手とかシンガーソングライターとかもいいんじゃない?」
「ああ、やってみたい気はするね」
 
「冬は可愛いからアイドル歌手にでもなれるかもよ」
「女の子の?」
「当然」
 
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「ってか実はもう女の子の身体になってたりしないの? こうして至近距離にいても男の子の臭いがしない」
「麻央だから正直に言うけど、男性化は色々な手法で止めてる。だから体臭が男の子じゃないんだと思う。でも手術はまだ何もしてないし、一応男性機能は残ってるよ。使ってないけどね」
 
「ふーん。。。。あ、そういえばさ。何度か一緒にお風呂入ったね」
「そうだね」
「リナとかが強引に女湯に連れ込んでたけど、他でも温泉とか行ったりしてる?」
「うん。小学校の修学旅行、それからその後友だち同士で山形の温泉に行って、そして中学の時に陸上部の合宿に中学の修学旅行でと、温泉に入ったよ」
「へー。それって、どちらに入ってるの?男湯?女湯?」
 
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「ふふふ。混浴は幼稚園までだよ。小学生や中学生が男湯に入ったら大変」
「ほほお」
と麻央は楽しそうな顔をした。
 

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入学式の日、ボクが学生服で学校に出て行くと、入試の時の試験官をしていた先生(高田先生)が寄ってきた。
「君、入試の時にセーラー服着てた子だよね」
「はい」とボクはあの時使った中性的な声で答えた。
 
「学生服で通学するの?」
「とりあえず、これでもいいかな、と。でも途中で女子制服に替えさせてもらうかも知れません。実は中学の時も最初は学生服だったのが、卒業間際には、なしくずし的に結構セーラー服も着ていた感じで。入試の時はやはり本来の自分に返って受験したかったのでセーラー服を着たのですが」
 
高田先生はボクの話に頷いた。 
「うん。そのあたりはまだ自分自身迷いがあるのかな?」
「そうですね。。。。」
「そのあたり、悩んだり迷ったりしたら、いつでも僕に相談して。男の僕に相談しにくいことなら、保健室の先生とかに相談してもらってもいいし」
「分かりました。ありがとうございます」
 
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高田先生は生徒指導の先生に話を通してくれたようで、ボクが高校1〜2年の頃、少し長めの髪にしていても、注意されることは無かった。しかし、ボクが男子の髪の基準を明らかにオーバーしている長さの髪なのに注意されないことを、同級生たちも特に疑問に感じていない雰囲気もあった。
 

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入学式が終わって、オリエンテーションに入る前に、奈緒がボクの所にやってきた。
「冬〜、なんで女子制服じゃないのよ〜」
「えへへ。仮面男子高校生」
「私にはそれ、男装女子高校生にしか見えないけど」
「ああ、そうなのかもね」
 
「女子制服は作らなかったの?」
「採寸はしてもらったんだけどね」
と言ってボクは学生鞄の内ポケットから、採寸表を出して見せる。
 
「採寸したんなら作れば良かったのに」
「ボク自身の心が本当に女の子になっちゃったら、女子制服で出てくるよ」
「冬の心は最初から女の子の心だったと思うけど」
「そうかな?」
 
「でも残念だね。違うクラスになっちゃった」
「うん。でも1年生は全部ひとつの校舎みたいだし。階は違うけど遊びに行けるよ」
「そうだね〜。私もうちの学校からここに来た子で、あまり仲良い子がいなくてさ」
「また、いろいろおしゃべりしよう」
「うん」
 
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この学校は以前はひとつの校舎に全学年入っていたのが、数年前にクラスを増やしたため教室が足りなくなり、新校舎を建てて1年生はその新校舎に入るようになっている。
 

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「そうそう。冬はどんな顔して生徒手帳の写真、写った? 私ひどい顔して写ってるよ。何か有無を言わさずカチャッて撮られたもんね」
 
「写真? あれ?いつ写真撮られたっけ?」
と言いながら、ボクは入学式前に受付でもらったばかりの生徒手帳を取り出す。
 
「最後のページに載ってるよ」
「へー」
と言いながらボクは生徒手帳をめくった。
 
「え?」とボクと奈緒は同時に言った。
「これって・・・・」
 
女子のブレザーを着たボクの写真がそこには転写されていた。
 
「ああ、分かった。冬、女子制服の採寸してもらったって言ったよね。あの採寸の時に、試着した制服で生徒手帳の写真撮っちゃうんだよね。男子の方は別室で学生服を着せられて撮影されたと思うけど」
 
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「えっと・・・確かにあの時写真撮られた」
「この生徒手帳は3年間使うんだよ」
「ははは」
 
「やっぱり、冬はちゃーんと、女子高生になったね」
「まいっか」
 
「ふーん。いいんだ? それなら、この写真に合わせて女子制服もちゃんと注文しようよ」
「うーん。。。その件は取り敢えず保留で」
「でも定期券作る時に学生服で行ったら、これ違うって言われるよ」
「あはは。それはどうしようかなあ」
 

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オリエンテーションでは、さすが進学校らしく、大学進学についての基本的な説明、補習のこと、日々の学習の仕方、などが説明された上で、学校生活における注意なども行われる。また男女交際についても、明るい交際に努めようとか、セックスはできたら高校生の内は控えたいが、どうしてもしたい場合はちゃんと避妊すること、などというのも言われる。変にセックスを否定するのではなく避妊を勧める言い方に、ボクは好感を持った。やっぱり、この学校は自分に合っているという気がする。
 
その後、各自の教室に入る。担任の先生・副担任の先生が自己紹介した上で、あらためてこれからの高校生活について色々お話がある。そして各種委員を
「最初はお互い誰を推薦していいか分からないだろうから」
と言われ、先生の方から指名される。
 
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学級委員、生活委員、美化委員、保健委員、体育委員、図書委員、放送委員、などが男女1名ずつ指名された後、
 
「応援団リーダー。これは男子から1名。唐本君」
と呼ばれた。
 
へ? 応援団!?ボクが? あはは、御冗談でしょ? と思うが先生は、
「各委員になった人は、ホームルームの後、それぞれの集合場所に行くこと」
と言われる。応援団の集合場所は本館屋上らしい。あははは。
 
ホームルームが終わった後、ボクは何人かの男子から声を掛けられた。
 
「オリエンテーションの時、何か女の子と話してたね。彼女?」
「ううん。友達だよ。小学校の時の同級生なんだ」
「へー。なんか凄く仲よさそうな雰囲気だったから彼女かと思った」
 
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「唐本君、応援団に指名されたけど、なんかそういう雰囲気じゃないよね」
「うーん。なんで指名されたのかなあ。中学の時運動部やってたからかな」
 
「何部やってたの?」
「陸上」
「へー。短距離?長距離?」
「長距離。一度だけだけど、3000mで地区大会で1位になったけど」
「わあ凄い。でも高校でも陸上やるなら、応援部との掛け持ち無理だからって言って辞めさせてもらったら?」
 
「うん。高校の陸上のレベルには付いていけないと思うから陸上部に入るつもりはないけど、応援団はボクには無理な気がするんだけど、取り敢えず1度は行ってくるかなあ」
 

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■夏の日の想い出・高校進学編(5)

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