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■夏の日の想い出・雪が鳥に変わる(8)

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「時代劇スペシャル?」
と私は耳を疑った。
 
「年末の特別番組で6時間の大作です。私もどうかと思ったんですけどね。考えていたら意外に行けるかもと思って」
 
とコスモスは言った。
 
「主演はアクア?」
 
「アクア、高崎ひろか、品川ありさ、トリプル主演です。そして§§ミュージックのオールスター総出演。信濃町ガールズや研修生たちにもたくさん出てもらいます」
 
「へー!でも女の子ばかりでしょ?時代劇で役を割り当てられる?」
「ほぼ全員男装で」
 
「ほほぉ」
 
「お約束通り、アクアは女装で」
 
「あはは。でも何やるの?忠臣蔵?太閤記?」
 
などと言いながら、アクアは秀吉とネネのダブルロールかな?などと考える。
 
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「源平の合戦です。静御前がアクア、弁慶が品川ありさ、源頼朝が高崎ひろか、西宮ネオンが北条政子」
 
「もはや男装・女装が目的化している」
「ネオンが『また女役なんですか〜?』と嫌そうな顔をしていました」
「彼もよく女装させられる」
「実はそうなんです」
「まあ美少女になるよね」
 
と言ってから、私は少し考えてから訊いた。
 
「あれ?義経は?」
「秘密です」
 
「そうなの?でもありさの弁慶は凄く期待できそう」
「でしょ?本人は『また男役ですか?』と言っていたけど、今回は女子タレントが軒並み男性役と聞いて、だったらいいかと」
 
「確かにあの子はよく男役をさせられる。まあそれでローズ+リリーのPVにも男装で出てもらったけど」
 
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「あれ格好よかったです!」
 

「ほかに佐藤忠信が今井葉月、木曽義仲が白鳥リズム。2人とも男装で」
 
葉月は男装というより本来の性ではないのか?と思ったが、いいことにした。
 
しかしいかにも野性的な木曽義仲を“立っておしっこするの好き”などと堂々と発言しちゃう白鳥リズムというのは適役っぽい。身長こそ低いものの、運動能力では§§ミュージックのタレントの中で随一である。小学校時代は男子サッカー部のエースだったらしい。テレビ番組で、スカイロードの男子5人とフットサル対決・バスケ対決で勝利して、どちらも1人で点を取りまくり
 
「リズムちゃんは男の中の男だ」
とスカイロードの5人に言われて、得意そうにしていた。
 
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実はスカイロードの5人 vs ありさ・ネオン・リズム・ルンバ・レイアという構成で最初バスケ対決で信濃町組が大差で勝った(リズムは1人で24点取った)ので翌週フットサルで再戦したもの。この試合でリズムは20分間の試合で5点も入れて「ハットトリックより凄いからホットトリック」などと言われていた。試合はゴールキーパーの品川ありさが好セーブを連発して5−0で勝ち、司会者がスカイロードに「女の子だからといって手加減しなくてもいいのに」と言ったら「手加減なんかしてないですよ。マジですよ」とkomatsu君が怒ったように言っていた。
 
リズムは男子より女子のファンが多く「リズムちゃんのお嫁さんになりたい」というファンレターは珍しくない。本人が通っていた小学校・通っている中学校でも、女生徒からバレンタインをたくさんもらっているらしい。事務所に毎年送られてくるバレンタインのチョコの量はネオンより多い!
 
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彼女は握力や背筋力もスポーツ選手並みで、夜道で襲おうとした男の睾丸を握り潰したという伝説があるが、さすがにそれは根も葉もない噂だと本人は言っていた。しかし体力競争番組でスティール缶やリンゴを握り潰してみせた彼女なら、睾丸くらい握り潰せるかもとネットでは書かれている。
 

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「そうだ。東雲はるこにも平敦盛(たいらのあつもり)やってもらいます」
 
「似合いそう!!あの子、いかにも儚げに見えるんだもん」
「見かけと中身にギャップがありますよね。サポート役も兼ねて町田朱美が平教経で」
 
「それもまた似合いそう!あの子堂々とした雰囲気あるし。でも教経は敦盛よりよほど出番が多くない?」
 
「エースに汚れ役はさせられませんし」
「確かに!」
「それにあの子、演技力凄いですよ。リズムは本当にいい子を見つけてくれた」
「ああ」
 
(最終的に平教経は西宮ネオンがすることになり(女役でなくて良かった!と喜んでいた)、町田朱美は平知盛に回った。教経以上の汚れ役だが、彼女は「悪役OK。好きです」と言って熱演してくれた)
 
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アクアは7月19日に終業式を迎えて夏休みに入ったが、それに先行する7月上旬から映画『ヒカルの碁・棋聖降臨』の撮影に入った。夏休みに入るまでは、主として、アクア(進藤ヒカル・橘中ミナコ2役)、城崎綾香(藤原佐為役)、元原マミ(藤崎あかり役)、それにボディダブルの今井葉月の4人、および数人のおとなの役者さんでできる範囲で撮影をしている。
 
狩衣衣装を着けた城崎綾香を見て元原マミ(21)は
 
「わぁ。美しい。平安衣装って美しいですね」
と言った。
 
「うん。これ格好いいよね」
と綾香も言っている。
 
「十二単(じゅうにひとえ)とかも着けるんですか?」
「いや。私は男役だから」
 
「・・・もしかしてそれ男性の衣装ですか?」
「そうだけど」
 
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「・・・ひょっとして佐為って男なんですか?」
「そうなのよ」
 
「原作読んでて、てっきり女性かと思ってた!」
とマミは驚いていた。
 
「うん。私もふつうに女役だと思ってたから、男役だと言われてびっくりした!」
と城崎綾香(24)も言う。
 
ヒカルの碁が連載されていたのは1999-2003年で、まだ綾香が4-8歳の時であり、彼女もこの物語を今回の映画撮影まで知らなかったらしい。マミは綾香より3つ下である。
 
「でも城崎さん、時々男役もなさってますよね?」
「まあ私は実は男だから」
 
マミは一瞬考えてから言った。
 
「そういう冗談、真(ま)に受ける人もいますよ」
 

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撮影は、平日は都内のスタジオで撮れる範囲のものを撮り、土日は郷愁村に作ったセットで撮影する。ここには碁会所のセットが2個(内装を変更して多数の碁会所の場面に使用する)、日本棋院まるごとのセット、棋院の近くにあるという想定のファーストフード店のセット(架空のマクテリアというお店)、囲碁大会や囲碁講座などの場面に使用する広間のセットなどが作られている。
 
当初作る予定だった日本棋院囲碁研修センター(プロ試験会場)のセットは“今年は”作らないことになった。来年“ヒカルの碁・プロ試験編”を制作することになったので研修センターも来年建てることになった。
 
なお極めて無意味に、スクール水着を着た橘中ミナコがイライラをぶつけるためにプールでひたすら泳ぐシーンがあったが(無論女子水着姿のアクアを映すのが目的)、そのシーンは郷愁アクアリゾートの25mプールを使って撮影した。アクアは「この後、男子水着姿のヒカルが泳ぐシーンも撮るから」と言われて渋々女子水着で泳ぐのを承知したのだが、実際には男子水着姿は「ごめん。その場面カットになった」と言われて撮影されず「そんなぁ!」と言っていた。
 
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完璧に詐欺である。
 
(アクアの男子水着姿は、ほぼ需要が無い!)
 

ヒカルの祖父・進藤平八役では紅川会長が特別出演しているが、紅川さんにとってアクアは本当に孫のようなものだろう。ちなみに紅川さんは囲碁二段の免状を持っている。アクアの方が強いので平八とヒカルの対局シーンは囲碁初心者の葉月が打っている。最初に撮影した対局はマジで勝負にならないというより“囲碁にならない”状態だったので、2人の最初の対局にピッタリということで本編に収録されることになった。
 
学校での場面は夏休みに入ってから『狙われた学園』なども撮影した埼玉県加須市の廃校で1週間掛けて集中的に撮影した。
 
碁会所の客、囲碁大会の参加者、などは一般の人からエキストラを募集して撮影している。募集はまともにやると大量に希望者が出て収拾が付かないので、熊谷駅構内に貼り紙!をして先着100名に達した所で、貼り紙は剥がしてしまった。実際には貼り紙が貼られていたのは、ほんの1時間ほどである。
 
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その他に日本棋院熊谷支部からの紹介で、市内幾つかの学校の囲碁部の生徒たちにも参加してもらったので、彼らが打つ所がしっかりしていて、とてもいい雰囲気になった。
 

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さてアクアが映画撮影をしている間は、アクアの楽曲面の事実上の統括者である和泉も時間が取れるので、この間に私たちはKARIONのアルバムの制作を進めた。
 
作業はトラベリング・ベルズを中心に追加伴奏者も多数入れて、例年通り、渋谷のKスタジオで進めていく。気分転換も兼ねて大田区の小ホール(たまたま空いていた)でオーケストラの人と一緒に収録したものもある。
 
各楽曲をだいたい2〜3日練って1日掛けて録音する感じで進め、様々なイベントで中断しながらも9月中旬には完成、10月16日(水)に発売することができた。私たちは★★レコードの社内がまだ大混乱しているさなか、この時点で臨時にKARIONを担当してくれていた、今里さんと一緒に発売記者会見をした。今里さんはこの夏のサマフェスにもKARION担当として同行してくれたが、結局彼女はUFOという女子中生3人組の新人ユニットを担当することになり、KARIONは“出戻り組”の鷲尾海帆さんが担当してくれることになる。
 
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なお、KARIONのツアーという話もあったのだが、和泉は9月以降はまたアクアの作業で忙しくなり、私はローズ+リリーの作業で忙しいので、今年はKARIONのツアーは無しということになった。
 
KARIONの活動が停滞すると、美空はゴールデンシックスの方に行っているのだが、結果的に小風が暇になり!、暇そうにしていると親が見合いの話などを持ってくるので、しばしば私のマンションにやってきて、風花から雑用を色々頼まれて便利に使われていた!
 
この状態は11月に鷲尾さんが正式にKARION担当になるまで続いた。
 

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その日、私がマンションで『十二月』のスコアの調整をしていたら、ドアホンが鳴る。見るとゴールデンシックスのカノン・リノンに美空なのでエントランスを開ける。部屋の中に入ってきたカノンはいきなり言った。
 
「私たちはローズ+リリーに挑戦するぞ」
「え?そうなの?」
 
このネタは2014年春のローズ+リリーのツアーで随分やったものである。ライブの後半冒頭にローズ+リリーより先にステージに出てきてアピールし、私たちが出て行くと、カラオケ対決をして、もしゴールデンシックスが勝てば、ライブの後半で歌うのはローズ+リリーではなくゴールデンシックス、という趣旨だが、むろん私たちの全勝だった。
 
ももクロのライブ上の演出にヒントを得て実施したものだが、これを発案した氷川さんはゴールデンシックスに「勝つ気でやれ」と唆し、彼女たちが本当にマジなので、こちらは結構必死だった。
 
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「私たちとカラオケ対決しろ。それで勝ったら12月のローズ+リリーのツアーはローズ+リリーではなくゴールデンシックスが歌う」
とカノン(花野子)は言った。
 
「何それ〜〜〜?」
「対決するの怖い?」
とリノン(梨乃)が挑発的に言うので
 
「分かった、分かった。対決するよ」
と私は答えた。
 
「私、審査員ね」
と美空は楽しそうに言った。
 

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部屋の隅で編曲作業をしていた風花が寄ってきて言った。
 
「そういう話は営業が絡むので、鱒渕さんを呼んで下さい」
と言う。
 
「分かった。★★レコードの人も呼んだ方がいいかな?」
「お忙しいでしょうけど、氷川課長を呼びましょう」
「分かった」
 
それで鱒渕さんは20分ほど、氷川さんも40分ほどで来た。
 
鱒渕さんは
「勝負するのはいいんじゃないですか?ゴールデンシックスは確か2月にツアーやる予定でしたよね?」
と言う。
 
「よく知ってるね〜」
 
「だったら、万が一ローズ+リリーが負けたら、ゴールデンシックスとツアーを交換するというのではどうでしょう?」
と鱒渕さんは提案する。
 
「私たちはそれでもいい」
とカノンが言う。
 
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氷川さんは難しい顔をしていたが、やがて言う。
「ケイちゃん、負けないよね?」
「はい」
 
「だったら、やってみよう」
と氷川さんも言った。
 

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「ルールはケイ、カノン、マリ、リノン、の順に歌ってマリとケイの合計点、リノンとカノンの合計点で勝負。曲は今年発売された曲の中から自分の好きな曲で」
と“審査員”の美空は言う。
 
「まあいいか」
と私は答えたが、マリの歌唱力にやや不安を感じた。
 
美空が自分のスマホからカラオケ採点アプリを起動する。それで最初に私が歌うことになった。
 
3月に出したローズ+リリーのシングル『天使の歌声』から表題曲を美空のスマホで演奏されるカラオケに合わせて歌った。
 
点数は99点である。
 
うーん。どこが悪かったんだろう?完璧に歌ったつもりだったのに!
 
次はカノンの番である。
 
彼女はゴールデンシックスが今年出したCDの曲『ボクはモップガール』を歌った。ひたすら体育館のモップ掛けをする、補欠部員の意気込みを歌った、元気になる歌である。今は補欠だけど、来年はレギュラーになって、再来年はエースだ!と元気に歌い上げている。
 
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点数は98点だった。
 
「悔しい〜。100点狙っていたのに」
とカノンは言うが、確かに今のは100点でもおかしくない歌唱だった。
 
「今のところ1点差。次はマリ」
と美空が言う。
 
マリはちょっと不安げな顔をして『恋愛自動販売機』を歌った。私とカノンの点数が僅差なので、ほぼマリとリノンの勝負になる。物凄く緊張している。もっとも、そんなプレッシャーに負けるようなマリではない。
 
採点は94点だった。
 
この曲はケイ名義の曲だが、実は青葉と千里3!がやっている松本花子システムが生み出した曲であることを既に私は知っている。高校時代の私が書いたようなシンプルな和音の曲なので歌いやすい。ハイスコアが狙いやすい曲だった。
 
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マリがひじょうに良い点数を出したので、私はホッとした。マリもホッとしている。しかし後はリノンの出来次第だ。
 
リノンはゴールデンシックスの曲『ケーキ食べ放題』を歌った。私は思わず目を瞑った。物凄くできがいいのである。きっと凄い練習をしてきたのではないかと思った。負けたかも?負けちゃったらどうしよう?と私は必死で頭を回転させる。
 
点数は100点だった。
 
「すごーい!」
と本人が驚いている。カノンも、そして鱒渕さんも驚いていた。
 
私は天を仰いだ。
 

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「ケイ+マリは193点、カノン+リノンは198点。ゴールデンシックスの勝ち。よって12月のツアーはゴールデンシックスが取ります」
と美空が判定をくだす。
 
「ごめーん」 とマリが謝るが私は言った。
 
「いやマリは充分頑張った。でもリノンが凄すぎた。今回は完敗。また鍛え治すよ」
 
鱒渕さんは厳しい顔をしていたが、氷川さんは目を瞑り、両手で頭を数回打ってから言った。
 
「こうなった以上仕方ない。ローズ+リリーのツアー日程発表は明日の予定だったから、すぐに電話してゴールデンシックスに差し替える」
 
「分かりました」
 
それで氷川さんはその場でぴあ・e+・ローソンチケットに電話を入れてすぐに変更依頼を出すから、もしデータ提出が間に合わなくても、ローズ+リリーのツアー発表は停めてくれと言った。また広告代理店にも電話して、明日までにデータを差し替えると連絡した。風花は妃美貴に電話して、ファンクラブ向けのメルマガから、ツアー日程の記事を削除してくれるよう言った。このメルマガは今夜発送する予定だった。
 
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カノンが言う。
 
「氷川課長、私たちはローズ+リリーに勝つ気で、ホームページの公開用データ、ぴあ・e+・ローソンチケットへの納品データ、広告代理店に渡すCF全部、作ってますよ」
 
「あんたたち、本気で勝つ気で頑張ったね!褒めてあげるよ」
と氷川さんは初めて笑顔になって言った。
 
そういう訳でローズ+リリーのツアーは12月ではなく来年2月になってしまったのであった!
 
「もし変更が間に合わなかったら、ケイとマリがカノンとリノンに変身したということで」
 
「それはさすがに無理がある」
と言って私は苦笑した。
 
 
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夏の日の想い出・雪が鳥に変わる(8)

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