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夏の日の想い出・雪が鳥に変わる(1)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-07-20
 
2017年4月10日(月).
 
東京足立区のP中学校で入学式が行われる。多くの新入生は保護者同伴で登校してきているが、式が始まるまでは保護者は控室に指定されたランチルームに入り、生徒は教室に入る。
 
秋田利美が真新しいセーラー服で教室に入って行き、
 
「おはよう!」
とみんなに言うと、
 
「君、転校生?」
とクラスのみんなに言われた。
 
ここはP小学校と同じ校区なので、全員顔見知りである。知らない顔の子がいたら転校生かと思われる。
 
「え?何言ってんの?ボク秋田だけど」
 
「何!?」
 
吉岡君が利美の近くに寄り、じっくり顔を見る。
 
「本当に秋田だ!」
 
「なんでセーラー服なの?」
「え?だってこれ着ろと言われたから」
「どうして?」
 
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「いやその何と言うか。もう小学校も卒業だから、お前も男は卒業して女になれと言われて」
 
「何それ〜〜!?」
「まさか性転換しちゃったの?」
 
「性転換になるのかなあ。え〜?女なんて面倒くさいと言ったんだけど、親父がボクのチンコを鉈(なた)で切り落としちゃったし」
 
「え〜〜〜!?」
「そんなのあり?」
「じゃ、ちんちん無くなっちゃったの?」
「まあ、チンコは無いかな」
 
「お父さんに切られたって、痛くなかった?」
「病院行った?」
 
みんなに取り囲まれて問われて、利美はどうしよう?と思った。
 

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日本海縦貫線とは大阪から日本海沿いに青森まで到達する旧国鉄の鉄道線のことで、実際には下記の路線で構成されていた。
 
大阪−米原 東海道本線
米原−直江津 北陸本線
直江津−新津 信越本線
新津−秋田 羽越本線
秋田−青森 奥羽本線
 
その後、琵琶湖の西岸を経由する“ショートカット”の湖西線が開業し、最近では北陸新幹線開業に伴う並行在来線の第三セクター化で、
 
金沢−倶利伽羅 IRいしかわ鉄道
倶利伽羅−市振 あいの風とやま鉄道
市振−直江津 えちごトキめき鉄道
 
と移管されている。
 
さて、この日本海縦貫線を走る列車として昔“急行しらゆき”という列車があった。1963年4月20日の国鉄ダイヤ改訂で発足したもので、当初は次のような設定であった。
 
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下り 金沢発・秋田行き
上り 青森発・金沢行き
 
下りと上りで運行区間が違うが、実は下り列車の車両の一部は、上野発青森行き《急行あけぼの》に併結されてちゃんと青森まで行くのである。それでそのまま乗っていてもいいのだが、秋田であけぼのが到着するまで1時間半待つことになる。それで秋田で一応運行終了したことにしていたらしい(後に公式に青森行きに変更されて、結局あけぼのと併結され“二階建て”運行となった)。
 
《急行しらゆき》は1982年まで運行されていたが、この年11月25日に特急に昇格、《特急白鳥》と統合され、それまで1往復だった白鳥が1日2往復になった。
 
つまり《白雪》が《白鳥》に変じたことになり、これを「雪が白鳥に変身した」と鐵道ファンたちは言ったのである。
 
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なお“しらゆき”の名前は、2015年に北陸新幹線開業に伴い、新井・上越妙高−新潟間の特急として復活した(それ以前に快速列車の名前に一時使用されたこともある)。
 

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みんなから驚かれたり、心配されたりして、どうしよう?と利美が思った時、染屋君が言った。
 
「みんな何言ってるの?秋田は元々女じゃん」
 
「え〜〜〜!?」
「うっそー!?」
と驚きの声があがる。
 
「待て。だって、こいついつも男子トイレ使ってたぞ」
「いや〜、女子トイレから追い出されていたもんで」
「だって立って小便してたじゃん」
「ボク立ってするの得意」
 
「やはりチンコあったのでは?」
「こういう道具使うんだよ」
と言って、1年半愛用したトラベルメイト(但し本家のではなく中国製のコピー品)を見せる。
 
「何これ?」
「ここをおしっこの出てくる所に当てるんだよ。そしたらこちらからおしっこが出る。これで小便器で立ってできる」
 
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「こんなの使ってたのか?」
「だって女子トイレに入ったら悲鳴あげられるし」
 
そんなことを言っていたら、呆れて見ていた女子の中で1人、糸花ちゃんが言った。
 
「それ便利そう!私も欲しい」
 
すると何人か同調する。
 
「立っておしっこできたら楽そうね」
「短時間で済ませられそう」
 
「うん。座ってやるより便利だよ。何より服は一切脱がなくていいし。パンティの前をちょっと下げるだけ。実は男物のトランクス穿いていると、これを前開きから挿入してできる」
と利美は言う。
 
「これ使うと女子トイレの混雑も解消するかもしれん」
という意見も出ていた。
 

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そんなことをしばらく言っていたが、やがてこういう声が出る。
 
「つまり秋田って女だったの?」
「そうだけど」
 
「さっき、お父さんにちんちん切られたって話は?」
「あれは冗談」
「最初からちんちん無かったの?」
「うん。生まれた時から付いてなかったらしいよ。赤ちゃんの時の記憶は無いけど」
 
「でもお前、男子更衣室で着換えてたじゃん」
「だって女子更衣室に入ろうとすると悲鳴あげられるし」
 
「セーラー服で出てきたってことは、これからは女子トイレ・女子更衣室を使うの?」
と桐恵が訊いた。
 
「できたら女子トイレ・女子更衣室使わせて下さい」
「その件は女子一同で会議していい?」
「いいよ〜」
 
それで女子一同輪になって協議した結果、僅差!?で、利美の女子トイレ・女子更衣室の利用は認可されたのであった!!
 
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「ただ女子トイレはいいけど、女子更衣室ではあんた目を瞑ってて」
などと言われる。
 
「いいよ〜。ボク別に女の子には興味無いし」
「男の子が好きなの?」
「わりと恋愛自体に興味が無い」
「ああ、そうでなきゃ男子と一緒にサッカーとかしてられないよね」
 
「でも俺、秋田にチンコ見られてる」
「男だと思ってたから、平気で裸になってるし」
 
「ボクは別に気にしないよ」
「いや、俺たちは気にする!」
「代わりにボクのお股も見せようか?」
と利美は言ったが
「やめなさい。新聞沙汰になる」
と桐恵は言った。
 
「じゃ、秋田、男子サッカー部には入らないの?」
「ごめーん。ボク歌手デビューすることになっちゃって。時間が無いから、部活はどっちみちパスさせて」
 
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「そういえば芸能事務所で訓練受けているって言ってたね」
「とうとうデビューするんだ!」
 
「ああ残念。エースストライカーとして期待してたのに!!」
「ごめんねー」
 
「歌手って男の子歌手?」
「女の子歌手だよぉ」
 
「事務所はどこ?ジャニーズ?LDH?」
「§§ミュージック」
「女の子専門の事務所かぁ!」
「でもあそこ男の子もいるよ。西宮ネオン君」
「そうだ。秋田君も、性転換して男の子歌手になったら?西宮ネオンに続く2人目の男の子歌手ということで」
「それ、ちょっと心がゆらぐ」
と言いながら、みんなアクアさんは男の子歌手に分類してないのか?と思う。
 
「やはり男の子になりたいのね?」
「少し悩むけど、女の子のままでいい」
 
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「むしろ、秋田君が女の子に性転換しちゃうのがもったいない」
「秋田君に憧れていた女の子もいたのに〜」
「ごめーん!」
 

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1年半前の2015年夏。
 
「利美ちゃんって、この名前は何かいわれがあるの?」
と秋風コスモス社長が訊いたので、利美は説明した。
 
「私、2004年12月3日の生まれで太陽が射手座11度26分なんです。この度数のサビアンが“A flag turns into an eagle; the eagle into a chanticleer saluting the dawn”といって・・・」
 
というとコスモスは利美の英語をちゃんと聞き取って
「旗が鷲に変わるって何か神秘的だね」
と言った。
 
この社長すげーと利美は思った。テレビではお馬鹿なアイドルみたいにしてるけど、あれは演出で実はかなり頭いいのかな。さすが社長に抜擢されるだけある、などと考える。
 
(コスモスはこの年の4月に§§プロの社長に就任した:会社分割は翌年)
 
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「それで説明すると長くなるんですが、昔日本海縦貫線を走る急行で“しらゆき”というのがあったんですが、特急に昇格した時に“白鳥”(はくちょう)という名前に変更になったんですよ」
 
「へー」
「それでその時鉄道ファンの間で『雪が白鳥に変身した』と言われて」
 
「なるほどー」
 
「それで私の誕生日時の太陽サビアンが、鳥に変身するモチーフだから、それでこの白雪が白鳥に変身したエピソードを連想して、私に白鳥という名前をつけようとしたんですよ」
 
「ほほぉ」
 
「でも白鳥って、名前としては変なので、アイヌ語で白鳥のことレタチ(リ)というから、レタって付けようとしたんですが、それは男名前に聞こえると言われて」
 
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「令太君とかいそうだね」
 
「英語の swan から諏訪子(すわこ)とか、ラテン語の cygnus から茂美(しげみ)なんて案もあったらしいんですが、結局ロシア語で白鳥のことリェビッジというから、それからとってリビで利美(リミ)になりました」
 
「ロシア語から来たのか!」
 
「でもアイヌ語では白鳥の幼鳥のことをルサッカというから、私、小さい頃はルーサって呼ばれていました」
 
「微妙に性別曖昧な呼び方のような気がする」
「だから、私、今いる小学校では、私のこと男の子だと思い込んでいる人結構いますよ」
と利美は言ったのだが
 
「待て。君、小学生なの?」
とコスモスは訊いた。
 
「そうですけど」
「このコンテストの応募条件は中学生以上なのだけど」
「え〜〜〜!?」
 
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それで結局利美は第2回ロックギャルコンテストで優勝したものの、中学生になるまで研修生として歌や踊りのレッスンを受け、中学になってからデビューすることになったのである。レッスンを受けやすいように、新潟県十日町市の小学校から東京都足立区の小学校に転校することになった。
 
(十日市町は広島県、十日町市は新潟県。十日町市は北陸新幹線が金沢まで開通する前《特急はくたか》が走っていた北越急行線のある町で、雪祭りや和服の生産で有名である。ただし白鳥リズムが生まれたのは北海道の弟子屈町(てしかが・ちょう)である。「北海道生まれ・新潟育ちの秋田です」などと自己紹介していた)
 

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利美は
「この度、新潟県の学校から転校してきました秋田利美です、よろしくお願いします」
とP小学校に転校してきてみんなに挨拶した。
 
「秋田君、運動神経良さそう。何かスポーツしないの?」
とクラスの男子から言われる。
 
「えっと・・・。前の学校ではサッカーやってました」
「おお。だったらこちらでもサッカー部に入ってよ」
「実はうちのサッカー部、10人しかいないんだよ。秋田君が入ってくれたら11人になって大会に出られる」
 
あはは、それは大変な部だなあと利美は思った。
 
コスモス社長に訊いてみると、小学生の間はあまりお仕事とかも無いし(*1)レッスンだけだから、スポーツ少年団くらいはいいし、むしろそうやって身体を鍛えていれば、デビューして売れた時にハードスケジュールになっても耐えられるだろうからと言われたので、入ることにした。
 
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しかし“ハードスケジュールになっても耐えられる”って怖っ!
 
確かに桜野みちるさんとか忙しそうだよなぁ。
 
(*1)実際にはかなり多忙になった。後述。
 

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利美がサッカー部に入ってすぐ、次の日曜日に大会があった。
 
準備運動をしていて、ふと疑問に思った。
 
「向こうのチームは全員男子なんですね」
 
するとチームメイトから言われる。
 
「そりゃ女が混じってたら思い切り突っ込んでいけないし」
「女子は女子同士でやってもらわなくちゃ」
「これは男子の大会だし。俺たち男子チームだし」
 
え?え?え?
 
しかしこの試合で利美はいきなりハットトリックを決め、P小学校は2回戦に進出したのである。P小がサッカー大会で勝ったのは15年ぶりらしい!
 
「秋田すげー!」
「わが校のエースだ!」
「男の中の男だ!」
 
などと言われて、利美は内心冷や汗を掻いていた。
 
(この大会は利美の活躍で2回戦・3回戦も突破し、準々決勝で強豪と当たり敗退した)
 
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利美はP小学校に転校してきてから一週間ほどの内にクラスメイトもサッカー部のメンバーも自分のことを男子だと思い込んでいることに気付く。
 
トイレも女子トイレに入ろうとしたら
「お前そっちは女子便」
「間違えるなよ」
「痴漢と思われるぞ」
 
などと言われて男子トイレに連れ込まれてしまった。
 
利美が小便器が並んでいる所で困っていると
「しないの?」
と言われる。
 
「あ、ボクはこちらで」
と言って個室に行く。
 
「なんだ大か」
 
それで男子トイレの個室でおしっこをしながら、明日からどうしよう?と利美は悩んだのであった。
 

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■夏の日の想い出・雪が鳥に変わる(1)

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