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■夏の日の想い出・雪が鳥に変わる(4)

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「そういえば、白鳥リズムちゃんの芸名って、紅川会長が付けたんだったっけ?」
と私は訊いた。
 
「あ、それ私も誰が付けたのかなと思ってた。駅名シリーズじゃないし」
 
§§プロ/§§ミュージックの歌手には、芸名を駅名から採られた子が多い。
 
新宿信濃子、上野陸奥子、立川ピアノ、大宮どれみ、日野ソナタ、藤沢ナイン、浦和ミドリ、川崎ゆりこ、海浜ひまわり(←海浜幕張)、千葉りいな、神田ひとみ、品川ありさ、高崎ひろか、今井葉月、西宮ネオン、姫路スピカ、石川ポルカ、原町カペラ、山下ルンバ
 
と、こんなに居る。
 
「ああ、ゆりこも知らなかったんだっけ?」
と言ってコスモスは説明してくれた。
 
白鳥リズムの本名が秋田利美で、その「利美」が白鳥を意味するロシア語лебедь(リェビッジ)から来ていることをまず説明する。
 
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・彼女の生まれた日時の太陽サビアンが『旗が鷲に変わる』だった。
 
・昔金沢−青森間を走っていた急行しらゆきが、特急に昇格した時に“白鳥”の名前になり当時の鉄道ファンから「雪が白鳥に変身した」と言われた。
 
「生まれた日のサビアンが鳥に変身する象徴だったことで、鉄道ファンのお父さんが『雪が白鳥に変身する』というのを連想して、それで白鳥という意味で“利美”(リビ)と付けて、それを訓読みして“としみ”にしたんですよ。その話を聞いて私が“白鳥”(しらとり)を苗字にしようと思ったんですよね」
 
とコスモスは説明してくれた。
 
コスモスは“訓読み”といったが、実際には湯桶読みだよなと思う。“美”の訓読みは「うつくしい」とか「よい」であり、“び”も“み”も音読みである。ここで“び”は漢音、“み”は呉音だ。
 
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「“リズム”のほうは紅川会長が名付けたんですよ。本人は『この子、物凄くリズム感がいいから』と言ってました。実際リズムはピアノも弾くしドラムスも打つけど、優秀なドラマーです。凄くビートが正確」
 
「彼女のドラムスは聞いたことがなかったなあ」
 
「でもリズム自身は“リェビッジ”と言ったのが“リズム”に聞こえたということは?なんて言ってました」
 
「ありそう!」
と私もゆりこも言った。
 

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「でもサビアンって何でしたっけ?」
とゆりこが訊く。
 
「説明すると長くなるんだけどね」
と言ってから私は説明した。
 
発端はチャルベル(1826-1908)という占星術師が作った360度全度数の象徴である(一部の度数は欠落:例えば双子7度など)。占星術ではふつう天空を12分割して牡羊〜魚の“サイン”で象徴を考えるのだが、各サインを更に10度ずつ3分割(全体で36分割)、あるいは5度ずつ6分割(全体で72分割)する考え方もあった。チャルベルはこれを1度ずつ360分割してみたのである。
 
最初彼は360度の吉凶表を作ろうとしたのだが、作業をしている内に、各度数は吉凶ではなく、もっとニュートラルな各固有の象徴があると考えるようになる。それでそういうシンボリズムの表を作ろうとしたが、完成する前に亡くなってしまった。彼の研究は現在では↓の書籍で確認できる。
 
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Charubel "Degrees of the Zodiac Symbolised" (L.N.Fowler&Co.)
 
(筆者はこの本の第三版を所有しているが、この第三版には著名占星術師Sepharialが追加したもうひとつのサイン(通称La Volasfera)も収録されている)
 
占星術師Marc Edmund Jones (1888-1980) はチャルベルの研究に興味を持ち、各度数のシンボルをチャネラーに感知させてみようと考えた。彼の知人にElsie Wheeler (1887-1938) という女性チャネラーがいたので、1925年のある日、彼は360枚の白い紙(裏面の隅に小さく度数を書いている)を持ち、カリフォルニア州サンディエゴの Balboa Park に彼女を連れて行って、360枚の紙をランダムに“度数が見えないように”彼女に見せ、何が見えたかを尋ね、その内容を急いで各紙にメモした。
 
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(あまりにも急いでメモしたので、ジョーンズは後で自分の字が読めなかった!)
 
こうして得られた360度の象徴は、チャルベルのサインと比較検討した結果、大きくは矛盾していないと判断、ジョーンズはやはり各度数には固有の意味があるのだと確信した。これが今広く知られているサビアンである。
 
日本にはジョーンズが見つけ出したシンボルを Dane Rudhyar (1895-1985) が独自の解釈で書きあらためた改訂版のサビアンが、占星術師・直居あきら(1941-2017)及び松村潔(1953-)によって紹介され、このルディア版の象徴が、日本では最もよく知られている。
 
白鳥リズムが生まれた日時の太陽(射手座11度以上12度未満)のシンボルは各バージョンではこのようになっている。
 
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Charubel: An apple tree whose boughs are bending with ripe fruit.
Volasfera: A fair woman sporting herself on a couch.
Jones : A flag that turns into an eagle that crows.
Rhudya(1936): A flag becomes an eagle; the eagle a proud chanticleer.
Rhudya(1973): A flag turns into an eagle; the eagle into a chanticleer saluting the dawn.
 
ルディアは1936年にひじょうにミステックなシンボルを発表したのだが、後年踏み込みすぎたことを後悔して、もっとニュートラルな解釈を発表している。それで一般に1973年版が流布している。松村潔の「神秘のサビアン占星術」もこの1973年版をベースにしている。
 

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私はコスモス・ゆりこと別れて自宅マンションに帰ったが、政子は外出したまままだ帰宅していなかった。美空と一緒に焼き肉を食べに行ったはずだが、その後ラーメンでも食べに行ったかな?などと思った。
 
私はソファに横になると“雪が白鳥に変わる”ということばを考えながら眠ってしまった。
 
夢の中で雪がふりしきる暗闇の中、気動車の急行列車がディーゼルエンジンの駆動音と伴に、カタンコトン、カタンコトン、と音を立てて走っている様が浮かんだ。そしてその暗闇の中で降る雪が、列車の立てた風に煽られて舞うと、やがて鳥の形に集まり、そこから1羽の大きな白鳥が、飛び立って行った。それをじっと見つめる少年がいたが、やがて白鳥が空の雪に紛れて見えなくなった頃、少年は少女に変身した。それは白鳥リズムであった。
 
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私は目が覚めると、五線譜を取り出し、今見た夢のイメージを書き綴っていった。
 
歌詞と音符を同時進行で書いて行く。
 
それはほんの10分ほどで書き上げた。正直これ以上時間を掛けると、夢で見たイメージを忘れてしまう気がした。
 
私はその曲に『雪が白鳥に変わる』というタイトルを付けた。
 
私はこの曲を制作中のアルバム『十二月(じゅうにつき)』に入れることにした。
 

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ローズ+リリーのツアーを12月にやる方向で、鱒渕マネージャー、風花、★★レコードの秩父さんの3者を中心に、コスモス社長と氷川課長も時折入って詳細を詰めていった。結果的にはカウントダウン、復興イベントと一体となった計画が必要である。
 
「復興イベントは今年は順番からいうと宮城なんですよね」
 
これまでの復興イベントはこういう場所でやってきた。
 
2013 福島 奏楽堂(1000) (被災者を招待するイベント)
2014 東京 新宿文化ホール(1800) (寄付方式イベント)
2015 宮城 宮城県みちのくスタジアム(8万)
2016 福島 福島市みどり総合体育館(6000)・球場(2万)
2017 宮城 宮城ハイパーアリーナ(7000)
2018 岩手 岩手県文化センター・アポロ(8000)
2019 福島 ムーランパーク(10000)
 
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「宮城県は、アクアが安心してライブをできるような大きな箱が無いのが問題だよなあ」
 
「やはりハイパーアリーナを使うしかないのでは?」
 
「以前球場を使ったけど、物凄く寒かったんですよ」
「一時的に屋根を付けることはできないんですか?」
「できないことはないけど、数億円掛かると思う」
「うーん・・・」
 
「復興イベントは売上げを全て寄付するから。何億もの経費が掛かるなら、イベントなどせずに、その経費分を最初から寄付したほうがマシという議論になってしまう」
 
「それは寂しい」
 
「だから経費を掛けずにやりたいんだよね」
 
「カウントダウンは商業的なイベントで利益も巨額だから、経費を掛けられるんだけど」
「チャリティーイベント固有の問題だね」
 
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「宮城ってドーム球場が無かったんですかね?」
と秩父が訊いた。
 
「実はある」
と風花は言った。
 
「あるんですか!?」
 
「“シェルコムせんだい”といって過去にSMAPやV6のライブで使用されている」
「そんな所があるなら使えないんですか?」
 
「幾つか問題があるんだけど、1つは狭いこと。観客席が1000席程度しかない」
「そんなに少ないんですか!?」
 
「まあアリーナにパイプ椅子を並べれば一応1万人くらい入る。SMAPやV6のライブではそういう対応をしている」
「なるほど」
 
「それから住宅街のそばにあって、過去のライブイベントでは騒音問題でかなり苦情が来ている」
 
「ああ」
 
「過去のイベントでは、そのイベントをすることで球場の収入が物凄いから、体育施設の維持費確保のため、うるさいのは申し訳無いけど協力を、と市の幹部が住民の所に頭を下げて回っている。ところが復興支援イベントはチャリティーだから入場料も安いので、そういう無理が利かない」
 
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「やはりチャリティーゆえの問題か」
 
「ライブが終わった後興奮している客に無言で歩けといっても無理でしょうね」
「松島でカウントダウンやった時は、すぐ近くに鉄道駅があって、そこまでピストン輸送したから何とかなった。歩いた客は少数だったし夜中だから絶対に騒がないよう注意して、警備員を立たせて監視した。でもシェルコムせんだいは鉄道駅まで30分掛かる。バスでピストン輸送しても、バス待ちの客が充分うるさい」
 
「難しいなあ」
 
「根本的な問題としてここの屋根は薄い硝子繊維の膜でできていて、音をそのまま外に通してしまう。だから騒音的には屋根の無い会場でやっているのと同じ」
 
「わっ」
 
「SMAPのライブの時は2km離れた住民からも苦情が来たらしい」
 
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「それは問題があるなあ」
 
「まあそういう訳で使えない。キャパ的にはハイパーアリーナより少し広いだけだし」
 

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「市内の体育館とかで、有料パブリック・ビューイングとかをしたらどうでしょう?」
と鱒渕が提案する。
 
「それはひとつの手だね。もし市内の大きな体育館が確保できたら、そこで流す手はあると思う」
と氷川課長が言う。
 
「仙台市内で確保できなかったら、周辺の町の体育館を借りる手もあるかも知れないですね」
と秩父。
 
その時、鱒渕はハッとしたように言った。
 
「いっそ宮城県だけじゃなくて、岩手や福島でもやったらどうですかね?」
 
「おぉ!」
 
「それはやる価値あると思う」
 
「ハイパーアリーナは8000円くらい取るけど、パブリック・ビューイングはたとえば3000円くらいで」
 
「そういうのを昔、ローズ+リリーの大分だかのライブでやったね!」
「いや復興イベントでも2016年に福島でやった時にパブリック・ビューイングしてる」
 
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ということで今年の復興イベントのアクア・ライブに関してはハイパーアリーナでやるものの、東北各地でリアルタイムのパブリック・ビューイングをすることになったのである。
 

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復興イベントが宮城県と決まったので、12月のローズ+リリーのツアーで東北は福島県を使うことにして、このような日程が決まった。
 
11.23(土祝) 札幌スポーツパーク
11.30(土) 福島ムーランパーク
12.01(日) 東京 深川アリーナ
12.07(土) 沖縄なんくるエリア
12.14(土) 富山トレッキングアリーナ
12.15(日) 愛知スポーツセンター
12.21(土) 神戸ポートランドホール
12.22(日) 横浜エリーナ
12.28(土) 福岡マリンアリーナ
12.29(日) 大阪ユーホール
 
北海道と沖縄は前後に日程を入れず、万一天候不順などで飛行機が欠航した場合に備えている。
 
そしてカウントダウンは今年も小浜のミューズパークを使用することにした。ツアーの最後を大阪にしたので、大阪ライブが終わったら小浜に移動する。
 
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ミューズシアター・アリーナを巨額の費用(私が出した訳ではないが)を掛けて建てたので、使わないともったいないが、この7万人の会場をいっぱいにできるのは、現時点ではアクア、ローズ+リリー、以外には数組しかいない気がする。アクアは来年夏にも小浜ライブをする予定らしいので、当面夏はアクア、冬はローズ+リリーということでもいいかも知れない。
 
 
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夏の日の想い出・雪が鳥に変わる(4)

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